ブリッジ

ブリッジ整形&ロングサドル変更 / D-28(1965)


スタッフの山口です。D-28、1965年といえばロングサドルからショートサドルに変更になった年です。シリアル番号からこの個体のオリジナルはロングサドルのはずだそうです。


ということはオリジナルのブリッジではありません。写真ではわかりづらいですがディティールも若干違和感があるためオリジナルっぽくするために手を加えます。


恐らくマーチン用の出来合いのブリッジに交換されていたようです。1弦側と6弦側で高低差がほとんどない為オリジナルと同じくらいなだらかな高低差を作ります。写真はその作業中。他にも師匠の皆川にどの辺がもうちょっとこうとかああとか相談しながら四苦八苦。


整形し終えたらロングサドルに彫り直すために既存の溝を同じエボニーで埋木します。余計なところにノミが当たらないように入念にマスキング。


溝が埋まったら弦長を測り溝のルートをマーキング。ルーターで狙い通りの位置に溝を彫るのですが、ロングサドルの場合少しでもルーターが前後左右に傾くと顕著にそれが見て取れてしまいます。


ロングサドルの両端がウイングに大きく突き出てしまうのはあまりカッコ良くありません。写真の通りこのくらいがちょうどイイ感じです。(5mmくらい?)

左右にルーターのジグが傾くと1弦側だけ、もしくは6弦側だけ溝がビヨーンと外側に伸びてしまいます。ショートサドルに比べてロングサドルは何かと面倒なのです。

6弦→1弦側に向かって山形ですが少しずつ低くなっているのが分かりますね。この若干の高低差がないとサドルが入った時に結構な違和感があります。

飴色に焼けた1965年製のD-28。ロングサドルが入るとさらにビンテージ感が出ますが今回はここまで。

アコースティックギターのお手本のような音とルックス、近頃の円安も相まってさらに手が届かなくなってしまった「THE アコースティックギター」です。

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

 

 

ブリッジ底上げ→ネックリセット Guiid D-50(70s)


スタッフの山口です。Guild D-50のネックリセットです。ビンテージギターにはよく見られる薄く削り落としたブリッジ。今回は予算の関係で交換ではなく、写真のように底面側にローズウッドを足して本来の高さを取り戻します。


接着後足した部分との境目をタッチアップで目立たなくします。


反対側も目立たなくなりました♪

注意深く見なければほぼ分かりませんが、もし販売するときにはブリッジ補修歴を正直に伝えなければいけません。全交換の場合もまた然り。

削られて形の変わった上面を本来の造形(ディティール)に整えたらタイトボンドでブリッジを接着します。

イイ感じではないでしょうか。


ブリッジ補修が終わったらネックリセットに入ります。ネックリセットとブリッジ修理はセットで行うことの多い組み合わせです。


ギルドはギブソン同様にネックヒールが太いので外すのに時間がかかります。

指板を剥がす際にトップが剥離してしまいました。


慎重に剥離したトップ材を元の場所へ戻してあげます。

次の工程に進むには1日以上クランプしおく必要があります。


ヒールが太いと大変です。昨日はGibsonのネックリセットでヒールを削るだけで日が暮れてしまいましたε-(´∀`; )


ヒールを削ってネック角度が付くとその分指板とトップに隙間ができることが多いです。その分は作製した縞黒檀の薄板を足します。


ネックを接着した後はフレットの擦り合わせとナット調整、サドル交換しネックリセット完了です。


ブリッジも厚みを取り戻しサドルの高さも十分確保できるようになりました♪


ヒール部分も塗装修正せずに済みました。


反対側も綺麗に戻ってます。接合部が荒れてしまいラッカーで修正する場合もあります。


 

師匠も過去のブログで言っていますがネックリセット後は楽に弦を抑えられるようになるためか、とても音が良くなったと感じることが多いです。ネック角度が適正になることで実際に良くなっているとも思います。また、その後弾き込むことでそのギター本来の味が出てくるのでさらに良くなるのではないでしょうか。

アコースティックギターは木製生楽器ですので個体差もあり、同じ年の同じモデルでも鳴り方が全然違ったりして本当に面白いですね。

Guildのギターは弾くたびに「Guildらしい音だな〜」と思います。このGuildもやはりGuildらしい音がしました。もちろんGibsonらしいなー、とか、これぞMartin!!とも思うのですが。。。ちなみにうちの実家にあるThreeSのギターはマーチンのコピーなのにDoveっぽい音がします。

何を言いたいのか分からなくなってしまいましたが、、アコギの修理をすればするほどアコギが好きになる今日この頃、ということです。(?)

