2018年11月

ピックガード交換 / Yamaha FG-500


前回のギターですが、ピックガードも交換しています。

 


ラフにカットしてから、ヤスリなどで形を整えます。

外周を面取りして全体を水研ぎします。

水研ぎする事で、雰囲気が良くなります。(水研ぎしない材料もあります)


あからさまに大きく作らず、跡が隠れる位の丁度良い大きさに作ります。


ピックガード交換で難しいのは、磨きと貼り付け。

塗装面と違い研きに時間が掛かります。

バフ掛けしている際に引っ掛けてすっ飛ばしてしまったり、ちょっとずれて貼り付けてしまったりすると、全てがパーになります。

 

 

ネックリセット+リフレット / Yamaha FG-500


 

ネックリセットの例をいろいろ見て頂いていますが、当方のブログをいつも見て頂いている方にはお馴染みなので、「今回は、どんな感じかな?」と細かい所まで見てもらっているのではないかと思います。

ですがそろそろ、ネックリセットって?なんでネック外す?と言う声も聞こえて来そうな気がしますので、改めて説明申し上げます。

簡単に言うとネックの角度が狂ってしまったので、角度を直す為。

いろいろと修理を見たり聞いたりしている人からは、「ネックを全部抜かなくても直せるよ。」と言う意見も聞こえます。

力と熱で角度を矯正したり、指板を剥がしてジョイント部にクサビを打ち込んで角度を戻したり、いくつか方法はあるのですが、根本の修理にはなっていませんので、コストや修理期間の短縮等、天秤にかけてどちらが良いかと言う事。

もしくは、ネックリセットの技術が無い場合。

 

もうひとつは、ブランドやモデルによって熱矯正が効き易いものと効き辛いもの、ほとんど効かないものがあり、効き辛い物でも仮に上手く出来てしまっても近い将来必ず戻ってしまいますので、そうなると無駄になってしまいます。

ですので、ネックを抜かずに角度を直す事はいくつかの条件の元、行われる修理方法。

もしくは、構造的に外す事が難しい場合や、試に1回抜かずにやってみる、と言うケース。

 

 

 

ネックリセットした際にリフレット(リフレット・・・指板修正+フレット交換+ナット交換)は必ずしなければならない工程ではありませんが、指板に不具合は無くてもフレットに余裕があれば、すり合わせは必ずある工程です。

ですので元のフレットより、リフレットした場合は更に弾き心地は良くなります。

リフレットしましたので、第1フレットに合わせたフレットを作り直します。

交換したくないオリジナルのナットや象牙のナット等は、底上げをして調整し直すケースもあります。

但し、きれいに外す事が出来ない場合もあります。

その場合は外す事に拘わらず、ヘッドの化粧板等にダメージが無いように、ナットを壊して外します。


ネックの角度は、このヒールの削り方で決まります。

ジョイントの強度(精度)は、ここの接着ではありません。


ここの接着はほとんど重要ではなく、気にするのは角度と見た目のみ。

ジョイントの精度は、この中のホゾとミゾ。


サドルは出過ぎず、がカッコよいです。


とても良いコンディションになりました。

ネック角度が狂ってしまうのは、弦の張力でボディが歪んでその分ネックが前のめりになってしまう為。

ですので、弦は緩めましょうと言う理由です。

特にアコースティックギターのボディは、構造上避けられない現象だと思います。

弦を緩める、緩めないでコンディションは左右されると言って過言ではないと思います。

ヒールに隙間が出来てしまっているギターは論外ですので、リセットしましょう。

ブリッジ剥がれ修理 / Gibson J-45

ブリッヂのウィング部分が剥がれています。

端の部分なのでそこだけ貼ってやれば良いのですが、過去に何度も同じ事をやっている雰囲気がありますので、剥がして調整し直します。

 

何度も貼ったのでしょうけど、木が反っているので圧着してもダメなのです。

部分接着する場合は圧着せずに充填して接着しますが、それをやるには隙間が大きすぎます。

 

