トラスロッド

ロッド交換 / Gibson B-25 1960s


スタッフの山口です。

今回はロッド交換です。捻じ切れてしまっている悲惨な写真からスタート。修理屋としては腕まくりをしてしまうような画像ですがオーナーからしたら青ざめてしまう画像ですね。


ラッカー塗装でもGibsonは塗膜が厚いので指板とネックの境目をナイフでなぞっておきます。こうすることで指板を剥がす際に少しでも塗装の剥離を抑えられます。


指板をなるべく元の位置に戻せるようにダボを数カ所仕込んでからネックアイロンで温めて接着剤(ニカワやタイトボンド)を軟化させます。

 


ネック側の木目をよく見て順目の方向でヘラを入れて剥がします。時間をかけて綺麗に剥がれました。


埋木をノミで取り除いてその下に隠れているロッドを掘り当てましょう。


サビついたロッドのお目見えです。錆びていて癒着しているので慎重に。錆びているのは木が呼吸している証拠。


溝に残った錆や塵を取り除きます。


この鉄芯のトラディショナルなアジャスタブルロッドはGibsonが発明したモノです。


ネックの強度増し+アジャスト効果のある一石二鳥なナイスアイデア、今ではほとんどのメーカーで採用されていますね。

ちなみにMartinがアジャストできるロッドになったのは1985年製からと言われています。それより前の個体は単なる補強ロッドで調整(アジャスト)はできません。


適した長さに切断したら切込ダイスでナット用の溝を作ります。

ちょうど良いところでナットが閉まるように何度が長さを微調整します。この写真のようではまだ頭が出過ぎです。


ロッドエンドは60年代からここに収まります。カタカタと動かぬようエポキシ樹脂を隙間に充填します。


溝とロッドのしなりに合わせて作製した埋木でロッドを仕込みます。


埋木をネック上面を平らにしたら指板を戻します。


指板側とネック側にたっぷりのタイトボンド(またはニカワ)を付けて戻します。溢れ出るタイトボンドをせっせと拭き取ります。

指板がズレずにうまく戻れば塗装修正は不要ですがどうしても段差ができてしまう場合は平らにして塗装修正を施します。その後フレットをすり合わせたら完成。前述したナットからの頭の出具合もOK。

アジャスタブルロッドのアジャストとは「調整」という意味です。たまにネックの不具合を「直す」という感覚でロッドを触ってしまう人がいますが、ロッドはあくまで微調整の役割。調整のレベルを超えたネック不良はロッドでは無力。無理になんとかしようとすると冒頭の画像のようになってしまいますので注意が必要です。

またアジャスタブルロッドは個体によって動き方も微妙に違います。反りを治そうとしても変にねじれてしまう場合もあったり、逆にロッドの調整だけで驚くほど改善する場合もあります。「ネックがおかしいな」と感じたら調整も含めまずはお気軽にご相談ください。

今回も最後までありがとうございました。

 

Gibson 拡張されたロッド調整部の掘り込み修正


スタッフの山口です。

今回は珍しい修理を。写真を見るとロッドを調整する彫り込みが大きく広がっているのが分かりますでしょうか。ヘッド裏まで貫通しかけているために白いパテで応急処置が施してあります。今回はこの拡張された掘り込みを本来の大きさに戻すミッションです。


0.5mm厚のマホガニーの薄板を掘り込みのアールに合わせ、それを重ねて接着していきます。木工の修理で同じ素材の薄板をミルフィーユ状に重ねていく方法は度々用いられます。


ちなみにロッド頭に付いてるのは接着剤が付かないようにただ適当なキャップを被せているだけです。


今回は掘り込まれた体積が前後で均等ではないので、まずは根元部分に5枚、、


その後に先端側に4枚重ねて足しました。ロッドカバーも大きめの別のものに付け替えられていた為ビス穴もなんか変なところにあいてますね。


ミルフィーユをヤスリで削り落としそれっぽくタッチアップするとこんな感じになります。


近くでよーく見ると継ぎ足し部の境目が分かります、、がどうせロッドカバーで隠れるのでわざわざリフィニッシュせず筆のタッチアップとラッカーを盛って磨くだけでOK。そしてビス穴も本来の位置に戻しました。

ナットも戻して問題なく調整できるか確認。見た目も違和感なく我ながら上出来です♪

本来の大きさのロッドカバーをつけて完成。

普段は見えない部分ですがネックの強度にも関係してきますので必要な修理と言えます。ただ修理し終えてから思ったのですが、、なぜ掘り込みは拡大されたのでしょうか、、。ロッドを締め切っても奥に掘り込むのなら分かるのですが、、。うーん、謎。

こんな「どうしてこうなった!?」みたいなギター、たまにありますね。

なんとこんなナイスギターの修理でした。そして次回はこのギターのブリッジ作製と毎度お馴染みのネックリセットをお届けします( ´∀`)

今回もご覧いただきありがとうございました。

 

ロッド交換 / Gibson Dove

ロッド交換します。

ネックアイロンで温めて指板を剥がします。

折れちゃってます。

 


