2018年01月

ネック折れ修理 / ヤマハAPX

これは何をやっているのかと言いますと、ギターを台にかけてネックの折れた所をクランプをかけて広げたかったが、折れてしまったところです。

じゃ何故、クランプをかけるかと言いますと、直接手を使って広げようとすると、過度に力が加わりすぎて折れてしまうからです。

がしかし、クランプをかけて広がる前に折れてしまいました。

では何故広げたいかと言いますと、割れ部分にオーナーが付けた接着剤を取り除きたかった、と言うわけです。

白っぽく写っているのが接着剤です。

接着剤は取り易くなりましたが・・・


塗装修正は無し。

当方のネック折れ修理は補強の要らない接着です。


ですので、今後またアクシデントがあった場合、折れた所には接着剤は付いていません。


頻繁にライブなどで使う方は、「また、やっちゃいました!」と再度来られる事はありますが、補強が無い事で面倒な折れ方にはなりません。

タイトボンドで修理した場合は、補強が無ければ強度は足りませんので、その場合修理コストが上がり、今後同じ事があった場合、面倒な折れ方になるケースがあります。

当方の修理例で補強が施されている修理例がありません。

補強なしで不安な方もいるかと思います。

過去どれだけ修理したか分かりませんが、再発は現在のところありません。

 

特にネック折れ修理は、修理者の考えが反映する仕事です。

大昔に読んだ本に、折れたギターのネックを科学的な接着剤(なんと書いてあったか覚えていませんが・・・)で接着してしまうのは、”かわいそう”、”ギターの呼吸を止めてしまう”と書いてあったのを覚えています。

これはこれで、正しいのだと思います。

当方の修理と”かわいそうじゃない修理”の音を比べて聞き分ける人は、そういないと思いますし、そんな機会もありませんので、どちらが好きかと言う事に尽きると思います。

理屈から言えば、修理前後の質量の差が少ない、当方の修理が音の変化は少ない。

 

トップ膨らみ修正


ブリッジ下側が膨らんでポッコリと出っ張ってしまっています。


横から見ますと、これだけ前傾しています。


アコースティックギターのトップは設計上平らですが、使用していく上で真っ平らなものは殆どありませんので、少々のふくらみは修理しませんし、出来ませんが、これはやらなくてはなりません。

※少々のトップの膨らみや歪みを気にする人も多いですが、トップはサウンドボードと呼ばれるパーツで音に直接影響しますので、必要のない作業は極力やめましょう。

 


ブリッジプレートを鏡で写したところ。

過去に交換されています。


ブリッジを剥がした跡。

中心部、1弦~6弦部分は板が取れて穴が空いたと思われますが、その破片をまた貼り直してあります。


ブリッジプレートを剥がしたところ。

端は木部が大分めくれてしまいました。後ほど修正します。


トップの形に変形した、ブリッジプレート。

ブリッジとプレートを外したら、力木の剥がれや割れのある部分を接着しながら、当方の方法を用いてトップの歪みを修正します。

同時にブリッジの歪みも修正しておきます。


専用のパテで修正出来ない部分は、切り取って同じ木材で塞ぎます。


裏側も平らに修正します。


トップは平らになるようにキープしたまま、作り直したブリッジプレートを貼ります。


弦高を調整して弾き易くなり。


歪みも直り。


剛性も取り戻し。

後は弾くだけ。でも、弦は毎回緩めましょう!


このように、弦を張りっぱなしで置いておいたギターは、ネックに支障が出ない場合は他の部分に支障が出ます。

 

ネック折れ修理(塗装修正なし) / Gibson LP

Gibson のネック折れですが、今回は破片も大分無くなって、塗膜も薄いつや消しのトップコートです。

塗装修正無しでも割ときれいに仕上がる場合もあります(過去の修理実績にいくつか。)が、これは塗膜が薄いので塗装修正無しでは仕上がりが大分痛々しくなります。


無くなってしまっている部分は、専用のパテで埋めます。


無い部分は埋めて、感触に違和感が無いように調整します。


表面だけは簡単に着色。


こちら側は簡単にやろうとすると返って、かっこ悪くなってしまいますので、予定通り塗装なし。


塗装なしですが、うっすら色を付けて、若干汚した感じにして完了。


見た目は悪いですが、通常使用では全く問題なしです。


ケースに入っていても、倒れると折れますので、皆さん気をつけましょう!

