ネックリセット

ネックリセット リフレット / Martin HD-28


サドルをギリギリまで下げてなんとか、演奏面、サウンド面、我慢して使っていました。

ですが、ネックリセットして復活させます。


このような修理が出来る事を知らずに買い替えを考える人も少なくありませんが、Martinであれば修理する方が、全ての意味でお徳。


蒸気を使ってネックを外しますので、すき間からボディ内に水分が行かないようにタオルで塞いであります。


弦がピンの位置からサドルの頂点までの角度、弦とトップ板のクリアランスがサウンド面で重要なポイントの一つになります。


ネックジョイントの強度におて、ヒール部分はほとんど重要ではなく、重要なのは内部のダブテールジョイント。


ここに僅かでもすき間が出来てしまってる場合は、ダブテールジョイントの精度不足と見て良いでしょう。


今回はリフレットも。

 

ネックリセットの際、修理上リフレット(指板修正、フレット交換、ナット交換)の必用が無ければ、フレットはすり合わせで調整します。

ネックリセット + リフレットは、セットの料金ですので、フレット交換をご希望なら後からやるよりお徳です。

 


フレットのエッヂは1ヶ所ごと丁寧に仕上げます。


リフレットの際は基本、ナットは作り変えます。


象牙のナット等、残したい場合は底上げして調整して使います。


音に張りが戻り、弾き易く、復活。

 

ネックリセット / Martin D-18


 

ネックをリセットします。

前回とは打って変わって、全く通常通りの外し作業です。

ネックリセットも、今となっては何本やったか数える事も不可能になるほどやりましたが、そうは言っても大変な修理には変わりません。

心配性であがり症の私は、当然ながら今でも、すんごい緊張感の元、勇気を持って携わっているのです。

前回ちょっと触れた,十数年前のGuildは、まともに外す事が出来なかったですし、エクステンションが付いたJ-200 では普通に抜ける構造ではなかったり、どうがんばっても、外れない、外せない場合が何度かありましたが、そこでやめて戻すことは出来ないので、方法を変えて外す事を考えなくてはなりません。

「いい加減慣れたでしょ。」と言われれば、流石に修理屋家業ぅん十年、慣れたと言えばそうかもしれませんが、慣れてこれです。15フレットに穴を開けるときにやっと最近ドキドキしなくなったかもしれません。

人様の大事な物、本当はこんな事したくないのですが、なんで修理屋になったろうと思う時、ビビリだから丁度いいのかもしれないと思っています。

 

であれば、販売店や製作家になればよかったかと言えば、それはそれで苦労があるはずですから、隣の芝は青く見えるものなのでしょう。

お客様は神様では無いので、お互いが尊重しあうものだと思っていますが、ショップではお客を半神位の扱いしなければならない場合もあるでしょうし。

製作家だって、私が羨ましいと思うような人は一握りだと思いますし。

やはり落ち着くところに落ち着いているのだと思います。

 

 


いつも言ってます。

サドルは出過ぎず、がカッコよいです。

 


わざと出し目にというリクエストもありますが、こんな感じが、がかっこよいです。


指板やフレットに難があればリフレット(指板修正、ナット交換込み)します。


「サドルがいっぱい出てないと、何回も調整出来ないじゃない。」と言う人もいますが、1日終わったらちゃんと弦を緩めて管理すれば、そんなにコンディションが変わらず使い続けられます。


当方の常連さん方、私のギターも実証済みです。


お返しの際は、いつも同じ事を言います。

弦は、緩めましょう!

 

 

ネックリセット / Marin D-28


 

ネックの角度が狂ったら、外して角度を修正してリセットしなければなりません。

古いギターであれば過去に、物によっては複数回ネックをリセットしてあるものも少なくありません。

修理する際は、今後また同じ様な修理が必用になった場合は、再度外す事も考えた接着剤を使わなくてはなりませんが、極稀に ”外れちゃこまります!” と間違えた接着をしてあるものに当たる事があります。

アコースティックギターは、接着で組立ててありますが、ネックジョイントに関しては接着で強度を保っているのではなく、テンションが掛かってもヒールが起きない様に組み込む精度で保っています。

ジョイントが緩んで角度が狂う場合もありますが、大体はボディの歪みが原因で角度が狂いますので、”簡単に外れないけど、はずせる様に” 付けなくてはならないのです。

左のギターは、”かなり外し難いかもしれないけど、がんばれば外せると思う” 位の接着の仕方でした。

ダブテールの底と指板の接着面に付いている黒い接着剤は、エポキシ樹脂系の接着剤で接着力に頼らなければならない場合に使う接着材です。

 

