修理実績

ボディ割れ / Guild F-50R


ギターは何かしらのアクシデントがあった際は、どこかしらにダメージを残します。


ぶつけた直接の部分が割れてしまったり、倒れてネックが折れてしまったり、このギターは何かしらの作用でサイドが割れてしまっています。


このような場合、ヒールも一緒に割れてしまう場合がありますが、ヒールは割れておらず、ちょっとだけラッキー。


ネックヒール部からボディのくびれの部分の方へ大きく割れています。


反対側もショルダー部分を越えて、大きく割れています。


ネックブロックも見事に割れています。

修理上ネックを外しますが、ネック角度も直せて好都合。


割れている部分は全て修理して、ネックの角度を直してセットします。

(現状、塗装も終盤の状態)


塗装の下地は、ネックをセットする前に済ませておいて、ネックをつけた状態で塗装します。


塗装を吹いた後は、硬化が進んで塗装が引いて行きますので、1段階毎に1週間養生して次へ進みます。

今後使っていく過程で全体に雰囲気が合って来るようなイメージで仕上げます。

艶が出過ぎないよう、仕上げる場合もあります。


ネック角度も適正になり。


指板も直して、フレットも新しく。


とても弾き易く、申し分の無い状態です。

老舗メーカーの定番モデルでは、ラッカー塗装が施されている場合が多いでのですが、これらのモデルに作業場施すマスキングテープは1日の塗装工程が終わった時点で、出来るだけ剥がして、再度、翌作業日にマスキングします。

全部が全部ではありませんが、ものによっては数十分~半日マスキングテープ貼ってるだけで、その部分が変質してしまう事があります。

ウレタン塗装は、完全に硬化しますが、ラッカーの場合は極端に言いますと、何年経っても固まらない塗装と言う感じです。

 

 

バインディング剥がれ / Guild


 

バインディング剥がれと聞いて先ずマーチン以外想像しませんが、そうは言っても同じような素材で、同じ様な作り方をしている訳ですから、他のメーカーでも同じようなトラブルは生じます。

大体は、セルが縮んで引っ張られるウエスト部分周辺がはがれていることが多いのですが、こちらは派手にはがれています。

そのままはがれている部分だけ貼れる場合もありますが、縮みが大きい場合は端まで一旦はがして、元の部分から詰めて貼り直します。その場合は白黒のトリムもバインディングと分けないと辻褄が合わなくなります。こちらのギターは言わずもがなです。

詰めて長さが足りなくなった部分は、新しい材料を足します。

 

 

古い接着材は出来るだけ取り除いてから貼ります。


 


 


 

無くなってしまってる部分や、長さが足りなくなった部分は新しく足します。


 


 


 

 


飛び出している黒い部分が足されたバインディング。

少しであれば、押さえつけて貼る事も可能な場合はあります。

 


但し、これだけの長さが足りないのであればいくら押さえつけても貼りつけることは出来ません。

 

 

   

トリムも同じ様に縮んでいますが、新しい材料を足す部分はバインディングの位置とは異なる場合が多いです。

はがれたら貼り直せば良いのですが、大概は剥がれた原因を修正して貼り直さなければ意味の無い修理になってしまいます。

 

 

ボディ割れ修理(塗装修正なし) / Takamine TDP400sp-K3

Takamineのプリアンプサイドが割れています。

このプリアンプの枠を外さなければなりませんが各メーカー、取り付けに思考を凝らしていますので、その度悩みます。

 

割れる時の衝撃で上下互い違いになってしまっています。

無理に戻せば、余計に割れてしまいますので、ちょっと削ったりしながら慎重に戻します。

 


少しずつトライして何とか、「パチッ」っと戻りました。


出ている部分を押せるようにカーブに合った当て木を作って接着。


後は磨いて、プリアンプを戻して完了。

塗装修正をする場合は、白い部分や割れていた部分を目立たないようにしますが、完璧には修正出来ないので、気にしなければこれで十分だと思います。


すごいプリアンプです。

 

 

ネックリセット / Martin D-18V


ネックリセットも他の修理も毎回同じ事をやっていますが、やっている物に対しては毎回そのものをどうするか考えます。


今までよく言っていた事のひとつに「サドルの出過ぎはカッコ悪い」とよく言っていました。

これまで見ていただいた方は、これを見て「おっ、ちょっと高けーじゃねーか。」と思うとおもいます。

何れにしてもサドルの高さは、どちらに転んでも許容範囲に納まれば良いのでこれはこれで良いのですが、今回の少し高めサドルにも多少意味があります。


これは私の好みですので、高いサドルが好きな方は、「高くして。」とリクエスト頂ければその分ネックの角度をきつく仕上げます。

但し、以前サドルの高さ、弦高の指定ありで修理依頼があり、引き受けた事がありますが、その時は奇跡的に決まりましたが、そのような何mm指定のリクエストは二度とやりません。

