ブリッジ

ブリッジ交換 / Martin 00-18


スタッフの山口です。

今回はブリッジ、見ての通りです。この場合は接着しても再発の恐れがあるので交換した方がいいでしょう。


いつも通り温めて、


ナイフを入れて剥がします。うむ、上出来。


古くなったニカワは木を削らないように慎重に剥がします。


今回はインディアンローズで作り替えます。ハカランダも在庫僅少ですがまだあります。


上面が平らなうちにピンホールを転写しておきましょう。


穴を基準にサイジングして成形していきます。


ウィングはある程度までベルトサンダーで思い切りよく。


ここからは人力です。


2時間ほどゴシゴシ!


細かいディティールまでこだわります。


得意先のショップ店長お勧めの蜜蝋を試してみました。いい感じ!


接着する前にトップの膨らみを確認。ほぼ全てのビンテージギターはこの程度は当たり前に膨らんでいます。


ブリッジの底面をそれに合わせてアールを整えます。


力をかけなくてもピッタリ接地したら接着です。


ルーターで溝を切りました。


ロングサドルの両端は広がらないように。その方がかっこいいのです。


マーチンですので面取りを。本邦初公開。


ある程度粗めのリーマーで面取りして、


ダイヤモンドリーマーで仕上げましょう。


おおー!ぽくなりましたね!


弦溝を少し作ってあげてサドルを新調します。


男前!


360°どこから見てもかっこいいマーチンブリッジになりました。


 

数え切れないほど本物のビンテージアコギを見てきた師匠に細かいところまでディティールを相談して進めます。図面や採寸データだけでは及ばないレベルまでできてこそ職人だと思っています。AIや3Dプリンターには無い魂がそこにはあるのです。

めっちゃかっこつけたこと言ってますね(^O^)でも本当の事です。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

ブリッジ貼り直し / Gibson J-45 1968


スタッフの山口です。

今回はブリッジが剥がれた状態で当工房にやってきた真っ赤なコイツです。


見てわかる通りラッカー塗装の上からニカワかタイトボンドでくっつけてありました。師匠の皆川氏に聞いたところ「たまにあるよー」とのことでした。

 


木対木の方が接着力が増しますので接着面の塗膜だけを慎重に剥がしていきます。

オーナーがアジャスタブルサドルを外した時に赤くないとガッカリする人もいるのでサドル部はマスキングします。


慎重にやらないととんでもないことになります。特にオールドギターの塗装の色合い、質感を一部だけ修正して完璧に戻すのは現実的ではありません。


無理な力をかけずに接地面がピタリとなるように調整します。力ずくは厳禁です。


男前に戻りました♪いい感じ。


好き嫌いが分かれますが、僕はハカランダサドル好きです。


ラウンドショルダーにチェリーレッド、ホワイト厚型ピックガード。カッコいいともカワイイとも言えるルックス。1960年代はミニスカートが流行ったハイカラ?時代、ギター業界にも影響を与えたのでしょうか。


正面に向いてくれました。

思わずドキッとしてしまうルックスのpナイスギターです。

今回もご覧いただきありがとうございました。

 

 

ブリッジ剥がれ修理 / Martin C-1R


 

見慣れた人なら、今回はクラシックギターのブリッジ剥がれね。

と言う感じでございます。

クラシックギターであれば張力もフォークギター程無いのだから弦も貼りっぱで大丈夫でしょ。

と思っていますと何かしら不具合が出ます。

クラシックギターでも張力は60Kg位は掛かっていると思いますので、大人がぶら下がったと同じ位の力が掛かっています。

製造上不具合があった場合は、「ちゃんと管理してたのになー。」という場合もあると思いますが、気に入ったギターなら仕方ないとあきらめて修理しましょう。

 

 


 

ネックの角度が狂っちゃったり何か変な事になるより、こういうのでしたら全然マシですね。

この後、このギターの画像がありますが、とても特徴のあるギターで仮にネック角度が狂ってしまったら、どうしましょ。

私に修理出来るのでしょうか、と言うギターです。

トーマス・ハンフリー(Thomas Humphrey 2008年没)という製作家の方とMartin のコラボレーションらしいです。

レイズド・フィンガーボードを考えた人でこれが、音響上、演奏上とても優れたギターと言う事です。

確かにクラシックギターの演奏者は、12フレットジョイントのギターで16~7フレット位まで普通に弾きますから、そのポジションは楽だろうと思います。

 

