修理実績

ボディ割れ、剥がれ / Ovation 1761


 


 


 

割れに対して、接着剤がしっかり入ればクリート(割れ止め)は必要ありませんが、接着剤が入って無いような所にはクリートを付けます。

接着剤が入らなかったのですから、これしかありません。

割れの話は何度かしておりますが、今回のように落として割れた場合と冬場に乾燥で割れる場合、

2パターンあると思いますが、どちらかと言えば乾燥で割れる場合の方が面倒かと感じます。

ギターも個体差があって、こっちは大丈夫なのにこっちは大丈夫でない。

そう言う事は往々にしてあります。

もし乾燥で割れた事がある個体なら、冬場の乾燥には多少なりの気遣いは必要かと思います。

(割れたことが無くても気を付けるに越したことは無いです。)


 


 

冬場に割れが見つかるタイミングでは、その割れは開いて閉じなくなっています。

そのまま接着剤を入れる訳には行きませんので、当工房の養生棚に置いて閉じるまで待ちます。

修理の際は割れが閉じてしまっているので、接着剤は十分には入りません。

ですので、クリートを付けるしか無いのですが、もっと大きいクリートにすれば効果があるのでは、という考えもあります。

割れに接着剤が入っていないのですから、クリートの大きさは関係ないかと考えています。

クリートが大きくても恐らく、再度乾燥が進めば同じ所が割れる確率は高いと思います。

 


 

私のギターもやはり冬は乾燥でトップが凹んで弦高が下がりますので、(割れる程までは乾燥しないですが…)音もぺしゃつくと言いましょうか、…

弦高を上げれば良いのですが、面倒なのでそのまま弾いています。

過湿するグッズ等もありますので、使う価値はあります。

では夏は頑張って乾燥させた方が良いのでしょうか。

必要はないと思います。

弾き込めば良いのです。

弾き込めば湿気は発散されます。

自分のギターは夏場、弦高も好いので夏場の音の方がとても良い音です。

 

では、弾かないギターの場合はどうするのですか。

知らん。

 

ネックリセット / Martin D-18


スタッフの山口です。

今回もネックリセットです。ありがたいことに、一年中ネックリセットしています。

ネックリセットの経験値をこれだけ積める現場環境に自分の身を置かせてもらっていることに対して、感謝の気持ちを忘れてはいけません。


サドルが限界一歩手前、というところでしょうか。ブリッジプレートが削れちゃってることもあって、巻弦の太い部分がサドルに乗っちゃっています。音に影響するのは言うまでもなく、弦高も上がってしまいます。


リセット前に測定。

6弦側の弦高は普通ですが、、


1弦側はやはり少し高めですね。


抜きました。。

ブログを疎かにしてるのではなく、単純に写真の撮り忘れです。この辺は今までもたくさんアップしてるのでお許しください。


センターズレが起きないよう、また元々ズレている場合は修正しながらネック角度の調整をしていきます。

この時、ナット溝の位置が正常か確認するのも重要です。ナットは消耗品ですので必ずしも前回取付けられた(製作された)ナットがちゃんとしているとは限りません。

1弦と6弦の溝の位置がバラバラなら正しい位置を想定してセンターを見なければいけません。リセット後、ナットを交換したらセンターがズレてしまうのは本末転倒です。


センターズレの他、リセット後にサドルの背丈がバカ高くなってしまう、とか、ヒールに隙間ができてしまってなんか誤魔化す、なんてことは避けなければなりません。。

20年後、また他の誰かがネックリセットをした時に、「前回のネックリセットを施した職人は下手くそだな」なんて思われたら悔しいのです。


ダブテイルジョイント部の木工精度は最も重要です。∴ジョイントを強固にするためのシム製作は大事な作業工程。

接着剤頼みのダブテイルジョイントも年に何本かあります。すごく鳴っていて良いギターだなーと思った個体でも、意外にもネック外す時にジョイントがユルユルだった、なんてことも全然ありますのでそれはそれで興味深いのですが、、ジョイントがしっかりと精度が高い方がサウンドも良いに決まってます。


