スタッフブログ

ネックリセット&ナット交換 YAMAHA 12弦ギター


スタッフの山口です。

来ました、12弦ギター!しかもスロテッドヘッド、、。手間がかかるリペアマン泣かせのヤツです。

今回はネックリセットとナット交換のご用命です。


ヒール部分に圧力がかかっていたのかボディとネックの境目の塗装がボロボロですね。せっかくネックを外しますのでここも修正できたらと思います。


このアングルは伝わりにくいんですが、ネック順反りと元起きが平行して発生中です。


ネックの順反りだけでは中々この弦高にはならないですね。6弦側は6mm超えてる、、


1弦側も5mm。こりゃあ弾けたもんじゃないです。


ここまでの症状は中々ないので色々なパターンで状態を観察。1フレットにスケールを当てます。


もう片方を最終フレット置くと12フレットはこんなに隙間が空きます。

なんとかしてあげましょう!

 


基本的にはMartinに近いダブテイルジョイントですのでいつものように進めていきます。


YAMAHAは継いでヒールを作っていることが多いのでネックリセットの際はダブテイルの熱でその接合部の接着剤が一緒に軟化し、そこが開いたり折れたりすることもしばしば。それを想定しながら進めていくしかありません。


なんとか無事に外れてくれました♪


角度を正常にするためにヒールを少しずつ削っていきます。ガザガザだった塗装面の半分以上は削り落とされましたが、まだ少しガザガザが残っているのでそこは修正します。


もちろんこちらのガザガザも修正しましょう。

 


なんとなく綺麗になっているのがわかると思います。


センターはズレは、、、


ないですね!


いざ組み込みです。


こちらはYAMAHAの高級機ということもあり文句なしの真っ黒エボニー、穴も綺麗に埋まります。


実はここからが今回の本番です。

12弦ギターと6弦ギターのリペアで一番大きく手間がかかるのがコレ、ナット交換なのです。料金が少し高くなるのはご理解ください。


通常はフレット交換に伴ってナットを新調しますが、今回はナット溝をオーナーの好みにしたいとのこと。


主弦と副弦の感覚を近づけてほしいとのこと。写真を見て何となく分かりますか?右が作成中のナットで左が元のナットです。


こんな感じになりました。


ナット、サドル、フレット。アコギは消耗品であるこれらのパーツが新しいと見栄えがいいと個人的には思います。


ネックリセットしたのでもちろんサドルも新調します。


 この出しろで6弦側2.0mm、1弦側は1.4mm程。まだ若干順反りしてるのでこのくらいが弾きやすいかと思います。


ヒールはいい感じに綺麗になりましたね!


何となく最初より凛々しく見えます。

 


ジャパンヴィンテージ最高峰の貫禄がありますね!


当時いくらで今はどのくらいするのでしょうか。


ハカランダに挟まれた高級グレードのフレイムメープルがお洒落ですね!


ファンには堪らないであろうサインもしっかりと残っています。


 

このYAMAHAのヒールキャップは構造的にバインディングの領域まで達しているのでとても手間がかかりました。Martinなどはヒールと一緒にキャップも削れてくれるので自然といい感じになりますが、このデザインだとヒールキャップを一度取り外して、ネック角度を修正後、それに合わせてキャップもリサイズ加工して綺麗に元に戻さなくてはなりません。

きっとバックのセンターとヒールキャップが同じフレームメープルで繋がっている方がデザイン的にカッコいいということなんだと思いますが、であればバックセンターのメープルをバインディング領域まで伸ばせばよかったのに、、。

後世に残すべき楽器だからこそ、何十年後かに必ず訪れる修理やメンテナンスのことをしっかりと考えて欲しい!という想いが何となく愚痴っぽくなってしまいました。もちろん言わずもがな、サウンドもナイスギターでした♪

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

ブリッジ交換(ネックリセット)/ Martin O-17

この多少形やバランスが悪くなっているブリッジを作り直して、ネックをリセットします。

ブリッジが出来ましたら、ネックを外し、

綺麗にして角度を調整します。

 

ジョイント内部に白いものが貼り付いていますが、紙きれです。

ネックをセットする際に絶対にヒールが浮き上がらない様にシムを挟んで調整しますが、シムに紙が使われています。

紙は木で作ったシムのように繊維が通ってない為、シムとして使う事は間違い(手抜き)です。

修理屋はおそらくこんなことはしませんので、Martin工場でやられた修理なのだろうと思います。

(Martinでは過去に紙をシムとして使っていた時期があります。)