 

Gibson L-1 トップ破損修理


スタッフの山口です。今回は写真の通り、トップ板が弦の張力に負けて破損してしまったGibson L-1の修理をアップしていきます。


まずはブリッジを外しました。写真では分かりづらいですが以前にも同じような破損をしていたのかな、と思われる跡が見て取れます。


厚いアクリル板とクランプをして熱で膨らんだ部分を平らに近づけます。中に白熱球を入れて熱を加えていきます。


修理跡に見えたのはおよそ90年の間に幾度もブリッジを貼り直しをした結果、ブリッジ接着面が荒れて凹み、そこにマホガニーに近い木を重ねて貼り付けていたようです。グズグズの木でしたのでナイフを入れて取り除いてしまいましょう。


トップ板の厚さが2mm程しかない為、結局写真のように崩落してしまいました。ブレーシングのラインで割れたようですのでブレーシングも外しました。

 


今回はブリッジプレートをかなりのオーバーサイズで作り替えます。音が云々と言う問題もありますが2mmのトップ厚では補強しなければ弱すぎて弦の張力に勝てません。写真はメープルの特大ブリッジプレート(右は接着の際に当てがうための合板です)。  


補強兼ブリッジプレートをクランプして接着します。


真ん中のブレーシング(力木)のラインでトップが割れて浮き上がっていましたので、一旦力木を外して一枚板のブリッジプレートで補強し、その上に力木を戻しました。


グズグズだったブリッジの接着面を再生します。


マホガニーで埋木完了。


周囲と高さを合わせます。


この写真の前に艶消しを吹きました。あとはブリッジを戻します。


接着、クランプの画像から次の画像の工程までは最低24時間空いていますので、どんな修理も数日を要することがほとんどです。これもかなりかかりましたε-(´∀`; )


無事に弦を張っても大丈夫な強度を与えることができました!


木目に対して垂直に破損したのでどうしてもタッチアップでは誤魔化しきれず、跡が残ってしまいます。

今回、補強も兼ねた大きいブリッジプレートに交換したことで再発はしないのではないかと思います。破損していた状態で工房にやってきたので元の音は分かりませんが、とてもいい音を奏でてくれました♫

1930年前後に作られた90歳くらいのギターですが、これでまだまだ現役続行です。

 

 

Martin D-28 ブリッジ交換&ネックリセット


こんにちは。スタッフの山口です。

今回はMartin D-28のブリッジ交換とネックリセットです。写真のように弦高を下げきれなくなりブリッジを削ってありますね


ハロゲンライトでブリッジをゆっくりと温めて接着剤を軟化させます。


ブリッジ周りを傷つけずに剥がさなくてはいけませんのでマスキングテープを使用したりヘラの角度などに気をつけます。


エボニー材はまだ辛うじて輸入OKの木材です。ただ写真のような真っ黒なエボニーも中々貴重になってきています。


擦ったり削ったりで成型して行きます。個人的にはローズウッドよりエボニーの材質の方が作り易いです。


マーチンのブリッジ交換はショップから依頼される頻度が高いです。Gibsonのオールドはアジャスタブルサドルの個体がたくさんありますので、今回のギターのようにブリッジを削って弦高を下げている個体が少ない印象です。


元々がオーバーサイズですので今回もそのサイズで。

ブリッジを作り替える時にちゃんと元のサイズで作る職人さんと、少し大きめで作っちゃう職人さんがいます。


接着面を整えたら接着です。ボンドは綺麗に拭き取ります。


いつの間にかピックガードが無くなっていますね。今回はそれも依頼されていましたので剥がしたのです。


弦長を測ってマーキング。ルーターで溝を掘ります。


元のブリッジと並べた一枚。溝も綺麗に掘れました。


ブリッジの高さもついたのでネックリセットに移ります。サドルをもっと出してあげないといけません。


15フレットを抜いて、、


指板をトップから剥がして、、


専用の道具でダブテイルジョイントを温めていきます。


MartinはGibsonよりも素直に抜けてくれます。ネックリセット料金はメーカーによって変わるのはその為です。

ちなみに国産メーカーなどはダブテイルジョイントではないものもザラに有りますので、その際はすごく手間がかかり費用がかさんでしまう場合も有ると思います。


恒例となった記念撮影。

綺麗に分離しました♪接着剤が軟化しているうちに綺麗にしてあげます。


仕込み角度を調整する工程は必死にやっているため写真を撮り忘れることが多いです

(*´ω`*)


