修理実績

ネックリセット / Ovation 1868-1


オベイションギターの弦高はこのピックアップサドルの下に敷いてあるシムで調整しますが、抜くシムが無く、弦高が高いです。


ネックの角度を直して、サドルに高さを戻します。

オベイションギターの場合、ネックやブリッジ等の接着にエポキシ系の接着剤を使用しますので、塗装の密着が良ければ木地まで出す必用はありません。


エポキシは硬化しても質量がほとんど変わりませんので、凹みがある所にしっかり充填されるようたっぷり接着剤を使います。

両サイドに弦を張って角度とセンターを確認します。

 

エポキシ系の接着剤(特にアラルダイト)は接着剤としてはかなり強力で優秀な接着剤ですが、強すぎる故に修理の際、剥がし難い(場合によっては剥がせない)事と、このはみ出した余分な接着剤の拭き取りに非常に時間を要する事が難点。

このベタベタ接着剤を拭き取る際はパーツのきわに残らないように丁寧に何度も拭き取りますが、そこばっかり見ていると思わぬ所につけていたり、拭き残して硬化してしまうと簡単には取れないので、その点が扱い難い接着剤です。

特にパーツのきわに残ると、きれいな接着と言い難い見栄えになります。


丁度よい高さに。

出すぎはダメです。


エリートの場合はこのエポーレットと指板の辺りの拭き取りが大変です。


Ovation は30年位前から、代理店で修理していたものを入れて、一体どの位修理したのか。

 

私以外にもお三方、修理屋さんが居て、現在はそれぞれ個人でやっていますが、数ならば私が1番やっている思っていますよ。このブログを見てくれている人にアピールします。

皆さんも「私!わたし。」と言うと思いますが、数えられれば間違いなく私です。

この4人で1番なら、世界中で見てもOvation 触ってるNo.1と思います。何故なら当時、営業さん達の抱えているバックオーダーが山ほどあって、2~3ヶ月ごとに100本位の入荷があり、それを2~3日で検品して出荷する、それを何年か続けた訳ですから、修理品だって古いものから新しいものまでイヤっていうほどあるわけです。

自分が代理店で関わった頃のOvation はついつい懐かししくて、いろいろ思い出してしまいます。

 

ネックリセット / Martin 30’s

1930年代のMartinのネックリセットです。

過去の時代時代に何度と無く、ネックが外され修理されてきた様子が分かります。

この部分を剥がす際に、サクサクっと気持ちよく行ったので、これはきれいに剥がれたと思いましたが、・・・こんなでした。

剥がす際に、逆目に入って木が多少剝けることがあります。その場合、剝けた部分は元に貼り直してきれいに調整すればよいです。

破片が壊れてしまったら、きれいな木を使えば良いです。

そんな事を幾度となく繰り返して来たようですが、限界過ぎちゃっています。

 

 

見えない所の事は気にしない人達が関わってきたのだと思います。

私も多少でしたら気にしませんが、最後から2~3人の修理屋さんは、続けてあれでよくフタ出来たな。と思います。

サクサクっと剥がれて、出てくる接着面はこの感じが出てくると思っていました。

フォークギターより歴史が永いクラシックギターのギターフリークの会話などでは、ギターの寿命のような話を聞く事がありましたが、そんなものはありません。

古くたって大事に手を入れてやればいくらでも使えます。

 

私が二十歳の頃、高~い古~いクラシックギターを沢山在庫していたショップでバイトしていた頃、現在の私位のおじさん達(店長含め)の会話を思い出してみると、古過ぎるギターはパワーが無くなっちゃっている。・・・人で言えば年寄りと言う事なのでしょう、そういう音も個人的には大好きですが。

バイオリンなどでは2~3百年前の楽器も現役で使われています。100年位のものでは、モダンと言われてしまいます。

アコースティックの弦楽器は、主に接着で出来ているので、古くなってカサカサ、パサパサになったニカワを取り除き、組み直す事によって振動効率を戻す。

ギターの場合、ボディを組み直すにはボディ材が薄く、サイズが大きいので技術的には難しく一般的ではありませんが、決して不可能な事ではありません。

 

 

薄く削られていたブリッジは作り直し。

なるべく小さく作りたいのですが、ここも修理を繰り返していますので、下地を隠すにはこのサイズになってします。

ネック角度が戻ると、指板エンドが下がってしまうので、厚みをつけて調整します。

 


ヘッドの前にはまだマークは無く。


控えめに裏にあった頃、マークが前に着く過渡期のモデルようです。


こんなギターを所有できたら幸せでしょうね。

 