この黒くて、カチンコチンの接着材は、Ovation GuitarのClassic のネックジョイントに使われていたものと全く同じ。

Ovation Classicのジョイントは、他のモデルとは違い、ボルトオンではない精度の悪いジョイントなので、これでガチガチに固めるしかなかったのだと思います。

スーパーシャローボディの場合は、ヒールが短い事もあり、これで固めてもジョイントがもたずヒールに隙間が開いてしまう物も少なくありませんでした。

 

 


ダブテールの側面は、タイトボンドか何かしらの木工ボンドで接着してあります。

この面にエポキシを塗られたらホントに大変になります。


通常この底面は接着剤等を入れたり、何もせず、隙間を空けておきます。

この隙間を利用して蒸気を送り込んで中を暖めます。


温まっても全く柔らかくならず、硬いままの接着剤です。

当方で使う、アラルダイトとも少し違う気がします。


この真っ黒、カチカチ、エポキシでガチガチに接着されたジョイントのGuildが過去にありましたが、その事はまた機会があれば書いてみたいと思います。


指板、フレットが標準範囲の状態であれば、すり合わせのみで仕上げます。


サドルは出過ぎず、がカッコよいです。

最後に弦を張るまで詳細は分かりませんので、どちらに転んでも良い調整が必要です。


板目がかっこよい、ハカランダ。

 

ネックリセット / Martin OOO-28


ネックの角度が狂って、弦高が高すぎますから、ネックをリセットします。

 


その際にエスプレッソマシーンの蒸気を使うのですが、アジャストロッドのMartinはこの溝から蒸気がボディ内に入ってきますので、タオルなどで塞がないと、中が濡れてしまいます。


タオルが詰まっています。

最近では蒸気を使わずに、直接熱を掛ける方法もあるようですが、きれいに早く抜けるのであれば、新しい方法も導入検討しますが・・・

誇らしげな動画も見てみましたが、現在のところは試す気にもならず。

 

きっと始めからその方法でやっていたら、後から見た蒸気を使う方法は、「うあ。蒸気を使ってる!」などと思うのでしょうね。

 


ショートサドルの方が、高さの許容範囲はあります。

が、それにしても出すぎはカッコ悪くなります。


このヒール部の接地面はほとんど重要ではありませんが、見た目は気になります。


重要なのは、ヒール内のジョイントの精度です。

 


 

いつもお返しする際に、1日終わりましたら、弦は緩める事をお奨めします。

緩める事が良いのか、張っておいた方が良いのか、少し緩めていたけど・・・等分からないと言う方がとても多いですが、緩めないとこのようにネックの角度が狂ったり、反ったり、ネックにしわ寄せが来なければ、ブリッジが剥がれたり、ブリッジがはがれなければ、トップが大きく歪んだり、どこかしらに不具合が出る可能性が高くなります。

弦は緩めて下さい。緩い分にはいくら緩くても大丈夫です。

不良率を出来るだけ下げたい、安いギターはすごく丈夫なギターもありますが、それは稀だったり、たまたまだったりします。

高いギターも平気なヤツもたまにあるみたいですが、それも稀なので、「張りっぱなしでよい説」の参考にしない方がよろしいかと存じます。

 

ネックリセット / Martin 000-28

ネックリセット!

ピックガード側、サウンドホールにチラッと見えていますが、タオルを詰めてあります。

外す際に使う蒸気が、隙間からボディ内に流れ込んできますので、このタイプの場合はこうしておかないと中が濡れてしまいます。

乾いたら、きれいにして調整して行きます。

新しいマーチンは、ダブテールジョイントでも何故か必ずボルトの受けが付いています。それは別に良いのですが、ボルトオンネックの場合でも余計な所まで接着しちゃうのはやめてほしいものです。

 

 

マーチンのボルトオンネックを最初に外した時は、何故外れないのかが分からず面食らって、外れた後「きっと間違えたんだな。」と思いましたが、現在ではマーチンのボルトオンネックは接着してある事が当方では分かっています。

ボルトオンネックの場合でも接着してしまうのは、ジョイント部の精度の自信の無さなのかなと思っています。

ボルトオンの場合ジョイントの密着精度は、然程関係ないのですがダブテールジョイントの場合は、ギブソン等と比べるとマーチンのジョイントはお世辞にも良いとは言えないので、この辺が影響しているのかと思います。

 

 