ネックを外して角度も直します。

指板が剥がれているので、ジョイントが見えて都合が良いです。


ずっと前から馴染のバイク屋でロッドエンドは 溶接してもらっています。

随分前からもう乗ってないけど、DRAG☆ONと言うバイク屋さん。


長さを決めて、切ったら…


ナットの溝を切ります。

こんなに溝を付けなくても良いと思うのですが、オリジナルがそうなっているのでマネします。


埋木はウォルナット。

なんか見た目が好いです。

 


指板を貼る時にちょっとだけテンションを掛けます。

指板はネックの元の位置には収まらず多少、時には大きくずれます。

指板を剥がす前にフレットの位置で3か所、ダボを打つ位置を決めますが、ズレるのは剥がした時点で反るのだと思います。

出張ったとこは仕方ありませんので、削って合わせます。

 

削れば、色も合わせなければならず、塗装修正は必須です。

うんと古いギター等は、指板がズレずに元の位置にビタッと戻せる事もありますが、なぜかは分かりません。

剥がしても反らないと言う事なのでしょうが…ピタッと戻る事が腑に落ちないのは変な感覚。

 


指板面も修正してリフレットします。


リフレットしましたら、ナットも作り変えます。


Gibsonはネックとボディ一緒に塗り込んでいますが、見た目がおかしく無ければボディ側は塗装しません。


昔は、わざわざボディと一緒に塗り込んでいましたが、手間だし特に意味も無いので必要が無ければやりません。

 


 


 


 

 


ネックに角度が付きますと、14フレット以降が下がりますので、指板に厚みを足します。


 


弦高は1弦側から6弦側にちょっとずつ高くなっていくようにバランスを取ります。

ですのでサドルは6弦側が少し高くなっているのが、見た目も良いのですが、ブリッジの厚みの差等、何らかの理由でバランスが逆になってしまう事があります。


70年代Gibsonも中々味わいがあって好いです。

自分の70年代J-45もとても良く気に入って弾いていたのですが、甚く気に入ったお客さんに買われてしまいました。

 

 

ロッド交換 / Gibson ES-335

ネック割れ修理とロッド交換します。

ロッド頭が折れた場合にロッドは交換せずに、中へ掘り込んで、通常より深い位置(奥まった位置)にロッドナットを取り付ける方法があるのですが、折れるほど締め込んだロッドにナットを取り付けてもほとんど締まらないでしょう。

 

Gibson はトラディショナルロッドですので、埋木を削ってロッドを掘り出します。

仕上がりまでの間の画像が全く無いので、こちらで雰囲気をご想像下さい。

 


割れと削れた部分を直して塗装。


黒のような濃いこげ茶のような、微妙な色合いです。


指板を貼り直した後は、ある程度削って合わせますので、塗装は必要になります。


指板面の歪みを修正してリフレットします。


フレットバインディングはオーバーバインディングでリフレットになります。


オーバーバインディングの方が変な不具合が出ないので、理にかなっています。


リフレットしましたので、ナットも作り変えます。


先ほどの深い位置と言うのは、通常のこの位置は折れて無くなってますので、ナットの下あたりまで掘り込んでそこへナットを付けます。

そこへナットを取り付けるだけでなく、そこから更にネックの修理をすることが前提であれば、ある程度有効な方法かもしれません。

但し、アジャスト出来るように修理できるか否かの判断があってからの方法と言えますし、方法によってはロッド交換とそれほど差が無い料金になります。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

アッセンブリーは、お客様がご自身でとの事ですので、作業はここまで。

当方ではアコギと同様の内容でしかエレキはお預かり出来ない為、引き続き当方でやる場合、この先はエレキ専門のすごく上手い人に外注になります。

 

 

トラスロッド交換 / Harmony H1260


前回のギターの続きです。

アジャストロッドを交換します。

画像の様に、ロッドを締めると締めた分、ロッドが出てきてしまいます。


ロッドを交換する為にまず指板を剥がします。

錆びた鉄芯が直に指板に触れています。

ロッドエンドにはエンドブロック等無いので、ロッドエンドを下に折り込んであるのでしょう。と思いきや、この錆びた鉄芯が埋木代わりでその下にロッドが埋まってました。

 


取り出した左側が埋め鉄(埋木代わり)で、右側が上下逆においてしまいましたが、ロッドエンドっぽいのがナット側、エンド側は何も付いてません。

どこも固定している部分がありませんが、ナット側にあったのだろうト想像する以外ありません。

しかも溝がたわんで無くほぼ真っ直ぐなので、反りは修正出来るわけ無いと思ったのですが、もしかすると、ネックが反った時にはロッドも一緒に反るから、そしたら締めてまた真っ直ぐにする、と言う考えかな。

そんな事、出来るのかな。

ゴムじゃないんだから、そんな引っ張れないし、ロッドエンドが留まって無いんだから・・・押すのか?いやいやいや押したら余計に反っちゃう。

・・・私の頭では分かりません。

 

 

 

溝を一旦埋めて、もっと深い位置に、たわんだ溝を作ります。

 