ロッド交換 / Morris WJ-50

ロッド交換です。

マーチンタイプのロッド交換、不具合が出たり、折ってしまったりするのは、ほとんどトラディショナルスタイルのギブソンタイプなので、こっちは割りと珍しいです。

サウンドホール側からロッドナットを回しますが、折れてナットはありません。

 


 

新しいロッドに交換しました。

このロッドは、単純に交換するだけなのでロッドの交換そのものは、とても簡単です。

ネックの角度が狂った場合は、ネックを一旦外して角度を直しますが、これに関しては指板を剥がして、ジョイントが露出しましたので、ヒールにくさびを打って半強制的に角度を修正します。(丸部分、ダブテール下はおまけ)(くさびに使ったスペーサーはOvationのシムなので、硬くてつぶれたりしない。)

大昔は指板を14フレット(ジョイント部)から切り取ってこのようにクサビを打って角度を修正する方法もよくやられていたように思います。

おそらく現在より専門のリペアマンが少なかったのかなと想像しますが、これでしたらネックを外すよりいろんなリスクが少ないですし、手っ取り早いです。

ただしその場合、指板を切り取ってしまうので、跡が残ります。

正しい修理方法は有るが、万人にとって正しいかと言えば、そうとは限らず・・・見た目はとりあえず、弾き易く、なるべくお金が掛からず、ギターにとっては強度が保てればよい場合があったり、勿論お金がかかってもなるべくきれいに、ギターにとっても正しくやりたい人もいる。

こちらのギターは、ロッドを交換してまたこのギターを使えるのならば修理したいとの旨、角度は割りと悪いのは分かっていましたが、これ以上お金を掛からない様に、私が忖度した修理。

余計なお世話だと言われてしまいそうですが、この修理で結構な料金が掛かかってしまう事と、指板は全部剥がしますから切り取らずに、この方法で対処できると見込んで。

 

指板を貼り直す場合は、指板修正、フレット交換は大概必要になります。

クサビを打った分、隙間が出来ますので、その部分は詰め物をします。


貼り直した跡はある程度ズレますので、削って合わせて、塗装修正します。


削った部分は色が取れますので、色も合わせます。


リフレットしましたら、ナットも作り直します。


Gibsonじゃなくてコレがイイの。

ぼくらおじさんは。

 

サドル交換(弦高低過ぎる為)


セパレートタイプのサドル交換

ピックアップも2個入ってます。


4:2で良い弦高で指板のアールに合わせ、ピックアップのバランスも良くなければなりません。


弦高が低くなりすぎた為、サドルを交換しました。

 

 

原因も幾つか考えられます。

オーナーも依頼前に原因を教えてくれる事がありますが、ほとんどの場合、当たっていた事はありません。

この時期(乾燥する季節)は部屋の環境によってかなり差があります。

常に乾燥状態の部屋に置かれている場合、木製品であるギターも乾燥してネックもボディも縮みます。

その際、ボディは縮んで内に落ち込んで行く為に弦高が下がってします。

ですので、季節が変われば大概の場合、次第に元に戻っていきます。

 

これもその楽器を作った環境や材料のシーズニングの具合などによって症状ので方も変わってきます。

結構な乾燥した部屋に長いこと置いといても、縮んだり割れたりせず状態を保っているギターもあります。

日本の場合、四季によって空気が変わります、その度に若干なり膨張収縮を繰り返して力木が剥がれたり、ギターもある程度影響を受けることは仕方ありません。

「そーゆー事か!」とこの記事を読んだ人はラッキー!1つでも多く知っているとギターの見方が変わってきます。

そしてついでに、弦は緩めましょうね、緩い分にはいくら緩くても良いですよ。

ネック折れ修理(塗装修正あり)/ Bass Guitar

当方のブログを見るとネックの修理ばかりやっているような印象ですが、そんなことは無く、ネック以外の修理も同じ様にあります。

ですが、いつもビフォーを撮り忘れてしまいます。

見て頂きたいものに限って、撮り忘れます。

ある程度手が進んでから気が付きます。

アフターだけ見せられても、ただ普通の状態が写っているだけになってしまいますので、それ見せられてもしょうがないですからね。


塗りつぶしの修正は、修理跡は分からなくなります。


色が暗いものの方がより隠し易いです。


塗装修正があっても無くても、強度は同じです。


ボリュートはあってもなくても、ヘッドに角度がある場合は、倒した時は折れる率は高い。


 

 

同じ様な修理は重なるもので、この少し前に FALSETTOS の大黒さんのThunderbirdのネック折れを大急ぎでやったのを思い出しました。

ステージやリハーサルで倒して・・・と言うケースが多いので、皆さんお気をつけください。

 