そして音響上トップに対してこの弦の角度に最大の意味があるそうです。

調べればどこかに書いてあるかもしれませんが、私にはその発想が分かりませんけども、確かに良く鳴る気がしました。

 

 Martin  C-1R

 

 

世の中には天才的な人が沢山いるものだと思います。

沢山売れた商品を考えた人は天才で、あまり売れなかった商品を考えた人は凡才、そんな風に思ってしまいがちです。

でも良いか悪いかなんて、好きか嫌いかで左右してしまうものだと思っていますから、「ありゃ駄作だったなー。」なんて物でも好きな人にとっては「なんでこれの良さが分かんないのかねー。」となります。

私が昔仕事でお世話になっていたOvaiton 等は最たるものでじゃないでしょうか。

いっぱい売れましたから成功は成功ですが、嫌いとはっきり言う人も多いと思います。

 

私達やお店の人たちは客観的に意見を述べているつもりでも意外と好き嫌いの感情が何となく入っている事もあるんじゃないでしょうか。

ですから、楽器屋へギターを買う事を決めて行く方に多いかと思いますが、出来るだけ良いもの、良い物をとプロの意見を求めがちになりますが、「これが好き!」と言う直感が1番大事だと思います。

楽器は買いに行くものより、出会ってしまったものの方が遥かに自分にとって良い物ですから、良い物を買いには行ってはいけません。

何故ならそこ以外にもっと良い物があるから。

時々楽器屋に見に行って触らせてもらってください。

いずれ一期一会の出会いがあるはず。

フレット交換&ピックガード矯正 / Martin D-28 (1950)


スタッフの山口です。

暑くなったり寒くなったりで人もアコギにとっても体調を崩しやすい時期です。

写真のD-28君も具合が悪そうなので治療していきましょう。


ピックガードが硬く反り返って剥がれてしまっています。通常は交換をお勧めしたい状態ですが、オーナー様のご希望でオリジナルのピックガードを再生して残したいとのことなのでなんとか矯正して戻したいと思います。


今回は他の修理もあるのでそっちを進める間、ずっと矯正しておきます。


そしてブリッジを剥がします。

ブリッジを剥がした理由は、、


恐らくマスキング無しのワイルドなオーバーラッカーでブリッジがテカテカになっていたから。綺麗に剥がすにはトップ材についたままでは不可能なので。


ラッカー塗装を除去して本来のブリッジになりました。

ピックガードが硬く反り返ったのもマスキング無しのオーバーラッカーが原因でしょう。


ブリッジを元に戻したら、


フレット交換です。

フレット交換時には指板修正も行います。

写真のように長年握り込んで押弦した跡、凹みが消えるまで削る必要はありません。

あくまでもフレット溝部がしっかりと修正できていればヨシ。むしろ70年かけて作られたこのナチュラルな凹みはルックス的にも残したい。


当工房ではフレット打ちを昔ながらの玄能でコンコンやります。

師匠が弟子入り間もなかった僕にフレットプレスを買ってくれましたが、結局アコギにはヒール周りなどに使えないので、今はエレキ担当のT君がフェンダー系にたまに使うくらいです。


フレット交換は各工房や職人により工程も仕上がりも本当に様々です。

 

一般的なメンテナンスの一つですが、経験と技量、根気とこだわりなど全てが現れるのがフレット交換なのです。


フレットのエッジは立てますがチクチクしないよう一本一本丁寧に丸めます。どこを見ても同じ丸みと形にできれば理想的です。


フレット交換後はナットとサドルを新調します。


オールドマーチンは底面が突板と同じ傾斜が付いていますので加工の難易度がアップします。近年は指板と同じ平らな底面になっています。


ナットやサドル、ブリッジなどのディティールは幾多のヴィンテージギターを見て、修理してきた皆川氏のこだわりが詰まっています。

100点をもらえた時はとても嬉しいですが、そうで無い時はやはり悔しいです。


マーチンのナット溝は外側から2.75mmくらいが理想的です。ギブソンは気持ち外側です。


元のナットよりはマーチンのナットっぽいですね。


最後はしばらく矯正していたピックガードを戻しましょう。


専用ジグで接着。


ヌルヌル滑りますのでタイトボンドでピッタリと元の位置につけるのは意外と難易度高いです。


ナットも指板もフレットも良い感じでは無いでしょうか。


ブリッジも余計なお化粧を落とし本来のすっぴんに。


1950年製のMartin D-28。

仕様においても音色にしても最近はやはり「D-28が至高」と言われてきたことに納得することが多いです。もちろん好みは人それぞれですが。


ピックガードもピカピカよりこっちの方がいいとなりあえてこの感じで。

 