過去ブログにいくつか掲載しております。

これだけ古いギターですと(1939年製)いろいろと修理が施されているのは当然ですが、修理者の中には真面目な人も不真面目な人もいろんな人がこのギターに関わって来たのだと思います。

紙のシムであったり、指板裏にはスプルースで厚みを調整してあったり…

ローズ指板、マホトップですから指板に下駄をはかせるならローズ系、でなければマホ系が好いと思いますが、トップ側は他にもメイプルのような板でも補修してあったりもします。

こんだけ指摘しているのですから、どう綺麗にしたか見せろと言われると思いますが、大たい気持ちに余裕がない時は画像も無い事が往々にしてあります。

ご了承ください。

 

 

ハカランダ材はなかなか入手出来ません。

もう在庫は僅かになりました。

オーバーサイズでなければ好いですが、古いギターですからオーバーサイズであっても雰囲気は好いです。

 

昔、Martin工場に見学に行った方の話では、ブリッジ修理は剥がさず壊して取り外して、オーバーサイズのブリッジに交換する、と聞きました。

Martinで修理するのだから何やったって公式なのだろうと思いますが…

現在は価値観が昔と違い、すごく細かい事を言う人も居ますから流石にMartin工場もやり方は変わったのではないかと想像しますが…

でも、前にNHKで福山雅治氏所有の大昔D-45をMartin工場で修理しよう!(タイトルは覚えていません。)と言う番組で修理には関係ないヘッドの突板まで交換しちゃっていたような気がします。

私の勘違いなら良いのですが、見ていたその時は、「何やってんの?」 もしそうなら福山さんはどうだったのだろうか、テレビでなければ流石の福山さんでも怒ったのではないかと想像してしまいます。

オールドギターの醍醐味、価値はそれぞれではあるかと思いますが、古いパーツや塗装が残っているからそこににロマンがあるのに…、しかもぷりおーまーちんなのに。

今では流石に、私の勘違いだったろうなと思い込んでいます。

 

 


 


 


 


 


 


 


 

このギターの修理のリクエストのひとつが「ニカワ接着」だったのですがニカワの扱いは全く慣れていません。

それ故、慣れないものは安易に使わない方が良いので積極的には使わなかったのです。

十七、八年前にフランクリンから出ているニカワ接着剤がある事を知り、これなら誰がやっても同じ接着力になると思い、頼まれていないのに1度だけMartinに試してみたことがあります、記憶が曖昧ですが他にも一回リクエストがあった際に使ったかもしれません。

その際に感じたことは、「固まらない、すごく遅い」この理由から、その後リクエストもないし全く使う事はありませんでした。

そして今回、やはりすごく遅いので調べてみれば、消費期限は2年であることを知り、流石に古すぎでしたので、新しいフランクリンニカワを入手してやり直し。

新しく買ったって消費期限は後6ヵ月しかありません、もう一回ネックを取り外して、「さー付けるぞ!」と思いましたが、思いとどまり。

他で硬化具合を観察してからにしましたが、やはりだめでした。

むしろ昔の方がまだまし、すごく遅くても何とか固まりましたが、今回は気温次第で硬化が進んだり戻ったりしてしまうのでとても使えません。

でありますので、当方ではニカワの使用は今後一切ありません。

その際は、ニカワの取り扱いを熟知された方にご依頼ください。

ただ不思議なのは調べた際の評価では、とても良いとダメが半々位だったのはフランクリンであっても何かコツがあるのか無いのか、分かりません。

 

当方の基本接着剤は、フランクリンから出ている「タイトボンド」です。

ニカワのように修理が可能で、ニカワより接着力があり、ニカワのように劣化もしませんし、とても固く硬化しますので音響への影響も優れています。

よろしくお願いいたします。

ボディ破損 / Taylor 314 Left


 


 


 

ボディの割れを接着する際は、出来る限りずれないように接着したいのですが、割れが一筋(1本)だけであっても難しい作業であります。

こうなっちゃっていますと、かなり難しく全部きれいに揃える事はある程度諦めて、どこまで合わせられるか、どこを合わせたらどこが合わなくなるか、どの位ずれるのか、クランプは掛けながら接着出来るのかしら、そして接着本番の時には「あれ?仮止めの時はもっとうまく行ったのにー!」となる所まで考えておきます。

修理は昔から一人でやって来まして、それなりにやるしかありませんでしたが、気が付けばそこに山口の手X2があるでは無いですか!

