ボディ(トップ、サイド、バック)

ボディ剥がれ / Ovation 1990

Martinはよくバインディングが剥がれますが、Ovationの場合はこのようにボディとトップが剥がれます。

ネックリセットも並行して進めます。

 

修理する箇所によりますが、この場合は邪魔になりますのでパーツ類は外して作業します。

丸いマイナスのネジ頭のようなものは、1/4ターンファスナーと言う呼び名の電池ボックスホルダー、1/4回転した所でオスメスが嚙み合って電池ボックスが固定されます。

その右上にちょこっと見えているのはプリアンプのパネルとVoノブ、これも当然外します。

 

 

接着後は多少修正も加えて自然な感じで出来れば完了です。

ネックリセットが出来ましたら、フレットのすり合わせ等、調整します。

 

 


 

このモデルは 1990年のコレクターズシリーズ Ovation 1990 で、オベイションが一番ノリノリだった時代。

16フレットジョイントで、24フレットあるデザインは1988のコレクターズシリーズから89、90と3モデル続きました。

丁度バンドブームの時代でエレキみたいにアコギを弾く人も沢山増えた時代っだった気がします。

スプルースやシダー以外の奇をてらったトップ材を用いたモデルとしては最初のモデルで、スーパーシャロウ199S-7、ディープボウルカッタウェイ1990-7の2タイプ。

杢目を強調した見た目ですから、みなさん良い杢目の物が欲しいんですけど、バーズアイがちょぼっとしか入ってないのもあって不公平感があるなと思う日々でした。

バッテリーボックスがまだ1/4ターンファスナーで留まっていた頃のOvation は自分の若かったころの思い出等と相まってとても好きな時代のOvation でございます。

 

 

ボディサイド割れ修理 / Gibson J-45

ボディサイドの割れです。

とても長い範囲で割れています。

上の画像でも分かりますが、割れはずれて段がついています。

割れ修理の際には、このズレを出来る限り無くして接着したいのです。

トップの割れを接着する場合は、平らなもので挟んでクランプしてやればほぼズレは無く接着が出来ますし、然程力が必要無ければ強力磁石で挟む事も出来るのですが、このようにサイドやバックの場合はそれが出来ない事が多いです。

接着するには割れ部分に接着剤が行き届かなくてはなりませんが、「接着剤を付けてから、割れ部分のずれが無いようにちゃんとそろえて、クランプ、あ、ちょっとずれたから直さなきゃ…」何てことやっている暇はないのです。

一発でズレ無くクランプ出来れば問題無いのですが、そんなことは出来ないので、ズレていない状態を作ってから接着します。

「ピタッとしていたら接着剤が入らないではないか。」とお思いの貴兄、スーパーグルーを使うのです。

所謂、瞬間接着剤の類です。

コツはありますが、これの粘度の低いものなら毛細管現象の原理で接着出来ます。

Gibsonのラッカー塗装はスーパーグルーの付いた跡が研いても消えずに残ってしまう場合がある為、ボディの内側から接着剤を入れられればそうします。

 

しっかり接着剤が入れば補強はいらないのですが、一応格好つけたいなら補強を付けます。

割れがすごく長いのでカッコつけも沢山必要です。

私の場合はサウンドホールから手を入れてノールック作業。

 

 

画像だと直ってない様に見えてしまいます。

撮り方変えてみる。

割れの筋が目立たないようにするには塗装を木地まで剥がして塗り直しますが、今回はそれは無しです。

 

 

 

 

楽器が新しければ新しいほどキズや修理の跡が悲しいですが、ずっと使い続けて行くうちにキズも増え、修理も必要になる事が出てきます。

キズや修理跡も使い続けた歴史の一部と思えば更に愛着も湧いて来るのではないでしょうか。

 

ブリッジプレート交換(トップ矯正)&ネックリセット / Gibson L-1


スタッフの山口です。

今回はGibsonのL-1。フラットトップが出始めた頃のものですが、トップが弱くアーチトップみたいになってます。


この頃のLシリーズはトップ板が薄いのに、大きな音を求めるプレーヤーは弦のゲージを太くしていったためそれに対応できずに姿を消していったモデルの一つです。


トップが薄いのでまともにブリッジプレートを裏側から取ろうとしても、ナイフがトップ面を突き破ってくるリスクがあるため、今回はブリッジ接着面もグズグズだったこともあり、表から削りナイフを入れることにしました。


