2025年02月

ネックリセット / Gibson SJ-200


スタッフの山口です。

キングオブフラットトップの登場です。言わずもがな、この貫禄。


弦高は6弦12フレットで3mm超え。


なぜか14フレットにスケール置いて写真撮ってますね、、。

とりあえず12フレットでも2mmを超えてそうです。


ブリッジのデザイン上、ブリッジピンからサドルまで距離がありますので、サドルはもう少し高くして弦のテンションを稼いだ方がハリのあるキングらしいサウンドになります。

ということで今回はキングをネックリセットしていきます。


指板の脇が割れています。修理済みかもしれませんが、ネックを温めているうちにニカワやボンドが接着力を失ってしまい再発する恐れがあります。

あとで「ここは割れていなかった、弁償してほしい」と言われたら路頭に迷ってしまいますので、ネックを外す前になるべく傷や不具合がないか記録として写真を撮っておきます。


フレットを抜いて小さい穴から、


少しずつ径を広げます。


修理屋によっては真ん中に一発の人もいますが自分はダブテイルの両サイドの近くをめがけて2発あけます。


ギブソンはヒールとボディの境目に予めナイフをなぞっておいて分離時の余計な塗装割れを防ぎます。


指板をトップから剥がしてダブテイル内部を温めます。


このまま2時間かかる時もあります。。


ネックが外れましたがやはり古傷が痛むようです。

今気づきましたがブレーシングがこの時代特有の感じですね。


修理中の修理中。。


いざネック角度を補正していきます。


角度が正常に戻ったら角度がついた分、案の定、ハイフレットが下がってしまいましたので勾配をつけたエボニーやローズウッドの薄板で下駄を履かせます。


前回も似たようなことを書きましたが、、ネックバインディングはあっても追加料金はないです。


ネックバインディングがあると何かと手間がかかります。


ちょっと飛んで、、ネックがつきましたのでフレットのすり合わせを進めます。


うーん、、ギリギリ!もう少しでフレットレスギターです。


磨いてあげたら、、


今回はナットも交換依頼がありますので元のナットを四苦八苦して外します。

写真のように元のナットが取れない場合は切ったり破壊する場合があります。


ナットの溝は綺麗にして


ナット作製。今回もオーソドックスな牛骨ナットに。


3弦が髪の毛一本分右だったかな、、と今写真をみて思いました。


センターズレもなく無事に完了です。


ヘッドをクリーニングします。


ペグを外した方が結果的に早く綺麗にできますね。


良い感じです。


塗装修正も不要でした。


良い仕上がりだと思います。


正面もOK。


ネックバインディングがあると指板の厚みを足した跡は残ってしまいますが、許容範囲。


サドルもキングらしい高さで威風堂々と復活です。


さすが、貫禄のあるルックスですね。50年代といえばロカビリー全盛期かと思います。ファッションも50年代は魅力的な時代です。


トップとは違うサンバーストでイカしてます。


先日、当工房オーナーの皆川がアドバンスギターさん(TC楽器)が自身の錚々たる在庫を元に出版したキングオブフラットトップ徹底特集本の新刊を購入して二人で見入っておりました。とても貴重な内容でしたのでご興味のある方はぜひ下記のリンクよりお求めください。

GIBSON KING OF THE FLAT-TOPS ~幻のギターを解明する世界初のSJ資料集~

 

当工房には師匠皆川が長年買い集めてきたギターの特集専門誌が多数あります。たまに見始めると時間を忘れて見入ってしまいます。ネットで検索すれば出てくる情報もたくさんありますが、やはり当時の実本でないと得られない情報もたくさんあります。今回のアドバンスギターさんの新刊も20年後にはとても貴重な情報源となる貴重なものになるのではないかと思います。

以前国産ギターの当時の広告などをコレクションしているお若いお客さんがいらっしゃいましたが、それもとても興味深かったです。弾くだけじゃなく色んな楽しみ方ができるギターにはやはりロマンがありますね。

今回も最後までありがとうございました。

ネック折れ修理(塗装修正 無し有り) / Zemaitis Metalfront


いつもの画角でございます。


当方では珍しい


ゼマティス。

zemaitisは過去にアコギでしたら1回修理がありました。→ https://www.m-guitars.com/blog/6717/

ネック折れとリフレットもエレキはお預かりしておりますので、アコギもエレキも両方修理出来ると思われてお問い合わせいただく事があります。

申し訳ありません。 電気周り修理は一切お預かりしておりません。

 

そして今回はイレギュラーなリクエスト。

基本塗装修正無しで、トップのみ黒く塗装する。

 

 


ネックは塗装修正なし。


そしてトップは黒く


ひし形の何というのでしょうか、エンブレムは外しておく。

 

ヘッドが取れてしまっている場合は、簡単にピタッと収まる場合と、なかなか収まらない場合があります。

ぴったりしない場合は、どこがどうなのか見極めて少しずつ調整して合わせていきます。

大分昔にどうやってもピタッと収まらないヤツがあり、過去に補強ありのネック折れ修理が施されていた為、どうにもならず折れている先のヘッド部分を作り直した事がありました。

補強が無ければ、複雑な折れ方せずにいつものように修理出来たはずでした。

 


 


 

ずい分と前の事で、まだ気力も体力も暇もあった頃です。

今だったら、どうなのだろう…やるかな…

今は齢取っちゃて忙しいからやりたくないのが本音ですが、そうは言っても他にも手間のかかる修理は預かっておりますので、お待ち頂ければ順番が来て、やる気が出たり出なかったりするのだと思います。

