2025年09月

ネックリセット / Martin D-28


スタッフの山口です。

当工房の僕のブログを見ていただいてる方にはネックリセットばかりで申し訳ないのですが、、今回もネックリセットです。ネックリセットをしている当人は全く飽きません。それぞれ修理の中にも好き嫌いがあると思いますが、ネックリセットは好きな修理に入ります。


僕の担当は「ちゃんとメンテナンスしてから、なるべく最良の状態で販売したい!」というショップ様からの依頼が多いです。 

写真を見る限り、弦高はそんなに高くないですが、サドルが限界まで下げられていてこれ以上下げられません。

 


それに加えて綺麗な「くの字」で元起きしているのが写真からわかると思います。

写真でわかるレベルは重症だということは過去のブログでも書いていますが、、

写真でわかるレベルは重症です。^_^


元起きして角度が狂うとその分だけ弦の張力がナットから上方向へかかります。その分さらに元起きネックの順反りがが加速していきます。


いつも通り15フレットに穴を開けちゃいます。これに驚く人も多いと思いますが、ここが一番ギターにとって優しい穴開け場所になります。穴を開けないでネックを外すことができるダブテイルジョイントはありません。指板を剥がせば可能ですが、ダメージはそっちの方が大きいです。


トップに載っている指板を剥がすため、ハロゲン電球で温めて行きます。


写真が飛び飛びですいません。

ダブテイル内部に熱を加えてネックはずし成功。この外す工程がネックリセットで一番リスクがあると言っても過言ではないです。


但し、経験値や技術力が問われるのはここからです。センターズレの無いよう、ある場合は修正してあげながら、仕込み角度を調整し、組み込んだ時の木工精度など、指板修正がこのあとあるならそれを計算、逆算、弦を張った時まで想定します。個体差もそれぞれありますので、ネック外す前にその個体の特性を感覚で覚えておく必要もあります。


全てが整ったらいざ組込み接着です。


 

今回の修理の写真を探してまとめていましたが、どうやらこれ以降の写真は撮り忘れているようです。おそらく原因はこのころ工房に撮影が入っていたからかもしれません。

ご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、テレビ東京の公式YouTubeにてマーチンのネックリセットの過程を取材していただきました。すでに公開されていますので、山口のネックリセットブログだけでは満足できない、という方はぜひ師匠皆川の職人技を動画でご覧いただけますと幸いです。

当初撮影の依頼があった時、「以前テレビで取材されて放送された時、修理依頼が殺到することはなかったから、YouTubeだけなら尚更大丈夫だろう」と二人で鷹を括っておりましたが、よくよく考えたらその時しか見られない地上波の放送よりも、ギターに興味のある視聴者へアルゴリズムがアプローチし、ずっとアーカイブとして残り続けるYouTubeの方が影響力がある、ということに気付かされました。案の定、大変な数の修理依頼をいただきまして、、、大変なことに。。

現在は少しずつ落ち着いてきていますので、引き続きご依頼、ご相談をお待ちしております。

皆川工房はYouTubeチャンネルは開設していません。何しろご依頼いただく修理をするのが精一杯でございまして、撮影や編集をする余裕もなく、、おそらく修理依頼が多いところほどSNSでの発信などできないのではないかと思います。もし修理依頼が少なくなって暇を持て余すようになってしまいましたらYouTubeチャンネル開設や積極的なSNS発信を皆川氏に提案してみようかと思いますが、なるべくそうならないよう、今まで通り日々精進していきたいと思う所存でございます。

今日も最後までありがとうございました。

 

 

ピックガード交換 / Martin OOO-18


Martinのピックガード交換


普段無くなは、ないのですが


ブログになるのは久しぶり。

昔のピックガードは両面テープで貼り付けてないので剥がす事は楽です。

ただし、塗装のない木地に直接接着されている為、剥がす際には順目逆目はどっちに向いているのか感じ取ってヘラを使わないと、木地をむしり取ってしまいます。

いつも必ずうまく行くとは限りませんので、その時は剥がれてしまった破片は元に貼り直します。

 

 


めくれ上がった部分は平らになる様に接着します。


しっかり接着出来ていますが、クリートは一応やった印。

当方のクリートはひし形がほとんどですが、場所や理由により変わります。

ひし形クリートは大き過ぎるととカッコ悪いので小さめに作っています。

なので、「ずらーっと並べずに長いの貼ろう!」や「ここは大き目の1枚にしましょ。」など、その時々の雰囲気で変わる事があります。

 


 


 


 

ピックガード作製で一番大変な作業は、水研ぎの作業です。

保護シールをはがした後サンドペーパーでこすり直します。

水研ぎをすることで、保護シールを剥がしただけの時の艶とは別の美しさが出ます。

保護シールをはがしただけでも十分きれいではありますし、そういうピックガードも見慣れてはいますが、我々には「下敷きのよう」に見えるのです。

ですが水研ぎをする場合は、何度、研ぎ直してもサンドペーパーの跡が消えず、とても苦労します。

 

