2017年12月

ネックひどい折れ修理 / Bluebell W-1500

本年最後の更新は、やはりネック折れでした。

ポッキっと折れています、まるでお菓子のよう。

こんな折れ方をしてしまうのは、材料が多少弱いこともありますが、(前回のモーリスもそうですが、よい折れ方しないです。)もうひとつはこのギターのアジャストロッドのナットの位置と大きな空洞。

ナットの下がアジャストナットの位置、ややこしいですが・・・

当方は補強の要らない修理をしますが、さすがにこれは必要かと思い、見積もりもそれなりでしたが、実際始めてみると折れた木片同士がフィンガージョイントのようにかなりガッチリ組み合わさります。

いつもの接着剤で、接着がうまく行けば全く問題なく、仕上がりもきれいに出来ます。

接着の際は、いろいろ気をつけなくてはなりませんが、うまくいきました。

塗装も修正して完成です。割れの跡が見え難くするように多少濃い目に着色しました。

白いパーツがナットですが、その下に大きな穴がありそこにアジャストナットが仕込んであります。


元々つや消し仕上げのネックが使い込まれ艶が出ていた状態でしたので、50%位のつや消しで仕上げて、演奏していれば、擦れてそのうち自然な艶が出てくると思います。


古いギターを修理する場合は、あまりきれいになり過ぎないように仕上げる事が多いですが、この場合はオーナーに仕上げてもらいます。

本年も誠にありがとうございました。

また来年もよろしくお願いいたします。

 

 

リフレット(フレット交換)/ Ovation 1687(Adamas)

アダマスのリフレット(フレット交換)です。

フレットを抜いたら、指板を調整しますが、その際は指板エンドが弱い為、動きますのでその点と、ネックの角度に気をつけます。

指板修正の際、ふわふわ動く場合は動かないように、角度が悪ければ正しく削れる様に予め、ある程度角度を直します。

エリート等では、ネックを抜く事無くリフレットしますが、アダマスに関しては、フェンダーギターのようにネックを外した状態でフレットを打って行きます。

アダマスの指板エンド部は、フローティングしている事とトップがとても薄い上に、力木も割りとハガレやすい部分ですので、ネックをボディにセットしてある状態でフレットを画像のように押し込んだり、ハンマーで打ち込んだりはしません。

指板エンド部のフレットの打ち方は何通りかの方法がありますが、この場合はブロックを装着して別の場所で打っています。

こちらも毎度の画像ですが、1番古いアダマス以外はこの部分が空洞です。

ボディがつぶれ難くする為に下の画像のように隙間をエポキシパテで充填します。


 


 


 


 

80年代後期から中尾貿易で10年以上、Ovation に関わらせて頂きました、こちらは91年モデルなのですが、当時私が記した保証書が入っていたのはビックリです。

ネック割れ / Morris Guitar


ネックが折れている、表現的には割れている、裂けていると言うような折れ方。


通常は大きな割れ1ヶ所と、多少の小さい割れが入るような割れ方ですが、これだけ割れてしまいますと、どこが割れたと言う見方が出来ません。


小さい割れも残さず接着します。

小さな割れが原因で、ぶつけてもいないのに亀裂が入ってしまったら困ります。


下地→着色→トップコートの順番ですが、トップコートはとても薄いので研ぐとすぐ剥がれます。


演奏中は見えないところなので、手触りに違和感が無ければ気にしないと言う方は多いです。


中学生の頃、私もこのギター欲しかったです。

お大事に!

 

リフレット(フレット交換)/ YAMAHA FG-1500

ヤマハのリフレットです。

昔の国産のフレットの足にはスタッドがついていませんでしたので、足を何か角のあるもので叩いて、スタッドもどきを作ってあります。

叩いてつぶれた分、フレットの足より幅が出来ます。

現在は、勿論こんな事はやりません。


指板修正は削り過ぎないように。


フレットのエッジは丁寧に処理します。


国産オールドもなかなかです!

 

ネックの角度が狂う / ネックリセット

ネックの角度が狂ってしまうと、一旦外して修理しなければならなくなります(アイロン等での対処方法もありますが、お奨めはしておりません)ので使い終わったら、特にアコースティックの弦楽器は弦を緩めて管理しましょう。

個人製作家や大手メーカー等でも自分とこのギターは弦を緩めてはいけない。というような理屈を持っている方々もありますが、個人的には、薄い木の箱ボディのギターの弦を張りっぱなしにしたら、ろくな事がないと思っています。

一見ネック反りに見える角度の狂いは、アジャストロッドでは全く調整出来ませんし、ネック反りに関してもアジャストロッドは魔法の装置ではありませんので、何度でも使える物では無く、いずれ(程度によってはすぐ)限界が来ます。

弦を張りますと、ネックとトップだけでなくブリッジにも同じ様に負担が掛かります、ネックに不具合が出なければ、ブリッジが剥がれたり、ブリッジが剥がれなければ、トップが歪んだり、ネックに不具合が生じます。

今までも、何度か触れてきた「弦は、緩める、緩めない問題」ですが、今後も機会があれば書いていこうと思います。

ネックジョイントにおいて、このヒール部分はあまり重要ではないのですが、きれいに接地していないと見栄えが良くありませんが、

あまりこだわり過ぎると、削りすぎて角度がつき過ぎたり、センターがずれてしまったりしますので、注意が必要です。


サドルは出すぎず、低過ぎず。理想の弦高。


センターは正確に。


難しいことが多いです。

 