こういうことですね!こっちの方が安全と判断しました。


スプルースのブリッジプレート。今はスプルースをブリッジプレートに使うメーカーはないと思います。


メープルに交換します。サイズもトップの補強のため多く作りました。サウンドもこちらの方が締まりが出る印象です。


トップが薄すぎるので、ブリッジプレートの接着とトップの矯正を同時に行います。


白熱球で内部の温度を上げていきます。初めの1日はたまに切って温度を下げ、またつけて、を繰り返します。その後は1週間くらい放置。


1週間以上経ったのでトップを埋木。


いい感じにトップがフラットに。写真じゃわかりづらいですが。


埋木は木工好きの人は好きなはず。


気持ちいいのです。


ブリッジを戻して、


ネック外して角度を適正にして、


テーパーをつける板を作って、


指板に厚みを足して、


ネックをつけます。ここらへんはいつも書いてるのでサクっと。

センターがズレていないかは途中途中でも確認します。

ネックが着いたら今回は指板修正も行います。フレットが浮いているところがあまりにも多い場合は一箇所ずつ直すよりもこちらの方が得策と考えています。


元々のフレットは汚れや塵を取り除いて打ち直し、その後すり合わせを行います。


このタイプのブリッジ強度を考えると背の高いサドルはお勧めできません。


弦高はバッチリいい感じになりました。


中々お目にかかれないGibsonロゴです。


アコースティックギターと聞いてこれを思い浮かべる人は少ないと思われるルックスですが、何となく大人っぽいルックスに惚れ惚れしてしまいます♪100歳の風格という感じでしょうか。

今回も最後までご覧いただきありがとうございまいた。

 

 

ボディ割れ修理/ネックべた付き直し / Martin D-28(ボディ編)


落としちゃったんだと思います。


当時、伺ってはいるのだと思いますが、忘れてしまいます。


何故、壊れたかかは関係なく、

それに向き合うのみでございます。

ネック折れ修理の場合は、2通り見積もりを出すのですが、ボディ修理は塗装修正無し仕上げが基本になります。

割れ修理の修理跡は残る旨は伝えまして、ご納得されればそれ以上の見積もりはありません。

酷く割れている場合で削ったり、足したりするような修理は塗装修正有りの見積もりを出します。

 


割れ修理跡が残ります。

 


画像になると、粗が非常によく写るので困ります。


実際に見た時や、別角度から見れば多少良く見えます。

 

言い訳に終始していますが・・・。

普段製作をやる人ならバックごと交換しちゃえばきれいに難しく無く出来てしまうのだと思いますが、うちの場合は出来る限り部材は交換しないやり方ですので、割れてずれている部分を平らに戻さなければなりません。

力を入れて「パチンッ!」と戻ればラッキーなのですが、そうは簡単には戻りません。

亀裂部分の出っ張りが上下逆になってしまっていますから、力を入れて戻せる所までナイフでちょっとずつ削って調整します。

亀裂部分に隙間が出来てしまってはいけないので、ホントにちょっとずつ。

それも大変なのですが、このギターのようにサウンドホールから手が入るギターならまだましです。

小さいものは見た目が大したことない割れでも、修理自体はすんごい面倒な場合が多々あります。

 

 

 


中はこんな感じです。


当然力木も剥がれています。


掃除をする前にいじってはいけません。


掃除しました。

力木剥がれの見積もりをする際等、ホコリが隙間に入り込んでしまわない様に、ホコリも一緒に接着してしまわない様に掃除が先です。

ちなみに結構なホコリに見えますが、この位のホコリなら全然大したことありませんよ、全然。

 

 


ピックアップが付いています。


コードはボディバック6弦側の角に這わせます。


コードは根元でネジネジにならない様に、ピーンと張りつめない様に、ギターを振って音が出ない様に留めます。


次回はこのギターのネックべとべと直しです。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25(最終回)


スタッフの山口です。

とうとう6週目になりました、Morris W-25。青春時代これ弾いてたなぁーと聞こえてきます。

 


完成間近にレフティーへの変更となり、ピックガードを早速製作です。アコギはこれを反転したものにしないとですね。

 