一人でやろうとしますと手が二つしかありませんから、どうすれば上手くクランプ出来るか、順番はどっちからどうするか、何かジグ作らないとダメかしら?、等々…どうやってったら良いか分かんなくなる時があります。

一人じゃないってありがたい!

 

 

 


 


 


 

この時の見積もりは忘れましたが、塗装はしてありますが色合わせしてないところ見ますと出来るだけ面倒は省いて仕上げたのかな、と思います。

 

 


 

トップが無事だったのは、不幸中の幸い。

トップ板の事をサウンドボードと呼びます。

左弾きの方にとって左用のギターは貴重ですし、まして気に入った物となればなかなか見つかりません。

何につけ、左用の道具は貴重です。

 

左利きの人の中でも、道具は右利き用を難なく使いこなし、そして利き腕は左と言う方もいます。

そう言うバランスって、羨ましいです。

 

 

 

ネックリセット / Epiphone FT-120 Excellente 1960s


スタッフの山口です。

今回もネックリセットですがかなり珍しいお宝ギターの登場です。

EpiphoneのExcellente、FT-120。現行のリイシューも売ってますが、所謂当時の本物は僕も初めて見ました。


アジャスタブルサドルも限界近く下げてますが弦高は高いですね。

皆川ギター工房の出番です。


いつも通り進めていきます。ネックポケットを温めたら指板とトップの間を切り離し、、


ヒートスティックで温めて、、簡単に外れたみたいに見えますが、Gibson系はやはり苦労します。


Gibson系のハカランダは本当に貴重です。


ネックは7pcs。


テープである程度の目安まで印をつけます。ヒールを1mm削るだけでも角度はかなり変わります。


センターズレに注意しながら、なるべく均等な力でヒールを削ります。


塗装がチップしすぎていないかチェックもします。


チップしていたらラッカーを盛って修正します。


今回は組み込む前に記念撮影。


一発勝負のつもりで迅速に組みます。


しっかりと最後までダブテイルが接着できているかの確認もします。何度かシミュレーションをしているので問題なし。


ネックがついたらダブテイルに通じる指板の穴を埋めます。


今回フレットはすり合わせのみ。

 


無事にリセット完了です。


サドルの出方もいい感じに。


弦高もいい感じ。


1弦側もヨシ。


ヒールも無事です。


反対側もOK。


カスタムセルにエボニー指板、サイドバックはハカランダです。


ネックもキルトメイプルが贅沢に使われていますね。スゴイ!


ヘッドストックは工場で一番大きな白蝶貝をドカッと入れました!みたいな感じです笑


 

当時は兄貴分のGibsonを凌駕してしまうような高級仕様で話題になったというこのモデル。

ライバル社であったエピフォンをギブソンが買収した当時は、材やパーツなどはほとんど同じものが使われています。ここからは僕の想像ですが、、当時Gibsonに買収され、Gibson工場に泣く泣く赴任してきた元Epiphoneの職人たちが「Gibsonより良い物を作ってやるんだ!」という気持ちで作られたような雰囲気がこのギターには漂っています。60年代でハカランダの枯渇問題も出てきた頃、Epiphone出身者がGibsonを超える渾身のハカランダの高級機を出す、まさにエクセレントなプロダクトだったのではないでしょうか。ちなみにExcellenteのスペル、最後にeがつくのですが、調べたらフランス語になり、意味は同じで「素晴らしい」とのこと。なぜフランス語のスペルなのかは分かりませんが何か意味があるのかな。

今回も最後までありがとうございました。

 

フレット交換(ナット交換) / Gibson J-45


オールドJ-45の


リフレットを


いたします。

 

お客さんからのご要望は出来る限り答えられる様にやっておりますが、無理な場合は無理になります。

「ブログで見られるのは半年位後ですね。」…→「今書いているのは順番に、3年前位のをかなり薄まった記憶をたどりつつ書いています。」

昔は週1か週2のペースで、しかも山口の分もありませんでしたので、半年~1年前の記録が順番で巡って来ましたが、気が付けば3年分位記録が溜まっております。

「もっと頻繁に書けばいいのに。」と人は言うでしょう。

やってらんないのでございます。

なので、動画などやっている人は、尊敬いたします。

 


 


 

「えー!そうなんですかー」もっと早く見たい~とのご要望がありましたので、忘れないうちに上げます。

但しこのままにしておきますと、3年後に順番が来ると忘れてもう一度アップしていまいますから、このブログが上がりましたら掟により、この記録はDSカードから消します。

 