ギブソン式のロッドを作って仕込みます。

埋木はウォルナット。


見るからに安心感の出た、ロッドナット部分。

 


リフレットもして、とても良い状態。

ネック角が付いて、指板のハイポジション部が下がった分、厚みを付けてあります。


楽器は弾きやすくなると、音も良くなります。

演奏に余計な力が必要なくなり、楽器のパフォーマンスが引き出せます。

 

ロッド交換 / Morris WJ-50

ロッド交換です。

マーチンタイプのロッド交換、不具合が出たり、折ってしまったりするのは、ほとんどトラディショナルスタイルのギブソンタイプなので、こっちは割りと珍しいです。

サウンドホール側からロッドナットを回しますが、折れてナットはありません。

 


 

新しいロッドに交換しました。

このロッドは、単純に交換するだけなのでロッドの交換そのものは、とても簡単です。

ネックの角度が狂った場合は、ネックを一旦外して角度を直しますが、これに関しては指板を剥がして、ジョイントが露出しましたので、ヒールにくさびを打って半強制的に角度を修正します。(丸部分、ダブテール下はおまけ)(くさびに使ったスペーサーはOvationのシムなので、硬くてつぶれたりしない。)

大昔は指板を14フレット(ジョイント部)から切り取ってこのようにクサビを打って角度を修正する方法もよくやられていたように思います。

おそらく現在より専門のリペアマンが少なかったのかなと想像しますが、これでしたらネックを外すよりいろんなリスクが少ないですし、手っ取り早いです。

ただしその場合、指板を切り取ってしまうので、跡が残ります。

正しい修理方法は有るが、万人にとって正しいかと言えば、そうとは限らず・・・見た目はとりあえず、弾き易く、なるべくお金が掛からず、ギターにとっては強度が保てればよい場合があったり、勿論お金がかかってもなるべくきれいに、ギターにとっても正しくやりたい人もいる。

こちらのギターは、ロッドを交換してまたこのギターを使えるのならば修理したいとの旨、角度は割りと悪いのは分かっていましたが、これ以上お金を掛からない様に、私が忖度した修理。

余計なお世話だと言われてしまいそうですが、この修理で結構な料金が掛かかってしまう事と、指板は全部剥がしますから切り取らずに、この方法で対処できると見込んで。

 

指板を貼り直す場合は、指板修正、フレット交換は大概必要になります。

クサビを打った分、隙間が出来ますので、その部分は詰め物をします。


貼り直した跡はある程度ズレますので、削って合わせて、塗装修正します。


削った部分は色が取れますので、色も合わせます。


リフレットしましたら、ナットも作り直します。


Gibsonじゃなくてコレがイイの。

ぼくらおじさんは。

 

ロッド折れ(交換) / Gibson

アジャストロッドのナット部が折れてしまっています。

コストの掛からない方法としては、折れた奥の部分の木を掘って露出させたロッドにまたナットをはめる方法がありますが、締め切って折れたロッドにナットを付けてもあまり意味がないので当方ではその方法は採用していません。

この場合は、折れたロッドは取り外し交換します。

このモデルのトラスロッドはGibsonのトラディショナルなタイプで、仕込み方が新しいのですが、やる事は同じです。


トラスロッドは長さを合わせて作ります。


当方のロッドエンドはGibson より大きく、知り合いのバイク屋で溶接してもらっています。


ロッドはチューブで覆います。

錆び難くなり、効きもスムーズになります。


メイプルで埋め木します。

 


指板は剥がしてしまうと、ピタッと元の位置には戻りませんので、削って合わせます。


削りましたので、塗装も直します。


指板を貼り直した際は、指板上の精度も狂いますので、指板を削り直して、リフレットします。


フレットバインディングは、オーバーバインディングになります。

ロッドはナットから出っ張らない位がカッコよいかと思います。

ご自身でやってみる事は、よいことですが、無理は禁物です。

全てアジャストロッドでネックを直すのは不可能です、アジャストロッドで調整できる範囲は一部だけですので、その際は専門ショップにご依頼下さい。

 

Framus 5-024 / トラスロッド交換

ヘッドを繋げたら、全く効く気がしないアジャストロッドを交換します。

Gibson等では絶対にありえないですが、埋め木がスッポっと抜けました、よく見ると埋め木がほぼ真っすぐ!?

だってロッドがほぼ真っすぐなんだもん。

 

そしたら溝だってほぼ真っすぐだから、アジャストロッドは効く訳ありません。

ロッドがちゃんとたわむ様に溝を直して仕込みます。

埋め木もたわみに合わせて作ります。

アジャストロッドのトラブルは、調整し切ってそれ以上締められないにも関わらず更に締めてねじ切ってしまう場合や、ロッドエンドが緩んで締めても締めても全く効かない場合があります。

ナット側でねじ切らないように注意は出来ますが、エンド側は注意できませんので、当方のロッドエンドは溶接してもらい、更に仕込む際にはエポキシにて固定します。

こちらのページの 3/5 ほど下がったあたりで当方とGibsonのロッドの比較画像が見られます。