 

先日NHKで福山雅治さんが所有する1940年製D-45をマーチン本社に修理依頼するという企画を軸として、マーチンの歴史や本家としての伝統を重んじる気概やこだわりを紹介する番組が放送されていました。修理方法や引退したマーチン職人の「計測は2度、切るのは一度」という言葉など印象的でとても興味深く、勉強になりました。

僕の師匠のさらにその師匠にあたる大先輩が何十年も前に本家マーチン社でその伝統的な修理方法を学び、日本に持ち込んだ、という話を皆川氏から聞いたことがあります。マーチンのスピリットが日本で世代を超えて受け継がれ、そしてちゃんとこの僕自身にも受け継がれていると思いました。自分ももっと経験を積み、学び、そして技術を磨き、それを次の世代に伝えることの大切さなど、勝手にその壮大な使命を感じました。

番組後半に福山雅治さんが「この貴重なギターを僕が所有することで、この音をレコーディングやライブを通して皆さんとも共有していきたい」的なことを言っていたのがとても好感が持てましたね!

ということで最後は少し話が外れてしまいましたが、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

ブリッジ剥がれ修理 / Martin D-28


ブリッジ剥がれは普段割と気が付き難い不具合でございます。


周りが擦れない様に養生して剥がします。


接着面を整えてから貼り直します。

 

いつも言っておりますが、ブリッジは反っていますので接着面は合わさるように整えなければなりません。

古い接着剤は掃除する事は当たり前ですが、そのままの面では隙間は隙間のままです。

 


とても良いです。


Martin  D-28 


60年代後半のボディは板目でございます。

私達おじさん世代は板目好きが多いです。

オールドギター好きはどうしても「ハカランダ」「ブラジリアンローズ」この2語に反応しがちです。

材料的には柾目の方が貴重で珍重されますが、なぜか私達位から少し上の世代の方は板目が好きと言う方が多い気がします。

柾目の場合、杢目が整い過ぎていて面白くないというか、かえって綺麗さが半減しているというか。

その反対に板目は、このハカランダ特有の分かり易くうねうねした杢目に美しさを感じ取る人が多いのですね。

私も板目は美しいと思います。

ブリッジ剥がれ修理 / Gibson Dove


 

ブリッジを剥がす際にヘラを差し込んで剥がしていきますが、その際に周りが擦れてしまわない様にマスキングテープを貼っています。

ブリッジを貼り直す必要があるか否か、どの修理に関してもそうなのですがオーナーや修理屋によって少し違ったりします。

ちょっと隙間が見つかったら貼り直す人、隙間はちょっと位で心配いらないのなら様子見、もしくは応急処置程度、剥がれている場所で決める人等々、判断が分かれます。

私の場合はちょっとなら剥がさないをお勧めして、あとはオーナーと相談と言う感じです。

「それならまだ修理はしなくていいか!」

「折角の機会だから修理しますわ。」

と、どちらかになります。


 

こちらのDoveは「剥がさなければなりませんね。」の雰囲気だったと思います。

貼り直す際は、両面(トップ側、ブリッジ側)を整えてから貼り直します。

剥がれているブリッジは反ってしまっている事がほとんどなので、きれいにしただけでは密着しないのです。

それを踏まえますと、剥がさず部分接着する場合はクランプなどで圧着するのはあまり良い方法とは考えておりません。

歪んでいるものを無理やり押さえつけているのですからまたすぐ剥がれて来てしまう可能性があります。

その場合は圧着せずに、隙間を充填する形で接着します。

充填ですから対応できる状態には限度はあります。

 

 


 