 

3弦の溝

真正面から写さないと溝が丸く写らない。

4弦の溝

若干歪んでしまいます。

 

今回何故このような画像があるかと申しますと、ナットの溝って難しいんです。

と言いたい為。

弦に対して溝の幅、角度、そして意外と気にしない人が多いのが溝の形。

巷に溢れているギター用ナット溝専用ヤスリって、がんばっても溝は真ん丸にならないんです。

私がヘタなだけかもしれませんが、ツルっとした真ん丸にならないのです。

なので、途中まではナットファイルでやっても途中からは丸棒ヤスリで溝を作ります。

3弦用の丸棒ヤスリは細くて上手くやらないとすぐ折れてしまいます。

ヤスリも安く無いので悲しくなりますが、ツル丸ナット溝の為にはそれを使うしか無いのです。

 


 

 

フレット交換 / Cole Clark


スタッフの山口です。

今回はフレット交換です。

写真はネックジグと言って、アジャストロッドではうまいこと効かないような波打ちや大幅な修正が必要な場合、またノンアジャストロッドの場合はコイツに頼ることがあります。


調弦し実際にギターを弾く際のネック状態を弦を張っていなくても再現できる優れもの。今までもブログに何回か登場していますね。

意外と横になるだけでもネックコンディションはわずかに変わっていることが分かります。

 

 


ナットが底上げしてありましたので丁寧に取り除きます。


ここから3枚の写真は指板修正。


削れるところと削れないところを見れば波打っていたのが一目瞭然です。


修正完了。指板の色がだいぶ薄くなりました。


フレットを打ったら自分的に超重要な工程、フレットサイドの削り落としです。指板サイドを傷つけないよう、指板の端がまっすぐになるように感覚を研ぎ澄ませます。


大事な工程は必死なことが多いので写真を撮り忘れます。

一応企業秘密ってことにしておきます。


しっかりフレットを仕上げていきます。


ゴシゴシ。


アコギはある程度のピカピカさ加減がかっこいいです。


オーナーの指定がありましたのでタスクでナットを新調します。


ナット作りとフレット交換はその職人の腕前が分かるのでその道のプロが見ても高評価が貰えるように頑張ります。


コールクラークのヘッドは出っ張りがあるので慎重に溝切りします。


いい感じになってまいりました。


奥が今回製作した方です。


弦間もヨシ!


ナット調整後にサドル調整し弦高を標準にセットアップします。


フレットの種類はいくつかありますので好みのものを選んでいただけます。


リフレットは完了するととても清々しいです。


一丁あがりです。

 

コールクラークはオーストラリアのギターメーカー、メイトンから独立したクラークさんが2001年に創業したそうです。ネックの仕込み方が所謂スパニッシュ式(クラシックギター式)なのも面白いですね。今回のネックは波打ちがありましたが、このメーカーがネックが弱いとかそういうことではありません。たった一本のギターを見ただけで「あそこのギターはネックが弱い」と、そのメーカーのギター全てを見てきたかのように批判したり語る人がいますが、そういう人はどこか海外旅行に行って入ったレストランが美味しくなかったら「あそこの国の料理はまずい」と言っているようなものだと思います。木工製品である以上当たり外れというか、それぞれ個性があって、だからこそギターは面白いと思うのです。新しいギターは木が若く多少ネックなど動きやすいのはしょうがないと思いますが、弦の張力による変形は弦を緩めるだけで防止できますので、ビンテージにしても新品にしても弦は弾いていない時は緩めましょう。

今回も最後までありがとうございました。

ネック折れ修理 (塗装修正あり)/ Gibson Les Paul

ヘッドが取れてしまう程の激しい折れ方。

意外と簡単に折れてしまいます。

倒れた時には、意外に簡単に折れてしまうネック。

ハードケースに入っていても倒した時は、心して開けないと衝撃に襲われることがある。

 

修理の方法は、次に倒れた時に簡単に折れてしまわない様に周囲まで頑丈に補強するか、折れた箇所を問題無いように接着するか、修理屋によって考えや、方法が違いますが、当方は後者。

 

 

 

 


画像にすると思いの外、すごくよく見えたり。


画像にすると思いの外、良く映らなかったり。


「肉眼で見れば、もっとうまいのになー。」とか。


「画像で見ると、随分良く見えちゃうなー。」とか。

 

撮影の技術があれば良いのですが、合わせて15年前から使っているコンパクトカメラ(Lumix…レンズがにゅーって出てくるやつ)で撮っております。

 

