2025年05月

リフレット / Gibson J-45

 

よ~く聞かれるご質問…他にも直した方が良いところはあるか。

普段見る事が出来ない力木等は折角、修理屋へ来たのだから見てもらいましょう。

あとは…折角ですからいろいろ見てもらってください。

と言って修理しなければならないか、と言えば全くそんなことはありません。

今回のこの位のフレットだって、気にせず弾いている人もいます。

修理の要不要はオーナーが決めます。

 

修理屋へ行った際にブリッジに少し隙間が見つかりました。

慌てちゃいけません。

 


 


 


 

 

少ししか剥がれていないのですから、しっかり弦を緩めて管理すれば剥がれてしまうような心配はありません。

逆に無理に剥がして貼り直すようなリスクは避けた方が良いと思います。

もっと剥がれてきた際に修理すれば良いのです。

不具合が無ければ無理にお金をかける必要は無いのです。

「剥がれているんだから、貼り直したらもっと音が良くなるんじゃない?」

確かに!そのちょっと剥がれている分、音の悪さが分かる人は修理した方が精神衛生上修理した方が良いかもしれません。

 

※但しスーパーグルー系の接着剤で付いている場合は、突然剥がれる可能性もありますので、その可能性があるギターは貼り直す事をおすすめします。

※スーパーグルーが悪いと言うより、接着剤の量が少ない事が往々にしてあります。スーパーグルーは、はみ出すと拭き取り難い為、生産コスト上スーパーグルーを使う意味が無くなってしまう為です。

これはもうちょっとですっ飛びます。

やり方は色々ですがスーパーグルーは、はみ出さないようにくっ付けます。

 

あとは例えば、「弾き難い訳では無いが、もっと弾き易くならないか。」や「音が、もうちょっとシャキッとなんないか…」

相対的に悪いところはないが、オーナーがそう感じているのであれば、ギターの状態を見て調整のみで出来るのか、修理が必要か、もしくは不可能か、と言う話になります。

 

サドルがとても低く、アジャストロッドが目一杯に締まっているギターだってなんの問題もありません。

オーナーにとって不具合が無ければ、そのコンディションが悪くならないようにしっかり弦を緩めて管理すればアジャストロッドをいじる事も、サドルを削るような事もそうそう無いはずです。

 

ネックリセット&バーフレット→ラウンドフレット交換 / Martin 0-18K(1924)


スタッフの山口です。

博物館にあってもおかしくないようなギターが横たわっています。 1923年製造のMartin 0-18K、オールハワイアンコアのモデルです。今回はこちらのネックリセットとフレット交換を見ていきます。


ネックの順反り加減が写真でもよくわかります。写真でも分かる、ということは重症です。

ネックの角度も狂っていますので仕込み角度を適正にする+フレット交換に合わせて指板修正、このコンボで弾きやすくまだまだ使えるギターにしていきましょう。


弦高は4mmほど。

この写真でお気づきになるかと思いますが、フレットに違和感がありますね。1934年より前はこんな感じの単なる棒状、つまりバーフレットしかありませんでした。オリジナルを重視するなら同じバーフレットを何とか残しますが、実用的に使用するならやはり通常のT型のラウンドフレットが宜しいかと思います。

今回もオーナーの要望で普通のラウンドフレットに交換します。


今は同じバーフレットの打ち替えは基本的にお断りしています。打つのも大変だから高くつくしプレーヤーは弾きづらいし、メンテナンスもこれまた大変。いいところは一つもありません。


いつものように指板を剥がしていきます。

この時代の特徴なのか100年間の間に削られてこうなったのかはわかりませんが、指板がとても薄いため終始慎重に進めます。下手すると簡単にパキッと逝ってしまいます。


無事にネックが外れました。ダブテイルジョイント部にメイプルのシムが挟まっています。流石に100年の間にネックは何度かリセットされているようです。


1920年代にはタイトボンドではなくニカワ接着されているため、写真の通りタイトボンドが使われていることからもネックリセット経験済みの個体ですね。


いつものアングルで記念撮影。


シムは新しく作り直すので削ぎ落とします。溝に残った古い接着剤も根こそぎ綺麗に掃除します。


角度の修正幅が大きい場合はヒールの内側をある程度予測してノミで削ります。


ノミはよく研いでおき、力を入れずに優しく扱わないといけません。。

そういつも自分に言い聞かせます。


ネックが無事ついたらバーフレットを抜いて溝を整えていきます。このままの溝だと太過ぎてフレットを打つことができません。

(ネックリセット中はいつも写真を撮り忘れます。)