出来ればボルトを抜いてから剥がしたい所ですが、Gibsonの場合は無理に抜こうとするとブリッジ本体やインレイも壊してしまうので、付いたまま剥がします。

ボルトはコツコツ叩いて抜ける物は、はがす前に抜きますが、ほとんどのGibsonは剥がした後、暖めて抜きます。

そうする事でインレイ等壊す事無く、ブリッヂも守られます。


反りを直す為に底を平らに削りますが、ウィング部はすでに薄いので、出来るだけ厚みが変わらない様に、予め足してから調整します。


貼り付けるボディ側も古い接着剤は落として平らに調整します。


付いていた古いボルトとインレイもまた戻します。


ブリッヂの接着面を調整して貼り直す場面など過去のブログにありますので、そちらも探して頂ければ幸いです。

 

ネックヒール隙間修理(リセット) / Tacoma


Tacomaのヒールがかなり浮いています。

ネックの角度が悪く、弦高が高い原因。

ヒールは僅かでも浮けば角度に影響します。


タコマギターのネックはボルトオンなのでボルトを締めてやれば戻るはずです。


このラベルでボルトが目隠しされています。


ラベルは暖めて慎重に剥がしますが、時には破れてしまいますので、了承願います。

このボルトを締めればヒールも戻るはずですが、多少締まっただけでほとんど隙間が変わりません。

 


何故か分かりませんので、ネックを外します。


近年のボルトオンネックは接着剤は使わずセットされている物も多いですが、こちらは指板が接着されている昔のタイプ。


外して分かりました、ヒールの真ん中のボルトのアンカーを埋めてある部材がヒールの接地面より出張っている為でした。

マホガニー(茶色)かメイプル(白)どちらか痩せたか、単純に接着が弱かったかで、ボルトが締められた際に引っ張られて出てきちゃったのでしょう。

タコマのヒールはホゾの無いデザインなので隙間が出来た場合は、その隙間からボルトは見えますが他は隙間のはずです。

ですが上の画像では、隙間からダブテールか何か付いてる様に見えます。

最初のヒールキャップの画像では、真ん中に何かが噛んでいるのが確認出来ます。

出張った部材をしっかり接着調整して、アンカーも緩んでしまわないようにしてセットします。

前回位にも書いたかもしれませんが、力任せにクランプ等でくっ付けたくなる時もありますが、元の原因を修正しなければ全く意味が無く、またその内、不具合が復活してしまう事になります。

 

ボディ割れ / Guild F-50R


ギターは何かしらのアクシデントがあった際は、どこかしらにダメージを残します。


ぶつけた直接の部分が割れてしまったり、倒れてネックが折れてしまったり、このギターは何かしらの作用でサイドが割れてしまっています。


このような場合、ヒールも一緒に割れてしまう場合がありますが、ヒールは割れておらず、ちょっとだけラッキー。


ネックヒール部からボディのくびれの部分の方へ大きく割れています。


反対側もショルダー部分を越えて、大きく割れています。


ネックブロックも見事に割れています。

修理上ネックを外しますが、ネック角度も直せて好都合。


割れている部分は全て修理して、ネックの角度を直してセットします。

(現状、塗装も終盤の状態)


塗装の下地は、ネックをセットする前に済ませておいて、ネックをつけた状態で塗装します。


塗装を吹いた後は、硬化が進んで塗装が引いて行きますので、1段階毎に1週間養生して次へ進みます。

今後使っていく過程で全体に雰囲気が合って来るようなイメージで仕上げます。

艶が出過ぎないよう、仕上げる場合もあります。


ネック角度も適正になり。


指板も直して、フレットも新しく。


とても弾き易く、申し分の無い状態です。

老舗メーカーの定番モデルでは、ラッカー塗装が施されている場合が多いでのですが、これらのモデルに作業場施すマスキングテープは1日の塗装工程が終わった時点で、出来るだけ剥がして、再度、翌作業日にマスキングします。

全部が全部ではありませんが、ものによっては数十分~半日マスキングテープ貼ってるだけで、その部分が変質してしまう事があります。

ウレタン塗装は、完全に硬化しますが、ラッカーの場合は極端に言いますと、何年経っても固まらない塗装と言う感じです。

 

 

バインディング剥がれ / Guild


 