 

 


 

先程の続きですが、当方のネック折れ修理は後者の考え。

理由は、補強しなくても良い接着剤で修理するからです。

補強しなければ面倒が減ります、修理費が抑えられます。

補強して再度折れてしまった場合は、折れ方が面倒になる可能性があります。

補強しなければ、わざわざ元の材料を削り落として新しい木材を足さなくて良いので、ほぼ元の質量のまま変わらない。

ネック折れの修理前後で、すごく質量の差が大きくならない限り音が変わってしまう事はあまり無いと思いますが、気にされる方には、補強無しは良い方法。

我々修理屋は、接着には「タイトボンド」が定番です。

ニカワのように剥がすことが出来、ニカワよりも優秀な接着剤。

但し、ネック折れ修理には少し力不足、その為補強が必要になります。

 

どちらかのサイトの修理料金表では、接着のみの場合は強度が保証出来ないと注釈が付いていた気がします。

タイトボンドでも大丈夫な場合もあれば、将来接着箇所にヒビが入ってしまう事もあると言う事ですが、大丈夫のケースとダメのケース、その差は接着面積の差なのか、修理者の差なのか、オーナーの扱い方の差なのか、分かりません。

ネック折れ修理でタイトボンドを使う場合は、補強がある方が安心と言う事です。

 

 

 

ネックリセット Gibson / Southern Jumbo(1952)


スタッフの山口です。

ネックリセットばかりで申し訳ないのですが、今回も例外なくネックリセットです。次回もネックリセットかもしれません。色んなギターのバリエーションで楽しんでもらえれば幸いです。


弦高チェック。

6弦12フレットで3.3mmといったところでしょうか。


1弦12フレットで2.5mmほど。普通の人なら十中八九弾きづらい弦高です。

一般的に「弾きやすく音も良い」と言われる弦高は2.4mm-1.7mmの±0.2mm程度だと思います。

それ以上だと弾きづらく、それ以下だと弦高が低すぎて音がペタペタする傾向があります。


サドルもこんな感じなのでネックリセットを決断して正解だと思います。

50年代初頭は40年代と似たブリッジですね、この感じ。


Gibsonはセットネック後の塗装なので余計なチップをしないように切り込みを入れておきます。Martinは塗装後の組み込みなのでこの作業は不要です。メーカーによって違うのもまた面白いですね。


いつものようにダブテイルジョイントを温めてネックを外します。


約2時間ほどで外れました。Gibsonはシリアルナンバーにしても仕様にしてもいい加減な印象を持たれがちですが、決してそんなことはありません。


ネックを外して恒例の記念撮影。

指板やボディも無事で何より。ネックリセットはネックを外す工程が一番リスクが高いのです。


ネック角度を適正に直し終え、いざ接着です。

そういえば1952年当時もロッドエンドはまだここなんですね。

 


接着後はしばらく寝かせておきましょう。

ボルトやビスで組み込まれるエレキギターと比べると、アコースティックギターはほとんどが接着剤で組まれていて接着の待ち時間が多いので修理に時間がどうしてもかかってしまいます。


数日後、ダブテイルスポットに繋がるドリル穴を埋めてフレットの擦り合わせ。

ネックリセット後はフレット交換か擦り合わせを行います。


ナットの溝が深かったので今回は底上げで対応。写真をよく見ると分かります。

次回フレット交換の際は交換になると思います。コストをかければもちろん交換も可能です。


サドルのでしろが復活。

んー、ちょっと高めに見えますが、、


6弦12フレットで2.5mm、


1弦12フレットで1.8mmと若干高めなので、調整幅や近々フレット交換をすることを考えれば許容範囲です。


ヒールも綺麗に仕上がったのではないかと思います。


反対側も。ちなみに塗装修正は無し。

塗装修正が必要な場合はあと1週間以上はかかります。


ヴィンテージギターを主に扱うショップ在庫が僕の主な担当なので、GibsonやMartinのヴィンテージギターをたくさん修理させていただきとても光栄です。が、そんな高価なギターを派手に壊してしまって絶望する、という悪夢にうなされることがよくあります。

ハッと目覚めて「夢で良かったー」と脂汗を拭きながら安心しますが、それが自分への良い戒めにもなっていますので、職業病と思って付き合っていくしかないと思う今日この頃です。

今回も最後までありがとうございました。

 