このクランプの仕方は昔から変わらずの方法です。

最近では、専用のジグを考えて使っている方や、なんかバキューム式と言うのでしょうか、そんなのも見たことがあります。

剥がす際の温め方も現在では、ラバーヒーターが主流になって来ていますが、うちでは昔ながら同じ、ライトで温めています。

大分前にラバーヒーターメーカーにオーダーしようと相談した所、わざわざここまで来て頂いていろいろ教えて頂いた事があります。

その結果、その使い方は危ないのでお勧めは出来ません、との事でそれ以来相変わらず昔のまま、今に至る。と言う感じです。

何しろ熱がすごくて、密着されていない部分は異常発熱するので、非常に危険との事でした。

使ってらっしゃる方々は、どうやっているのかしら。

その時は、ブリッジプレートを温める物をオーダーしたかったので、そりゃ考えてみれば危険。

 

 

新品のようにまっさらで密着していないとは言え、ある程度密着しているのに、あるったけのバカ力でクランプを掛ける人がいます。

馬鹿力を使ってはっ付ければ強く付くと考えるのでしょが、ちゃんとつくか否かは、貼る前の段階にあります。

なので、これと同じで部分接着の際も、力で貼り付けてもだめなのです。

Gibson Dove でした。

 

ブリッジ交換 / Gibson Humming Bird


スタッフの山口です。

今回はこの状態でやってきたハミングバードのブリッジ交換です。と言っても元のブリッジが紛失した状態ですので作製と言った方がしっくりきます。

 

 


年代的にも剥がれ跡を見ても元のブリッジはアジャスタブルサドルタイプだったことが分かります。今回はノーマルタイプで作って欲しいとのこと。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、アジャスタブルサドルとノーマルサドルではネックの仕込み角度が違います。


今回のギターは恐らくネックが元起きした状態。アジャスタブルサドルでブリッジを作り直す場合はネックリセットも同時に行い、ネックを適正角度にする必要がありました。しかしノーマルサドルでなんとかネックリセットはしなくても済むようです。

ただし少しでもマシになればと思い、仮のブリッジを置いて角度を確認し、ネックアイロンで処置を施しました。


ブリッジを作る前にスプルースでアジャスタブルサドルの穴を埋めましょう。


これを


こうしてからタイトボンドで接着し、一日置きます。


元のブリッジがないと大きさを見るのも一苦労。サイズに違和感のあるブリッジは中々イケません。


塗装の焼けや古い接着剤から元の大きさを転写しました。

 


元はプラスチックブリッジだったと思われますのでラッカー塗装を剥ぎます。ラッカーの上から接着しちゃってるものも稀にあります。


いざ作製です。オリジナルはブラジリアンローズウッドですが今回はインディアンローズウッドで。インディアンローズも今は入手困難になりつつあります。


写真にはありませんが、元のブリッジがないので穴あけも結構面倒だった覚えがあります。


いい感じの形になってます。


ギブソンのブリッジはボルトでも止めていますのでもちろんインレイも。


こうして見るとほとんど褪色せずこんなに鮮やかにチェリー色が残っているのは貴重ですね。


ブリッジが付いたらルーターで溝掘りです。ルーターがこの世に無ければギターは全部ロングサドルになるのかな、、ふとしょうもないことを考えてしまいました。


いい感じです。


現行のハミングバードもこんな雰囲気では無いでしょうか。


アイロンも効いたせいかサドルの出しろもベストに近いです。いい感じ!

ノーマルサドルの方がピックアップも選ばないので使い勝手はいいかもしれません。ただ個人的にはアジャスタブルサドルのGibsonサウンドが好きです。

最近は弦高を調節できるというメリットよりも、アジャスタブルサドルのサウンドが好きだから、という理由で選んでいる人の方が多いのではないでしょうか。「パーカッシブ」な音ってヤツです。

ナイスギターの後ろに予約制という文字が写っています。ギター修理は基本的に手が離せない作業も多いです。アポなしで来て頂いても満足に対応できないこともあるのでどうかご予約の上いらしてくださいませ(^ ^)

毎日本当に暑いですね。工房のある北綾瀬近辺はプチ建設ラッシュなのですが、建設関係など外で働いている方々は本当に大変だと思います。早く涼しくなって欲しいです。一方で3年ぶり(4年ぶり)に盆踊りや花火大会もあちこちで行われていて懐かしい夏の雰囲気を皆んな楽しんでいるようです。でもとにかく早く涼しくなって欲しいです。

今回も最後までありがとうございました。

 