Morrisのピックガードは製作したことがないので本家マーチンのピックガードを目指します。ピックガードが変わるだけでも高級感が出ます。分かる人なら「お?ピックガードの雰囲気いいじゃん!」「XX年代のマーチンに寄せてるねー」などというマニアックな会話になるのです。


ナットもレフティー仕様に。普段と左右逆の作業になります。逆にやるだけ、なのにとても手間取ってしまいます。


一般的にはレフティーモデルは価格上乗せで高く売られていますので近年の多様性、ダイバーシティを目指す社会にはフィットしていないな、と思います。


弦間も形もしっかりとマーチンのように。

 


サドルの溝も一度埋木処理を施し、弦長を測定、補正して掘り直しました。


写真は載せていませんがフレットを擦り合わせたのでサドルは少し低めになりましたが、許容範囲です。


レフティーチェンジ完了!どうでしょうか、なんとなくギターから滲み出てくる高級感、、。ピックガードもいい感じです。

自分もオーナー様には及びませんが愛着が湧いてきました。


自分の中で「ブラックジャックギター」と命名。かっこいいです。


サイドは逆に傷を隠すため少し着色。

トップと同じく、潔くそのままにしたほうが良かったかな、と少し後悔。


内側もこんな感じです。

正直、想定より良い仕上がりで満足です。

Before
After

2年以上お預かりしましたが無事に修理完了です。見てくださいこの面構え。

レフティーの違和感を消すため画像反転。

どうでしょうか。この高級感?風格?

トップの色を黄色く着色し馴染ませたら逆に勿体無い、と考えた当工房のこだわりが伝わりますでしょうか。

壊れたら直せばいい、そしてそれは隠さなくてもいいのではないか。傷跡はそのギターの歴史であり、またそれがまた個性となっている。傷跡は「男の勲章」という価値観を体現したようなギターですね!

裸で持ち込まれたのでたまたま工房で遊んでいた高級感のあるハードケースに入れて納品完了!

オーナー様にもとても喜んでいただき、私たちも喜びと達成感で満たされることとなりました。このギターもオーナー様の心意気も当工房の気概も、全てプライスレス。お父様も喜んでおられると嬉しいですね!

1ヶ月半の長編修理ブログにお付き合いいただきありがとうございました。

今後とも皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の伍)


スタッフの山口です。

今週で第五回となりました、Morris W-25のボディ破損修理。いよいよ納期も迫ってきた頃の様子です。

バインディングを新しくしたところはどうしても色が異なってしまうため、まずはバインディングを焼けたように色付けします。


焼けた様に見せるために配合した塗料を皆川氏は作り置きしていますが、それを使ってしまうといつまで経っても自分で作れませんので見様見真似で作りました。

なんでも初めは真似です。真似して真似して、いつか新しい道が開ける。ギター演奏もギター修理も同じです。


ブリッジは元々付いていたものを戻すだけです。1年10ヶ月ぶりにご対面。ここまでくるのにそれだけ長い期間を必要としました。

毎日このMorrisだけを修理していれば数ヶ月で完了できるかもしれませんが、それでは完成までの期間、無収入になってしまいます。また、他のお客様の納期が全て後ろにズレてしまうため、他の修理の合間合間に進めなくてはこういった大掛かりなご依頼はお受けできないのです。


前回トップの塗装は剥がし済み。今回、ブリッジの接着は本家のマーチンと同じように塗装が乗って無い状態で接着しますが、塗装前につけてしまっては磨けませんので、先に接着部のみマスキングします。


この年代のMorrisなどの国産ギターはこの手間を省くため、トップ全面に塗装し、ポリウレタン塗装の上から瞬間接着剤のようなものでペタっとブリッジを貼ってあります。

アコースティックギターの音は、弦→サドル→ブリッジ→トップ板(サウンドボード)の順で弦振動が伝達し、生み出されるものです。


このように手間をかけてブリッジとトップ板を木材同士でニカワやタイトボンドで直接密着させるのと、手間を省いてブリッジとトップ板の間に瞬間接着剤とポリウレタン塗膜が入る接着では、音の良し悪しに差が出るのは当然と言えます。

 


