2017年11月

ネック折れ修理(塗装修正なし) / Gibson Hummingbird

今回は、いつもとは少し違う趣で折れています。

塗装修正無しで仕上げます。

とても強い力で折られた様な感じに見えます。

破片が欠損しています。

Gbsonは割りと塗膜が厚めな物が多いので、割れ部分の段差を修正しても剥げずに済む事も多いです。

破片はオーナーが家で見つけて、送ってくれました。

三角に塗装が剥げている所。

破片部分の塗装がはげてしまいましたが、これでしたら塗装修正をした場合は、全く気にならなく仕上がると思います。

破片は使える事が多いので、あきらめず拾って持っていて下さい。

 

 

フレット交換(リフレット)/ Gibson J-45 ’50s

オールドJ-45のリフレット(フレット交換)です。

 

奥に半田ごてが見えます。

フレットを抜く際はフレットを半田こてで暖めて抜きます。


リフレットの際は、その精度を上げる為に指板(フィンガーボード)を調整してから新しいフレットを打ちます。

※オールド等、場合により一切指板の状態を変えずリフレットする場合もあり


その際に気をつけなくてはならないのは、指板だけで精度を出さない、必要最小限で調整する、削り過ぎない、こういった事を念頭に作業します。


オールドの場合は、オリジナルの状態を出来るだけ保存する(のこす)事も考えます。

 

 

 

このJ-45も所有する、オーナーのものではありますが、必ずと言っていいほど後世に受け継がれていきます。

楽器ですので、弾き易く、自分好みの状態で楽しむ事が1番の目的です、それが出来なければ持っている意味も半分以下になってしまいます。

オールドであれ思い切った事をやる事もありますが、何でも型にはまった様な仕事ではなく、私達修理者はその都度、何に重きを置いて接するかを考えなくてはいけないのかなと思っています。

 

 

トップ割れ(クラック)修理

割れ(クラック)の修理は写しても伝わり難いので、あまり写さないのですが、これ位段差があると分かり易いです。

割れの修理をなるべくきれいに仕上げるには、修理前の対処の仕方が一番大事です。

・なるべく早く修理に出す。

・割れている所を手で触らない。(ほこりをつけない)

割れている所を汚さないと言う事ですが、修理に出すまでここにテープを貼っちゃう人の気持ちも分かりますが、ラッカー塗装の場合はテープに塗装が反応してしまうので、それもやめましょう!


平らになるように何度か仮止めをして、確認してから、接着します。


トップはクランプが入るので、接着は割合やり易いですが、両側から挟んで平らになる様にクランプが出来ないサイド、バックは難しいです。

うっすらと汚れが筋になって見えます。


クリート(割れ止め)を付けてあります。

接着がしっかり出来ていますので、やらなくてはならない事ではありませんが、保険の意味合いでオーナーさんの安心感の為に。

でも、このオーナーさん「乾燥したらまた割れるんでしょ?」って、ちゃんと分かっています。

 

ブリッジハガレ修理 / ウクレレ

最近は、おかげさまで大変忙しくさせて頂いて、ウクレレの修理は、一旦やめようか考えていたのですが、コンスタントに修理の問い合わせがありますので、もう少しギター以外も頑張ってみようと思います。

(ウクレレに合わせたクランプも作ってあります。)

ギター以外の修理の受付が、一旦出来なくなるかもしれませんが、その際はご了承下さい。

ウクレレは小さい分何かと簡単そうに感じますが、中に手が入らないので、力木の修理や、ピックアップの取り付け等、とてもやり難いです。

それでもやることはギターと大差がありませんし、料金も高くする訳にいきませんし・・・

・・・グチになってしまいました。ウクレレ修理もまだガンバリます!

 

ボディサイド割れ修理 / Martin


 

ボディサイドの割れの修理です。

始めに撮り忘れて、すでに着けてしまっています。

ボディ(トップ、サイド、バック)割れを接着した際は、しっかりと接着剤が割れ部に入れば、補強は無くても構わないのですが、かなり広範囲で割れていて、割れ部も中よりですので補強を入れて完了させます。

ボディ割れを接着する際は、段差が出来ない様に気をつけますが、戻りきらない部分があったりと割れ修理の一番難しいポイントです。

補強があると安心感があるためか、補強の有無を気にする人も多いですが、割れの状態や、場所によって割れ自体の接着が難しい事があります、その際の補強には意味があり、その場合は補強と言うより接着出来ない代わりと言う感じですが、安心感も欲しい場合補強を入れることがあります。

書いていて、分かりづらくなりましたが、いろいろなのです、音は聞き分けられるほど変わらないと思いますが、耳が良い人等は、なるべく変わらないようにと要望があれば、補強は入れ無い事もあります。


かなりな安心感をかもし出した、補強になりました。


どんなに平らに着けたつもりでも多少なりに段差がありますので、平らにしてから補強は貼ります。


外側も同じ様に平らに修正します。


塗装修正はしていませんので筋を確認できますが、見ようによってはほとんど気にならないと思います。

 

もう1本、別のギターのサイド割れがあります。


こちらは場所的にやってもしょうがないので、補強は無しです。


接着出来れば、問題なしです。


塗装の修正はありませんが、然程気にならないと思います。

 

ネックリセット / Martin D-18 ’30s

オールドのMartinのネックリセットです。

希少価値の高いオールドですと、高価ですので何かと気苦労もありますが、修理はやり易いので、落ち着いて出来ます。

古いギターに良く見られます、サドルを下げきってしまいますと、弦の角度が足りず、穴からサドルにかけて溝を切ってサドルに弦を近付けて角度を確保していますが、ネックの角度を直すと、この溝が邪魔になりますので、塞ぎます。


