2025年04月

ネック折れ修理(塗装修正無し) / Martin OO-15


薄皮1枚で繋がっているようです。


過去にも修理しているようですが、接着剤が少なかったか、弱かったようです。

接着剤は何が使われていたかは判別できませんでしたが、タイトボンド等であれば補強が必要…

ネックが折れてしまった時は、焦ってくっ付けたりせず、出来るだけ現状維持して頂ければ助かります。

Martin やGibson等のようにラッカー塗装の場合は、粘着テープ等で固定しますと塗装が反応してしますので、そのまま持って来て頂ければ幸いですが、心配な場合は何か布等で巻いて保護してください。

ただこの状態で布やタオルを巻きますと、ケースに入らなくなるかもしれません。

大げさに保護しなくも、折れている部分が擦れたりしなければ大丈夫です。

 


弦を外して


ペグを外している途中で


ヘッドは取れてしまいました。

このように分離してしまった場合は、移動中ケースの中で動いたりしない様に、もしくは動いても大丈夫なように何か巻いていただければ助かります。

 


 


 

塗装修正無しの場合は、仕上がり具合が区々になります。

修理実績の塗装修正無しのページを覗いていただけますと、いろいろな例がご覧いただけます。

塗装膜がしっかり厚みがあれば、塗装修正無しのプランでも剥げずに割ときれいに仕上がる事があります。

接着後は手触りに違和感がないように研く為、元々塗装が薄かったり、2度目の修理等の場合は、ある程度剥げてしまいます。

 

 

 

レリック等のエイジド加工されたものが好きな人は、修理跡を塗装修正して隠さない方がカッコ良いかも。

 

ネックリセット&リフレット / Martin O-18


スタッフの山口です。

今回は最近滅多にお目にかかれなくなったオールドのMartin O-18のネックリセットとネックリセットとセットだと1万円引きでお得になるリフレット(フレット交換)です。


弦高を調整するサドルが限界です。

よくあるブリッジを削っちゃった、ということは今回はないようです。

 


トップに養生をして指板のハイフレット付近、トップに乗っかっている部分を温めます。


熱々でニカワまたはタイトボンドが軟化すればこのようにナイフを入れることができます。


15フレットを抜いて開けた穴にヒートスティックを差し込み、今度はダブテイルジョイントの接合部を温めます。

穴を開けることにびっくりする方もいると思いますが、マーチン社に持ち込んで修理したとしても同じように15フレットに穴を開けられちゃいます。むしろMartinは修理ができるように設計していて、わざとダブテイル部分に少しだけ隙間が作られています。


無事にネックが外れて恒例の記念撮影。

指板もこれ以上なく綺麗に剥がれました。


ネック角度を修正した分、傾斜をつけたエボニーの薄板を貼り合わせて底上げします。「くの字」で元起きしている場合はこれが不要の場合が多く、ジョイント部付近のトップが沈んでいるケースではこれが必要になることが多いです。


少し飛んで、ネックが無事についたらリフレットに移ります。


フレットのエッジ落としは個人的には勝負所の工程です。斜めに落としすぎるのは皆川ギター工房では御法度です。


また少し飛んで、、フレット交換で高さが復活したら元のナットは低すぎますので新調します。


弦間、形状ともにMartinの特徴を捉えたナットになりました。

ブリッジ同様、ナットにはそれぞれのメーカーに合ったディテールがあります。MartinにGibsonみたいなナットがついているのはとても違和感を覚えます。

先日Gibsonによくあるジャンボフレットが打ってあるMartinを拝見しましたが、それもとても違和感がありました。


弦高も2.5mmになり弾きやすくなりました。


ロングサドルは特に高くなりすぎないようにネック角度を調整する必要があります。ロングサドルブリッジの構造上、高すぎるサドルはブリッジの割れを招く確率を大幅にアップさせてしまいます。


センターもバッチリ、、


6弦側のヒールもバッチリ、、


1弦側のヒールもバッチリです。綺麗に仕上がりました♪


小ぶりなのに圧倒的な貫禄。

家のソファで弾くならこれに勝るギターは無いのでは無いでしょうか。

かっこいい!

