2023年06月

フレット交換 / Gibson Humming Bird メープルサンバースト


スタッフの山口です。

今回はフレット交換を見ていこうと思います。通常Humming  birdはネックバインディングがありますが、今回のHBはありません。Limited Editionなのでイレギュラーですね。


突板を破損しないようにナットを外します。


ナットが写真のように外せたら一安心です。

ナットは消耗品ですので外そうと思えば外せるけれど、弦交換ぐらいでは外れないように、絶妙な接着加減が必要とされます。

たまにガチガチに接着されてしまっている残念な場合は鋸で切れ目を入れて破壊しなくてはなりません。


指板修正時の画像を撮り忘れました。指板修正後はフレットを打ち、カットしてすり合わせます。

フレットの種類はご相談ください。実際に見て決めていただいても大丈夫です。


今回は一番よく使われる型番です。

弾いていてチクっとしないようにフレットの角を丸めます。一本一本丁寧に時間をかけます。とても大事な工程なのです。


フレット磨きは番手を3段階くらい上げながら最後はスチールウールで程よいピカピカ加減で仕上げます。


新品のフレットは気持ちがいいもんです。


基本的にナットは1フレットの高さに合わせて作り直します。元のナットを使われたい場合は底上げで対応もできます。


ナットも材料のご指定は可能ですが、基本的に象牙は新規でお造り致しません。動物愛護のためにも人工象牙と謳われるタスクにしましょう。

ご指定がない場合はお勧めである牛骨でお作りします。師匠の皆川も僕も牛骨が一番好きです。


ナットとサドル料金はフレット交換の金額に含まれますのでご安心ください。

牛骨以外の素材指定がある場合は追加料金が必要になります。


ナットが決まったら弦高を決められますのでサドルを作って行きましょう。

 


良い感じです。


指板もフレットも綺麗になって気持ちがいいです。


ピンボケしてますがフレットの端はなるべく立たせたいと思って仕上げています。斜めに落とし過ぎているのは弦落ちしやすいし格好が悪いです。


完成。ピックガードにハチドリが居ないのにハミングバードとは、、、なんとなく寂しい気がしてしまいます。

フレット交換をするタイミングは人それぞれです。弾いていて気にならないのであればまだ大丈夫です。

以前、自分のギターで長持ちさせようと高さのあるフレットに打ち替えたのですが高過ぎて抑えづらく、結局すり合わせして低くしたことがあります。

サドルもそうですがフレットも「高ければいい」というわけではありません。答えは「オーナーの好み次第」なのです。

今回も最後までありがとうございました。

ブリッジ剥がれ修理 / Martin OOO-28


 

ブリッジの接着面に隙間ができてしまったら貼り直さなくてはなりません。

隙間がわずかでしたら、部分的にそこへ接着剤を差し込んでやるくらいで良いと思います。

判断は感覚的な所ではありますが、隙間がある程度あるなら剥がして貼り直します。

温めて、隙間からヘラを差し込んでいきますが、周りにこすり跡が付かない様に適当にマスキングします。

過去の画像ではマスキングをしてないものがあると思うのですが、それは撮影の前にマスキングテープは剥がしている為です。悪しからず。

ブリッジは、ただ貼り直せばよい訳では無く、当然ですが調整し直してから貼り直します。

先ずは古い接着剤を取り除きます。

 

剥がれていているブリッジは、反り上がって隙間が出来ているので、剥がさず部分的に接着する場合はいくら押さえつけても(圧着)しても貼り付くわけが無いのです。

その場合は圧着せず、接着剤は充填して接着します。

 

 

底は平らに調整しますが、ものによってはフラットトップのギターでもトップの反りに合わせなければきれいな接着が出来ない場合もあります。

そこはケースバイケースでございます。

 

 

ブリッジの底も

トップの接着面も平でございます。

 

 


 


 


 

 

 

いつも最後に全体を撮って終わるのですが、今回はボディの杢目も美しいので、バック側も。

最後はいつも同じ画角で全体を撮影して終わりにする理由がありまして、画像データが順番関係なく撮り重ねていきますので、全体を撮って終わりのしるしをつけないと、この修理はどこまで画像があるか分から無くなってしまう為、最後は同じ画角で「このギターはここまで。」と印を付ける為です。

そして各画像も比較が出来るように、どの修理の撮り方も同じ画角なので余計に分かんなくなってしまいます。

メモリカードをいくつか使い分けるとか、カメラを2台使い分けたりと、やってみたことがありますがいずれにしても面倒なのはあまり変わりなく、私のようなIT機器音痴には苦行でございます。

 

ブックマッチ離れ&力木剥がれ / YAMAKI


スタッフの山口です。

今回はブックマッチ離れ(トップ割れ)と力木剥がれを見ていきます。写真のブックマッチ部分に隙間ができてしまっていますね。乾燥し木が縮む事で古くなった接着面がその縮む力(← →)に耐えられなくなったのでしょう。


