2020年04月

ネックリセット / Martin D-45


 

ネックリセットした際、指板やフレットもネックをトータルで直さなければならない事の方が多いのですが、特に必要が無い事も当然あります。

指板が歪んでおらず、フレットの浮き等無く減りも大きく無く、ネックに反りがあってもアジャスト調整可能である場合。

これ位の条件が揃えば、リフレット(指板修正、ナット交換込)せずにリセットのみ(フレットすり合わせ、サドル交換、他調整込)で完了出来ます。

ですが、ネックを抜かなくてはならない事態にまでなっている場合、やはりリフレットも必要になる事が多いようです。

もしくは、出来るだけコストを上げたくない場合等は、多少の事は我慢してリフレットをしない。

 


こちらのギターはリフレット無しで調整できるので、サドルの高さは然程悩まず決定出来ます。

リフレットが必要ならば、指板修正後を考慮してサドルの高さ(ネック角度)を決めていきます。


ネックに角度を付けると、指板エンドが下がりますので、厚みを付けて下がらない様にします。

フレットの高さは好みがありますので、新しければ良いというものでもありません。


ですが、大概はリフレットすればやはりコンディションは良いと感じますし、リセットと一緒にリフレットしてしまえば、料金的にも割安になるので、近い将来のフレット交換が予測出来ればセットでやる方がお得です。

 

 


MartinやGibsonなどはヒールが接いでおらず、贅沢な材の取り方をしております。


ですが、継ぎ無し1本ネックでなければ高級ギターではないと言えば、そんなわけでもありません。


伝統的なクラシックギターの工法ではほとんどと言っていいほど、ヒールは継いでいます。

 

ここからはまた私の想像ですが、ヒールを継がない理由を最初は、ダブテールジョイントの為かと思ったりしたのですが、あまりそこに理由は無いような気がします。

やはり正解は、ヒールもヘッドもネックを丸ごと成型してしまえば、生産効率が上がるではないか、と言う事ではないでしょうか。

結果的に時代が経つにつれ、贅沢な木の使い方になったのではないでしょうか。

実際は分かりませんが贅沢な、と言って無駄が多いかと言えば他の工法と比較しても、ちゃんと考えて取っている(木を使っている)と思いますし、然程無駄は多くはないと想像しています。

想像です。

本当の正解を知りたい方は、ご自身でお調べください。

そしたら教えてください。

 

只今 令和2年 4月18日 土曜日 午後4時40分

ひとまず、5月10日(日)まで新規依頼のご来店受け付けは自粛させて頂きます。

仕事はこちらで、今まで同様こつこつやっておりますので、お問い合わせは、電話、メール等で、お構い無く下さい。

恐らくゴールデンウィーク明けと共に5月6日から生活が解放される事は無いと思いますし、解放してもまずいのではないかと思っています。

ですが、緊急事態が明けた後の来店のご予約等もなんでもお問い合わせ頂ければ幸いです。

修理例も今まで通り、定期的に更新していきます。

本日もアップしていますので、よろしければ見てみて下さい。

現在お預かりしている修理は、順次進めております。

お待たせしておりますが、完了した時点で連絡差し上げます。

今までとは全く違う生活習慣になってしまい、お金の事も含め苦労が絶えませんが、お互いに何とか、がんばりましょう!

 


 

 

 

ボディ破損修理 / ZEMAITIS CAJ-100HW-12

ゼマティスのアコギのボディ破損

どうやろうかと考えてもプランが立ちませんので、とりあえず凹んでいるところを戻してから考えるとします。

戻るかどうか分からなっかったですが、何とかかんとか戻します。

バック側から見ても…別に変りません。

戻しながらいろいろ考え、どうやったらうまく出来るのか巡って、たどり着いたところが…私には無理!

 

 

 

預かる時に言ったもん! きれいに直んないですよ。って。

ならば、私なりにやるしかないんです。

今までもいろんな修理資料を本や、パソコンで見てきましたが、みんな上手くてどうやっているのか分からないのですが、あーやって仕事が出来る人はいい修理代取るんだろうな、とは想像がつきます。

 

単板ボディであれば戻せたところで勝負あり!になるが、このギターは合板ボディなのである程度戻せたとしても削って整形する事がほとんど出来ないから戻しても意味無いか…。割れてる部分は交換しないと…。

! 表面だけはぎ取って、変えればいいんでない? 合板なんだもん。

ひらめいちゃったな~!と思いましたが、完璧に密着させないと出来上がった後、浮いてる所は押すとプカプカ、フニフニ、してしまいます。

でも、もうそれしかアイディア無いので、それでいきます!