ヒールを削った分、指板にも厚みをつけてあげます。エボニーも枯渇してきているので縞のある黒檀も増えています。


後半は早足でしたがネックリセットも完了。

ブログでは1日で終わった修理のように見えるかもしれませんが、接着の工程を何度も挟んだりするので実際は数日〜数週間、内容によっては1年単位でお預かりする場合もあります。納期に追われて急いで修理してもろくなことがありませんので、お預かりする期間が長くなってしまってもご理解いただけるとありがたいです。

自分はせっかちな性格なので、セカセカと熱くなって作業していると「急いでやっても失敗するよ、急がず慎重に。」と師匠皆川氏の一言。ふと我に返りクールダウンします。

 

 

ブリッジ貼り直し / Godin A6 Ultra KOA


スタッフの山口です。今回はカナダのギターメーカー、ゴダンのブリッジ剥がれ修理です。エレキとアコースティックのハイブリッドタイプのギターですね。


当工房はアコースティック修理が多いので電気系統を触る頻度はエレキ専門の工房より圧倒的に少ないと思います。今回のようにピックアップを外さないと修理できない場合は外す前に必ず写真を撮っておきます。でないと戻すときに映画の爆弾処理班みたいに「一か八か」になってしまいます。


不定期ですがエレキ専門のスタッフもおりますので、エレキの電気系統などの修理もお気軽にお問い合わせください。

写真は無事にハンダから外せたところ。

今回のようにブリッジが一部だけ剥がれている場合、一旦完全に剥がして古い接着剤を取り除き接着面を整えなければ十分な強度が得られません。

ブリッジはアコギ仕様ですので外す時はいつも通り温めて。

写真を撮り忘れましたがソリッドボディーに見せかけて中は空洞ですのであの手この手でクランプがかけられるように工夫する必要があります。場合によってはその修理のために専用のジグを作ることもしばしばです。

一度クランプを外し接着剤をつけたら手早くシュミレーション通りにクランプをかけ戻します。

しっかりとブリッジ接着できました。ブリッジやサドルは完全にアコギ仕様です。ハワイアンコアの綺麗な木目が印象的ですね。

A6 Ultraというアコギっぽくないネーミングセンスですが、生音もアンプからもとても良いアコースティックサウンドを奏でる不思議なギターでした♪

 

 

 

ブリッジ貼り直し / Martin D-35S

ブリッジを貼り直さなければならない場合は、慎重に剥がして、

調整し直して、貼り直します。

マスキングテープは用事が終わったらさっさと剥がします。

ラッカー塗装にひどく反応してしまう事があるので塗装作業等も、その日の作業が終わったら剥がして、また次、やる時にマスキングします。

 

 

ブリッジの剥がれた隙間に接着剤を差し込んで接着する場合も無くは無いですが、その場合は圧着せずに充填接着します。

何故、圧着しないかと申しますと、ブリッジが剥がれている場合、接着面は反っている事がほとんどなのでクランプしても密着しないのです。

無理にクランプしてくっ付けてもブリッジが反っていますので、いずれ剥がれてきます。

剥がさず部分接着するならば、あくまで簡易的な修理と考え、圧着はせず充填接着します。

ブリッジが反っていなくて隙間が出来ている場合もありますが、接着剤はスーパーグルーで、その量も足りていない場合に反らずに剥がれている事が多いように感じます。

 


 


 


 


 

弦を緩める理由はネックへの負担だけでは無く、ブリッジ、トップ板、等いろんなところに弊害が出る事を予防する為です。

 

 

ブリッジはがれ修理 / Ovation CC059-4


 

ブリッジが剥がれています。

見ればわかります。

手工品のギターではあまりこういった剥がれ方は見ない気がしますが、メーカー品や量産型のギターはこのように剥がれてしまっているものをよく見ます。

原因は一つでは無く、いくつかあります。

これの場合は、アラルダイトのようなとても強力なエポキシで接着され、接着部は剥がれていませんが、接着されている塗装の下から剥がれています。

タイトボンドやニカワ等は木部を出して接着面を調整しなければ接着剤の性能を発揮できませんが、エポキシの場合塗装面であっても強く、硬化後も体積がほとんど変わらないので多少凹凸があっても隙間なく、強力に接着する事が出来ます。

その為にこのように剥がれてしまう事もあります。

このように一気に剥がれてしまう原因としては他に、単純に接着剤が弱い為、接着剤が足りてない為、接着面の処理不良の為、等がすぐに思いつきます。

不備の無い作業工程で選択が間違えてない接着剤を使っていても構造上、剥がれてしまう事はある程度仕方がない部分もあります。

ブリッジも木で出来ていますので、張力のかかる方向へ木が反り上がり、その分隙間が出来る事があります。

防ぐ手立てとしては、弦は必ず緩める事。

・チューニングされたまま、もしくは弦は少ししか緩めていない…この状態にしない事。

ブリッジだけでは無くネック、トップ等、関わる全てに何かしらの影響が出るので、弾かなければ弦は必ずしっかり緩めてください。

 

