2025年08月

ネックリセット&リフレット / Martin OOO-18


スタッフの山口です。

本日もネックリセットからスタートです。ブログの「山口くんのページ」カテゴリーを選択していただければネックリセットばかり出てくると思います。


もちろんネックリセット以外の修理もやらせていただいてますが、写真を撮り忘れてしまうことが多い中、なぜかネックリセットの時は撮り忘れない、という不思議な現象が起きています。


過去のブログでたくさん説明していますのでネックの取り外しサクッと。

恒例の記念撮影。


古い接着剤を取り除きます。今回は古傷が開いたようなのでもちろん修理してあげます。


接着剤を取り除いてきれいになっています。


前回の修理では割れ止めが無かったようなので、古傷を再接着と同時に山口式の割れ止めを設置。

この形の割れ止めはサウンドホール周りの場合、有効な手段ではないかと思います。


角度を修正し合体しました。


ダブテイルジョイント部に通じる穴を埋めます。


フレット交換は指板修正をしますのでナットは外します。今回の個体は象牙ナットですので再利用しようと思います。


紙の底上げがついていました。

きっと前回の時も象牙だから、と再利用するために底上げで対応したのでしょう。

ナットが底上げされていることは特に珍しいことではありません。


指板修正はただ真っ直ぐに削るだけではいけません。ネックの状態や調弦した時のネックの動き具合を考慮し、どの部分をどれだけ削り、逆にどこをなるべく削らないようにするのか、角度はどうか、指板のRはきれいに出ているか、インレイの貝の厚みはまだ余裕があるのかなどなど、あげたらキリがないほど気を使い、汗をかく工程です。


もし指板修正をただ真っ直ぐに削るだけだと、良いプレイアビリティを生み出せないことはもちろん、ハカランダなど貴重な指板材を必要以上に削り落としてしまうことになります。

指板修正は修正作業時のイメージ、そして自分の感覚がとても重要になります。


フレット準備中。


玄能でコンコン打ちます。力任せに打っても綺麗に打つことができません。

 


はみ出たフレットをカットします。


フレットのエッジを落とします。


フレットエッジを綺麗にまっすぐ落とすのも経験と感覚、頭の中でイメージしながら行うことが重要です。


約1時間ほどかけてフレットを磨いていきます。


フレットが完了し、ナットの底上げも完了。


いい感じです。


フレットのてっぺんと左右がビシッとまっすぐに揃っていればヨシ。フレットエッジが描く直線はプレーヤーはあまり気にしないところですが、いざそれを気にする人が見た時に「うむ」と言わせたいのです。

もちろんある程度の精度ならプレイアビリティに影響は出ませんが、、こういうところにこそ、こだわりが詰まっています。


15フレットに開けた穴はどこでしょう。ローズウッドは埋木跡がわかることが多いですが、今回のようにうまく馴染むとニヤケ顔になります。


弦高もいい感じになり、


サドルも狙い通りの高過ぎず低過ぎず。

 


ネック角度もフレットも見違えるように蘇りました♪


年相応の深みのある面構えですがとても綺麗なお顔ですね!


このルックスで音もナイスギターじゃない訳がありません。


 

ブラジリアンローズウッド特有の木目や質感はやっぱりいいですね!

噂ではブラジル政府は本当は少し前からハカランダを解禁したいとか。1969年のワシントン条約から既に50年以上経過している訳ですから可能性は充分にあるとは思いますが、「希少性」の観点からビンテージギター業界はそれを良く思わない可能性もあります。

ダイヤモンドは採掘量に対してわざと流通を制限して価値を押し上げることに成功してきた、という逸話がありますが、ハカランダを解禁するとしても出荷量をうまくコントロールすることができるのであれば価値の暴落はそうそう起こらないと思いますので、環境保護問題をクリアできるならぜひ解禁してほしいなと思います。

先日ハカランダブリッジ材がとうとう在庫がほぼなくなりまして、師匠皆川と色々当たって探したりしていましたが手に入らない状況が続いています。そんな中、質の良いココボロがネットに転がっていましたので「ブリッジ材の良さそうだ」となり、試しに仕入れてみました。質感はやはりハカランダとは違いますが、仕上がったブリッジは一見、ハカランダの要素はあっていい感じでした。(写真参照)

インディアンローズもまだストックがありますが、ブリッジ交換の際はココボロも承れますのでぜひご相談ください。

今回も最後までありがとうございました。