バインディング剥がれと聞いて先ずマーチン以外想像しませんが、そうは言っても同じような素材で、同じ様な作り方をしている訳ですから、他のメーカーでも同じようなトラブルは生じます。

大体は、セルが縮んで引っ張られるウエスト部分周辺がはがれていることが多いのですが、こちらは派手にはがれています。

そのままはがれている部分だけ貼れる場合もありますが、縮みが大きい場合は端まで一旦はがして、元の部分から詰めて貼り直します。その場合は白黒のトリムもバインディングと分けないと辻褄が合わなくなります。こちらのギターは言わずもがなです。

詰めて長さが足りなくなった部分は、新しい材料を足します。

 

 

古い接着材は出来るだけ取り除いてから貼ります。


 


 


 

無くなってしまってる部分や、長さが足りなくなった部分は新しく足します。


 


 


 

 


飛び出している黒い部分が足されたバインディング。

少しであれば、押さえつけて貼る事も可能な場合はあります。

 


但し、これだけの長さが足りないのであればいくら押さえつけても貼りつけることは出来ません。

 

 

   

トリムも同じ様に縮んでいますが、新しい材料を足す部分はバインディングの位置とは異なる場合が多いです。

はがれたら貼り直せば良いのですが、大概は剥がれた原因を修正して貼り直さなければ意味の無い修理になってしまいます。

 

 

ボディ割れ修理(塗装修正なし) / Takamine TDP400sp-K3

Takamineのプリアンプサイドが割れています。

このプリアンプの枠を外さなければなりませんが各メーカー、取り付けに思考を凝らしていますので、その度悩みます。

 

割れる時の衝撃で上下互い違いになってしまっています。

無理に戻せば、余計に割れてしまいますので、ちょっと削ったりしながら慎重に戻します。

 


少しずつトライして何とか、「パチッ」っと戻りました。


出ている部分を押せるようにカーブに合った当て木を作って接着。


後は磨いて、プリアンプを戻して完了。

塗装修正をする場合は、白い部分や割れていた部分を目立たないようにしますが、完璧には修正出来ないので、気にしなければこれで十分だと思います。


すごいプリアンプです。

 

 

ネックリセット / Martin D-18V


ネックリセットも他の修理も毎回同じ事をやっていますが、やっている物に対しては毎回そのものをどうするか考えます。


今までよく言っていた事のひとつに「サドルの出過ぎはカッコ悪い」とよく言っていました。

これまで見ていただいた方は、これを見て「おっ、ちょっと高けーじゃねーか。」と思うとおもいます。

何れにしてもサドルの高さは、どちらに転んでも許容範囲に納まれば良いのでこれはこれで良いのですが、今回の少し高めサドルにも多少意味があります。


これは私の好みですので、高いサドルが好きな方は、「高くして。」とリクエスト頂ければその分ネックの角度をきつく仕上げます。

但し、以前サドルの高さ、弦高の指定ありで修理依頼があり、引き受けた事がありますが、その時は奇跡的に決まりましたが、そのような何mm指定のリクエストは二度とやりません。

頭が燃えそうでしたので、倍の見積もり出せばよかったと思っています。 

(補足・・・チューニング後、弦高の変化は個体差やセッティングの状態で差が出るので、一概に計算通りには行かないし、リフレットありなので計算は不可能。)

この見えているサドルの部分が全ての高さではなく、下に溝が掘り込んであるので実際にはもっと深く入っています。

ですので以前見た、新品状態の時に笑っちゃう位サドルが出ていても強度は確保出来ているのだと思います。

だからと言ってあんなに出したら、カッチョ悪いのでリクエストが無ければやりませんが、いつもよりちょっと高めなのは、近い将来リフレットした時、今より少しサドルを削らなければならないからです。

(当方のネックリセットでは、リフレットはやる場合と必要なければやらない場合があり、必ずセットになるものではありません。)

リフレットする際、指板は調整(修正)をして、新しいフレットを打ちますが、物によって弦高が上がったり下がったり、変わらなかったりと区々です。

こちらの固体は、そういった予想が立つ事とブリッジの構造上高くしても良い強度があります。