2018年08月

ブリッジ貼り直し / Martin D-28s

こちらのギターは前回と同じギターで、いろんな事をやりましたので、画像があるところはアップしていきます。

ブリッジを貼る際は、接着面を双方とも平らに調整します。

面は細かく磨いてしまわず、荒らしたままの状態。

接着材はたっぷりと、クランプはバランス良く5箇所掛けます。

 

ブリッヂにすき間がある場合、剥がさずすき間に接着剤を差し込んで圧着する人は多いですが、その場合、ブリッヂは反っている為、いくらがんばってクランプしても密着しませんので、無意味です。

”リペアマン志望の君が得するコーナー”が時折織り込まれるから、僕のブログは見逃さないようにね!


すき間に接着剤を入れて圧着しても、またはがれてしまうので、その場合はクランプはせずに、接着剤を十分に充填して、すき間を塞いでしまう他無いでしょう。


この後はアジャストロッドの無い、ネック反りの修理を後日紹介します。

 

 

ピックガード交換 / Martin D-28s

黒ガードはここまで歪む事は無くとも、張り直せる事がほとんど出来ませんので、作り直します。

マーチンクラックと呼ばれているP/Gサイドの割れ。

これも修理します。

割れ部分は段差が出来ない様に、出来るだけ平らになるように、接着します。

 


このP/Gは、つや消し塗装のリクエスト。

つや消しは初めて。


割れの内側は、クリート(割れ止め)を一応貼ります。

しっかり接着できた場合は、無くても大丈夫ですが、修理した証、みたいなものです。


ピックガード作製 ←の手順はこちらで見てみてください。

 

フレット交換 / 古い国産ギター


 

リフレットです。(フレット交換、指板調整、ナット交換、他調整)

ピックガードは浮いてしまっていたので、貼り直します。厚みのあるP/Gですのでリフレットの際は外してあると都合が良いです。

一見 Gibson のDaveですが、グレコのギター。

塗装がウレタンなので、やはり雰囲気は違いますが、ぱっと見Dave。良く作ってあります。

40年近く前は、Gibson 等は買えませんから、こういったギターが私達に夢をみせてくれました。

この方、GibsonのDaveも持っていて、グレコも大事にしている、素敵です。

物の価値は、携わり方で違いますが、思い入れのあるものは値段は関係ないです。

 

 

 

なかには、「二十何万円以下はギターじゃない。」等と言う同業者もいますが、では、それ以下は何なのか教えて欲しいです。

この人とは面識はありませんが、割と有名な同業者なので知っていますし、私の師匠筋の所にも居た人なので、間接的に繋がっちゃっていますが、これからも私と接点が無い事を願います。

現状はちゃんと伝えないといけませんけど、大事にしているから修理したいのに、悲しくなる様なこと平気で言う人が居るんです。

でも昔、アメリカの中古バイクに乗っていた時は、そこの店主も辛口でずばずば言うが腕も良いので、納得していた自分を思い出せば、頼りがいがある気持になるのは分かる気もしてしまいます。

毒舌、辛口だとその方が 「この人、ちょっとすごいのかな。」等と考えてしまいます。

 

 


フレットのエッヂは、一本ずつ丁寧に角を取ります。


リフレットの際は、基本的にナットは作り直しになります。

(流用する場合もあり。)


リフレット後、多少弦高が上がることがありますので、状態を見て、弾き易い弦高がキープ出来なくなるようでしたら、リフレットは出来ません。


何年か前のギブソンより、こっちの方がよっぽど、Gibsonらしいピックガードです。

 

ブリッヂはがれ修理 / Gibson J-160E

ブリッヂが浮いて隙間が出来てしまったので、貼り直します。

ブリッヂと一緒にめくれて凹んでしまった部分があります。

ブリッヂの底面同様、凹んだトップ板は足して、ブリッヂと密着できるように平らにします。

アジャスタブルブリッヂの場合、サドルの動きがきつくならない位置を確認する事を忘れてはいけません。

 


Gibson のブリッヂにはボルトが打ってある事が多いのですが、これはありません。

ブリッヂピンの両サイドに丸のインレイが付いていればそれがボルトの目隠しです。

(最近はボルト無しのインレイ付きもあり)


こちらは、エレキ弦を使いますので1、2弦のポールピースはこの高さになります。

フォーク弦を使う場合は、1、2弦のポールピースをうんと下げてバランスをとります。


当方と1番古い付き合いのショップ店長から聞いた話しだと、ゆずの北川さんの67年か8年のJ-160Eは売った時はとてもきれいだったらしいのですが、弾いてあんなふうになったそうです。

ずっと、エイジング加工してある新しいギターだと思っていました。

あれは、かっちょいいですね。

 

ネック折れ修理 / 塗装修正無し→塗装あり


ネックにヒビがありますが、こちらはすでに塗装修正無しのプランで修理済みです。


跡は残る事は了承済みで一旦完了したのですが、やはり跡は出来るだけ目立たないようにしたいとの事でこの後、修正します。


何故なら、売り物なので出来れば安く修理したいが、高いオールドですのでヒビが目立っては売りにくくなってしまいます。


売り物であれば、きれいな方が、ちゃんと直しているアピールは出来ますね。


仮にヒビが目立っても、塗装が剥げていても強度には差は無いのですが、心情的にはこの方が安心して買いやすいでしょうし。


売りやすいのですね。

 

