2017年06月

トップ剥がれ / Ovation 1687- (Adamas)

80年代後半から2002年までOvation の代理店(中尾貿易)で修理をやっておりましたので、こちらもそうですが90年代のOvation は全て見たと言ってしまいます。

木のトップとは違い、硬いのでトップは割れず、バインディングを突き破って、トップが剥がれています。

弦を緩めず、テンションを掛け続けた為に、ボディが分かり易く歪んでいます。

当方では、楽器をお返しする際は、必ず弦は緩めて管理して下さいと伝えてお返しします。

メーカーや、製作者が、弦は緩めないでくださいと言われる場合がありますが、空洞の弦楽器は、弦を緩めなくて良いと言う理屈はあまり当てはまらないからです。

このままでは修理できない事と、90年代 Adamas のトップの接着剤は怪しいやつは分かりますので、迷わず剥がします。

トップは割れませんが、あれだけボディがひしゃげれば、力木は剥がれます、接着が悪ければ、力木は全部剥がれて取れてしまうようなものもあります。

これはバインディングが突き破れたためか、思った程では無いです。

ボディが酷く歪んでいますのでトップがはまらず、ご覧の通り大変です。

何度も組んでは、削るところは削り、クランプ等の位置や力の掛け具合を変え、バランスを考えてはめていきます。

 

この画像はどのタイミングの撮影か忘れましたが、接着する際は、仮止めの時と若干雰囲気が変わりますので、それも想定してその時にまた考えます。

接着剤には、「アラルダイト」と言うエポキシを30年来Ovation の修理の際は使っていますが、思わぬ所で固まってしまわないように、ベタベタ処理はとても大変ですが、入念にします。


いつものようにネックジョイント部ボディの隙間を充填して補強します。


このような補強等、中尾貿易時代に先輩修理屋の佐伯さんに教えて頂いた。


日本最古(?)のオベイション専門修理屋。佐伯さん。


そうなら、私は2番目に古い。

割れたバインディングは直せませんので、作って雰囲気だけでも合わせます。

力木を直し、トップを貼り直したAdamasは,いい!

初期のAdamasの様な鳴り方になりました。

 

ネックリセット / Gibson J-200 (extension付き)60’s

先頃修理した、エクステンション付きのJ-200 の少し年代が進んだJ-200です。

こちらは過去にネックリセットしてある事が分かりましたので、通常通りネックを外しました、この過去の修理者ご丁寧にまたトップをふさぎ直してセットしてあり、それなら外れないはずなのに破れて、外れました。

エクステンション付きJ-200 ← こちらを見て頂ければ、どんな様子か分かりますが、またトップを塞いでしまうのは、オリジナルに忠実にと言う意図だと思うのですが・・・。

管理の良いオーナーに渡っていけば、修理はせずに状態はキープ出来ますが、この先20年後、30年後、もっと先、修理をする可能性を考えてくれれば、また塞いでしまわないでしょう。

「アコギは、必ず修理して時代を渡る。」 という事に思いが及んでないか、考えていないか、と言う修理ですね。

ネックに角度をつければ、ジョイントから指板が下がりますので、厚みをつけますが・・・段差がついちゃって・・・

この修理者、私のように悩まず、構造を熟知して上手くネックを外しているのですが、その先が塩梅よくないです。

 

 


 

この時代のJ-200 の特徴は、トップミュート が仕込まれているところです。

ボディ内に横にバーを渡してそれを介してトップにステーが当てて有ります。

ちょっと画像が分かりづらくてすいません、(鏡に映しています。)ブリッジよりサウンドホール寄り当たっているのが分かるでしょうか。

それでトップの状態をキープ出来ると言う訳です。

当然音にも影響がありますが、これはこれで独特のサウンドです。

 

ネックを外す際は、蒸気を使いますので、なるべく早く外してやらないと塗装が焼けてしまいます。

特にこのようにヒールが太いヤツは、外れ難い傾向があります。

Gibson , Guild等は、ある程度塗装は、修正する事も込みでリセットに掛かります。

このように塗装が焼けずに残るのは中々難しくて、やってみなければわかりません。

やはりGibson,Guildのリセットの3割前後は塗装が焼けて、修正しなければなりません。


リフレットは、通常通り。


ナットも作り直します。


かっこいいです。

 

ブリッジ修理 / Gibson J-200

Gibsonのブリッジは、ビスがついています、ブリッジを剥がす際は、ビスごとはがしましますが、貼り直す際は、ビスは外して後から留めます。

過去に何度と無く修理されていて、すでに密着しないのでエポキシパテを埋めて平面を出します。

通常、はがれていく過程で、ブリッジはボトム側から剥がれるのですが、これに限っては上(サウンドホール側)に大きく隙間があり、ブリッジの厚みも足りないので、ローズで足して修正します。

ビスは後から留めるのですが、ブリッジに付いたまま接着されていたため、接着剤が付いて錆び付いています。(右)

左側のようにきれいにして、戻します。

車やバイクのパーツならどんどん交換していくのでしょうけど、ギターのパーツは交換せずに使います。

この丸いインレイがビスの目隠しになっているのですが、これも壊れないように外して、また戻します。

 

弦落ち → フレットエッジを立てる / フレット交換(リフレット)


何の画像かと言いますと、新しく打ったフレットのエッジと交換する前に打ってあったフレットのエッジの角度を比較しています。


ナットの溝を内側に入れて、弦が指板の内側に寄るように作り直せば対処出来ますが、そこはオーナーさんの考えでいろいろです。


国産ギター等に多く見られる、ナットの溝が大分内側に入っているものが有りますが、慣れていないと、少し気持ち悪いです。


フレットのエッジを寝かして削ってしまえば処理は楽です。

やはり大きなメーカーは沢山ギターを作りますので、45度位の角度をつけて落とすしかないのでしょう。


エッジを立てた場合は、1本、1本処理に時間が掛かりますが、その分きれいに仕上がります。

フレットの端まで弾けるので、ビブラートが大きい方や変則的なプレーの方にも有効ではないでしょうか。


指板調整、ナット交換はリフレットの際セットですので、精度も上がって、こちらのオーナーさんもやって正解と言う事でした。

 

