2025年07月

ブリッジ割れ / Kalamazoo KG-14


これは、どういう状況かと言いますと


サドルの溝が割れて


弦を張ると前に傾いて


壊れてしまうんです。

過去にもいろいろやった形跡が見えますが、これは割れ部分を接着するだけでは持たずにまた割れてしまう為、割れは掘って埋めます。

過去の修理部分もよく見てサドルの溝も埋め直し、真っすぐの溝を切り直します。

 


着色が取れましたので


付け足してある部分が

よく分かります。

 


 


 


 

ロングサドルですので、強度を考えればもっと低いサドルが理想ですが、仕方ありません。

 


 

今回の割れを取り除いて埋めるやり方は、これで大丈夫な場合も、ダメな場合もあります。

見るからにダメな場合は、最初から作り直してしまいます。

オリジナルのパーツ、材料は出来る限り残したいので大丈夫そうだと予想が立てば、試したいところです。

それでもクラックが入ってしまった場合は、その場合は、後は修理のやりようがありませんのでブリッジを新たに作り直すしかありません。

 

何につけ判断が難しい場面と言うのがあります。

 

現在私の車を修理に預けているのですが、メーカーに出した場合は周辺パーツ丸ごと交換、修理屋さんならとりあえず悪い所だけ見つけてやってくれます。

 

 

これも丸ごと交換してしまえば間違いませんが、部分修理の場合はしばらく乗ってみななければ分かりません。

修理してもらう立場、修理する立場でも、安く修理したいと思うのはどちらも同じ。

ネック折れ / Gibson J-45HCS ADJ


スタッフの山口です。

今回はネック折れ修理です。当工房で受け付ける頻度TOP3に入る修理ですが、Gibson(系含む)が多い印象です。ロッドの掘り込みがあって強度問題も関係してるとは思いますが、単純に使っている人が多いから、というのもあります。


本来は境目がない部分に塗装の吸い込みがありますので以前にも折って修理されているようです。

 


補強した部分は強度が増していますので、また倒したりぶつけたりした時はそのすぐ近くの無垢の部分が折れます。それは言い換えれば、二度と折れないように”過度な”補強をしても、結局補強されていないすぐ近くの部分が折れるのであまり意味がない、と言えます。もちろん再発しないための”適正な”補強には意味があります。

 


幸い前面は今回も無事なようです。


取り外したパーツは必ずケース内に一旦しまいます。その辺に置いておくと「あれ、これどのギターのだったっけ?と最悪な事態を招きます。そのためにもケースごとお預かり致します。


ここから先は企業秘密部分になりますのでサラッと。


基本的には補強が不要と判断した場合、特殊な接着剤で接着するのが皆川流です。もちろん状況に応じて補強を施す場合もありますが、9割方補強は不要です。


養生の紙に都議会議員選挙の告知が。。

明日は参議院議員選挙ですね。皆さんもギターは一旦置いて投票に行きましょう。

このままではギターを楽しむことすらできない社会になってしまうかもしれません。


あとは数日寝かせます。


ご存知の通り、塗装修正の有無で修理料金が変わります。演奏性と強度に差はありません。万が一、売ることになってもブラックライトなどを当てて修理歴がないかをチェックされますので査定額にもあまり影響はありません。


要するにオーナー様の気持ちで判断するだけです。できるだけ綺麗にしたいか気にせず受け入れるか。


逆光で暗いですが、、完了です。


暗いせいか、シルエットだけでもギブソンのヘッドシェイプの美しさがよくわかり、その完成度の高さを思い知ります。これだけでかっこいいなんてズルいです。


2000年前後のJ-45ですが、25年経って風格が出てきた感じですね!当時は新品のGibsonはビンテージと雰囲気が違う!と感じていましたが、昔からずっとオールラッカーで塗料事体もあまり変えていないのか、面白いことにどんどんビンテージらしい雰囲気が出てくるもので、最近は「ビンテージっぽい」風格の個体もチラホラ見かけるようになりました。20年後はさらにいい感じになっていると思います。


跡が潔く残っていてこれも風格というか勲章みたいなものとして愛し続けてほしいと願うばかりです。

今回も最後までありがとうございました。

ボディ割れ、剥がれ / Ovation 1761


 


 


 

割れに対して、接着剤がしっかり入ればクリート(割れ止め)は必要ありませんが、接着剤が入って無いような所にはクリートを付けます。

接着剤が入らなかったのですから、これしかありません。

割れの話は何度かしておりますが、今回のように落として割れた場合と冬場に乾燥で割れる場合、

2パターンあると思いますが、どちらかと言えば乾燥で割れる場合の方が面倒かと感じます。

ギターも個体差があって、こっちは大丈夫なのにこっちは大丈夫でない。

そう言う事は往々にしてあります。

もし乾燥で割れた事がある個体なら、冬場の乾燥には多少なりの気遣いは必要かと思います。

(割れたことが無くても気を付けるに越したことは無いです。)


 


 