組込後はフレットを擦り合わせてナット調整し、その後弦高調整(サドル作製)を行います。


今回はその前にブリッジプレート修理を行いました。


元々ついていたコンデンサーマイクピックアップを元に戻します。


最後はサドルを作製して完成。このくらいのサドルがカッコいいです。

たまに「弦高はいずれまた高くなっちゃうんだから、サドルは高ければ高い方が良い」という自論を展開する人がいますが、決してそんなことはありません。ブリッジ割れや変形のトラブルはもちろん、ネックに余計な角度をつけることによって生じるデメリットもあるのです。

弾かない時は弦をちゃんと緩め、適正な高さのサドルを維持すること、これが正解です。

写真がブレちゃってますが、低めの弦高でいい感じになりました♪

しっかりとシーズニングされた木材で作られていることが大前提ですが、アコースティックギターやクラシックギターのようにボディが空洞のギターの場合、弾かない時にちゃんと弦を緩めておけば早々不具合は起こりません。よってネックリセットが必要となることもほぼありません。

世間では「木が固まるまでは何年か弦を張りっぱなしにした方が良い」とか、「1音だけ下げるのが正解だ」とか、「弦を張っておかないとネックは必ず逆反りする」とか、何の科学的根拠のないことを、あたかも「自分はこの世のギターの全てを知っている」みたいな顔をしながら言っている人を見かけます。

この世界の物理法則がひっくりかえらない限り、木はあくまでも木なので、ある一定方向に長時間、何十キロもの圧力がかかり続ければ、どこかしらが変形したり割れたりするのは至極当然のことです。僕も世の中のギター全てを知っているわけではありませんが、弾かないときはなるべくダルダルに緩めておくのが不具合の出る確率を最大限低くする一番良いギターとの付き合い方であることは間違いありません。

 

自分の「修理屋」という仕事の将来を考えると、弦を張りっぱなしにして不具合が出たら皆川ギター工房に持ち込む、というのをお勧めしたいところではありますが、、。( ´ ▽ ` )

今後とも皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い致します。敬具

 

ネックリセット / Martin Bolt on Neck


今回は


ボルトオンネックの


Martin


です。

おそらくヒールに隙間が出来てヒールキャップも取れてしまった為、接着剤でくっ付けようとしたのだと思います。

周りが接着剤で汚れています。

過去にも説明しておりますが、目に見えるヒールの隙間を接着しても意味がありません。

ダブテールジョイントであればジョイント部の精度、ボルトオンジョイントであればボルトが正しく締まっているかが重要です。

 

 


 

ボルトオンジョイントのネックの場合、指板がトップから剥がれれば、後はボルトを緩めてネックは外れるはずなのですが、Martinは一味違います。

ジョイント部も接着しちゃってます。

まだこれに慣れなかった頃は、何で外れないのか分からず、すごく面食らった事をブログに書いた記憶があります。

最初の時は、「きっと新人さんが間違えたんだろう。」等と思っておりました。

2回目の時「外れねーな…もしや?」「これもか。」と成り、3度目からはマーチンのボルトオンネックは中まで接着してある事が分かって取り組みますが、かえってダブテールジョイントより面倒くさいです。

 


 


 


 

ですので「ジョイント部も接着する。」がMartinの正式なセットの仕方ですから、リセットする際は困ってしまいます。

「ボルトオンだけど接着しないと持たないの?」「実際隙間が出来たし。」

「いや。接着剤はいらんだろ。」「ボルトがしっかり締まればよいのだから。」

と、堂々巡りして、外す際になるべく面倒くさくならないように、少し接着するという、自分でも「なんだこれ。」と言うような事をやったりします。

 

 

「マーチン、問題多すぎー!」等と言う人もいると思いますが、Martinの名誉の為に言える事は、それだけ見る機会が多いと言う事。

どのメーカーも完ぺきなものは、なかなか無いと思います。

Gibsonがネック折れやすい等と言う人もいたと思いますが、Gibsonを持っている人がとても多いんです。

その角度の付いたヘッドのネックでなければGibsonでな無くなってしまいます。

確かにFenderは倒しても簡単には折れず強いです。

比べちゃいけません。

それぞれが、それである為に、それなのですから。

 

 

