フレット
フレット交換(リフレット)/ Martin OOO-42
車や機械は点検整備をしなければ、故障して危険があったり、周辺に迷惑をかけてしまいかねないので、それはプロが交換を勧めれば交換した方が良いのですが、楽器の場合は全く自由です。
楽器屋に「これは、~…しなきゃダメですよ~。」等と言われたという話をよく聞きますが、持ち主が問題無ければ「~しなきゃダメ」等と言う事は絶対にありません。
この辺りは楽器に対するの考え方の違いですが、私の場合は「無理に修理しなくても…」と言うスタンスです。
修理屋なのに。
力木は剥がれていない方が私は音が良く感じますが、力木が剥がれていた方がボディ全体が響いて良く感じる、と言う人もいます。
トップ(表板、サウンドボード)が効率良く振動するにはサイドバックがしっかりしている事が条件ですが、バックの力木が剥がれていた方が弾いていて気持ちよく感じる場合もあるようです。
楽器の場合は、通り一遍等に「こう。」と決める事は、なかなか難しいと思っています。
フレット交換(リフレット) / Ovation 6768
フレット交換 / Takamine DMP370NC N
クラシックギターのリフレット(フレット交換)です。
クラシックギターのリフレットは珍しいのですが、先日もやったばかりです。
「同じ修理が続く」あるあるです。
こちらのギターは、弦高が標準的ではあるのですが、弦高を低くする為に指板の歪みを無くしてネック(指板、フレット)の精度を上げる目的でリフレットします。
リフレットの際に気を付けなくてはならないのは、ネックの角度が十分であるか、十分でない場合もリフレットが可能か、どうやって可能にするかを考えて作業に入らなければやる意味の無いリフレットになってしまいます。
リフレットの際は、指板の調整がある事や第1フレットが交換前より高さが増す事が多く、そのままでは弦高が僅かですが上がりますので、弦高を下げられる余裕が無くてはなりません。
フレット交換 / Masaru Khono Special
クラシックギターのリフレット(指板修正、フレット交換、ナット交換、他調整)です。
よそでもきっとそうだと思いますが、クラシックのリフレットは珍しいです。
エレキやフォークギターの鉄弦は固く、特に高音弦側は小さなポイントで当たり続けて深く削れるので、いずれ交換が必要になります。
クラシックギターでも低音側の弦は金属が使われていますので、弾き手によってはフレットを交換する程減ってしまう事があります。
若しくはフレット交換が目的ではなく、指板修正が目的の場合があります。
今回は純粋にフレット交換ですが、その場合も新しいフレットを打つ前に指板調整をします。
※指板は調整上、フレットの並ぶ位置が真っすぐにつながる事と、指板の削れ等(押弦する部分)は無視した状態で平らに出来ていれば良いです。
エレキやフォークでは、指が当たる位置の指板が凹んでいるものやスキャロップした指板やキズ修正か何かでそこだけ凹んでいる指板を見ますが、修正する際は、こういった部分は無視します。
削り過ぎない事が鉄則です。
大昔、黒澤楽器のお茶の水駅前店でアルバイトしていた時代がありました。
昔の駅前店は、現在と違いアコースティックの店で、当時の黒澤の1番良いオールドを置いた店でした。(新大久保店になる前)
店に入って手前がフォークギター(+エレキ)そして店の奥側半分弱がクラシックギターのスペース、そこにはお金持ちのお客様や当時の常務や店長(山口さん)がいつも当時の私には難しい話をして盛り上がっておりました。
ただ、聞こえてくる声は、常務のでかい声ばかりですが、それでも色々勉強になりました。
そして製作家の方なんかも時折いらしていたのではないかと思いますが、澄雄先生(黒澤澄雄)以外知りませんでしたから、河野さんなどもいらしていたのかなと想像しますとなんともったいないことをしたと今更思ってしまいます。
一度、製作家の方とちょっとだけ周りに誰もいない時、話をして頂いたことがありましたが、誰だったんだろう。
当時は修理屋の今井さんが神様でしたから、製作家の方にはあんまり興味が無かった…。
フレット交換(リフレット)/ Gibson Dove
フレット交換(リフレット) / Gibson ES-355
新しいフレットが打ち終わって、周りをかたづけて、余ったフレットを切り取る前の画像です。
新しいフレットを打つ前にほとんどの場合、フィンガーボードは調整(修正)されます。
フレットを打つにも、フィンガーボードを修正するにも他の作業にも、いろいろな道具があり昔より便利になりましたが、道具によっては頼りすぎると返って上手く行かなかったり、失敗してしまうことになります。
専門工具は、基本的に作業を楽にきれいに、誰がやっても上手く行くがテーマですから動画などでは当然、早くて上手く(注意点等説明しながら)作業を見せてくれてますので、私が若い頃でしたら力加減も分からずにいろいろ失敗したんだろうと想像してしまいます。