ネック折れ修理 / フェルナンデス

直球で申し訳ないのですが、”安いギター”(←オーナーさんごめんね。)の修理もよく依頼があります。

ネック折れ修理は他店より安いようなので、割と頻繁にお受けしますが、大体同等の新しいギターが買える位の修理費ですから、一旦考えて見て頂きます。

ですが思い入れがあったり、可能な限り修理して使い倒す、という方の気持ち私も良ーく分かります。

修理してよい点は、勿論使い続けられると言う事ですが、基本調整(ネックアジャスト、ナット、サドル調整)もされて完了しますので、新品より弾き易くなったり、バランスが良くなったりします。

※ただしネック状態が悪くない条件です。ネックが悪い場合はネックの修理も必用になってしまいます。


 


 


 


 

なるべくきれいに仕上げる場合は、「塗装修正あり」ですが、こちらのように気にしない、安く上げたい方は「塗装修正無し」、で仕上げます。

仕上げる際に塗装が剥げます、と伝えてありましたが、「すごくきれいです。」と言って頂いて、女性のオーナーでしたのでちょっとこれは嫌かなと心配しましたが、良かったです。

私も個人的には、この感じもカッコよいと思っています。なんでしょうか、思いを隠してないと言うか、出しちゃってると言いますか、そういう迫力が伝わります。

トップクラック(割れ)修理


クラッシックギターのトップクラック(割れ)修理です。


割れ目に汚れが入らなければ、ほとんど跡が残らず修理出来る事がありますので、素手で割れ部分を触ったりせず早めに修理に出しましょう。


ほこりが入らないようにテープを貼る方がいますが、塗装によってはテープに反応してしまうので、何塗装か分からない時のテープの使用はやめましょう。


こちらは、きれいな方ですが、少し筋が見えます。

 

ネックリセット / Martin D-41 70s’


 

こちらは、70年代の Martin  D‐41 のネックリセットです。

弦は緩めたつもりでも、ある程度の張力が掛かった状態であれば放置された時間が長い場合、チューニング時同様、ボディが歪み、ネック角度が狂います。

サドルでの調整が出来なくなれば、ネックを一旦抜いて、リセットするしかありません。

ヒールを削り、角度を修正しますが、実際のネックのジョイントに関しての強度にはヒールその物部分は重要ではありませんが、(強度で重要なのは内部のダブテールジョイント部の精度)接地面の密着具合はきれいに仕上げたいところです。

サドルに関しては、頻繁に触れていますが、出すぎず、低過ぎずにならないようにネック角度を修正まします。

その際、ネックとボディのセンターがずれないように修正していく事が重要です。

指板、フレットの状態いずれかが悪い場合は、リフレット(指板修正、フレット交換、他)になります。

基本的には、標準的な理想の弦高 1弦・・・12F・・・1.8mm位 6弦・・・12F・・・2.4mm位 に調整します。


 


 


 


 

 

サウンドホール(ボディ)割れ / ネック角度狂い


 

弦の張力に負けてサウンドホールがつぶれています。

これだけ割れて、ずれてしまっているのでジョイント周りの力木やネックブロックも剥がれています。

先ず、このずれを直してから、割れ接着、力木接着、ネックブロック接着、補強、ネックリセットの順番で進めていきます。

このズレを直した段階で、ネックの角度も丁度よくなる事もありますが、今回は割れてずれる前から角度も狂っていた為、十分な角度が無いのでリセットします。

 

 


ズレを直して、割れを接着したら、サウンドホールとバスバー(力木)とその向こう(奥)にある平たい力木も接着します。


バスバーの手前にあった補強板を外して、割れを確認します。

奥の板も剥がれています、その奥にあるのがネックブロック。


とても作業がし辛く確認もし難いのでいので、しつこい位に接着剤を差し込んでクランプします。

 


補強は元より大き目に。

 


ボディの修理が済みましたので、ネックをリセットします。


サドルは高過ぎないのが、カッコよいです。

ですが、サドルを何ミリの高さに設定、と言うようなネックのセットは出来ませんので、調整はどちらへ転んでも良い感じになるように。


ですので、サドルが理想よりちょっと高い、低い時はあります。

サドルの高さにこだわる人が多いのは知っておりますが、そして0.5~1.0mmサドルを削ると見た目の高さの印象は変わるのも分かります。


0.5mm削るか削ないかでは、演奏性がかなり変わります(0.25mmの弦高差)ので、サドルの高さを決めてしまっては、本末転倒になります。

 

音の良し悪しは、人それぞれではありますが、サドルが高ければよくて、低ければ悪いと言うものではありません、現在お持ちのギターの良し悪しも原因の一旦がそれかもしれませんが決してそれだけではありませんので、その点ご理解頂ければ幸いです。

修理内容とは別に、サドルの話になってしまいましたが、こんな回もあります。

ペグ(金属パーツ)みがき

このブログをいつも読んで頂いている方に、たまには得する記事も書かなければいけません。

この曇りきった、ペグ、どうにか磨きたいと思っている方に読んでいただければ幸いです。

やりがちなのは、コンパウンドで磨いてしまって、金メッキまで落としてしまう。

この記事で1番知って欲しいところ。

コンパウンドは使用禁止!

 

 

では、磨く術は何かと申しますと、これ、→ ボンスター 。

スチールウールでは、キズが付いたり、メッキが落ちてしまうのではないかと思いますが、これ以外にはきれいに出来ないと思っています。

当方では、No.ooo という品番の極細タイプを使っておりますので、荒めを使う場合は一応気をつけてください。

 

 

 


 

ついでに、もうひとつ、以前にも書きましたが、ペグボタンの締め付けに関して。

特にこのグローバーのペグのつまみは緩み易いので、ついつい強く締めがちになりますが、この矢印の部分に入っている、ばねワッシャーが潰れるほど締めてしまっては、弦を巻く際も重くて疲れます。

ずっと潰されていますと、そのうちただの平ワッシャーになってしますので、機能を果たさず、更に緩み易くなってしまいます。

 

過去記事 こちらも読んで頂けたら幸いです。