ネックリセット&リフレット/ Martin D-28


スタッフの山口です。

今回は比較的新しいMartin D-28をお預かりしました。ネック角度不良+順反りということで今回はネックリセットとリフレットのコンボです。リフレットはどちらかというと指板修正を目的として、どうせフレット全部抜くならフレットも新しいものに交換しましょう、というわけです。


いつものヴィンテージとは違い、新めのMartinはアジャスタブルロッド付きです。

ネックの重量も多少増えます。

 


ボディ側ロッド用に全て設計されていますね。この二つの穴は塗装する際に引っかける用の穴なのでしょうか。


いつもネックリセットばかりなのでリセット工程は今回は割愛しました。

組込み後はダブテイルに通じる穴を埋木します。


アジャストロッドがありますので今回は指板修正にネックジグは使いません。


15フレットの溝切りをしてフレット打ち開始です。


フレットプレスもありますが、アコギの場合はフレキシブルに作業できる玄能が最適解なのではないかと思います。ストラトのようにネックが外れるものはプレスする方が良いかもです。


フレットの仕上げまで終わったらナットを新調します。


出来合いのナットも市販されていますが、メーカーやあらゆる年代、何より個体差に対応できる代物は無いので、一見すると面倒ですが一から成形するのが一番仕上がりも作業効率もいいと思います。


Martinぽいナットを作ります。


新しいMartinは底面がフラットというかネックと平行です。伝統的にはヘッドと並行で傾斜がついています。作る方としてはコチラの方が簡単。


弦間がバラバラだと分かりやすく腕を疑われてしまいます。弾きやすさにも直結します。


ある程度溝の深さが決まったら一旦外して仕上げていきます。


いい感じです。


3、4弦のナット溝はそれぞれのペグポストに向かって気持ち斜めに切ってあります。意外と3、4弦の間が広がり過ぎる傾向がありますので注意してください。(自分で作る方は)


フレットのエッジには職人それぞれのこだわりが詰まっています。


僕が特に意識するのは写真のように見たときにフレットの両端が真っ直ぐにビシッと揃っているかどうか。


ここがガチャガチャになったりカーブしないように心がけます。元々指板サイド自体がガタガタの場合もありますのでその時はどこまで修正しようか悩ましいところではあります。


ヒールも問題なし。


こちら側もOK。


弦長補正を施してありますが、個人的には補正していない方が潔くトラッドでかっこいいと思っています。あくまでも個人的には。


 

今回は新しめのD-28でしたがオールドとは随所随所に違うところがあり興味深かったですね。

新しいギターでも古いギターでも関係なく不具合は出てくるものです。環境や弦の張力、木材が動きやすいものや、ネックは強いけどボディが弱いとか、同じメーカー同じ年式でも個体差が必ずあります。最近流行りのカーボン製ギターなどは個体差が一切なく安定した工業製品として確立されていますが、、何でしょうか、、何というか、、個々の個性がないモノに人間は愛着が湧かないモノだと思っています。人間も、みんな同じ顔、同じ性格、同じ声だったら果たして愛すべきパートナーをどうやって見つければいいのでしょうか。。

童謡詩人の金子みすゞさんの「みんな違ってみんないい」という言葉が多くの人に響き続けています。ギターも同じで「みんな違ってみんないい」、そんなところに奥深さや面白さ、そしてロマンがあるのではないでしょうか。

どんなギターでも、他人が何と言おうとも、自分が良いと思ったギターは自信を持ってその個性を尊重し、付き合ってあげてほしいと思います。この世に完璧な人間がいないように、ギターも完璧なものはないと思っていて、そこがまた愛らしくも感じるのです。

今回も最後までありがとうございました。

 

トップ割れ修理 / Kamaka Tanor


 


 

ウクレレはギターと違って軽い分、倒したり落としたりした時も意外と無事な場合がありますが、今回はそうはならなかったようです。

ウクレレ専用のストラップの場合は、手を放してしまうとクルっと回って落ちる事があります。

ギターのようにストラップピンを付ける人や、穴を空けずにつけられる落ちないストラップや、独自の工夫をしてる人等、いろいろありますので不安な方は検討されてはいかがでしょうか。