 

 

フレット交換(指板、サドルのアールの変更)/ Martin D-45


 

D-45のリフレット(フレット交換)です。

指板を修正して、新しいフレットを打ちます。

このギターの場合、過去のオーナーの好みか、職人の癖か、指板のアールがマーチンにしては付き過ぎていますので、アールを少し戻します。

アールは削られて変更されていますので、戻す方向にしてもまた削らなければなりません。段階で言えば2段階位戻ればマーチンらしくはなりますが、あまり削らず雰囲気をマーチンらしく修正します。

指板のアールとサドルのアールは基本的には同じアールでそろえます。

下の画像は、指板修正して、フレットも交換済みの状態です。

サドルのアールはまだ元の指板のアールのままですので、サドルを修正します。


このサドルは修正前の状態。

スケール上約10の値

指板の修正前も、端が多少落ち気味の大体10の値、マーチンには無い形状

 


14位になればマーチンと言う感じですが、12まで戻せばグッと雰囲気は変わります。(数値が大きくなるほどアールが緩やかになります。)


修正前はこの10アール、画像がありませんが、10で端が多少落ちた感じ。


14を当てるとこんな感じです。

このスケールで14アール位になればマーチンにもよくある感じですが、もっと緩いアールもあります。


見え難いですが、サドルのアールを削った状態

アールを12にあわせた状態です。


指板のアール等、このあたりは好みですので、リクエストがあれば弾き手に合わせて変更される場合があります。

リフレットとナットの作り直しは基本セットです。

いつもの記念撮影で完了

 

リフレット(フレット交換) / Ovation 1985-1


 

Ovation  1985-1 のリフレットです。

久しぶりに出してみたら、音も出ず、弾けなくなっていたという事で、ネックリセット他オーバーホール中のリフレットです。

フレットを抜く際に指板が欠けてしまわないように、半田ごてでフレットを暖めながら抜いていきます。

このオベイションのエリートと言うモデルは、アダマスと似ていますが前にアップしました方法とは違い、ネックはついた状態で、私なりの方法で打ちます。

構造上トップ部分(ハイポジション、指板エンド部)のフレットは強めの力で、打ったり、押したりしない方がよいので、長年でたどり着いた方法で打ち込みます。見せないけど。

フレットの溝を多少広くしてやれば、フレットを打ち込んだり、押し込んだりしなくてもフレットは”着けられる”のですが、フレットはしっかりと溝に食い付かせたいので、”私なりの方法”で打ち込みます。みせませんが。

 

 

サドルのアールの確認。

サドルのアールは変えられませんので、こちらに指板を合わせます。

指板のアールの確認。

大体同じになってますので、このアールを崩さず指板(フィンガーボード)を調整をします。

調整する際の注意は、端が下がってしまわない様に、フレットを削る時も同じ注意が必要です。

指板もフレットも端が下がるとカッコが悪いです。

(この画像の指板は悪くはないですが、多少下がっています。)

 


 

端が下がってカッコ悪くなる事と、もうひとつの形がフレットのエッジの形。

左は新しく打ち直した方、右は抜き取った古い方。

左はエッジが立っていますが、右はエッジが斜めに奥まで削られています。

エッジの処理は斜めに削ってしまったほうが処理(整形)に時間が掛からなくて作業的には楽で良いのです。

ですがこの分、弦が内側に乗るようにナットを作ります。

別にこの辺は好みであったり、気にしない方も多いのでかまわないのですが、個人的には弾き難く、何よりもヒジョーにカッチョ悪く見えてしまいます。

 

 


独特な形の指板エンドのフレットの処理も時間が掛かります。


 


新しいフレットに合わせ、ナットを作り直します。


 

私も大昔から大好きな方の春からのツアーで使用予定のギターです。

その人を感じられるほど、弾き込まれたギターではありませんでしたが、このギターで歌っている姿を想像いたします。

このように、弦が多少でも張られた状態で放置されますと状態が悪くなります、お気をつけください。

 

ブリッジ剥がれ修理 X 3例


ブリッジ剥がれ修理です。

ウイング部が少し浮いている位でしたら、しばらくほっといても問題無いですが、これ位剥がれていたら修理した方が良いでしょう。


隙間部分だけ接着してやる方法(歪んだブリッジは圧着出来ませんので充填します。)でも大きな問題はありませんが、大概隙間の分だけブリッジが歪んでいますので、一旦剥がして接着面を修正してやるのがよいでしょう。