もしくは、そういう事が上手い山口がおりますので、山口がやる気を出せばもうちょっと早く出来るかもしれません。

歳をとるといろいろとやる事も増えて、何しろ忙しくなり過ぎてしまいました。

お待ちいただいている方々には、何とか納期期限前後にはお返し出来ておりますが、何卒ご容赦頂ければ幸いでございます。

 

ネックリセット / Gibson Humming Bird 1964


スタッフの山口です。

今回もネックリセットにお付き合いください。貴重なビンテージギターのネックリセットを任せてもらえることに感謝の気持ちを忘れず、初心を忘れず、進めていきます。


アジャスタブルサドルは限界まで下げられていますがこの弦高です。

6弦12フレットで3.5mm以上、


1弦で2.7mmほどでしょうか。これではどんなに良いギターでも弾きづらくて余計な力が入り良いサウンドを奏でることが難しいのではないかと思います。

 


毎回このアングルでネック角度不良の具合を伝えたいですが、、うまく撮れたことが無いです。


15フレットを抜いて、、


ダブテイルポケットを狙い撃ち。


次は指板をトップから引き離します。


トップに余計な傷をつけないようにナイフを入れました。


ギブソンはセットネック後に塗装してありますのでヒール部分とボディサイドの境目に切り込みを入れておきます。これをしないと境目がグズグズになることがあります。

ちなみにMartinはネックとボディは別々で塗装して組み込みますのでこの作業は必要ありません。


専用ジグを装着して温めます。


時間はかかりましたが無事分離。

古い接着剤を取り除いたりシムを剥がしたりクリーニングします。


元々のセンターズレを修正しながら狂った仕込み角度を修正します。

ビンテージギターのセンターズレは決して珍しいことでは無いのですが、元々ズレてたのかネック修理でズレたのかはわかりません。

ネックリセットしたらセンターがズレて納品されちゃった、、という方はぜひ皆川ギター工房にご相談ください。


ネックの角度が正常になるとトップに乗っかる部分の指板の厚みが足りなくなりますのでそれが極端な場合は指板の厚みを足します。


ネックバインディングがあると結構手間ですが、特にそれによる追加料金はいただいておりません。


ドライヤーで温めながらL字を作る場合もありますが、


元のバインディングが貼り合わせならそれに合わせます。


改めて、、結構手間のかかる作業です。


仕込み角度やセンターズレ、指板の修正を終えたら、いざ接着です。ヒール周りの塗装に問題がある場合は接着前に塗装修正を行います。今回はなくて大丈夫でした。


サドルの出しろが復活です。

 


ヒール部分もOK。


1弦側も綺麗ですね。


 

 

サドルの出しろは高ければ高い方が良い、という人がたまにいますが、それは今後弦高がまた上がってしまうような不具合が出ることを前提にしている人の意見だと思います。普段弾かない時は極力弦を緩めて、湿度管理など適正な保管を心がけていれば、ほぼずっと同じサドルの高さ、もしくは基本調整レベルだけで快適なプレイアビリティとサウンドを長期に渡って維持できます。

また、サドルが高過ぎてしまうと弦の力がネック方向に強く働くため前傾して、ブリッジの割れや変形の原因になってしまいます。

つまり低過ぎず高過ぎずの適正な高さがベストであり、また見た目もその方がカッコいいのです。今回のアジャスタブルサドルにもそれは言えることですね。

今回も最後までありがとうございました。

 

ボディ割れ修理 / Martin DSTG


ボディが


見事に


割れています。

幸いにヒールは割れておりませんが、ネックブロックも大きく割れてしまっているので、このままくっ付けちゃう訳にはいかないでしょう。

ネックを外して、しっかり修理して、整えてからネックをリセットします。

 

 

 

仮にネックを取らなくても、割れは接着出来るかもしれません。

但し、ネックジョイント部にも接着剤が付いてしまう可能性が高く、そうなった場合は将来的にネックを外す際に非常に取り難い事になりかねません。

マーチンのボルトオンネックは、ジョイント部も接着されている為、唯でさえ取り難く、ダブテールジョイントの方が返って外しやすいのでは、と思うようなものですから、これ以上くっ付けちゃうのは避けた方がよいでしょう。

 

幸いこの、「真っすぐホゾ(straight tenon)」なら上へ引っこ抜くことが出来るので割れていてもこれ以上割れが広がる心配はありません。

これがダブテイルジョイントの場合は、ヒールから押し出さなければならない為、工夫をしなければ割れが開くばっかりで、ネックが抜ける事はありません。

 

 


しっかりと接着剤が入っています。


このマホガ二ーや


ローズウッド等は


黒い杢目なので割れ跡が目立ち難くなります。


 

ネックジョイントの話になりましたので、もう一つ。

Martin OOO-17 だったと思いますが、ネックが取れずに悩んだ記憶があります。

ボルトオンジョイントなのに、引っこ抜けない。

もうすでに取れても良いくらい緩んでいるのに。

絶対上に引っ張れると思っていましたから、「なんで?」

仕方ないので、ダブテイルジョイントと同じようにジグを掛けて押し出してみましたら抜けた。

よくよく見てみますと、一見ストレートに見えて、何となくダブテイルジョイントになっている。

ジョイントがグラグラルーズでも、これでは上に抜ける訳が無いのです。

 

それ以外にも私の資料とネット検索を駆使して調べられる限り調べて、その答えは見つかりませんでしたが、このモデルは絶対にダブテイルジョイントに違いないと決定した挙句、結果大変な思いした事もありました。

何十年もやっているのに、私、間違ってしまう事があります。

思い込んではいけません。

それ以来、分からないギターに関しては指板を剥がして直接、何ジョイントなのかを確認しています。