 


 


 

 

 

こちらのウクレレは、演奏中に落ちたかは定かではありませんが、それはそうとして不幸中の幸いな部分は、こちらのトップ板は割れの跡が目立ち難いと言う事。

割れた跡が残らない修理は不可能ですが、スプルースやシダー等のように目立つことがありません。

ギターのトップの場合は、スプルースやシダーであることが多いので、割れてしまうとなかなか目立たない様には修理出来ません。

 

今回の破損とは違い、冬場の乾燥が原因で割れる事はよくありますが、これもとても難しい修理です。

乾燥状態は、割れている事にすぐ気が付きます。

何故なら木が縮んで割れて隙間があるからです。

この状態でしたら接着はとてもしやすくしっかり接着も出来ます。

しかし、季節が進み湿度が戻ると木も元の大きさに戻ります。

そうなると割れの隙間に入れた接着剤が邪魔になり木が歪む原因になります。

なので、工房の養生棚で割れの隙間が閉じるまで置いてから接着したいのですが、ピッタリ閉じていますので専用の工具を使っても上手く接着剤が入らない事もあります。

割れの修理は裏からクリートと呼ばれる割れ止めを貼りますが、それは気休めでしかありませんので冬に乾燥して木が縮めばまた割れが出ます。

 

湿度のバランスが取れている時は、割れはぴったり閉じていますので見た目、割れているようには見えない事もよくあります。

ギターを見るタイミングによっては割れは一切なく、過去に割れた形跡を特定する事も出来ない事もあります。

ピッタリついていれば究極、割れている事になりませんので冬場の乾燥にはお気をつけくださいませ。

 

サウンドホール割れ / Martin OOO-42EC


スタッフの山口です。

今回はよくあるといえばよくある修理、サウンドホールのめり込み割れです。割れた箇所がズレているのがわかりますね。

これも弦の張力によって起こる症状です。

アコースティックギターの天敵は「弦の張力」と「乾燥」であると言えます。


以前も割れて修理したっぽく、割れ止めらしき板がついていますね。周りの雰囲気からすると最初からついているものなのかもしれません。

 


しかし割れた部分はちょうど境目になっていて割れ止めの役目は果たせていないようです。赤く塗った部分は板が貼ってあった場所ですが今回は取り除き、新しい割れ止めを作製します。


サウンドホールのめり込み割れが起きる時は大体こちらのバスバーと呼ばれるブレイシングが剥がれていることが多いです。

アコースティックギターにとってのブレイシングは音色を司るのもそうですが、「割れ止め」という最大の役割があります。

修理屋に持ち込んだ時は今後のことも考えてブレイシング剥がれのチェックもしてもらうことをお勧めします。


写真には写っていませんが、、

ネックをジグで引っ張り、割れてズレた分を戻してスーパーグルーで接着します。

冒頭の画像と比較すると戻っているのが分かるかと思います。割れはジョイント部である14フレット付近まで伸びていました。


トップ板の割れが接着出来たらバスバーを接着します。


バスバーの接着が完了したらちゃんと役割を果たせる新しい割れ止めを製作します。材はスプルース、木目を垂直方向にします。


手前の割れ止めと、奥は接着時の当て木です。


タイトボンドで接着。


いい感じになりました。割れているラインに覆い被さっていますのでいくらかは強度が増したはずです。


めり込み時は大抵、ネックのアングルも狂っています。今回はネック角度が改善され許容される程度まで戻りましたのでネックは外さずにフレット擦り合わせのみ。


割れた部分が気になってベタベタ触ってしまうと修理後に跡が目立ちます。割れてしまった時はなるべく触らずに修理を依頼しましょう。


6弦側は1弦側に比べて目立たないで済みました。


アジャストロッド調整部に干渉しない厚みで割れ止めがついています。


Martinの40番台は指板の両脇にインレイを施すために掘り込んでいるため、その部分の板の厚みが薄くなります。当然、強度が落ちて割れやすくなっていると思います。

このデザインによって強度を落としていることはおそらくMartin社も把握しているはずですが、今更ここを変更することは彼らの伝統ある歴史とファンが許さないのだと思います。


