力木(ブレーシング)

ボディ破損 / Morris W-25 (其の参)


スタッフの山口です。

とうとう3週目に突入しましたが、まだ道のりは遠そうです。

写真は折れたXブレイシングを整えているところ。


修理は極力使えるところは生かします。一般的にオリジナルに近いほうが楽器修理は良いとされていますので今回も継木して直します。


直角も出ていい感じ。


ほら、いい感じです。


何となく出来そうな気がしてきました。


仮加工したトップ板をはめてみてさらに希望が見えました。


ここで先週予告しましたオリジナルジグの登場です。


長ーいクランプを用意して、、


こんな感じで。


サウンドホールから入れられるジグの大きさには限りがありますので、中で組み立てられるようにする必要があったのです。

簡単な作りですが、バックである底面に置きながら組める、というのはボディー内部での作業には便利。というのがこのジグのいいところですが、たいしたものではなく恐縮です。


うん、ちょうど中が見やすいです。

これは今後もエンドブロック付近の修理に使えそうです。


来週はいよいよここを塞ぎます。

自分の中ではピッタリとブックマッチできるか一番心配していた工程ですが果たしてうまくいくでしょうか。

次週もお付き合いくださいませ。なにせ2年間の記録でございます。

 

今週も最後までありがとうございました。

 

 

力木剥がれ /Martin D-28

スタッフの山口です。

今回は写真が少ないのでほぼ文章で力木(ブレイシング)剥がれ修理を紹介します。

バック側の力木が剥がれていますね。力木剥がれはボディをコンコンっと叩いた音で剥がれてるか診断します。大事なギターを持ち込んでいきなりコンコンっと叩かれても驚かないでくださいね。お医者さんに例えるなら聴診器を当てているようなもの。8割方、叩いた時の音でどの辺が剥がれているかどうかが分かります。

おおよその場所が把握できたら写真のようにヘラを差し込みます。軽傷の場合はなぜか端の方から剥がれていることの方が多いです。このまま放っておくと中心部まで剥がれていき、最終的には何かの拍子でカランコロンと完全に外れてしまいます。

そうなる前に修理してあげればOK。お客さんが気がつきにくい部分なので別の修理で持ってこられた場合もなるべく力木チェックは行っています。

バック側の場合は専用のターンバックルで突っ張って接着します(外側では大きなカムクランプがサポートしています)。

写真をよく見るとバックのローズウッドが湿っています。これは接着面から溢れてきた接着剤を拭き取った跡。たまに盛大にニカワだらけになっているギターを見かけますが、、、ちゃんとすぐに拭いてあげれば修理した痕跡は残りません。

 

力木の他にもバインディングが剥がれていましたのでこちらも修理。

Martinのバインディング剥がれはMartinクラックのような「名物」としてそろそろ名前が付いてもおかしくありません。


 

マグネティックPUを戻して完成です。

弟子入り間もない頃、修理前のギターを「このギター鳴りますねー!」という僕に「たぶん力木が剥がれてて音が暴れてるだけだよ」と皆川氏。力木を調べてみたら見事に5-6ヶ所も剥がれていました。そして修理後に弾いてみたらなるほど!音量は修理前より若干小さく感じるものの、しっかりと粒立ちの良い上品な音に変わっていて感嘆しました。力木が剥がれまくってガビンガビンの音が良く思えても、弾いている本人に鳴ってる感があるだけであって、聞いている側が良い音と感じるかどうかはまた別の話。そして何より力木剥がれを放置してしまうとギターの強度も落ちてしまいますので、なるべく軽傷のうちに直してあげましょう。

最後に、今回のようなギター内部の修理をする場合、中の埃や塵は集塵機とエアコンプレッサーで綺麗に取り除いてから行います。今回のギターはとても綺麗でしたが、たまに驚く程いろんな類いの塵や埃が溜まっているギターがあります。音に分かるほどの影響はないかも知れませんが、、、剥がれはじめた力木の隙間に埃が付着してしまっていたり、匂いが篭ってたり、ピックを中に落としてひっくり返して取ろうとしたら埃が顔に降ってきたり、と百害あって一利なし。たまにギターの内部も気にかけてあげてくださいね。