 

 

 

奇跡的に、プカプカする所無く出来ました。

交換した所の境の縦線はどうにも出来ません。

ですが、ボディにある縞が無い材料で交換するしかなかったので、雰囲気だけは何とか合わないかと、縞は描き込みました。

ただ、ボディの縞は見る角度によって、濃淡が逆になるので、描き込んだ縞の濃淡は変わりませんから、見る角度によって合っていたり、逆だったりします。

引いてみると縞全体が良く見えるのですが、近くで描きかきしてると見えなくなってきます。

絶対に上手くは出来ないのは分かっていますので、一所懸命やったらそれ以上はやらずすぐに諦めます。

 

 

中は割れを接着しただけで、補強はしません。

外側から貼ってますから。

ネック折れ修理の記事の中で書いた記憶がありますが、折れていた部分を見えない様に修正するテクニックとして、割れ跡を塗りつぶした後、周りの杢目に合わせて杢目を描き込む、と言う方法が昔ありました、と。

 

この方法は、やった直後は達成感に満足するのですが、翌日見ると気持ち悪くなります。不自然過ぎて。

やった直後は「うまいな~。」と自画自賛出来ているのでその場合は、冷静に見てはいけなかったのだと思います。

「こんなことにあんなに時間をかけたのか…」と、昔2~3度やった記憶があります。

ですので杢目を描き込む修正は一切やらなくなりましたが、なんでも経験しておくものだと思いました。

その時の教訓が多少生きたと思います。

ネック折れ修理 / Ovation 1687GT-8

ニカワやタイトボンドで修理する場合は、補強が必要になります。

当方のネック折れ修理は、補強せずしっかり接着するのみ。

補強はしませんので、それに耐える接着剤を使わなければなりません。

使っていて気が付かないうちに、修理跡に筋が入ってきたりしてはいけません。

 


塗装を施してないネックですので、出来るだけきれいに仕上げたくてもここまでになってしまいます。


見た目はちょっと可哀そうな感じですが、演奏上、形状等、手触りは違和感なく仕上げます。


もちろん、強度も問題無し。

 


修理内容としては、くっ付ける。

ですが、ズレない様に密着させる事が簡単なようで難しい点です。


十分な接着剤の量で付けなくてはなりませんが、アジャストナットまで固めてはいけませんし、気を遣う部分は色々あります。


欠けて無くなった部分は、エポキシパテで修正してあります。

 


キズや破損は無かった事のように修正してしまいたいと思う人もいると思いますが、このように跡が丸見えになる場合があったり、傷が見えない様にするには、見えない様にした痕跡が出来ます。

 

勿論、出来るだけきれいに仕上げたり、傷が無いきれいな状態は気分も良いものです。

その反面、音楽をやる道具は、必ず擦れて傷ついて、時にはこのようなアクシデントにも見舞われます。

このような傷跡もこのギターの歴史、弾いてきた人の歴史として愛でて頂ければいいな、と思っています。

ブリッジクラック / Webber Guitars


 

ロングサドルのブリッジで割れる事が多い部分ですが、こちらはショートサドルで同じような割れがあります。

何度修理しても繰り返すので、再発しないようにと言うご依頼。

力がかかるここの部分は接着だけでは到底持ちませんので、元より強くなるように修理します。

これしきのクラックがそれほど問題なのかと申しますと、現状でもサドルが前傾している事が確認できますが、将来的に確実に割れが広がり、溝から前へ倒れ込んで折れてしまいます。

そうなったら修理すればよいと言えばそれでも良いのですが、この場合はそうなる前の方が手間がかからなくて良いと思います。

 

 

 

 

溝自体も歪んでいるので一旦埋めて、割れ部分を掘り出します。

エボニーで埋めます。

 

 


ピッチも図り直して少し下がったので、更に強くなりました。

位置が変わるのならば、割れはいちいち埋めなくても良かったか、と思わなくも無いのですが。


サドルやその土台は大変な力に耐えなければなりません。

大昔は、なぜロングサドルが主流だったんでしょう。

作るのも面倒だし。


強度も音響的にもこっちの方が理にかなっているように思うのですが、デザインはロングがカッコよいです。

道具の関係上仕方なかったのだと推測しますが、昔から何となく疑問が続いています。