 

初年度のMartin / OOO-42EC。エリッククラプトンがアンプラグドで使用した戦前のOOO-42を基に企画され販売されたモデルです。初年度モノは価格も上がり続けてるそうです。

 

 

アンプラグドといえば、僕が大好きなNIRVANAのKurt Cobainが使用したMartin / D-18E (1959年製)が、ギターの歴史上、最高値の6億円余りで落札された、というニュースが少し前にありました。アコギ好きでカートファンの僕としては史上最高値のギターがエレキではなくアコギであり、それがカートのギターであるということがとても嬉しいのです。

もう一つ、アンプラグドといえば、放送していたMTVとMartinのコラボモデル、MTV-1というモデルがあります。賛否が分かれるであろうサイドバックがマホガニーとインディアンローズの2トーンというイレギュラーな材構成。以前修理で当工房に来たことがありますが、個人的には結構良かった印象があります。もちろん、今回のOOO-42ECもとてもナイスギターでした♪

今回も最後までありがとうございました。

 

リフレット / Gibson J-45

 

よ~く聞かれるご質問…他にも直した方が良いところはあるか。

普段見る事が出来ない力木等は折角、修理屋へ来たのだから見てもらいましょう。

あとは…折角ですからいろいろ見てもらってください。

と言って修理しなければならないか、と言えば全くそんなことはありません。

今回のこの位のフレットだって、気にせず弾いている人もいます。

修理の要不要はオーナーが決めます。

 

修理屋へ行った際にブリッジに少し隙間が見つかりました。

慌てちゃいけません。

 


 


 


 

 

少ししか剥がれていないのですから、しっかり弦を緩めて管理すれば剥がれてしまうような心配はありません。

逆に無理に剥がして貼り直すようなリスクは避けた方が良いと思います。

もっと剥がれてきた際に修理すれば良いのです。

不具合が無ければ無理にお金をかける必要は無いのです。

「剥がれているんだから、貼り直したらもっと音が良くなるんじゃない?」

確かに!そのちょっと剥がれている分、音の悪さが分かる人は修理した方が精神衛生上修理した方が良いかもしれません。

 

※但しスーパーグルー系の接着剤で付いている場合は、突然剥がれる可能性もありますので、その可能性があるギターは貼り直す事をおすすめします。

※スーパーグルーが悪いと言うより、接着剤の量が少ない事が往々にしてあります。スーパーグルーは、はみ出すと拭き取り難い為、生産コスト上スーパーグルーを使う意味が無くなってしまう為です。

これはもうちょっとですっ飛びます。

やり方は色々ですがスーパーグルーは、はみ出さないようにくっ付けます。

 

あとは例えば、「弾き難い訳では無いが、もっと弾き易くならないか。」や「音が、もうちょっとシャキッとなんないか…」

相対的に悪いところはないが、オーナーがそう感じているのであれば、ギターの状態を見て調整のみで出来るのか、修理が必要か、もしくは不可能か、と言う話になります。

 

サドルがとても低く、アジャストロッドが目一杯に締まっているギターだってなんの問題もありません。

オーナーにとって不具合が無ければ、そのコンディションが悪くならないようにしっかり弦を緩めて管理すればアジャストロッドをいじる事も、サドルを削るような事もそうそう無いはずです。

 

ネックリセット&バーフレット→ラウンドフレット交換 / Martin 0-18K(1924)


スタッフの山口です。

博物館にあってもおかしくないようなギターが横たわっています。 1923年製造のMartin 0-18K、オールハワイアンコアのモデルです。今回はこちらのネックリセットとフレット交換を見ていきます。


ネックの順反り加減が写真でもよくわかります。写真でも分かる、ということは重症です。

ネックの角度も狂っていますので仕込み角度を適正にする+フレット交換に合わせて指板修正、このコンボで弾きやすくまだまだ使えるギターにしていきましょう。


弦高は4mmほど。

この写真でお気づきになるかと思いますが、フレットに違和感がありますね。1934年より前はこんな感じの単なる棒状、つまりバーフレットしかありませんでした。オリジナルを重視するなら同じバーフレットを何とか残しますが、実用的に使用するならやはり通常のT型のラウンドフレットが宜しいかと思います。