頭が燃えそうでしたので、倍の見積もり出せばよかったと思っています。 

(補足・・・チューニング後、弦高の変化は個体差やセッティングの状態で差が出るので、一概に計算通りには行かないし、リフレットありなので計算は不可能。)

この見えているサドルの部分が全ての高さではなく、下に溝が掘り込んであるので実際にはもっと深く入っています。

ですので以前見た、新品状態の時に笑っちゃう位サドルが出ていても強度は確保出来ているのだと思います。

だからと言ってあんなに出したら、カッチョ悪いのでリクエストが無ければやりませんが、いつもよりちょっと高めなのは、近い将来リフレットした時、今より少しサドルを削らなければならないからです。

(当方のネックリセットでは、リフレットはやる場合と必要なければやらない場合があり、必ずセットになるものではありません。)

リフレットする際、指板は調整(修正)をして、新しいフレットを打ちますが、物によって弦高が上がったり下がったり、変わらなかったりと区々です。

こちらの固体は、そういった予想が立つ事とブリッジの構造上高くしても良い強度があります。

 

 

ネック折れ修理(塗装修正なし)+ペグみがき/ Gibson EB-3


不意に倒してしまうことは仕方のない事とはいえ、倒してしまえば、重量のあるエレキの場合は折れてしまう確率は高いです。

 


接着剤と接着方法が適切であれば補強は要りません。

スカーフジョイントされたネックにわざわざ補強していない事と同じです。

(スカーフジョイントと比較し、従来の接ぐ位置や方向とは違いますが、Taylor的と言えばこっち)


いつも出来るだけきれいにしてお返ししますが、今回はこのペグも磨きます。


別のページで紹介していますが、スチールウールで磨きます。

特にゴールドパーツはコンパウンド等で磨いてはいけません。

金メッキがはがれてしまいます。


塗装修正なしですから、塗膜が剥げてもそのままですが、さすがギブソン、塗膜が厚いです。


塗装修正しなくて、みっともなくなってしまわないかと想像しがちですが、仮にこれの塗装が剥げてもそれなりにカッコよくみえるものです。


古い楽器はキズがいくら有ろうと、塗装が剥げていようと、カッコよいですが、不潔っぽくならないように。


ペグ等はいくら錆びていてもいいと思いますが、指板の手垢やボディの内外の汚れ等は、正直触りたくないです。

平気そうにやっているでしょ、そんなこと無いんですよ。

 

私がバイクに乗っていた頃は、いつも輝いているように気を使いましたが、ラットスタイル等と言ってわざときたなくするカスタム?があるのですが、あれは磨くことが面倒な人の言い訳なんです。

バイクの場合は、通常触っている部分がスロットルとレバーくらいなのでまだ良いですが、楽器の場合は持ち運びと演奏で全体を触る事が多いですから、どうぞ皆様清潔に。

 


 


 


 

 

ネックリセット+リフレット / Martin O-15


私的にも大好きなマーチンのシングルオー、古ければ古いほど好きなギターのネックリセットです。


そしてリフレットもします。(指板調整、ナット交換、込み)


ネックリセットの際にリフレット(指板修正等)は必要なければその分安く仕上がりますが、交換時期が近そうであればこちらから提案させていただきます。


セットでやってしまえばリフレットの料金は割安で出来ます。

 


新しいフレットはやはり良いです。

弾き易くなり、音も良くなって。

「音が良い」とはいろいろな意味がありますが、この場合は「音像がきれい」と言うような意味合いが当たると思います。


但しフレットも好みが区々ですので、一概に新しいものが良いとは限りません。

強く抑える癖が有る人やプレースタイルによっては、フレットは低い方が好い人も勿論います。


ナットはエボニーにて作製交換


いつも白いナットの画像で形が分かり難いですが、マーチンナットは大体この感じの形です。


ここを削って角度を決めるヒール部分。

ボディにネックを付けた状態でサンドペーパーを挟んで引き抜く事でボディに沿った形で削れます。

1弦側、6弦側、交互に少しずつ削っていきます。


但し、私の技術が足りないのか、人の体の構造上ある程度仕方ないのか、左右同じ様に削っているつもりでも多少差が出てきます。

差に気付かずに削っていると、当然センターがずれます。

 