トップは下地を先に吹きますのでまずはトップのみを残しマスキング。


トップの下地が硬化したら全体にトップコートを吹きます。バックも割れていましたが筆でタッチアップし木目を馴染ませたためいい感じですね。ウレタン塗料の食い付きを良くするために、ボディ全体を荒らします。


塗装スタンバイ中。白っぽくなっているのは表面を荒らしたから。


皆川工房特注の塗装ブースで吊り下げます。


トップコートを吹き終えたら完全に硬化するまでしばらくはこのまま。


ブリッジの接着面はマスキングして塗膜がありませんのでこんな感じに。ブリッジを貼る前に塗面を水研ぎしバフ掛けをします。


バフ掛けが済んで鏡面仕上げになりましたので、満を持してブリッジ接着です。


完成が見えてきてウキウキでヘッドのお掃除。


ペグを戻して、、


いい面構えになりました。


修理跡がここまでハッキリ分かると逆にお金をかけて修理した感があってカッコイイと思います。

アコギではあまり見たことのないルックスですね。


ヨシ!あとは元のピックガードをつけて完成だぁぁぁ!

、、と喜んでいたのも束の間、お客様から「左利きなのでせっかくだからレフティモデルにできないか」とのご相談が。追加の見積もり料金と納期+1ヶ月をご了承いただき、いざレフティにチェンジすることになりました。

ということで次週の最終回は「Morris、レフティに変更する」の巻です。

とうとう完結します。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

ボディ破損 /Morris W-25 (其の肆)


スタッフの山口です。

今週もモーリスの画像を見ていただきます。タイトルの漢数字も「其の肆」という馴染みのないものに。(4=肆だそうです)

写真はトップ板を既に付けてルーターでトリムとバインディング部分を削り落としたところです。


皆川工房ブログあるあるですが、肝心なところの写真を撮り忘れました。トップを貼り合わせる大事な部分の写真がいくら探しても見つかりません(汗)

大事な工程は必死になっている場合が多くよく撮り忘れます。

 


地道な作業が延々と続きます。ネックリセットなどと違い、こういう製作に近い修理は普段あまりやらないことが多いので何度も立ち止まってしまいます。


トリム作り。


今回は元と同じく本物の貝ではなくパーロイドで。


最後に外周のバインディングです。


おお、見慣れたアコースティックギターの形になりました。


バインディングは始めはスクレイパーで落とします。


トップが汚れてしまいましたが大丈夫です。

バックとサイドも合板ですがなんとか表側の第一層が持ち堪えてくれました。擦るうちに中の第二層であるベニヤが出てくると厄介なことになります。

粉だらけになるので人が少なくなった夜を見計らって、工房の外でひたすらゴシゴシ。昔のモーリスやヤマハの国産ギターは塗膜が薄いことが多々ありますが、剥がすときはポジティブ要素になります。ただ通常の修理の場合は塗膜が厚い方が助かります。

次回はとうとう塗装に移ります。そろそろ皆様の「またモーリスか、、」という声が聞こえてきそうですが、、

あと2週分は引っ張れると確信しておりますのでどうかお付き合いの程宜しくお願い申し上げます。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の参)


スタッフの山口です。

とうとう3週目に突入しましたが、まだ道のりは遠そうです。

写真は折れたXブレイシングを整えているところ。


修理は極力使えるところは生かします。一般的にオリジナルに近いほうが楽器修理は良いとされていますので今回も継木して直します。


直角も出ていい感じ。


ほら、いい感じです。


何となく出来そうな気がしてきました。


仮加工したトップ板をはめてみてさらに希望が見えました。


ここで先週予告しましたオリジナルジグの登場です。


長ーいクランプを用意して、、


こんな感じで。


サウンドホールから入れられるジグの大きさには限りがありますので、中で組み立てられるようにする必要があったのです。

簡単な作りですが、バックである底面に置きながら組める、というのはボディー内部での作業には便利。というのがこのジグのいいところですが、たいしたものではなく恐縮です。


うん、ちょうど中が見やすいです。

これは今後もエンドブロック付近の修理に使えそうです。


来週はいよいよここを塞ぎます。

自分の中ではピッタリとブックマッチできるか一番心配していた工程ですが果たしてうまくいくでしょうか。

次週もお付き合いくださいませ。なにせ2年間の記録でございます。

 