今回もオーナーの要望で普通のラウンドフレットに交換します。


今は同じバーフレットの打ち替えは基本的にお断りしています。打つのも大変だから高くつくしプレーヤーは弾きづらいし、メンテナンスもこれまた大変。いいところは一つもありません。


いつものように指板を剥がしていきます。

この時代の特徴なのか100年間の間に削られてこうなったのかはわかりませんが、指板がとても薄いため終始慎重に進めます。下手すると簡単にパキッと逝ってしまいます。


無事にネックが外れました。ダブテイルジョイント部にメイプルのシムが挟まっています。流石に100年の間にネックは何度かリセットされているようです。


1920年代にはタイトボンドではなくニカワ接着されているため、写真の通りタイトボンドが使われていることからもネックリセット経験済みの個体ですね。


いつものアングルで記念撮影。


シムは新しく作り直すので削ぎ落とします。溝に残った古い接着剤も根こそぎ綺麗に掃除します。


角度の修正幅が大きい場合はヒールの内側をある程度予測してノミで削ります。


ノミはよく研いでおき、力を入れずに優しく扱わないといけません。。

そういつも自分に言い聞かせます。


ネックが無事ついたらバーフレットを抜いて溝を整えていきます。このままの溝だと太過ぎてフレットを打つことができません。

(ネックリセット中はいつも写真を撮り忘れます。)


溝はこの縞黒檀の薄板を使います。


こんな感じで薄さなどを調整しながら1本の溝に薄板を2枚。あとで2枚の薄板の間に溝を掘り直してフレットを打てば、元の溝の中心にフレットを打てますのでピッチが狂うこともありません。


余計な部分は上も横もカット。


調弦時にネックが真っ直ぐになるように指板をサンディングで修正したら、、


普通のラウンドフレットを打ちます。

ここまででかなりの時間を要します。


ナットは新しいフレットの高さに合わせて新調します。


フレットが変わると顔つきも現代的に変わりますね。


サドルの高さもいい感じになりました。


もちろんですが、センターズレも無し。


ヒールも隙間などはなく、塗装修正もしていませんが綺麗に仕上がりました。


こちら側もOK。


均一に鮮やかにフレイムの杢が出た素晴らしいハワイアンコアですね。ここまでびっしりと杢が出た個体はなかなかお目にかかれません。もちろんサウンドも素晴らしく、ため息が出ちゃいます。


 

1924年製、101歳のギターです。今回のリペアによって状態も良くなり、素晴らしいコンディションで現役続行です。今後も誰かの手によってリペアされながらギターとして100年後も存在していることを願います。

ハワイアンコアは正式名称はアカシアコア。ハワイ原産のアカシアコアは吹き付ける海風によって木がしなって綺麗なフレイム模様が入ることからハワイ産のアカシアコアに限って「ハワイアンコア」と特別に呼ばれるそうです。ハワイ以外のアカシアコアは一般的にコア、やアカシアコアと言われるそうです。

自宅にホームセンターで買った「アカシア」で自作したチェストがありますが、あれはコアとも書かれていないし、産地も不明、、ネットで検索するとニセアカシアと言う何とも失礼な名付けをされた樹種もありました。

 

 


 

当工房には師匠皆川が長年かけて集めたギターに関わる書物が何十冊もありますが、中でも自分が好きなのがこの木材活用ハンドブック。

この木材でベンチを作りたいな、あ、こっちの材も良さそうだなー。床はこの木材でフローリングにして、、テーブルはこれで1枚板にして、、そんな妄想をしてしまいます。

母方の実家が木材店で父親は木工職人なのでその血が騒ぐのだと思います。

でも、ギターではなく家具や自宅の内装などの想像ばかりするのは音響特性を気にしなくていいからでしょうか。。。

 

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

ネックヒール折れ修理 / Ovation 1778T


 


 

毎週必ず、土曜日に山口と交互にブログをアップしているのですが、何かとドタバタしており先週は、すっ飛ばしてしまいました。

週の途中で上げようかと思ったのですが、そのままスルーしてしまいました。

もし、ご心配してくれた方がおられたなら、すいませんでした。

では、気を取り直して今週のブログへまいります。

 