このような割れは大抵力木も剥がれています。トップ板の骨となる力木が剥がれることでトップ板が自由気ままに動きやすくなってしまうのです。

薄い木の箱であるアコースティックギターにとって、力木は強度維持には欠かせない重要なパーツなのです。


今回はブリッジも跨いで隙間ができていますのでこいつも一旦剥がします。


自作の専用ジグを左右に当ててクランプ。隙間がくっつくことを確認できたら接着します。


一日経過したらご覧の通りピッタリとくっつきました♪


ブリッジを挟んでボトム側もOK。

ちなみに割れた所を気にして触っていると汚れが隙間に入り込んでしまい接着後も跡が残ります。特にトップは目立ちますので、割れに気が付いた時はなるべく触らずに修理屋さんへ行きましょう。


トップ板の次は力木修理。バック側は問題なかったのですが、トップ側は至る所が剥がれていましたので、、、


あっち、こっち、


あ、ここも、あそこも、、


こんな所も、、、と言った感じです。

サウンドホールから一度に掛けられるクランプの数は限りがありますので、今回は4日間かけて剥がれている全箇所を接着しました。

力木修理は簡単そうで意外と時間も手間もかかる修理の一つなのです。


力木のサポートを無事に得られましたのでブリッジを戻しましょう。


理論上はブリッジもブックマッチ部の強い味方になります。


多分付けなくても大丈夫だと思いますが、念には念を、ということでクリートと呼ばれる補強も付けました。

「ここを修理したよー」という後世へのメッセージ的な意味合いもある気がします。


ペグやヘッドが腐食していましたのでクリーニングします。


ペグを外すことでヘッドのワックス掛けも捗ってピカピカです♪


縦ロゴも縦ロゴらしく凛々しく見えるようになりましたね。


こちらのYAMAKIが当時のMartinコピーだと考えると、シャーラー製ペグ=80年代製でしょうか。


弦を張ったら完成。


長年隙間が空いていたので跡が残りましたがブックマッチ部分は意外と気になりません。


力木剥がれも直りましたので音も引き締まっていい感じです。


国産オールドギター、当時はMartinのコピーモデルという位置付けだと思いますが、最近はジャパンビンテージと言われて人気もありますね。YAMAKIも人気があるメーカーの一つ。


バックはハカランダらしい豪快な木目となっています。この辺の年代は思い入れのある人も多く、修理に持ち込まれる国産オールドギターも増えてきました。ギターに限らず、今やMade in Japanは立派なブランド力がありますので見直されるのは当然のことのように思います。

どんなギターであれ、一途に長年同じギターを使い続ける人はとてもカッコイイです。

今回も最後までご覧いただきありがとうございます。

 

 

バインディング剥がれ / Martin OOO-28K


定番の


マーチンの


バインディングの


剥がれでございます。

 


ネックを外す予定があればバインディングの修理に都合が良いです。


トップ側はバインディングのみの剥がれ。


バック側はバインディングとトリムそれぞれ剥がれている為、それぞれ分けて剥がします。

トップ側のバインディングの端は指板の下にある為、ネックが付いたままだと剥がして詰めて貼り直せないので、今回はとても都合が良いです。

(Martinのトップ側でもボトムで継いであるものもある。)

ネックが付いたままの場合は、剥がさずそのまま頑張ってくっ付けるか、くっ付かない場合はボディ下まで剥がして切り離してから詰めて貼り直します。

バインディングとトリムがくっついたままならバインディングとトリムは付けたままにしますが、バインディングとトリムが少しでも剥がれていればそれぞれ離します。

こちらのケースはバラシて直します。

縮んでいる長さが違うのでばらさなければなりません。

 

 


 


 


 


 


 


 


 

ネックリセット後のサドルの高さは、理想から言えば画像より低いと良かった(カッコよかった)のですが、リフレットする際に「指板の12フレット付近はこの程度削るはず、1フレット辺りはこの位削れるはずだからネック角度はこれ位必要になる」と、予想を立て決めます。

定規やジグで測れないので、経験値で行かなくてななりません。

サドルをもっと低く仕上げたいのですが低すぎちゃった場合は、もう一回ネックを抜いてリセットし直さなければならなくなります。

過去にも何度かやり直したこともありますので、「そうならない様にあの時よりももうちょっと角度を付けて。」とやりますと、そすると思ったよりサドルが高目になる事があります。

 


 


 

少し高目なら、将来的に沢山削れると思えば悪い事は無いのですが現行品で時々見る、あの感じのサドルになっては、ちょーカッチョ悪いのでそれはそれでやり直さなければならないでしょう。

日頃、弦をしっかり緩めて管理出来ていれば、弦高が上がってサドルを削る事は、ほぼ、ほとんど、滅多に無いのです。