 

 


 


 


 


 

 

ブリッジプレート補修 ブリッジ交換 / Gibson LG-O

経年劣化でブリッジは歪んで、ビス止め部分は折れてしまっています。

作り直したブリッジを貼り直す際には、塗装を剥がして木地を出します。

ギブソンの60年代のプラスティックブリッジは、4か所ビスで止まっているだけ。

ブリッジの裏側、ブリッジプレート。

通常はメイプルやローズ等を使いますが、これはスプルースか何か。

ブリッジプレートの穴は削れているだけでなく、裂けてしまっています。

 

 


 

 

 

 

ビス止め部分は真ん中に2ヶ所と弦の穴の両端に1ヶ所ずつ、計4か所。

 

ビス穴も弦通しの穴と同じように塞ぎます。

ブリッジは、似た雰囲気になるようにエボニーで作り直します。

 


ローズで交換する際は、その年代のローズブリッジの雰囲気になるように。


エボニーで作り直す際は、プラスティックブリッジの雰囲気に。


オクターブも図り直します。

サドル位置は、ほぼ同じ位置でした。


通常のサドルであれば後からサドルの位置を決められますが、アジャスタブルブリッジの場合は、いろいろ難しくなります。

 


 

 

 

良い雰囲気です。

 

ブリッジはがれ修理 / Martin D-18


ウィング部に少し隙間がある位でしたら、そこだけ貼れば良いと思いますが、この位剥がれてしまっていたら、調整して貼り直しましょう。


力木ハガレの次、位に意外と気づき辛いのが、ブリッジ剥がれかなと思います。

 


隙間になった分、ブリッジが反りあがっていますので、平らに直します。

https://www.m-guitars.com/blog/1568/

 

 

 


 

ブリッジを貼り直す際の注意点としては、先ずは上記の接着面の調整。

その前に剥がす際には、すごく気を付けて剥がす事。

逆目に向かってヘラを入れてしまうとブリッジを剥がさずブリッジの面積を超えてトップの木を剥がしてしまいかねません。

貼る位置は基本的には同じ場所へ貼り直しますが、ズレた位置で長期間落ち着いていた物はその位置が元の位置と勘違いしてしまう場合があるので注意します。

もっと正しい位置を決めるにはピッチを図り直し、サドルの位置を合せてセンターも修正する事が出来れば、位置としては正しいですが、接着面の跡が出てしまい見た目が悪くなりますので、やはり基本は元の位置。

貼り直した後、微妙にずれても見た目や、他に不具合や問題が無ければ良いのですが、アジャスタブルブリッジ(Gibson)の場合は、微妙なズレも問題になりますので、やはりいずれにしても元の位置にビタッと決める事が求められます。

 

 

 


接着面が真っすぐに調整されていなければ、隙間が出来てしまいます。


いくらクランプを締め付けても隙間は隙間なので、拭いても拭いても隙間から接着剤が染み出てきます。

ブリッジに限らず、張り付ける前には色々と確認と準備をしなければなりません。

Martin OOO-21 / ブリッジ交換、ネックリセット

ブリッジがちょっと薄いのでネックリセットにつき、ブリッジの厚みを戻します。

年代的にはロングサドルですが、ショートサドルで作り直し。

ハカランダの在庫は、まだ少しあります。


ブリッジが出来ましたので、ネックリセットします。


後ろが剥がしたブリッジ。

交換せずとも個人的には十分と思いますが、色々拘りがあります。


通常のネックリセットより多少高いサドルです。

 


 


 


 

リフレットして、ピックアップを付けます。

完全にご自身が使いやすい、好みの状態を想像しての修理依頼、という感じです。

個人的好みではサドルは高く出ていない方がカッコよく思っていますので、通常はもうちょっと低くなる様に角度を直すのですが、サドル高目がよろしければ言って頂いて全然かまいません。

但し、たまに見る現行品ですごくサドルが出てる、イヤミの出っ歯(アニメおそ松くん)みたいなのは勘弁してください。

そのリクエストは、他の修理屋さんでお願いいたします。

修理画像を過去にどこかで見た記憶がありますので、やって頂ける所があるはずです。

 


 


 


 

今回はサドルが高目になるように狙って調整しましたが、最終的に弦を張って調整してどちらに転んでも良いようにネック角度を直しますので、結果いつもより高目なサドルになる場合もあります。