普段あまり見ない珍しい修理は、順番を飛ばして公開する事があります。

これも上げた記憶があるのですが探しても見つかりませんでしたのでので、順番通りに書いてみようと思います。

Ovationのヒールが折れてしまう原因はこのボルトを固定する金属のベース部にあります。

これ以前のカマンバーと言うロッドが入ったネックも同じような金属がヒール部分にあります。

Ovationは、ネック角度をシムを使い調整する為、ギャップが生じます、その状態で力加減せず締め込むと割れます。

カマンバーの場合は、シムを貼れる金属部分があるので、正確にシムを貼ってやればボルトをある程度強く締め込んでもヒールは割れる事はありません。

 


割れ部分に充填されている接着剤を取り除けば


ピッタリ付くのではないかと


思っていました。

 


 

ある程度きれいになれば良いようなお話だったので、もっとしっかり接着し直してその後、塗装をきれいにすればよいかとも思ったのですが、おまかせ頂きましたので思い切って出来るだけの事をやってみる事にしました。

真っすぐ切り落として、ネック材と同じメイプル材で繋ぐことにしました。

途中、途中の画像がありませんが、反対側の面も同じように真っすぐにします。

プレッシャーの無い状況をいただいておりますが、それなりに必死なのだと思います。

 


 

くっ付けて調整が済んだ状態です。

このヒールの底面の調整は少し難しかった記憶があります。

ちゃんとセンターが出るようにするのは勿論、ボディとヒールをピタッとフィットさせたいですが、そこまで削ってしまいますと角度が付き過ぎてしまう状態でしたので、そうならない手前のところで決めなくてはいけません。

 


 


 


 

 


 

昔、Ovationの代理店で修理をやらせて頂いておりましたので、昔のモデルであれば分かっている事も多々ありますから、出来る修理も多いと思っています。

ですが、電気の事になりますとどうしようもありません。

まだ沢山Ovationを使っている人もいるし、中古市場にも多くあるのだから昔の電気パーツを作ってくれないものかと思ったりします。

一歩譲って、昔通りでなくても外見が同じプリアンプで良いんだけどな。

 

フレット交換 / Gibson CF-100


スタッフの山口です。

今回はGibsonフローレンタインカッタウェイ、CF-100のフレット交換です。

フレットは Made in USAのニッケルシルバーを打っていきます。材質は高さ、幅などは数種類の中からお選びいただけます。

 


指板の幅よりも少し広くフレットをカットします。


ネックバインディングがありますので写真のように両端のタングをカットする必要があります。


専用カッターでタングの端を切り落としたら、、


やすりでタングの残りを削り平らにします。素手でやるとフレットを押さえつける左手が痛くなるので手袋してます。


アールは指板よりもキツめにします。

タングの端もキレイになってフレット打ちの準備完了です。


肝心の打っている途中を全カットです。(撮り忘れ)


フレットの端は斜めに落とさず極力立てて、チクチクしないように丁寧に丸めてあげるのが皆川流です。


交換前からオーバーバインディングでしたが、フレットバインディングが残っている場合も基本的にオーバーバインディングでフレット交換します。

 


フレット磨きまで終えたらナットを新調してサドルを調整して出来上がり。


Gibsonは指板幅に対して目一杯外側に弦を通しますので斜めに落としすぎると弦落ち確率アップしちゃいます。


ヴィンテージギターのフレットは磨きまくってピカピカすぎるより適度に磨いている程度の方が質感がかっこいいと思います。

CF-100は個人的にGibsonのイケメン枠です。

ヴィンテージの貫禄がある姿にフローレンタインカッタウェイ、これは萌えます。。

ヴァイオリンもチェロも全て同じようなルックスをしてますが、ギターのルックス、デザインは本当に多岐に渡りますよね。見た目だけでも買ってしまう楽器ってギターくらいじゃないでしょうか。

 

ファッションとして、楽器として、とにかくギターっていろんな選び方、楽しみ方があってすごいな、、とつくづく思う今日この頃です。

今回も最後までありがとうございました。