隙間無く接着されているか否かでは、当然音の良し悪しにも左右します。

接着剤はタイトボンドを使います。。


こちらのボディ側の接着面が上のものとは雰囲気が違います。

塗装が剥がされていません。


タイトボンドを使う場合は、木地を出さなければ、しっかりとした接着は出来ませんが、こちらのような瞬間接着剤系(特に低粘度であるほど)の接着剤の場合は、荒れていない面同士でなければ密着しません。


生産性重視だと思いますので、高くないモデルに採用される接着方法です。

こちらはある程度接着面を荒らしてから、エポキシ系(アラルダイト)の接着剤で接着します。


エポキシは非常に扱いが面倒(ベタベタがすごく、拭き取り辛い)なのですが、接着力や耐久性は抜群です。

Ovationは基本的にはエポキシ系の接着剤が採用されていますが、こちらの日本製のオベイション(USA製以外)には瞬間接着剤系の接着剤で貼られています。


オベイションの場合は、ブリッジが剥がれる方向に弦の力が掛かり易いので、強い接着力が必要です。


こちらもアラルダイトにて接着します。

拭き取りには、時間を掛けて拭き残しが無いようにします。


ブランドやモデルによって使用する接着剤も変わります。

 

ネック折れ修理(塗装修正あり)/ GRETSCH White Falcon


グレッチのホワイト・ファルコンのネック折れ修理。

塗装修正ありでのご依頼。


塗装はどれも難しいので、やりたくないのですが、最もやりたくないパターン。

ぴかぴかの白で、少し焼けている。


接着後、整形する際に削ったり擦ったりする所と、しない所の色の差が出ます。

茶色いギターでも事は同じなのですが、白の場合は頑張っても色が合わず時間のムダになる気がします。

大昔にやった時に、全く色が合わず馴染まなかったので、普段どおりの塗装は出来ないと端から思い込んでいます。

着色の段階でも、クリアーの段階でも、他の色であれば全く気が付かないような極細かい糸くずともいえないような埃でも目立ちます。

「今日はホワイトファルコンを吹く(塗装のスプレー)日だ。」と思うと朝起きた瞬間から憂鬱になります。


色と埃に気を使う事と、形にも気を使います。


手触りで気にならなくても、ほんの僅かでもよれていると光の加減で歪みが見えてしまいます。


画像では真っ白ですが、ほんの僅か、黄色や赤や黒等を混ぜて同じような焼け色になるように。


伝わりませんが・・・

プレートの下が焼けていないので、写真を撮っておくべきでした。

ロッドカバー周りは着色しています。

今回も何とか乗り越えました。

そして、次から、次へと、まだまだ続く・・・

 

ネック折れ修理 / ヤマハAPX

これは何をやっているのかと言いますと、ギターを台にかけてネックの折れた所をクランプをかけて広げたかったが、折れてしまったところです。

じゃ何故、クランプをかけるかと言いますと、直接手を使って広げようとすると、過度に力が加わりすぎて折れてしまうからです。

がしかし、クランプをかけて広がる前に折れてしまいました。

では何故広げたいかと言いますと、割れ部分にオーナーが付けた接着剤を取り除きたかった、と言うわけです。

白っぽく写っているのが接着剤です。

接着剤は取り易くなりましたが・・・


塗装修正は無し。

当方のネック折れ修理は補強の要らない接着です。


ですので、今後またアクシデントがあった場合、折れた所には接着剤は付いていません。


頻繁にライブなどで使う方は、「また、やっちゃいました!」と再度来られる事はありますが、補強が無い事で面倒な折れ方にはなりません。

タイトボンドで修理した場合は、補強が無ければ強度は足りませんので、その場合修理コストが上がり、今後同じ事があった場合、面倒な折れ方になるケースがあります。

当方の修理例で補強が施されている修理例がありません。

補強なしで不安な方もいるかと思います。

過去どれだけ修理したか分かりませんが、再発は現在のところありません。

 

特にネック折れ修理は、修理者の考えが反映する仕事です。

大昔に読んだ本に、折れたギターのネックを科学的な接着剤(なんと書いてあったか覚えていませんが・・・)で接着してしまうのは、”かわいそう”、”ギターの呼吸を止めてしまう”と書いてあったのを覚えています。

これはこれで、正しいのだと思います。

当方の修理と”かわいそうじゃない修理”の音を比べて聞き分ける人は、そういないと思いますし、そんな機会もありませんので、どちらが好きかと言う事に尽きると思います。

理屈から言えば、修理前後の質量の差が少ない、当方の修理が音の変化は少ない。