サドルは程よい高さで、出すぎはカッコ悪です。


先ほどの話の続きになりますが、重要なのはジョイント部分ですので、このヒール部はあまり重要ではありません。がしかし、やはりピタッと隙間無くくっ付いている方が印象は良いです。


と言って、このヒール部分を一所懸命接着してもあまり意味が無く、接着していない状態で、動かない様にしなければいけません。


それぞれメーカーで長所短所ありますが、それが直接の良し悪しではなく、その全てがそのメーカー(ブランド)の個性に繋がっているのだと思っています。

 

ネックリセット / Ovation 1868-1


オベイションギターの弦高はこのピックアップサドルの下に敷いてあるシムで調整しますが、抜くシムが無く、弦高が高いです。


ネックの角度を直して、サドルに高さを戻します。

オベイションギターの場合、ネックやブリッジ等の接着にエポキシ系の接着剤を使用しますので、塗装の密着が良ければ木地まで出す必用はありません。


エポキシは硬化しても質量がほとんど変わりませんので、凹みがある所にしっかり充填されるようたっぷり接着剤を使います。

両サイドに弦を張って角度とセンターを確認します。

 

エポキシ系の接着剤(特にアラルダイト)は接着剤としてはかなり強力で優秀な接着剤ですが、強すぎる故に修理の際、剥がし難い(場合によっては剥がせない)事と、このはみ出した余分な接着剤の拭き取りに非常に時間を要する事が難点。

このベタベタ接着剤を拭き取る際はパーツのきわに残らないように丁寧に何度も拭き取りますが、そこばっかり見ていると思わぬ所につけていたり、拭き残して硬化してしまうと簡単には取れないので、その点が扱い難い接着剤です。

特にパーツのきわに残ると、きれいな接着と言い難い見栄えになります。


丁度よい高さに。

出すぎはダメです。


エリートの場合はこのエポーレットと指板の辺りの拭き取りが大変です。


Ovation は30年位前から、代理店で修理していたものを入れて、一体どの位修理したのか。

 

私以外にもお三方、修理屋さんが居て、現在はそれぞれ個人でやっていますが、数ならば私が1番やっている思っていますよ。このブログを見てくれている人にアピールします。

皆さんも「私!わたし。」と言うと思いますが、数えられれば間違いなく私です。

この4人で1番なら、世界中で見てもOvation 触ってるNo.1と思います。何故なら当時、営業さん達の抱えているバックオーダーが山ほどあって、2~3ヶ月ごとに100本位の入荷があり、それを2~3日で検品して出荷する、それを何年か続けた訳ですから、修理品だって古いものから新しいものまでイヤっていうほどあるわけです。

自分が代理店で関わった頃のOvation はついつい懐かししくて、いろいろ思い出してしまいます。

 

ネックリセット / Martin 30’s

1930年代のMartinのネックリセットです。

過去の時代時代に何度と無く、ネックが外され修理されてきた様子が分かります。

この部分を剥がす際に、サクサクっと気持ちよく行ったので、これはきれいに剥がれたと思いましたが、・・・こんなでした。

剥がす際に、逆目に入って木が多少剝けることがあります。その場合、剝けた部分は元に貼り直してきれいに調整すればよいです。

破片が壊れてしまったら、きれいな木を使えば良いです。

そんな事を幾度となく繰り返して来たようですが、限界過ぎちゃっています。

 

 

見えない所の事は気にしない人達が関わってきたのだと思います。

私も多少でしたら気にしませんが、最後から2~3人の修理屋さんは、続けてあれでよくフタ出来たな。と思います。

サクサクっと剥がれて、出てくる接着面はこの感じが出てくると思っていました。

フォークギターより歴史が永いクラシックギターのギターフリークの会話などでは、ギターの寿命のような話を聞く事がありましたが、そんなものはありません。

古くたって大事に手を入れてやればいくらでも使えます。

 

私が二十歳の頃、高~い古~いクラシックギターを沢山在庫していたショップでバイトしていた頃、現在の私位のおじさん達(店長含め)の会話を思い出してみると、古過ぎるギターはパワーが無くなっちゃっている。・・・人で言えば年寄りと言う事なのでしょう、そういう音も個人的には大好きですが。

バイオリンなどでは2~3百年前の楽器も現役で使われています。100年位のものでは、モダンと言われてしまいます。

アコースティックの弦楽器は、主に接着で出来ているので、古くなってカサカサ、パサパサになったニカワを取り除き、組み直す事によって振動効率を戻す。

ギターの場合、ボディを組み直すにはボディ材が薄く、サイズが大きいので技術的には難しく一般的ではありませんが、決して不可能な事ではありません。

 