溝が付いたままだと角度が付きすぎてサドルに負荷が掛かり過ぎてしまいます。


こちらの修理は同業者からの依頼ですので、最終仕上げは依頼人がやります。


リフレット、すり合わせ、ナットもサドルも出来ているので、フレットエッジを仕上げて、磨けば出来上がりです。


フレットのエッジを仕上げる事で、依頼人のテイストが入る、と言う事ですが、拘りを知っていますので、納得です。

 

指板(フィンガーボード)のアールについて

リフレット(フレット交換)なので、この指板(フィンガーボード)のアールをどうにかしなければなりません。Fenderみたいだ。

ネックの状態をある程度判断する為にバインディング(指板サイド)のラインを見ますが、おそらくそれだけを気にするばかりに、サイドばかり削り落としてしまったのかと想像します。

何故このアールでは厳しいかと言いますと、チューンオーマチックブリッジの場合、フェンダーのブリッジのように各弦ごとに高さを調整出来ないので、バランスが取れません。

しかも下の画像でも分かるように、経年劣化によってブリッジが潰れてますので、尚バランスが反対です。


7.25はこのアールを測るスケールの中で1番深いアール。

1弦と6弦の弦高が丁度よくても他は低すぎて音が詰まります。


古いブリッジは潰れていますので、力を掛けてある程度戻しますが、ある程度しか戻せません。


これをやって割れる事もありますので、やり過ぎない事ですが、あまりお奨めはしません。

こちらは新しい物に交換してください。


指板のアールが直ったら、新しいフレットを打ちます。

指板を削る際もフレットをすり合わせる際も、サイドが落ちないように調整します。


フェンダーのギター等では特にそうですが、指板の中側を意識的に少し多めに削ります、チョーキングの際等に音詰まり等無い様にフレット調整します。


音や演奏に満足する為には、各パーツのバランスが大事です。

 

 

バインディング剥がれ修理 / Martin


 


 


 


 


 


 


 


 

過去のバインディング修理のブログを見ていただいた方はお分かりですが、今回はバインディングは一旦剥がさず修理しました。

剥がす場合も剥がさない場合も、どちらも一長一短あります。

”完璧な修理方法は、この場合ネックを外して、縮んでしまったバインディングはトップもバックも全部取り外します、そして新しいバインディングに交換します、塗装も修正します、そしてネックを戻します。”

が、これでは幾ら修理代が掛かるか分かりません、全く現実的ではありません。

これ以外の修理でも同じ事が言えますが、ほとんどの場合が”丁度良い修理”で、稀に完璧を目指す修理があるのかと思います。

 

 

 

 

ネックリセット / Ovation 1687(Adamas)

Ovation Adamasの場合、ハイポジション部をトップに着けてしまうと、14フレットから指板が極端に折れ曲がってしまいますので、通常その部分の指板は浮かせてありますが、いろいろな理由から着けられてしまう事があります。

確認できるでしょうか、折れてハイポジション部が下がっています。

そのポジションも弾きたい人にとっては不都合で、アダマスらしくない雰囲気でもあります。


浮いている隙間の大小は、個体差があります。

初期型のアダマスのこの部分は全く接着されておらず、その為にあった問題を解消する為に、この後のモデルから浮いている状態のまま接着されるようになりました。


この画像から分かる最初期のモデルの特徴のひとつは、バインディングとトップ材の間に白いラインはありません。

エポーレットが貼られてから塗装されていますので、エポーレットの縁に塗装がかかっています。


ボディが木材じゃ無くてもオールドって、よいです。

 

指板エンドが接着されていない為に出る不具合としては、隙間が狭い場合は、先端が表板に微妙に触れてしまって、ノイズ(共振音)が出てしまう事、指板がふわふわしていますので、そのポジション上での演奏では音に全く腰がない事や、14フレット以降上側に曲がついてる場合は演奏上問題があります。

ネックリセット / Martin


 

弦高が高くなってしまって弾き難くなってしまったら、調整します、調整では弾き易くならなければ修理となります。

弦高が下がらない1番の原因はネックの角度の狂いなのですが、これの修正の方法も2~3通りあります。

文章だけでは分かりにくいですが、ネックは抜かずネックヒーター(アイロン)で矯正したり、指板を剥がしてジョイント部にクサビを打って角度を戻す、あるいはアイロンとクサビ両方使ったりして角度を戻す方法があります。

この方法は決してダメではありませんが、根本的な修理とは言い難く、納期やコスト優先の対応策と考えるのがよいと思います。

ボディが歪んで角度が狂ってしまった分、ネックヒールを削り直してやるのがギターにとってもストレスのない修理でしょう。

大先輩の村山さんは、アイロンは持っていないとおっしゃっていましたので、「アイロンなんてやんね~よ。」と言う事でしょう。

 

ヒールを削りながら、考えるのはサドルの高さ。

イメージとしては、弦高1弦1.8mm、6弦2.4mmとしてサドルの高さ、但しブリッジの形状によっては、どちらかが出すぎたり、低すぎたり、その場合のバランス。

リセット後、リフレットする場合指板のどこがどの程度調整で削れるか、その場合計算上どの位考えと誤差が出るか、リフレットしない場合の多少のネックの反り、歪みの影響等。

このサドルの高さなら思惑通りです。

もうひとつ、ヒールを削りながら何度もチェックしなければならないのは、ネックのセンターがずれていないか。

センターを合わせていると、角度もついて行きますので、とても難しいです。


ヒールは接着しない状態で、テンションがかかっても隙間が出来ないよう調整します。


ジョイントの調整の際にセンターの位置がずれることがありますので、この時も注意します。


ヒールに隙間があるMartinは、アイロンかリセットか迷う余地は、ありませんね。