Framus / ピックアップ取り付け


このギターに合うピックアップをとの事でしたが、力木とブリッジの構造上これしか無いのでは。

ボディ内に貼り付けるタイプは他のブランドも沢山有りますが、L.R Baggsが 一番良い気がします。


ピックアップからコードが真下に出ていますので、下でコードを留めます。

 


ジャックの頭は、キャップの面位置以上にしたのですが、L.R Baggs、 もうちょっとだけ長いと良いのですが、エンドブロックによっては全然足りない時が有ります。

ナットもキャップも簡単に緩まないように締め付けます。


 

このタイプのブリッジのピックアップもある事は有りますが、この雰囲気ではなくなってしまうので、雰囲気優先。

このサドルは、指板にアールが付いているのにクラシックギターのように真っ平らでしたので、板を足して指板に合うアールをつけて調整。

 

Framus 5-024 / ボディ修正

ジャックの穴だと思いますが、ずいぶんと大きな穴です。

予め中からパッチを貼って塞いでおきます。

アメブロに中の画像あります。

塞いだら色を合わせますが、元通りにはなりませんので、雰囲気がなんとなく合えば良しとします。

ピックアップが取り付けてあった部分が加工されていますので、こちらも修正します。

こちらも雰囲気がなんとなく合う感じに。

 

Framus 5-024 / トラスロッド交換

ヘッドを繋げたら、全く効く気がしないアジャストロッドを交換します。

Gibson等では絶対にありえないですが、埋め木がスッポっと抜けました、よく見ると埋め木がほぼ真っすぐ!?

だってロッドがほぼ真っすぐなんだもん。

 

そしたら溝だってほぼ真っすぐだから、アジャストロッドは効く訳ありません。

ロッドがちゃんとたわむ様に溝を直して仕込みます。

埋め木もたわみに合わせて作ります。

アジャストロッドのトラブルは、調整し切ってそれ以上締められないにも関わらず更に締めてねじ切ってしまう場合や、ロッドエンドが緩んで締めても締めても全く効かない場合があります。

ナット側でねじ切らないように注意は出来ますが、エンド側は注意できませんので、当方のロッドエンドは溶接してもらい、更に仕込む際にはエポキシにて固定します。

こちらのページの 3/5 ほど下がったあたりで当方とGibsonのロッドの比較画像が見られます。

Framus 5-024 / ネック折れ


こちらは、ネック折れと言うより、接着部から外れています。

ネックの接ぎ方には主に2種類の方法があって、これはスカーフジョイントと言う接ぎ方です。↓


他にもこの穴を直したりと、いろいろやる事がありますので、何回かに分けて紹介していきます。


こちらのギターは、ジョンレノンのファンの方がこの状態で買い付けて、縁あって当方にお越しいただきました。

 


 

出来上がっちゃっていますが、作業がいろいろ並行して進みましたので、詳しくしようとすると余計に分かり辛くなりそうなので、なるべく見易くなるように簡単に見て頂きます。

このジョイントは、クラッシックギターでよく見られる方法で、他にはTaylorがすぐに思いつきますが、スカーフジョイントの他にフィンガージョイントを採用したネックもあります。

色んなネックがありますがMartin のように贅沢なワンピースネックも有り、それが一番良いかと言えばそういう事でも有りません。

どのネックが良いのかは、それぞれの考え方によります。

 

 

 

ネックリセット(ボルトオンネック) / Martin


こちらは、Martinのボルトオンネックのボディ内のネックブロック部です。

Martin に限らず、ボルトオンネックの場合は、大概ここにプレートかラベルが貼ってあり、ボルトの目隠しをして有ります。


目隠しを取ると、ボルトが現れます。

Martin 以外は、ここのボルトを外せばヒールが外れます、がMartin はボルトオンなのに接着しているので、結局ダブテールジョイントと同じく蒸気を使って接着を緩めます。


右上に写っている黒っぽいのが、蒸気発生器のエスプレッソマシーンです。

取る方法はダブテールジョイントと同じですが、ジョイントの形はダブテールではなく、ストレートなので、前に押し出さなくても抜けます。

 


これ位出ているサドルが好みの方が多い気がしますが、個人的にはもうちょっと低い方が好みではあります。


ネックの角度を直して、ハイポジションが下がった場合は、指板に厚みをつけます。

(0.5mmローズの板で底上げ↑)

過去に指板を大分削っちゃっている場合や、角度がかなり狂っていた場合は、1.5mm位底上げする事もしばしば有ります。


よくMartin と Gibson は比較されがちで、Martin は真面目でGibson はいい加減のように言われますが、実際は逆の部分も多くて、これまで数え切れないほどネックを外してみて感じる事は、ボルトオンで接着しちゃうのは自信の無さなのかとも思ってしまいます。

(ヒールに隙間が出来ちゃうのは近年のMartin くらいしかないのです。)

ジョイントの木工精度はGibson の方が上です、大分。

Martin は大好きですが、Gibson の名誉の為言っておきます。

悪しからず。

どのメーカーもコンピューター制御で切り取られたパーツをセットしているのですが、それにしてもLowden はすばらしいです。何と言うか、心意気と言いましょうか。

また、折があれば触れてみたいと思います。

角度が狂うのはジョイントの精度の問題だけではないので、悪しからず。