センターがずれたら直す為に削りますが、削ると角度が付き過ぎてしまいます、そうなるとこのサドルがバカみたいに高くなってしまいます。

特にオールドギターのロングサドルは現行品みたいに高くしてはいけません。

地方のお客様は、お返しした後よく、メール等で満足の旨、頂きとても嬉しく思います。
こちらのお客様は、気に入って頂いて、「もう1本送ったから!」と嬉しい限りです。
 
勿論メール等、何も無いのが良い知らせ、と思っておりますが、以前電池バックのマジックテープがはがれていたと注意いただいた事がありました、そういった事もご一報頂ければ幸いです。

 

折角良い仕事なのに「残念です。」と書いてありまして、私もこの「残念」の文字にすごく落ち込みました。

電池バックがボディの中で力木に当たって、きっと力木がはがれているかも、とも書いてありましたがそこは心配せずとも、そんな思いにさせちゃったんだと思うと申し訳ないです。

 

 

ネックリセット+リフレット / Gibson J-45 70’s


先にこっちをやってしまいます。

ブリッヂプレートの弦通しの穴を修正します。

ひとつ飛ばしに2回分けて作業します。

丸くくり抜いて、同じ形の木をはめ込み、穴を開け直します。


これで弦のボールエンドが穴にめり込まなくなりました。


(現在の所、当方では伝統的な方法でネックの取り外しをしておりますが、近日中に蒸気を使わない新ツール導入予定)

ネックを外す際は蒸気を使かっていますので、噴出した熱湯で塗装が焼けてしまわないように、特にトップは絶対に焼かないように速やかにネックを抜きます。

 

 

焼けてしまう事はそれ程多くはありませんが、とても古い物の塗装では蒸気で一瞬で白くなってしまう物もあり、そうなると焼けてしまうのも早いです。

ある程度仕方の無い部分もありますが、蒸気は出来るだけ「シューシュー」やらず最小限に止めます。

シューシューしている時は、ボディが濡れたままにならないよう拭き取り続けて、塗装が焼けないよう速やかにネックを抜きます。

塗面が熱を持たないように、口で「ふっー!」したりもします。

それでも焼けてしまう事はありますので、Martin 以外では塗装の修正をする事も考慮して作業します。

(Martinの場合、塗装が焼けた例はありません。)

 

 


フレットはペッタンコ、指板も少々ネジレがありますので、リフレットします。


指板修正して、フレット交換。


14フレット以降の指板が下がらないように厚みをつけます。


第1フレットに合わせたナットを作ります。

ブリッヂは削られて薄くなっていますが、70年代ギブソンのブリッヂは元々薄ッペタイのでこのまま。

ネックの修理後によく皆さん、音が良くなった、と言います。

弾き易くなったことで、余計な力が掛からなくなり演奏に余裕が出来て、音に良い影響が出ている証拠です。

 

ブリッヂ直し+ネックリセット+リフレット / Ovation 1881-5

「ん?」と言うような雰囲気。

弦高を下げたくて、ピックアップを1番下まで下げても足りず、サドルの山を低くしたくてピックアップを自作、そしたら弦がブリッヂに当たっちゃうから、削っちゃった。

と言う事です。

このような場合は大体、ピックアップサドルの山を削られちゃっている事が多いですが、この方は純正パーツ温存でピックアップ自作。

 

流石にOvationのP.Uはコピーするのは難しいですから、ご自身で考えたピックアップ。デザインも似せて低くしてあります。

P.Uとしての精度はこの際、別として自分の為の自作と言うのは、本当に楽しいです。

上手く行けば良いし、上手くいかなくたっていいんです。

たのしいから。

考えて、作っている時が楽しいの。

 

 

このブリッヂの削られている部分を元に戻して、元のピックアップを使います。

当然ネックの角度が酷く狂っているので、リセットして、リフレットします。

 


アダマスのリフレットは、指板エンドがフローティングしている上に、トップが非常に薄い為、通常通りにフレットは打てませんので、フェンダーのネックの様にリフレットしてから、ネックリセット出来ればその方がやりやすいです。


ですが、指板エンドを接着(ネックリセット)してある状態で指板修正したい場合もあり、ネックの状態を見て判断します。

フローティングしていますが、このモデルは接着剤が噛んでいますので、指板修正の際もトップが沈み込むので気をつけ(計算し)ます、勿論フレットを打つ際も。

(接着剤が入っていなければ、指板がふわふわします。)