ネックが長年の弦の力によって起き上がってくる「元起き」には、14フレットで「くの字」になっている場合と、指板がトップに沈み込む場合の2パターンがあります。指板がトップより強ければトップが沈み、トップ(ブレーシング含む)の方が強い場合は14フレットを起点に「くの字」になります。一般的に「くの字」の場合は目で見れば元起き症状として判断しやすいと思いますが、トップが沈んで角度が狂っている場合はその症状から元起きと判断するのは素人目には分かりづらいかと思います。

元起きはアコースティックギターの宿命と言われてきたことから、これまで多くのメーカーや製作家が、弦の張力に負けないよう、ネックブロック周りを強化した設計にチャレンジしてきました。でもネックブロック周りが強いから安心、、かと思いきや、余裕で元起きしてたりします。

アコギの場合は特に顕著ですが、弦の力による不具合はそのギターの弱いところに発生します。ネックが反らない、強いネックだから、と安心しても、弦を張りっぱなしにすれば、ネックに不具合が出なくても、その分他の場所(ブリッジやトップ)に不具合が出ます。

僕の相棒のMartin君は毎回しっかり弦を緩めているのでここ10年、コンディションの変化が一才ありません。至って良好。

「弦を張っておかないと逆反りする」、というオカルトがネット上では散見されますが、しっかりシーズニングされている木材で作られているギターであれば、弦を緩めたことで逆反りしちゃう、なんてことはありません。もし弦を緩めたことでトラスロッドに関係なく逆反りしちゃうようなギターであれば、そもそもそれはハズレのギターです。

いつもと同じ結びになりますが、弾かない時はなるべく弦を緩めましょう。

今回も最後までありがとうございました。

バック板欠損 / Gibson J-45

ボディバックの一部が欠けております。

全体的に見ますと、この部分。

 

ライニング部分も欠損しています。

ちゃんとフタが出来るように平にします。

 


 

途中の画像が無いですが、付け足す板は直線で合わさるように直します。

そして中の力木は剥がれているだけでなく、裂けている部分もあります。

見落とすことなく全て接着します。

欠損部分は新しい板を付け足していますが、クリート(割れの境目に付ける割れ止め)は、あまり意味がありませんので付けません。

ボディ割れ修理のクリートは、「もっと接着剤が入ればなー!」と言う時や、「修理やりましたよ!」という証に付けます。

今回のこちらの割れ修理は破損ですが、

ボディ割れ修理の原因1位は「乾燥」ですので、割れ修理をしても乾燥させれば、また割れます。

お気をつけください。

 

多少濃いめになりましたが、全体的には雰囲気は悪く無いと思います。

ピックガードが無くてもそれはそれで皆とは違くて好いです。

 

ジャック周りの割れ修理 / Gibson CF-100E


スタッフの山口です。今回はジャック周りがグダグダになったCF-100Eの修理です。

写真の通り、ピックガード用のセルロイドか何かで長年誤魔化してあったようです。


アッセンブリーをしばらく外しておきますが、外す前にどのようであったかを必ず写真を撮っておきます。


セルロイド板を外してみたらこんな感じでした。


一応、補強はしてあるようですが、もちろんこちらも新しくします。


まずは嵌め込む板の寸法を決めて穴を長方形に整えます。


四隅をドリルで開けてから、


ミニのこで切り取り、


やすりで綺麗な長方形にします。


ここでマホガニーの補強を4枚用意します。長さはボディ厚の内寸で作りました。


ここに補強を2枚、内側から貼ります。


こんな感じで一日置きます。


こんな感じになりました。


同じように残りの2枚の補強を中心部に貼りもう1日経過しました。


ここからは長方形の穴にピッタリに用意したサイド板を貼っていきます。


1mm厚の板を3枚重ねて3mmくらい、ツラが合いましたね。


先ほど映っていたけどスルーしたジグはこのように使います。


内側からみるとこうなってます。


ペグを巻いて内側と外側から挟み討ちで圧力をかけて接着させます。


1日経過しました。


しっかりと蓋ができたようです。


あとは塗装を切りのいいところまで剥がして、、


こんな感じに。


木目を合わせたり描いたりします。


着色前だとこの写真のように見て分かりますが、このあと着色すれば意外と気が付かないと思います。

最後は着色とラッカートップコートで完了です。(写真見つからずここで終了)汗

 


 

修理屋は写真のような専用ジグを必要とします。どうしてもサイズや修理箇所が毎回違いますので、そのほとんどが自作になります。

ジグ作りはその時の修理一回のために作ることもあり、とても面倒なことではあるのですが、もし優秀なジグが完成できれば、その時点で修理の半分は終わったようなものです。それだけ修理屋にとってジグを考え、作り出すことは大切なスキルの一つであると言えます。

このペグを使ったジグを作った人はきっといろんな便利なジグも作っただろうことが容易に想像ができますね。

本日も最後までありがとうございました。