 

薄く削られていたブリッジは作り直し。

なるべく小さく作りたいのですが、ここも修理を繰り返していますので、下地を隠すにはこのサイズになってします。

ネック角度が戻ると、指板エンドが下がってしまうので、厚みをつけて調整します。

 


ヘッドの前にはまだマークは無く。


控えめに裏にあった頃、マークが前に着く過渡期のモデルようです。


こんなギターを所有できたら幸せでしょうね。

 

リフレット(フレット交換)/ Ovation 1687(Adamas)

アダマスのリフレット(フレット交換)です。

フレットを抜いたら、指板を調整しますが、その際は指板エンドが弱い為、動きますのでその点と、ネックの角度に気をつけます。

指板修正の際、ふわふわ動く場合は動かないように、角度が悪ければ正しく削れる様に予め、ある程度角度を直します。

エリート等では、ネックを抜く事無くリフレットしますが、アダマスに関しては、フェンダーギターのようにネックを外した状態でフレットを打って行きます。

アダマスの指板エンド部は、フローティングしている事とトップがとても薄い上に、力木も割りとハガレやすい部分ですので、ネックをボディにセットしてある状態でフレットを画像のように押し込んだり、ハンマーで打ち込んだりはしません。

指板エンド部のフレットの打ち方は何通りかの方法がありますが、この場合はブロックを装着して別の場所で打っています。

こちらも毎度の画像ですが、1番古いアダマス以外はこの部分が空洞です。

ボディがつぶれ難くする為に下の画像のように隙間をエポキシパテで充填します。


 


 


 


 

80年代後期から中尾貿易で10年以上、Ovation に関わらせて頂きました、こちらは91年モデルなのですが、当時私が記した保証書が入っていたのはビックリです。

ネックの角度が狂う / ネックリセット

ネックの角度が狂ってしまうと、一旦外して修理しなければならなくなります(アイロン等での対処方法もありますが、お奨めはしておりません)ので使い終わったら、特にアコースティックの弦楽器は弦を緩めて管理しましょう。

個人製作家や大手メーカー等でも自分とこのギターは弦を緩めてはいけない。というような理屈を持っている方々もありますが、個人的には、薄い木の箱ボディのギターの弦を張りっぱなしにしたら、ろくな事がないと思っています。

一見ネック反りに見える角度の狂いは、アジャストロッドでは全く調整出来ませんし、ネック反りに関してもアジャストロッドは魔法の装置ではありませんので、何度でも使える物では無く、いずれ(程度によってはすぐ)限界が来ます。

弦を張りますと、ネックとトップだけでなくブリッジにも同じ様に負担が掛かります、ネックに不具合が出なければ、ブリッジが剥がれたり、ブリッジが剥がれなければ、トップが歪んだり、ネックに不具合が生じます。

今までも、何度か触れてきた「弦は、緩める、緩めない問題」ですが、今後も機会があれば書いていこうと思います。

ネックジョイントにおいて、このヒール部分はあまり重要ではないのですが、きれいに接地していないと見栄えが良くありませんが、

あまりこだわり過ぎると、削りすぎて角度がつき過ぎたり、センターがずれてしまったりしますので、注意が必要です。


サドルは出すぎず、低過ぎず。理想の弦高。


センターは正確に。


難しいことが多いです。

 

ネックリセット / Martin D-41 70s’


 

こちらは、70年代の Martin  D‐41 のネックリセットです。

弦は緩めたつもりでも、ある程度の張力が掛かった状態であれば放置された時間が長い場合、チューニング時同様、ボディが歪み、ネック角度が狂います。

サドルでの調整が出来なくなれば、ネックを一旦抜いて、リセットするしかありません。

ヒールを削り、角度を修正しますが、実際のネックのジョイントに関しての強度にはヒールその物部分は重要ではありませんが、(強度で重要なのは内部のダブテールジョイント部の精度)接地面の密着具合はきれいに仕上げたいところです。

サドルに関しては、頻繁に触れていますが、出すぎず、低過ぎずにならないようにネック角度を修正まします。

その際、ネックとボディのセンターがずれないように修正していく事が重要です。

指板、フレットの状態いずれかが悪い場合は、リフレット(指板修正、フレット交換、他)になります。

基本的には、標準的な理想の弦高 1弦・・・12F・・・1.8mm位 6弦・・・12F・・・2.4mm位 に調整します。