 

そういう僕は今日、自分のメインギターの弦交換を1年ぶりにしました(ノ_<)もう少し自分のギターも気にかけてあげようと思ったのであります。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

 

ブックマッチ離れ&力木剥がれ / YAMAKI


スタッフの山口です。

今回はブックマッチ離れ(トップ割れ)と力木剥がれを見ていきます。写真のブックマッチ部分に隙間ができてしまっていますね。乾燥し木が縮む事で古くなった接着面がその縮む力(← →)に耐えられなくなったのでしょう。


このような割れは大抵力木も剥がれています。トップ板の骨となる力木が剥がれることでトップ板が自由気ままに動きやすくなってしまうのです。

薄い木の箱であるアコースティックギターにとって、力木は強度維持には欠かせない重要なパーツなのです。


今回はブリッジも跨いで隙間ができていますのでこいつも一旦剥がします。


自作の専用ジグを左右に当ててクランプ。隙間がくっつくことを確認できたら接着します。


一日経過したらご覧の通りピッタリとくっつきました♪


ブリッジを挟んでボトム側もOK。

ちなみに割れた所を気にして触っていると汚れが隙間に入り込んでしまい接着後も跡が残ります。特にトップは目立ちますので、割れに気が付いた時はなるべく触らずに修理屋さんへ行きましょう。


トップ板の次は力木修理。バック側は問題なかったのですが、トップ側は至る所が剥がれていましたので、、、


あっち、こっち、


あ、ここも、あそこも、、


こんな所も、、、と言った感じです。

サウンドホールから一度に掛けられるクランプの数は限りがありますので、今回は4日間かけて剥がれている全箇所を接着しました。

力木修理は簡単そうで意外と時間も手間もかかる修理の一つなのです。


力木のサポートを無事に得られましたのでブリッジを戻しましょう。


理論上はブリッジもブックマッチ部の強い味方になります。


多分付けなくても大丈夫だと思いますが、念には念を、ということでクリートと呼ばれる補強も付けました。

「ここを修理したよー」という後世へのメッセージ的な意味合いもある気がします。


ペグやヘッドが腐食していましたのでクリーニングします。


ペグを外すことでヘッドのワックス掛けも捗ってピカピカです♪


縦ロゴも縦ロゴらしく凛々しく見えるようになりましたね。


こちらのYAMAKIが当時のMartinコピーだと考えると、シャーラー製ペグ=80年代製でしょうか。


弦を張ったら完成。


長年隙間が空いていたので跡が残りましたがブックマッチ部分は意外と気になりません。


力木剥がれも直りましたので音も引き締まっていい感じです。


国産オールドギター、当時はMartinのコピーモデルという位置付けだと思いますが、最近はジャパンビンテージと言われて人気もありますね。YAMAKIも人気があるメーカーの一つ。


バックはハカランダらしい豪快な木目となっています。この辺の年代は思い入れのある人も多く、修理に持ち込まれる国産オールドギターも増えてきました。ギターに限らず、今やMade in Japanは立派なブランド力がありますので見直されるのは当然のことのように思います。

どんなギターであれ、一途に長年同じギターを使い続ける人はとてもカッコイイです。

今回も最後までご覧いただきありがとうございます。

 

 

[番外編]トップ交換/ Martin OM-42 [前編]


スタッフの山口です。

今回は番外編。先日よりHP内メニュー→在庫販売で掲載したOM-42CVのトップ交換の記録を見ていただきたいと思います。


見てください。絶句する程の大破っぷりです。

ここまで酷いと修理代にちょっと足せば同じギターを購入できちゃいますね。この場合高額な修理代を払ってもそれ以上の値段で売れる保証はありません。


オーナーが壊れたギターに対して余程のプライスレスな思い入れがない限り原価割れとなる修理はお薦めしませんがもちろん修理を選択する方もいます。

このギターのオーナーさんはこの状態で買い取りしてもらう方が経済的と判断したのでしょう。

 


