2024年05月

ネックリセット&サドル溝修正 / Martin D-28 1962


スタッフの山口です。

今回も名器を任せて頂きありがとうございます。みんな大好き、Martin D-28の1962年製。コンディションに関係なく即売れ必死のご時世ですが、弦高が3.5mm近くありますのでまともなショップなら流石にこのままでは販売できません。


サドルの出シロというよりはロングサドルとサドル溝が残念なことになっていますのでここもカッコよく仕上げようと思います。


いつも通り15フレットを抜いて、


ダブテイルジョイントのスポット目掛けて穴を開けます。


トップの塗装を痛めないように、指板だけを温めるために養生して、


伝統的な温め方で指板とトップを離します。LEDは使えません。


いざネックを外していきます。


Martinはホントにお行儀良く外れてくれることが多いです。


恒例の記念写真。


シムが仕込まれているのでネックリセット履歴があると思われます。


古い接着剤が残っていては木工精度を高められませんので綺麗に除去していきましょう。


ん?溝が少し右寄りですね。

実はよくあることです。


綺麗にしたら、


ネック角度を適正に直してあげましょう。ノミでざっくりやっちゃう腕のいい職人さんもいますが自分は地道に擦ります。時間もその分かかりますが、削り過ぎるリスクを最小限にし、ヒールとボディの民着度は見栄えに大きく関わってくるので。


仕込む前のシム調整、ネックリセットにおいてとても繊細で手間のかかる作業の一つです。


シュミレーションを繰り返して、いざ参ります。


木工精度が高いと密着させてからの接着速度はとても早いので、真剣勝負。


シュミレーション通り、センターズレも問題なし。


元々のナットが悪いと騙されてしまいますが、ちゃんとしたナットに交換してしっかりとセンターが合うのが正しいです。


ネックがついたら残念なブリッジ溝を修正します。


エボニーは埋木もビシっと決まって跡が気になりません。


こんな感じに。


スケールがズレているヴィンテージギターもザラにありますので、元の溝位置は当てにせず、正しい弦長を測ります。


溝切り。これも意外と難易度が高いと僕が思う作業です。緊張します。


どうでしょうか。見違えるほどカッコよくなりました!サドルの高さもベスト!


今回は省きましたがブリッジプレートも修理しました。


弦間のバラツキは今回の修理だけでは修正できませんがセンターがズレてないのでOK。


指板とトップ、


ヒールのこちら側、


こっちも、


バック側もピッタリと合っています。


ハカランダらしい木目です。


こちらも、


こちらもNICE!


ヘッドストックに違和感、、。こんな細かったっけ。ペグはオリジナルでこれまたカッコいい!


これ1本持っていれば他はなくても大丈夫。そんなナイスギターを後世に残す仕事を任せていただいて光栄です。

感謝。

今回も最後までありがとうございました。

 

フレット交換 / Gibson ES335


リフレットしましたら、牛骨にて交換します。


このギターにとって何度目かのリフレットになるかと思います。


見ての通りバインディングがこのように削られてしまうと、とてもやり難いのです。


インレイは外さずそのまま削っても良いのですが、薄くしたくない場合には一旦はずしておきます。

 

Gibsonのバインディングは元々フレットバインディングと言う形状なのですが、リフレットする際にはオーバーバインディングにリフレットされます。

ですが、こちらは何が気に喰わなかったのか、削って削って…フレットにオーバー出来ない位バインディングが削られちゃって、バインディングの上にフレットが乗せられません。

どーにもなんないのですが、出来る限りカッコ悪くならない様にがんばります。

 


 


 


 

通常のリフレットもフレットのエッヂは出来るだけ斜めにし過ぎない様に仕上げる為、フレットエッヂの角はきれいに取って演奏中チクチク痛くないようにしますが、今回は通常通りでは絶対にエッヂが痛いので、いつもより何回も削っては触って確かめて削って…

フレットのエッヂは斜めに削り落としてしまえばこのような面倒は無いのですが、見た目がカッコよく見えないのと手抜きしている感じがやはり好ましく無いのです。

 

インレイは指板を調整した分、僅かですが収まるスペースを掘り下げて戻します。

売らないで持ってればな~。

って、私も思っているおじさんの一人です。

 

指板貼り直し / Ovation 1994-4

 

ネックに歪みがありますが、指板が剥がれている為です。

このような場合、剥がれ部分に接着剤を注入して部分的に直すか、一旦剥がして貼り直すか。

貼り直す修理が良いように思いますが、貼り直す場面はあまりありません。

①ネックの反りがそれほどでもなくアジャストロッドの聞き具合も悪く無い。

②指板がしっかり接着出来ている。

この条件があれば貼り直さなくてもしっかり修理出来ます。

 

 

カマンバー(Kaman bar)というアジャストロッド

ただ、②の条件はどうやってわかるのかと申しますと、経験しかありません。

そしてこのOvation はきれいに剥がせます。

②だった場合は、すごく頑張ってもあまりきれいに剥がせないんです。

Adamasのトップも貼り直す場合やカマンバー以外のネックリセット等もちゃんと取れるものと、すごく取り難いものがあります。

途中まで行ってやめちゃうのも最後まで頑張っちゃうのも始めてしまうと、どちらにしてもきれいに行かないので剥がそうなんて思っちゃダメなのです。

どうしても取らなければならない時は頑張るしかありませんが、そうでない場合は無理にやらない方が良いのです。

Ovationはニカワやタイトボンドで作られていない為、剥がれません。

 

 

 

では何故きれいに剥がせちゃうのかと申しますと、考えなくても分かります。

接着が弱いのでリセットするのがベターでございます。

接着剤はエポキシの類で、接着力が弱い原因は色々考えられますが、またいずれ。

 

アダマスのトップ修理の場合は修理前にチューニングして音のチェックが出来る状態でない事が多い為、修理後にどの程度良くなったかは分かりませんが、楽に剥がせてしまう物はやはり音にも影響してると想像できます。

 


指板は一旦


剥がしましたので、


指板面も調整して

新しいフレットを打ちます。

この時期のOvationのネックは、塗装が施されていないので仕上げが楽に済みます。

 


このヘッドの突板は何という素材か忘れましたが、傷が付くと直らないので、いつも以上に更に気を付けて。


トップ割れ修理はスーパーグルーでしっかり接着しますが、跡は目立ちます。


Ovationには90年代丸々携わりましたので、感慨深さを感じます。