ネックリセット / Martin D-18


 

ネックをリセットします。

前回とは打って変わって、全く通常通りの外し作業です。

ネックリセットも、今となっては何本やったか数える事も不可能になるほどやりましたが、そうは言っても大変な修理には変わりません。

心配性であがり症の私は、当然ながら今でも、すんごい緊張感の元、勇気を持って携わっているのです。

前回ちょっと触れた,十数年前のGuildは、まともに外す事が出来なかったですし、エクステンションが付いたJ-200 では普通に抜ける構造ではなかったり、どうがんばっても、外れない、外せない場合が何度かありましたが、そこでやめて戻すことは出来ないので、方法を変えて外す事を考えなくてはなりません。

「いい加減慣れたでしょ。」と言われれば、流石に修理屋家業ぅん十年、慣れたと言えばそうかもしれませんが、慣れてこれです。15フレットに穴を開けるときにやっと最近ドキドキしなくなったかもしれません。

人様の大事な物、本当はこんな事したくないのですが、なんで修理屋になったろうと思う時、ビビリだから丁度いいのかもしれないと思っています。

 

であれば、販売店や製作家になればよかったかと言えば、それはそれで苦労があるはずですから、隣の芝は青く見えるものなのでしょう。

お客様は神様では無いので、お互いが尊重しあうものだと思っていますが、ショップではお客を半神位の扱いしなければならない場合もあるでしょうし。

製作家だって、私が羨ましいと思うような人は一握りだと思いますし。

やはり落ち着くところに落ち着いているのだと思います。

 

 


いつも言ってます。

サドルは出過ぎず、がカッコよいです。

 


わざと出し目にというリクエストもありますが、こんな感じが、がかっこよいです。


指板やフレットに難があればリフレット(指板修正、ナット交換込み)します。


「サドルがいっぱい出てないと、何回も調整出来ないじゃない。」と言う人もいますが、1日終わったらちゃんと弦を緩めて管理すれば、そんなにコンディションが変わらず使い続けられます。


当方の常連さん方、私のギターも実証済みです。


お返しの際は、いつも同じ事を言います。

弦は、緩めましょう!

 

 

ネックリセット / Marin D-28


 

ネックの角度が狂ったら、外して角度を修正してリセットしなければなりません。

古いギターであれば過去に、物によっては複数回ネックをリセットしてあるものも少なくありません。

修理する際は、今後また同じ様な修理が必用になった場合は、再度外す事も考えた接着剤を使わなくてはなりませんが、極稀に ”外れちゃこまります!” と間違えた接着をしてあるものに当たる事があります。

アコースティックギターは、接着で組立ててありますが、ネックジョイントに関しては接着で強度を保っているのではなく、テンションが掛かってもヒールが起きない様に組み込む精度で保っています。

ジョイントが緩んで角度が狂う場合もありますが、大体はボディの歪みが原因で角度が狂いますので、”簡単に外れないけど、はずせる様に” 付けなくてはならないのです。

左のギターは、”かなり外し難いかもしれないけど、がんばれば外せると思う” 位の接着の仕方でした。

ダブテールの底と指板の接着面に付いている黒い接着剤は、エポキシ樹脂系の接着剤で接着力に頼らなければならない場合に使う接着材です。

 

この黒くて、カチンコチンの接着材は、Ovation GuitarのClassic のネックジョイントに使われていたものと全く同じ。

Ovation Classicのジョイントは、他のモデルとは違い、ボルトオンではない精度の悪いジョイントなので、これでガチガチに固めるしかなかったのだと思います。

スーパーシャローボディの場合は、ヒールが短い事もあり、これで固めてもジョイントがもたずヒールに隙間が開いてしまう物も少なくありませんでした。

 

 


ダブテールの側面は、タイトボンドか何かしらの木工ボンドで接着してあります。

この面にエポキシを塗られたらホントに大変になります。


通常この底面は接着剤等を入れたり、何もせず、隙間を空けておきます。

この隙間を利用して蒸気を送り込んで中を暖めます。


温まっても全く柔らかくならず、硬いままの接着剤です。

当方で使う、アラルダイトとも少し違う気がします。


この真っ黒、カチカチ、エポキシでガチガチに接着されたジョイントのGuildが過去にありましたが、その事はまた機会があれば書いてみたいと思います。


指板、フレットが標準範囲の状態であれば、すり合わせのみで仕上げます。


サドルは出過ぎず、がカッコよいです。

最後に弦を張るまで詳細は分かりませんので、どちらに転んでも良い調整が必要です。


板目がかっこよい、ハカランダ。

 

フレット交換 / Gibson Southern Jumbo


 

サザンジャンボのリフレットです。

オールドギターの指板は、軽く調整する程度でリフレットできる物は多いと思いますが、時折、結構削らなければならない場合や過去に大分削られていて、もう少し削らなければならない場合に、指板のインレイが消えてしまう事を心配しなければいけない時があります。