ということで今回は修理の勉強のためにも自分がこの状態で買い取り、修理することにしました。

憧れの縦ロゴMartinが思わぬ形で自分の元にやってきました。

写真はまだスチーマーでダブテイルジョイントを温めていた様子です。


アジャストロッド仕様のマーチンはこんな感じです。


これは大変な期間を要するぞ、と思った瞬間です。


ライニングも新しくします。


元のシトカスプルースよりもどうせなら、と5年以上シーズニングされたアディロンダックスプルースを新調しました。


ブレーシングは元のトップ板から採寸し完コピします。


少し大きめにカット。


力木の前に先にロゼッタを作っておきます。


苦戦した記憶。


力木(ブレーシング)もアディロンダックスプルースにこだわりました。高さ太さもオリジナルを完コピして削ります。

約170年前にこのXブレーシングを発明したMartinさんは本当に偉大だと思います。

なんとなくギターっぽくなってきました。


迷った末スキャロップドブレーシングを選択。師匠はノンスキャロップ推しでしたが何となくスキャロップしたかったのです。


 

トップ板がほぼほぼ完成しました。美しい、、と思い記念撮影。長くなってしまうので前編はここまでです。空いた時間を使って進めているということもあり、ここまでで半年以上経過しています。修理というより製作に近いですね!「修理は製作の逆の工程になることが多いので製作工程を知ることはとても大切」という師匠の言葉が印象に残っています。

 

後編では完成までを載せたいと思います。完成品はHPのメニュー→在庫販売から既にご覧いただけますが、、

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

力木のパターン / 前回のJ-200続き


 

前回アップした50年代のJ-200ですが、力木の画像がありました。

なかなか見る機会もありませんので、画像を撮っておりました。

現在とはパターンが全く違います。

この時代この大きいボディに合う力木のパターンをいろいろと探していたのだろうと思います。

サウンド、強度、コスト、等々・・・1番よいところを。

なので、私が思うにどんな製品もマイナーチェンジの度につまらなくなってしまうのかなと思ったりもします。

 

 


ブリッジプレートからボトム部側Xブレイシングの角度がトラディショナルなものとは違います。


奥の力木はラダーブレイシングのような置き方。


サウンドホールからネックブロック側

こちらもエックスッ!


強度は現在の物より低いのではないかと思います。

しかしこれならではのサウンドがあります。

 

 

力木(ブレイシング)はがれ接着 / Wash Burn D-46

これは何かと言いますと、バックの力木の剥がれを接着している所でございます。

力木ハガレは修理前後の見た目がつまらないので、記事も少ないですがたまには書いてみます。

ジャッキをかけて圧着しています。

広範囲に剥がれいますが、ジャッキの位置は端に1本かけます。

2本以上かけてしまうと相殺してしまうので1本です。

 

 

では、その延長部分はどうやって圧力をかけるかと言いますと、外側からかけます、そうする事でジャッキの圧力も増す為、効率良く圧がかかります。

 

 


このギターは然程心配ありませんが、古いラッカー塗装の場合は、クランプの跡が付いてしまわない様、気を付けます。


クランプは力任せにかけるのでは無く、丁度良い力があります。

バランスが大事、密着すればよいのです。


ローズ系のボディであれば割ときれいに拭き取れるのですが、それ以外はシミが残りやすいので、一所懸命拭き取ります。

 

 


ボディの中の作業をする場合に気を付ける点は、ホコリやゴミをしっかり掃除してから作業に入る事。

ホコリはコンプレッサーでサウンドホーから、しつこく吹き飛ばします。


剥がれている部分にホコリが入り込んで接着剤の効力が落ちたり、ゴミが噛んで密着しなくなってしっまっては修理の意味が無くなってしまいます。

 

 


修理する場合、材料は何か、接着剤は何か、パーツはどこ製か等は勿論大事ですが、それ以前にもっと大事な事があるのです。

 

力木ハガレ修理 / Gibson Hummingbird

こちらのギターはネックリセット、ピックガードの貼り直し、力木ハガレ、といろいろありまして1回でアップしてしまうとゴチャゴチャしちゃいますので、修理を分けて紹介します。