ブリッジの接着面(トップ側)の塗装が剥がされていないので「プラスティックブリッジっだったのでは、」と言っておりますがプラスティックブリッジでは無く、木のブリッジが貼ってあった跡ではないかと、私思います。    

書き足し…皆川。

 

確かに。ボルト跡がないのでこれこそ塗装の上からブリッジを接着してたパターンですね!失礼しました(>_<)

書き足し‥ 山口。

 

 

ブリッジ剥がれ修理 / Martin OOO-28


 

ブリッジの接着面に隙間ができてしまったら貼り直さなくてはなりません。

隙間がわずかでしたら、部分的にそこへ接着剤を差し込んでやるくらいで良いと思います。

判断は感覚的な所ではありますが、隙間がある程度あるなら剥がして貼り直します。

温めて、隙間からヘラを差し込んでいきますが、周りにこすり跡が付かない様に適当にマスキングします。

過去の画像ではマスキングをしてないものがあると思うのですが、それは撮影の前にマスキングテープは剥がしている為です。悪しからず。

ブリッジは、ただ貼り直せばよい訳では無く、当然ですが調整し直してから貼り直します。

先ずは古い接着剤を取り除きます。

 

剥がれていているブリッジは、反り上がって隙間が出来ているので、剥がさず部分的に接着する場合はいくら押さえつけても(圧着)しても貼り付くわけが無いのです。

その場合は圧着せず、接着剤は充填して接着します。

 

 

底は平らに調整しますが、ものによってはフラットトップのギターでもトップの反りに合わせなければきれいな接着が出来ない場合もあります。

そこはケースバイケースでございます。

 

 

ブリッジの底も

トップの接着面も平でございます。

 

 


 


 


 

 

 

いつも最後に全体を撮って終わるのですが、今回はボディの杢目も美しいので、バック側も。

最後はいつも同じ画角で全体を撮影して終わりにする理由がありまして、画像データが順番関係なく撮り重ねていきますので、全体を撮って終わりのしるしをつけないと、この修理はどこまで画像があるか分から無くなってしまう為、最後は同じ画角で「このギターはここまで。」と印を付ける為です。

そして各画像も比較が出来るように、どの修理の撮り方も同じ画角なので余計に分かんなくなってしまいます。

メモリカードをいくつか使い分けるとか、カメラを2台使い分けたりと、やってみたことがありますがいずれにしても面倒なのはあまり変わりなく、私のようなIT機器音痴には苦行でございます。

 

ブリッジ交換&ネックリセット / Gibson J-50 1960s


スタッフの山口です。

前回と同じギターの修理、今回はブリッジ交換とネックリセットのコンボです。画像も多いのでサクサク行きましょう!

・・・

その前に謎のゴツすぎるブリッジプレートを発見してしまい、、、。急遽こちらも対応することになりました。


ブリッジプレート交換は場所が場所だけに苦労します。見づらいですがブリッジプレートを温める専用工具を使っています(使わない時もある)。ストーブにのせて温めて熱熱の状態で固定しますが、サウンドホールに当たらないように中に入れる時は「電流イライラ棒」を思い出します。


多少強引さが必要になることもあります。

必死だったためこの後の画像はありませんが、なんとかして分厚いのもその下の本来のプレートも剥がしました。

あきらめたらそこで試合終了デス。


ブリッジプレートを剥がしたら今度はヘンテコな形になっているブリッジ。こちらも温めてナイフを入れていきます。


そこそこ綺麗に剥がれました。


インディアンローズウッドですがなるべく似た色味を選択します。良い感じになりそうです。


まずはボール盤で元のブリッジの穴を写します。


少し大きめにカット。


穴を基準に、ある程度大きさを決めます。それでもまだ大きめです。


後はビンテージGibsonぽく成型していきます。腕の見せ所。


この辺で一度「師匠チェック」が入ります。


トップの膨らみに底面を合わせ、


ピッタリ底面が密着したらいざ接着。


ブリッジがついたらブリッジプレートも新しくしていきましょう。大きさ、形、ヨシ!