新しいフレットに合わせたナットを作ります。

現在のOvation は分かりませんが、どのネックにも有り物のナットを装着しているので、弦間が狭かったり、広かったり区々です。

どのメーカーのギターもそうですが、元に付いているナットに準ずる事はせず、比較して元より良いナットを目指します。

 


凸凹に削られた部分を平らにして、同じ材料(ウォルナット)を足して、整形。


修理用のダミーP.Uサドルにて、弦高調整用のシムを足して調整。


色合いが多少違いますが、時間が経って、酸化してくれば色も馴染んでくると思います。


この後、ダミーP.Uサドルを外して、

完了。

 

Ovationのボディ(ジョイント部)について(プリアンプ四角時代)


前回の続きでオベイションのジョイント部をもう少し見て頂きます。

前回から見て頂くとわかり易いです。


このボディのジョイント部の空洞のある無し。

カスタムレジェンド2本とアダマスⅡを比較します。


アダマスはスカスカなので、修理の際は補充しないとね!と言う話。

最後まで写真を撮りきらないで、ブログに出来ない画像が救われます。


勿論、グリスアップは出来る時にしておきます。


こちらは別のカスタムレジェンド


隙間はありません。

ジョイントボルトの為の穴は2つ、穴が3つある意味は分かりません。


アジャストナットは1番上の大きい穴。

はじめてみる方はどこに隙間が出来るの?と思って下さい。次、分かります。


このアジャストナットが1番上の大きい穴に入ります。

グリスアップ。

 

 


スーパーシャローなので、ボディが薄いです、分りますでしょうか。

ジョイントボルトは1本。


隙間を補充すると→

になります。


ボディが潰れれば、ネックの角度は狂い、トップは剥がれ、力木も剥がれます。

 


ボルト穴上部が木材で補強してあります。

過去にネックは外された形跡は無かったので、工場仕事だと思われます。


 

こちらのAdamasⅡは、続きがあります。

次回のブログでアップいたします。

ネック修理はメインではなく、ブリッジの修理ブログになります。

 

いつもブログを見て頂いて、本当に感謝いたします。

書いている本人曰く時々、「これは勉強になるなー。」などと思いつつ書いておりますが、思いの外、皆さんに”いつも勉強になる。”と言って頂けてブログをアップする気力が湧きます。

ブログではいつも同じ事を繰り返していますので、「また、同じだ。」と思われるかと思いますが、なるべく初めて見る方に大事な事が伝わる様に意識しています。

ですが、心の隅で「もう!解るよね!!」と言う自分もどこかにいて、はじめての方には不親切な文章になっている所も多いと思います。

このあたりを踏まえて頂いて、どうか広い心でいつも見て頂ければ、大変幸いでございます。

 

 

ネックリセット / Ovation 1597


こちらのモデルは、スムーストップのアダマスでトップがつるっとしています。

ネックの角度が狂って、指板も歪んでいます。


接着面は双方きれいにして、必要があれば調整。

 


どのギターもそうですが、グリスアップはやれるときにやっておきます。

Gibson等は普段でもやりやすいのですが、奥まった所にあるものは普段はやり難いのです。

過去の記事でAdamasのこの部分は隙間が出来ているので、ネックをセットする前に隙間をある程度(全部埋めるのは不可能)埋めておくと説明しています。

このモデルはAdamasですが、隙間はありません。

他のOvationと同じ作りです。

 

この部分に隙間があるのは、AdamasⅡが出来て、Adamasが Super AdamasになってからこのSuperとⅡの2種類のアダマスに隙間があると思っていたのですが、眉間に力入れて思い出してみると、古いAdamasⅡには隙間が無かった気がしますので、隙間はきっとプリアンプがOP24になってからのSuperとⅡ。

おそらく経験上では、プリアンプが四角い時代のボディはそうなのでは無いかと思っています。

過去記事

過去記事

但しこの部分の隙間を直しても強度が飛躍して増すわけではありませんので、弦は緩めて管理しましょう。

隙間が無い、昔アダマスでも張りっぱのやつは、やはりベッコし、ジョイント部ボディが潰れている物もよく見ます。


指板の歪みの原因はこの剥がれ、具体的で分かり易い歪み方。


ブリッヂ等もそうですが、剥がれている部分は、反って歪んでいます。

 


暖めたりしながら、なんとか戻しましたが、より精度を求めるには、フレットを抜いて指板修正の必要があります。


ある程度良くなれば、後はフレットすり合わせで調整すれば良い場合も、指板真っ直ぐ、フレット状態も良くしたい場合、どちらもオーナー次第。