始めたばかりの30年近く前は、現在ほど便利工具も豊富では無かったので、私に取っては返って良かったのかと思ったりします。
そして現在までずっと継続で新しい道具を見ては「これ使えそう!」や「良さそうだけど、いちいち邪魔くさいな~。」等と思ったり、「これ使えそう!」買った後→「これホントに使ってる人おるんかな。」と、なったりましす。(昔は感動する工具もありましたが、もうしばらく無いですな。)
便利工具があっても、間違えて作業してはいけないのです。
アジャストロッドの状態は、ネックの角度は、指板やバインディングの状態は、等に合わせた塩梅の手加減があり、もしくは出来るか否かの判断も当然必要。
やっちゃった後で、「弦高が後0.1~0.2mm下がればベストなんだけど・・・」「後ほんのちょっとロッドを締めたいんだけど・・・」等満足出来ない事や、場合によっては「弾きやすくねーじゃねーか。」ともなりかねません。
ネック反り修理 , リフレット / Gibson F-2
今回はマンドリンの修理です。
こちらは以前ネック反り修理で、アイロン修正のリクエストで一旦は反りも直り、弦高も下がったのですが、それから数ヶ月、やはり戻ってしまいました。
当方では基本的にどのネック修理にもアイロンはお勧めしていませんが、リクエストの場合はアイロンいたします。
アイロンでの修正は物によっては、結果が良い場合もありますが修理方法としては簡易的にやる場合の方法ですので、当然結果が良くない場合も多くあります。
このひび割れを直さなければなりませんが、フレットを抜く前にヒビを接着してしまうと、フレットが抜き辛くなって、抜く際に新たに割れが出来ると思い、フレットを先に抜いたのですが、割れ部分がパズルのように剥がれて取れてしまいます。
それらを無くさないようにして、地道に全ての割れに接着剤を流します。
リフレットの際には注意する事がいくつかありますが、フレットを打ち込む溝と新しいフレットの足や足に付いているスタッドが溝と合っていなければ(合わせられ無ければ)良いリフレットは出来ません。
溝は出来るだけ広げたくありませんので、きつい場合はスタッドを潰して合わせます。
溝が広過ぎの場合や、きつく打つ場合は、専用工具でフレットの足を曲げて幅を稼ぎます。
マンドリンのリフレットは大昔に一度だけ経験があり、これが2度目。
その時はギターと同じ様にやってみて、なんでこんなに下手くそなのか、仕上げて見て大分落ち込みましたが、何で下手くそか分かりましたので次こそは、と思ってから何年経ったかもう分かりません。
このような細ーいフレットは、一手間、二手間増やさなければ、きれいなリフレットは出来ないのです。
何でも経験しておくものだと常々思います。
フレット部分交換 / 古い国産ギター
リフレットは、基本的には全交換ですが、リクエストにより部分交換もいたします。
こちらのオーナーの場合、ハイポジションでの演奏はあまりしないとの事、でありましたが、7フレット、8フレットををまたいで弾く時は、さすがに違和感はある様でした。
部分交換では、全交換より安くは上がりますが、指板調整が無くフレットも5~7本程度の交換ですので、感覚的に割高になります。
演奏上、違和感は出来るだけ感じないよう古いフレットに雰囲気を合わせますが、新しいフレットをこれだけ低い古いフレットに合わせて削ってしまう訳にはいきません。
ナットは新しい第1フレットに合わせて作り直しますので、ハイポジションでの弦高はローポジションでのバランスより高く感じます。
このような理由から、リフレット(指板調整、フレット交換、ナット交換、他調整)は、基本的に全交換になります。
勿論、やってみてあまり違和感を感じなく出来る事もあります。
元のフレットが高い低い、太い細い、ありますが、低いフレットの場合の部分交換は、こちらの感じになりやすいです。
リフレットの際の基本作業以外のリクエストで他には、「指板面を現状維持でフレット交換したい。」「ナットを交換しないで元の物を使いたい。」等、出来る場合、出来ない場合ありますが、ご要望の場合は一度ご相談下さい。
リフレット(フレット交換)→ 指板調整、フレット交換、ナット交換、他調整
フレットが乗る部分が点と点で繋がったときに、真っ直ぐになれば良いので、指板面全体やバインディングをラインで見てしまうと削り過ぎになります。
重要なのは、指板全体の面やバインディングの直線では無く、点と点。
但し、各々のギターの指板面(フレット)のアール、クラシックギターであれば(フレットが)フラットになるよう、指板面にも気を配る必要はあります。
点と点が一直線に繋がった時に、バインディングのラインが順ぞりに見えても、指板が掘れている状態でもそれは問題ありませんし、それ以上削ってはいけません。
指板を削る際に気を付けなくてはならないポイントはまだあります。アジャストロッドの状態によってもその都度削るポイントを考えなくてはなりません。
ひと言に指板を調整すると言うだけでも、通り一辺倒にきれいに調整すれば良いと言うわけでは無いので、とても難しい作業です。