スタッフの山口です。
今回は訳ありのネックリセットです。1950年代のGibson J-45、昔のGibsonは色んな「訳あり」があるのです。
トップが凹み、ネックが元起きしているのが上の写真でも分かると思います。写真で分かるというのは相当角度が狂っていると言えます。
今回の訳ありポイント。
この時点で「あ、こりゃあ、、やってんな、、。」
という嫌な予感がしています。
ひとまずいつも通りの手順でネック外しに取りかかりましょう。
指板を温めて、、
トップから切り離します。
Gibsonは1時間以上の長期戦になることが多いです。
意外とあっさりとネックが外れましたが違和感満載です。トップ板が指板とダブテイルの間に食い込んでいます。これではジグで力をかけてもネックは外れないはずです。
こんな感じですが、途中で気づいて指板を剥がすか迷いました。ですが前回のリセット時に割れていたのか指板に沿ってトップが浮いてネックが素直に外れたのでそのまま続行するのが最善と判断しました。
ひとまず再度接着してあげましょう。
その間に本来のダブテイルジョイントにするためにネック側を修正します。指板に3mmほど足してありましたがグズグズでしたので一旦取り除きましょう。
トップが食い込んでいたところをマホガニーで埋めます。
これでOK。
取り除いた分3mm厚足します。
あとはボディ側のトップ板を溝に合わせて切れば本来のダブテイルジョイントに修正できます。
説明が下手なので分かりづらいですが、、写真を見てもらえればなんとなく分かりますかね汗
あとは黒く塗装します。
ネックリセットでは何度も組んでは外して微調整を繰り返します。
角度をつけた分、指板のハイフレットが下がることが判明したので下駄を履かせます。
ボディ側、ダブテイルジョイント部分のトップ板も切って取り除いてあります。
調整を繰り返して少しずついい感じに。
センターズレも問題なし。
この写真のように指板が極厚になっているGibsonは今回と同じ訳ありの仕込みの可能性大です。
今回フレットはすり合わせでOK。
最後にサドル溝修正。今回のネックリセットによってサドルの高さが復活しますのでそれにしては溝が浅すぎるためです。
いい感じになりました♪
以前、師匠の皆川も僕もJ-200でこのトップ板を挟み込んだジョイントに遭遇しています。ヒールとボディの帳尻が合っていますので生産時にGibsonが一時期だけ行っていたようです。
理由は分かりませんが、おそらくなんらかの理由で工程の変更を試み、ネックとボディを組んでからトップ板を貼り、最後に指板を貼り合わせたのだと思います。当時の職人さんたちの中の誰かが「あれ?これじゃあ修理の時にネック外せないしヤバくね?」みたいな一言があって即時元通りに戻したのではないかと想像できます。
こういうミステリーがGibsonには歴史に散りばめられていて、それがまたこのメーカーの面白いところでもあり魅力だったりします。
今回も最後までありがとうございました。