穴も綺麗に開きました。


Gibson特有のボルトナットで固定し、白蝶貝でインレイを入れます。


サドル溝はまだ掘りません。ネックリセットをしてから正確な弦長を測定する為です。


満を持してお馴染みのネックリセット。

 


そして恒例の記念撮影。


60年代初頭はまだロッドエンドがここにあるんですね!60年代中盤以降のロッドエンドはここに顔を出しません。こっちのロッドの方が仕込むのに手間がかかると思います。


ヒールを削った角度分、指板を足して


いざ接着。


ダブテイルジョイントを温める為の穴を塞ぎ、フレットを戻し、すり合わせます。


ブリッジプレートも新しくなり、


 ブリッジも新しくなり、

ネックリセットでサドルの出しろもバッチリ。


センターズレはご法度です。


 

Gibsonでも特に人気のある年代のナイスギターです。最近は値札をぶら下げるなり、すぐに売れてしまうようで価格も上がる一方。ギターに限らずですが、「ビンテージ」と言われるモノは基本的に数が増えることはありませんので、リーマンショックのような事態や大恐慌にでもならない限り中々値段が下がりません。ワインは飲んでしまったら無くなってしまいますが、ギターは弾いてもフレットが減るくらいですし、実用性のあるビンテージ楽器は資産としてもとても優秀だと僕は思います。それに気づいた人たちが買いに走ってるのでしょうか、、本当に手が届きにくい(届かない!?)ものになってしまいました。

それでもアコギはエレキギターに比べたらまだまだお買い得感がありますので僕も引き続き目を光らせてアンテナを張っていたいと思います( ̄∀ ̄)

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

アジャスタブルサドル戻し Gibson J-45 BLK(1969)


スタッフの山口です。

60年代Gibsonといえばアジャスタブルサドルですが、ノーマルサドルに変更されていることがよくあります。ピックアップを仕込むため、単純に音の好みなど理由は様々です。今回はショップの依頼ですので「ノーマルサドルからアジャスタブルサドルに戻した方が早く売れるから」という理由でしょうか。


初めにブリッジを剥がす必要がありますが、その前にこの厚型ピックガードを剥がします。これがあるとブリッジを剥がすのに大変邪魔になります。

この厚型ピックガードはいつも修理の邪魔をしてくるのです。


そしていつもこのベタベタ取りに苦労するのです。


ピックガードを退けたおかげでいい角度でナイフを入れられました。裏側から見ると本来のアジャスタブルサドルの溝が埋められているのが分かりやすいですね。


埋木が甘かったので10分ほどで本来の姿に戻りました。それに比べてピックガードのベタベタ取りは1時間近くかかりました、、、。修理箇所の近くのパーツで苦労するのは修理あるあるかもしれません。


アジャスタブルサドルがちゃんと収まるのを確認し、接着面をキレイ且つ少し荒らしてブリッジを接着します。


いつかまた誰かが苦労するであろうベタベタになるであろう両面テープでピックガードを戻します。両面テープは一発勝負。位置がズレないように空気が入らないように慎重に貼り付けます。


アッパーベリーブリッジの方がGibsonらしいですが、このベリーブリッジのアジャスタブルサドルタイプは過渡期の1968年後半〜1969年のわずか1年〜2年弱しかありませんのでこちらの方が希少性が高いとも言えます。


1960年〜1970年のGibsonは過渡期。それこそがオールドGibsonの魅力でもある、と言う人も多いのではないでしょうか。

 


 

当時はきっと色々な事情があって都度仕様変更がされていったのだと思います。単純に構造的改善を求めた結果だったり、経済的な事情であったり。きっと今現在も進化し続けているのだと思いますが、結局売れ筋は60年代までのリイシューモデルばかりで「古き良きGibson」なんて言われたりするのはメーカーとしては心苦しい部分もあるかもしれません。

ちなみに師匠の皆川とよくリイシューモデルがほとんど無い70年代のGibsonは過小評価され過ぎているという話をします。ネットで調べると酷い言われ方をされている記事や知恵袋が散見されますが、それらに囚われずに一度心をフラットにして弾いてみればとても良いギターだったりします。

自分が弾きやすくて音が好きで弾いていて楽しいのであれば、たとえそれが10,000円のギターであってもベストギター、「運命の相手」なのだと思います。なるべく情報やウンチクやアレコレなどに囚われずにギターと向き合っていきたいですね。

でも確かに古いギターは「おおー!」となるものが多いのも事実です。それはきっと木製楽器の宿命かもしれません。

ベリーブリッジとアッパーベリーブリッジのことを考えていたら話が全然違う方向に行ってしまいましたが、、今回も最後までありがとうございました。