それなりに古い貴重なものですから、パーツも出来るだけ残った方が良いとは思いますが、そのものをどうするかはオーナー次第です。

出来るだけ状態やパーツを温存したい人。 使う道具(ギター)ですから余計なコストは掛けずに出来るだけ使いやすい状態に、パーツが無いとか、壊れたりすればその時は、それなりの物を付ければ良いではないか、と言う人。

(もちろん、しっかり修理して、オリジナルパーツも大事にする人も沢山いますが。)

アコースティックギターの場合は、エレキのオールドとは違い、「オリジナルパーツじゃないと、価値がさがっちゃう~。」なんていう人は少ないですから、修理する場合、多くは後者。

何故なら、ほとんどのアコースティックギターは修理しなければ、使い続けることが出来ないからです。

ストラトやレスポールの様にただ、板にネックがくっ付いているだけ(ちょっと言い方が乱暴。)のギターであれば丈夫ですし、パーツはビスで留まっていますので、修理暦が無いものもあり、オリジナルパーツの有無で価値にも差が出ると言う訳です。


最近の事は分かりませんが、行き過ぎちゃって、オールドエレキの広告で、フレットもオリジナル!と強調していた記憶があります。


当然ナットなどもだと思いましたが、それでは勿体無くて、好きなだけ弾けない人もいるでしょう。

そういうのは、本物のコレクションだけにしてもらって、


出来れば、逆に弾かないのは勿体無いから、「おれの所に来たからには、こいつはコレクターズアイテムなんかじゃねー!」

「おりゃー!」と、


エレキも弾いてやってください。

 

私が楽器店のアルバイト時代、”1957年製Gibson LP Jr.”を17万円で委託に出していた時に、店員の先輩に「高けーよ。」って、つっこまれていた時代からオールドギターと付き合ってきたおじさんは、古いのは気を使って弾くものではない、と思ってしまいます。

やはり現在は、所有するだけでもいいのかな。 高いもん。

 

ピックアップ取り付け / Fishman


前回のトリプル・オーにピックアップを付けます。

過去記事で紹介している様に、ピックアップを仕込む溝が歪んでいたりすれば一旦埋めて切り直します。


配線取り回しは、ギターの中で音を立てないように、見た目もなるべくきれいに。


ギターを振って、カサカサ、パタパタ音等を楽しむ人はいませんので、余計な音は出ないに越した事はありません。


フィッシュマンのP.Uのコードは真下に出ていますので、穴も垂直に空け、コードも真下に出します。

そして、真下で留めますが、コードは張り詰めないように。

 

フィッシュマンP.Uのコードの付け根の部分、(赤っぽい本体と黒いコードの接点)は非常に弱くて扱いが荒いと断線し易いので、コードを穴に通す際、また逆に抜く際、手をギターの中に入れて作業する際、コードに指が掛かって引っ張ってしまわない様に気をつけて作業します。

中古のP.Uを流用して付け直すのはちょっとやり辛いと最近書きましたが、フィッシュマンの場合はこの部分がやられている事があるので、付け直した後にノイズが出てしまう事があります。

 

 

フィッシュマンは音も好きですが、このジャックキャップも大概、きれいに面位置になるので好いですね。

ネックリセット&P.U取り付けでした。

 

ネックリセット / Martin OOO-28


ネックの角度が狂って、弦高が高すぎますから、ネックをリセットします。

 


その際にエスプレッソマシーンの蒸気を使うのですが、アジャストロッドのMartinはこの溝から蒸気がボディ内に入ってきますので、タオルなどで塞がないと、中が濡れてしまいます。


タオルが詰まっています。

最近では蒸気を使わずに、直接熱を掛ける方法もあるようですが、きれいに早く抜けるのであれば、新しい方法も導入検討しますが・・・

誇らしげな動画も見てみましたが、現在のところは試す気にもならず。

 

きっと始めからその方法でやっていたら、後から見た蒸気を使う方法は、「うあ。蒸気を使ってる!」などと思うのでしょうね。

 


ショートサドルの方が、高さの許容範囲はあります。

が、それにしても出すぎはカッコ悪くなります。


このヒール部の接地面はほとんど重要ではありませんが、見た目は気になります。


重要なのは、ヒール内のジョイントの精度です。

 


 

いつもお返しする際に、1日終わりましたら、弦は緩める事をお奨めします。

緩める事が良いのか、張っておいた方が良いのか、少し緩めていたけど・・・等分からないと言う方がとても多いですが、緩めないとこのようにネックの角度が狂ったり、反ったり、ネックにしわ寄せが来なければ、ブリッジが剥がれたり、ブリッジがはがれなければ、トップが大きく歪んだり、どこかしらに不具合が出る可能性が高くなります。

弦は緩めて下さい。緩い分にはいくら緩くても大丈夫です。

不良率を出来るだけ下げたい、安いギターはすごく丈夫なギターもありますが、それは稀だったり、たまたまだったりします。

高いギターも平気なヤツもたまにあるみたいですが、それも稀なので、「張りっぱなしでよい説」の参考にしない方がよろしいかと存じます。