 

ピックガード交換(Martin) / Tor- Tis(トーティス)

こちらのピックガードを交換します。

塗りこんであり、きれいなピックガードですが・・・

 

ハガレて端がめくれていたり、そういった場合に交換するのが常ですが、今回はどうしても見た目のよいものに形も直して交換したい旨を聞かせていただき、交換です。

tortis(トーティス)と言う高価な材料なのですが、通常の材料と比べると、とても扱い難く、油断すると画像のようにアメ細工のような割れ方をしますので、本体側はぜったに割れないように慎重に扱います。

若干厚めな感じが偽っぽいのですが、これがかえって豪華な感じになるのかもしれません。


今回は塗装ありの仕上げです。


水研ぎ仕上げよりも磨きは多少楽ですが、塗装は手間が掛かります。


丁度この1弦の下に掛かる辺りからブリッジに届くあたりまで元より大きく作ってあります。


このピックガードを交換してしまうのは勿体無いと申しましたが、是非とのリクエストでした。

 

ブリッジプレート補修 / Gibson

古いGibsonのブリッジプレート。

弦のボールエンドが見えなくなるまで入り込んじゃっています。

こうなってしまいますと、弦が上へ出すぎてしまいます。

前記事参照

穴の周りは削れたり、欠けたり、グズグズになっています。

そしてこのギターの6弦の穴は、ほぼプレートギリギリに空いています。

チューニングする前に写してしまいましたが、本来、大体このようにプレートにボールエンドが乗ってとまります。

崩れた穴の周りを丸く削り取り、同じ大きさの木を埋め込んで穴を開けなおします。

 

ヒールキャップ交換 / Gibson

当方、キズ直し、塗装塗り直し(リフィニッシュ)等、見た目直しは基本的にお断りなのですが、絶対にやりたく無いと言う訳ではありませんので、どうしてもと言う方はお問い合わせ下さい。

一度はお断りすると思いますが、お話聞かせ頂ければ幸いです。

ただし、演奏に支障があったり、強度に不安があるような場合は、修理をお奨めいたします。

 

キズはその時は気になりますが、そのうち気にならなくなりますし、直してもまたキズはつきます。

キズもその楽器の歴史一部になり、味わいのある雰囲気をかもし出して、使い込んできた迫力も伝わってきます。

塗装も古くなるにつれ、擦れて、くすみ、色も焼けて変わって来ます。

リフィニッシュしてしまっては、もったいないです。

何より、そこまで使ってきたのに、大概音は悪い方向に変わってしまいますからね。

 

 

ロッド折れ(交換) / Gibson

アジャストロッドのナット部が折れてしまっています。

コストの掛からない方法としては、折れた奥の部分の木を掘って露出させたロッドにまたナットをはめる方法がありますが、締め切って折れたロッドにナットを付けてもあまり意味がないので当方ではその方法は採用していません。

この場合は、折れたロッドは取り外し交換します。

このモデルのトラスロッドはGibsonのトラディショナルなタイプで、仕込み方が新しいのですが、やる事は同じです。


トラスロッドは長さを合わせて作ります。


当方のロッドエンドはGibson より大きく、知り合いのバイク屋で溶接してもらっています。


ロッドはチューブで覆います。

錆び難くなり、効きもスムーズになります。


メイプルで埋め木します。

 


指板は剥がしてしまうと、ピタッと元の位置には戻りませんので、削って合わせます。


削りましたので、塗装も直します。


指板を貼り直した際は、指板上の精度も狂いますので、指板を削り直して、リフレットします。


フレットバインディングは、オーバーバインディングになります。

ロッドはナットから出っ張らない位がカッコよいかと思います。

ご自身でやってみる事は、よいことですが、無理は禁物です。

全てアジャストロッドでネックを直すのは不可能です、アジャストロッドで調整できる範囲は一部だけですので、その際は専門ショップにご依頼下さい。