ピックガード交換 / Gibson Dove


Doveのピックガード


崩壊


きれいに直して交換します。

セルのベッコウ柄ピッグガードやバインディング、全体的に茶色っぽくてその中に白っぽい柄が入っているのですが、その白っぽい部分から崩壊が始まります。

湿気を吸ってしまうようです。

私のベッコウ柄のセル材料もしばらく使っていなかったら、しっとり湿気って壊れていました。

置いておく場所は高いところに置かなければいけませんでした。

セルの材料は現在はほとんど入手不可能なのでもったいなかったです。

 

 


 

先程の画像でも確認出来ました、割れも直さなければいけません。

当然力木も剥がれていますので、良く調べてしっかり接着します。

トップの力木剥がれは、剥がれている位置によっては物理的であったり、小さいボディのギターではサウンドホールから手を入れて作業するには不可能な位置が剥がれている事があります。

トップ側の力木を確認するには鏡を使わなくてはならず、配置も複雑です。

届かない部分等は鏡を見ながら長いものを使って作業しますが、昔の慣れない頃は私の不器用さも相まって笑っちゃうくらい難しかった記憶があります。

 

トップ側の力木修理は、バック側より数段面倒な場合がございます。


 

こちらは、(有)バードランド製のピッグガード

切り出します。

なかなか難しいです。

画が思った位置に収まらないのです。

 

 

 

 


 


とても雰囲気は、よろしいです。

 

Gibson のP/Gの多くはMartinと違い指板に沿わせてサウンドホールの位置を合わせなければなりません。

どちらかがずれれば位置がおかしくなります。

Gibsonの場合、Martin と比べますと、いろいろと面倒が多いです。

 

ネックリセット / Gibson J-45


スタッフの山口です。

今回は訳ありのネックリセットです。1950年代のGibson J-45、昔のGibsonは色んな「訳あり」があるのです。

トップが凹み、ネックが元起きしているのが上の写真でも分かると思います。写真で分かるというのは相当角度が狂っていると言えます。


今回の訳ありポイント。

この時点で「あ、こりゃあ、、やってんな、、。」

という嫌な予感がしています。


ひとまずいつも通りの手順でネック外しに取りかかりましょう。


指板を温めて、、


トップから切り離します。


Gibsonは1時間以上の長期戦になることが多いです。


意外とあっさりとネックが外れましたが違和感満載です。トップ板が指板とダブテイルの間に食い込んでいます。これではジグで力をかけてもネックは外れないはずです。


こんな感じですが、途中で気づいて指板を剥がすか迷いました。ですが前回のリセット時に割れていたのか指板に沿ってトップが浮いてネックが素直に外れたのでそのまま続行するのが最善と判断しました。


ひとまず再度接着してあげましょう。

 


その間に本来のダブテイルジョイントにするためにネック側を修正します。指板に3mmほど足してありましたがグズグズでしたので一旦取り除きましょう。


トップが食い込んでいたところをマホガニーで埋めます。


これでOK。


取り除いた分3mm厚足します。

あとはボディ側のトップ板を溝に合わせて切れば本来のダブテイルジョイントに修正できます。


説明が下手なので分かりづらいですが、、写真を見てもらえればなんとなく分かりますかね汗

あとは黒く塗装します。

 


ネックリセットでは何度も組んでは外して微調整を繰り返します。


角度をつけた分、指板のハイフレットが下がることが判明したので下駄を履かせます。


ボディ側、ダブテイルジョイント部分のトップ板も切って取り除いてあります。


調整を繰り返して少しずついい感じに。


センターズレも問題なし。


この写真のように指板が極厚になっているGibsonは今回と同じ訳ありの仕込みの可能性大です。


今回フレットはすり合わせでOK。


最後にサドル溝修正。今回のネックリセットによってサドルの高さが復活しますのでそれにしては溝が浅すぎるためです。


いい感じになりました♪


以前、師匠の皆川も僕もJ-200でこのトップ板を挟み込んだジョイントに遭遇しています。ヒールとボディの帳尻が合っていますので生産時にGibsonが一時期だけ行っていたようです。

理由は分かりませんが、おそらくなんらかの理由で工程の変更を試み、ネックとボディを組んでからトップ板を貼り、最後に指板を貼り合わせたのだと思います。当時の職人さんたちの中の誰かが「あれ?これじゃあ修理の時にネック外せないしヤバくね?」みたいな一言があって即時元通りに戻したのではないかと想像できます。

こういうミステリーがGibsonには歴史に散りばめられていて、それがまたこのメーカーの面白いところでもあり魅力だったりします。

今回も最後までありがとうございました。