今週も最後までありがとうございました。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の弐)


スタッフの山口です。今週も早速Morrisボディ破損修理の続きを見ていきます。

破損部の反対側もパックリと剥がれていましたがここは剥がれだけですので接着しちゃいます。

 


内側も綺麗に仕上がりました。

破損部の修理にこちらが開いている方が都合のいい場合は敢えて先には直しませんが、今回はここは直しても修理がしづらくなったりはしないと判断し先に直しました。。


問題はこちら側。単板であればこういった割れ方はしません。二層目はかろうじて割れていないのは不幸中の幸いです。全部割れていた場合、皆川氏に助け舟を出していたと思います。

元のライニングは使用できないのでノミで削ぎ落としました。


接着剤で合板の表裏の一層目を直します。


こういったジグは作る時は手間ですが、一度作っておくときっといつかまた使える日が来ます。1年後か10年後かはわかりません。


ライニングと一緒に崩壊してしまっている合板の一層目を補修します。


ビフォー画像がないですが、こちらのバックも補修してからライニングを仕込みます。


この一般的なアコギのライニングはわざわざ材からは作りません。この形で売っています。これだけを作っている会社がどこかにあるのかもしれません。


元のライニングと色が若干異なりますが、修理した部分がハッキリわかると言うのは悪いことではありません。車もギターも修理歴の隠蔽は禁物なのです。


バック側はこれでOK。と思いきや、接着が甘かったようでサイドがまた割れちゃいました。


トップ側は同時に力木も直してるのでカオスな画像です。


バックの力木剥がれも閉じてからより簡単ですのでこんな感じに。

 

修理には専用のジグを、そのギターと症状にあったものを自作しないと修理できない場合が多々あります。クラフトマンは設計が変わらない以上は毎回同じジグを使用しますが、リペアマンの場合は多種多様なサイズや形状と、それぞれ違った壊れ方をする為、都度作らなければ対応できないのです。

次回(其の参)は写真に写っている今回の修理のために作成した「山口オリジナルジグ」の登場です。

大したものではありませんが、、どのように使うかは次回をお楽しみに。

 次週もこの続きを予定しています。今しばらくお付き合い願います。敬具

ボディ破損 / Morris W-25 (其の壱)


スタッフの山口です。

今回はこれまた衝撃的な写真からスタートです。中々見られない壊れ方です。予想するにサイドからの衝撃によって大破したといった感じでしょうか。


欠けてなくなっている部分が震源地の可能性大。こちらはオール合板のモデルですので人間で言うと複雑骨折状態だと思われ、先が思いやられます。


エンドブロックはそのまま使えそうですが、、大変そう。


皆川氏と全交換するか、継ぎ足して修理するか長い時間をかけて相談した覚えがあります。


ネック角度は悪くないのと、恐らくダブテイルジョイントのようにネックが外せる構造で作られていないと判断し、お客様とも相談の上、破損した部分を継ぎ足して修理することに。


ここまで状態が悪いとどこから手をつけるか迷ってしまいますがなるべく無駄のないムーブをしたいので、各部の状態をよく診て、考えてから取り掛かる必要があります。

破損部の反対側も剥がれていたのでそのまま接着できるところは最初にとりあえず。

オーナー様より初めにお問い合わせをいただき「これは時間も費用もかかる修理です。何より修理代でこのモデルの元となっている本物のMartin D-28が新品で購入できる額です。それでも修理しますか?」との問いに「父から譲り受けた大切なギターですので構いません。修理をお願いします」とのこと。

そうとなれば腕まくりをしなければなりません。人から見れば安価なギターであっても、お客さまにとってプライスレスなものなのであれば当工房としてもプライスレスな仕事を。

2年という長い修理期間に気が変わってしまうかもしれないノリのお客様だったら断っていたかもしれません。楽器の原価を大幅に超える修理はお客様との信頼関係がないと難しいです。経営上、納品ができなければ大損害となるから。今回のお客様は小まめに連絡もつきましたし、何よりこのギターに対する並々ならぬ愛着が感じられましたのでお受け致しました。

 

こうして2年間の長い旅が始まりました。写真データも膨大で工程も多いので、何回かに分けてアップしていきたいと思います。今日はこの辺で。ありがとうございました。