この「下敷きの様」と言う表現。

昔、25年位前、ギター屋でミッシェルに遭遇して、お話させて頂いた際、ピックガードの話題になり、ミッシェルの言った表現なのですが、とても適格な表現だと感心してそれから私も同じ言い方にしています。

あ、私のミッシェルはこちら。→ https://anison.aoistudio.jp/artist02

フレット交換(+アイロン) / Gibson B-25


スタッフの山口です。

今回はフレット交換。ネック角度狂い少々、ネックの順反りが少々見られますが、ネックリセットでガッツリ直す予算はないとのことでなるべくそれらを修正することを念頭においてリフレットを進めます。


フレットがぺったんこなのがわかります。

68年製のピックガードは分厚いため、面倒ですが一旦外します。写真を見ても、おそらく前回のリフレット時につけちゃったピックガードの傷がフレットの延長線上にあるのがわかりますね。こうならないように外します。


レモンオイルをナイフにつけて剥がしていきます。ヌルヌルと全方位から。


ベタベタのヌルヌルです。


根気強く綺麗にしました。


指板修正の削り幅を少しでも小さくするため、補助的にアイロン矯正を行いました。


フレットを温めながら抜いていきます。


不要かもしれませんが、抜いたフレットは一応お返しできるよう保管。


指板修正は汗だくになります。


フレット打ちはいつものように玄能で行います。


長めに打たれたフレットをカットします。


切ったフレットのエッジを整えていきます。最初はある程度ゴリゴリに削ります。


少しずつ、


そして真っ直ぐに、


番手を上げていき、


綺麗に仕上げます。


これだけでも綺麗ですがチクチクと手に当たりますので、


均一に角をハンドロールで丸めます。工房によりこの辺の仕上げは個性が出るところかもしれません。


擦り合わせと磨きを終えたら古いナットを外して設置面を綺麗にします。


1フレットに合わせたナットが必要になりますのでナットを新調します。


弦高もいい感じですね。


新しく標準的な高さのあるフレットは本当に弾きやすいです。


ピックガードに新しい両面テープを貼って元に戻します。


最後にサドルで弦高をセット。アジャスタブルサドルなのでわかりづらいですが、、ほぼベストな出しろではないでしょうか。

アイロンの効果を感じ取れました。


こういうふうに見た時に、


ピシッと真っ直ぐフレットが並んでいるかどうかはほぼ自己満足の世界かもしれませんが、一般の方が気が付かないところにこそ、仕事の良し悪しが見えるものです。


フレットが新しくなり、なんとなく背筋が伸びたような印象のGibso君。


 

今回は指板修正前にネックアイロンを挟むことでロッドの効き幅もサドルの出しろも改善しました。ネックリセットも十分選択肢に入りそうな状態でしたが、ネックアイロンとフレット交換である程度イケると判断できたので、なるべく余計な手間とコストをかけないで無事完了。それぞれの症状に合わせて「これでいけそうだ」とか「これでは改善されないだろう」など、色んな選択肢があります。

そして経験からその判断ができなければ、適正な修理はそもそも始められません。

 修理に持ち込む際はなるべくオーナーと相談して修理を選択しますが、どれの方法がベストな選択となるのかはある程度おまかせいただければ幸いです。ネット上には誤った情報もたくさんありますので、鵜呑みにし過ぎず、まずはぜひご相談ください。

ところで、Gibsonは何と言っても「男前」ですね。

音も見た目も、男ゴゴロをくすぐってくる唯一無二のメーカーではないでしょうか。

そして何よりこの「ギブソン!」という響きがかっこいいですよね。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

ネック折れ修理(塗装修正あり)/ Gretsch Tennssee Rose


 


 


 

当方では補強が必要なタイトボンドでの接着では無く、ネック折れに関しては補強の必要のない接着剤を使用しています。

補強の手間がありませんので、その分コストも下げられます。

補強がありませんので、再度アクシデントがあった場合は折れ方が複雑になりずらい為、同じ方法で修理出来る利点があります。

再度折れる時は、一度目の接着部分は強い為、その近辺、イメージ的に1ページ前後の辺りから折れる事になります。

 

 


 


 


 

 

補強があれば、何かアクシデントがあった場合に折れずに済むような気がしますが、補強の理由は、タイトボンドでの接着はそれだけでは持たない為です。

以前参考の為、各ショップのリペア料金表を見ていた際にどちらかのサイトでは、ネック折れ修理接着のみの場合は保証出来ない的な事を読んだ記憶があります。

補強が無いと必ず再発してしまうと言う事では無く、可能性は50%です。

 

 


 


 

こちらのギターは、過去にネック折れ修理をして塗装を施したかのような配色ですが、元々この塗装。

これでしたら、元の雰囲気と然程遠くない雰囲気で仕上げられます。