冬場に割れが見つかるタイミングでは、その割れは開いて閉じなくなっています。

そのまま接着剤を入れる訳には行きませんので、当工房の養生棚に置いて閉じるまで待ちます。

修理の際は割れが閉じてしまっているので、接着剤は十分には入りません。

ですので、クリートを付けるしか無いのですが、もっと大きいクリートにすれば効果があるのでは、という考えもあります。

割れに接着剤が入っていないのですから、クリートの大きさは関係ないかと考えています。

クリートが大きくても恐らく、再度乾燥が進めば同じ所が割れる確率は高いと思います。

 


 

私のギターもやはり冬は乾燥でトップが凹んで弦高が下がりますので、(割れる程までは乾燥しないですが…)音もぺしゃつくと言いましょうか、…

弦高を上げれば良いのですが、面倒なのでそのまま弾いています。

過湿するグッズ等もありますので、使う価値はあります。

では夏は頑張って乾燥させた方が良いのでしょうか。

必要はないと思います。

弾き込めば良いのです。

弾き込めば湿気は発散されます。

自分のギターは夏場、弦高も好いので夏場の音の方がとても良い音です。

 

では、弾かないギターの場合はどうするのですか。

知らん。

 

ネックリセット / Martin D-18


スタッフの山口です。

今回もネックリセットです。ありがたいことに、一年中ネックリセットしています。

ネックリセットの経験値をこれだけ積める現場環境に自分の身を置かせてもらっていることに対して、感謝の気持ちを忘れてはいけません。


サドルが限界一歩手前、というところでしょうか。ブリッジプレートが削れちゃってることもあって、巻弦の太い部分がサドルに乗っちゃっています。音に影響するのは言うまでもなく、弦高も上がってしまいます。


リセット前に測定。

6弦側の弦高は普通ですが、、


1弦側はやはり少し高めですね。


抜きました。。

ブログを疎かにしてるのではなく、単純に写真の撮り忘れです。この辺は今までもたくさんアップしてるのでお許しください。


センターズレが起きないよう、また元々ズレている場合は修正しながらネック角度の調整をしていきます。

この時、ナット溝の位置が正常か確認するのも重要です。ナットは消耗品ですので必ずしも前回取付けられた(製作された)ナットがちゃんとしているとは限りません。

1弦と6弦の溝の位置がバラバラなら正しい位置を想定してセンターを見なければいけません。リセット後、ナットを交換したらセンターがズレてしまうのは本末転倒です。


センターズレの他、リセット後にサドルの背丈がバカ高くなってしまう、とか、ヒールに隙間ができてしまってなんか誤魔化す、なんてことは避けなければなりません。。

20年後、また他の誰かがネックリセットをした時に、「前回のネックリセットを施した職人は下手くそだな」なんて思われたら悔しいのです。


ダブテイルジョイント部の木工精度は最も重要です。∴ジョイントを強固にするためのシム製作は大事な作業工程。

接着剤頼みのダブテイルジョイントも年に何本かあります。すごく鳴っていて良いギターだなーと思った個体でも、意外にもネック外す時にジョイントがユルユルだった、なんてことも全然ありますのでそれはそれで興味深いのですが、、ジョイントがしっかりと精度が高い方がサウンドも良いに決まってます。


組込後はフレットを擦り合わせてナット調整し、その後弦高調整(サドル作製)を行います。


今回はその前にブリッジプレート修理を行いました。


元々ついていたコンデンサーマイクピックアップを元に戻します。


最後はサドルを作製して完成。このくらいのサドルがカッコいいです。

たまに「弦高はいずれまた高くなっちゃうんだから、サドルは高ければ高い方が良い」という自論を展開する人がいますが、決してそんなことはありません。ブリッジ割れや変形のトラブルはもちろん、ネックに余計な角度をつけることによって生じるデメリットもあるのです。

弾かない時は弦をちゃんと緩め、適正な高さのサドルを維持すること、これが正解です。

写真がブレちゃってますが、低めの弦高でいい感じになりました♪

しっかりとシーズニングされた木材で作られていることが大前提ですが、アコースティックギターやクラシックギターのようにボディが空洞のギターの場合、弾かない時にちゃんと弦を緩めておけば早々不具合は起こりません。よってネックリセットが必要となることもほぼありません。

世間では「木が固まるまでは何年か弦を張りっぱなしにした方が良い」とか、「1音だけ下げるのが正解だ」とか、「弦を張っておかないとネックは必ず逆反りする」とか、何の科学的根拠のないことを、あたかも「自分はこの世のギターの全てを知っている」みたいな顔をしながら言っている人を見かけます。

この世界の物理法則がひっくりかえらない限り、木はあくまでも木なので、ある一定方向に長時間、何十キロもの圧力がかかり続ければ、どこかしらが変形したり割れたりするのは至極当然のことです。僕も世の中のギター全てを知っているわけではありませんが、弾かないときはなるべくダルダルに緩めておくのが不具合の出る確率を最大限低くする一番良いギターとの付き合い方であることは間違いありません。

 

自分の「修理屋」という仕事の将来を考えると、弦を張りっぱなしにして不具合が出たら皆川ギター工房に持ち込む、というのをお勧めしたいところではありますが、、。( ´ ▽ ` )

今後とも皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い致します。敬具