バックの力木ハガレを接着しています。

他の力木修理の画像でも確認出来ると思いますが、ボディ内のホコリは出来る限り掃除してから作業に入ります。

接着剤にホコリ等が混ざってしまうと接着材の性能が下がってしまったり、小さなゴミであっても隙間に噛んでしまえば密着しなくなります。

接着の際のジャッキは通常、端に掛けますが、一カ所の力木ハガレには1カ所しかジャッキを掛けられない為、大きなハガレの場合は、1番効率の良い場所を探します。

2本掛けてしまうと、最初に掛けたジャッキの圧力が下がってしまう為、2本掛ける意味が無くなってしまいます。


(ボディをクランプで挟んでバック側の力木を押しています。)

2カ所から圧力を掛けるには外側から位置を変えて圧力を掛けます。

これにより内側のジャッキの圧も更に上がりますので、その分も考慮しなければなりません。

接着の際、クランプ類は沢山使って、もしくはクランプの力でもって接着させようとするのは間違いとは言い切れませんが、その前の準備とバランスが1番大切と言えます。

 


修理は物を直す作業ですが、クランプ等はある程度、力が掛りますのでラッカー塗装等では表面に跡が付いてしまったり、安いギターのネック材等では凹んでしまったり、本来の修理以外にダメージを与えてしまいかねません。

いつも同じような修理ですが、同じ作業にならない事も多いのです。

準備や確認に落ち度が無いようにしなければ上手く行かない事になります。

と自分に言い聞かせています。

 

このギターの他の修理は順次、更新します。

 

 

力木はがれ / Martin D-28s


以前に紹介したいろいろ修理したD-28sのその他の修理の力木はがれの画像が出てきました。

このような感じで圧着します。


ボディの中は掃除機で掃除した後、エアコンプレッサーでサウンドホールからホコリを徹底的に掃除してから接着作業に入ります。

接着部にホコリが混ざりこんで、接着不良を起こさない為ですので、掃除前はボディ内、力木等はいじってはいけません。


ボディ内のジャッキは基本力木の端に掛けますので、ジャッキの掛からない部分は外からクランプします。

両方掛けることで圧着力のバランスが取れます。

中に2本掛けてしまうと、片方が緩くなり、緩い方を締めると逆が緩くなり、余計な力を掛け過ぎてしまいます。

 


 

力木は少しはがれている分には、異音等出なければ然程気にする事もないと思いますが、これ位はがれていますと音や強度にも影響が出てきます。

バックの力木は、トップ板(サウンドボード)を効率よく鳴らせる為、ボディを締める役割があります。

オーディオのスピーカーで考えれば分かり易く、箱が鳴っても意味が無く、スピーカーの正面から前へ音が飛んで行かなければ良いスピーカーとは言えません。

力木がはがれているとボディは自由なので、ボディも振動して弾いている人は割りと気持ちよく感じる人もいますが、どちらかと言えば、周りだけで鳴っている、締りの無い音と言えるでしょう。

近年では、トップの力木同様にバックの力木も弾いている人がより気持ちよくなれる工夫された力木のパターンが考案されたりしています。

ボディのサイズだけではなく、ニーズに応えるいろんなデザインがあるギターは面白い。

 

画像の整理が大変すぎて撮らなかったり、撮っておけばよかったものを撮り忘れたりと、アップする頻度に差が出ています。

依頼の多いものは必然的に多くなります。

力木はメインの修理以外だったりすることが多いので、撮らなっかったり忘れたり、久々の力木画像でした。

 

力木(ブレーシング)はがれ

力木1

これは何をやっているかと言いますと、力木(ブレーシング)の剥がれを直しているところです。

力木3

ボディの表と裏から挟んでいます。

 

力木5

順番から言うと、中側から圧着させるジャッキが先で、その後ボディ中心側への圧力を外側から掛けます。

同じ力木に2本ジャッキを立ててしまうと隣のジャッキの圧を弱めてしまうので、中と外から掛けて互いの圧力を補います。

力木4

接着剤はタイトボンド、絞った布で拭き取りますが、染みが濃く残る事がありますので、そこは接着後サンドペーパーを掛けて目立たなくします。

力木はがれのチェックは、ボディをタッピング(ドアをノックする感じ)して確認しますが、なかなか音を聞き分け難い事もあり、別の修理以外の事として見つかる事が非常に多いです。