溝はこの縞黒檀の薄板を使います。


こんな感じで薄さなどを調整しながら1本の溝に薄板を2枚。あとで2枚の薄板の間に溝を掘り直してフレットを打てば、元の溝の中心にフレットを打てますのでピッチが狂うこともありません。


余計な部分は上も横もカット。


調弦時にネックが真っ直ぐになるように指板をサンディングで修正したら、、


普通のラウンドフレットを打ちます。

ここまででかなりの時間を要します。


ナットは新しいフレットの高さに合わせて新調します。


フレットが変わると顔つきも現代的に変わりますね。


サドルの高さもいい感じになりました。


もちろんですが、センターズレも無し。


ヒールも隙間などはなく、塗装修正もしていませんが綺麗に仕上がりました。


こちら側もOK。


均一に鮮やかにフレイムの杢が出た素晴らしいハワイアンコアですね。ここまでびっしりと杢が出た個体はなかなかお目にかかれません。もちろんサウンドも素晴らしく、ため息が出ちゃいます。


 

1924年製、101歳のギターです。今回のリペアによって状態も良くなり、素晴らしいコンディションで現役続行です。今後も誰かの手によってリペアされながらギターとして100年後も存在していることを願います。

ハワイアンコアは正式名称はアカシアコア。ハワイ原産のアカシアコアは吹き付ける海風によって木がしなって綺麗なフレイム模様が入ることからハワイ産のアカシアコアに限って「ハワイアンコア」と特別に呼ばれるそうです。ハワイ以外のアカシアコアは一般的にコア、やアカシアコアと言われるそうです。

自宅にホームセンターで買った「アカシア」で自作したチェストがありますが、あれはコアとも書かれていないし、産地も不明、、ネットで検索するとニセアカシアと言う何とも失礼な名付けをされた樹種もありました。

 

 


 

当工房には師匠皆川が長年かけて集めたギターに関わる書物が何十冊もありますが、中でも自分が好きなのがこの木材活用ハンドブック。

この木材でベンチを作りたいな、あ、こっちの材も良さそうだなー。床はこの木材でフローリングにして、、テーブルはこれで1枚板にして、、そんな妄想をしてしまいます。

母方の実家が木材店で父親は木工職人なのでその血が騒ぐのだと思います。

でも、ギターではなく家具や自宅の内装などの想像ばかりするのは音響特性を気にしなくていいからでしょうか。。。

 

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

ネックヒール折れ修理 / Ovation 1778T


 


 

毎週必ず、土曜日に山口と交互にブログをアップしているのですが、何かとドタバタしており先週は、すっ飛ばしてしまいました。

週の途中で上げようかと思ったのですが、そのままスルーしてしまいました。

もし、ご心配してくれた方がおられたなら、すいませんでした。

では、気を取り直して今週のブログへまいります。

 

普段あまり見ない珍しい修理は、順番を飛ばして公開する事があります。

これも上げた記憶があるのですが探しても見つかりませんでしたのでので、順番通りに書いてみようと思います。

Ovationのヒールが折れてしまう原因はこのボルトを固定する金属のベース部にあります。

これ以前のカマンバーと言うロッドが入ったネックも同じような金属がヒール部分にあります。

Ovationは、ネック角度をシムを使い調整する為、ギャップが生じます、その状態で力加減せず締め込むと割れます。

カマンバーの場合は、シムを貼れる金属部分があるので、正確にシムを貼ってやればボルトをある程度強く締め込んでもヒールは割れる事はありません。

 


割れ部分に充填されている接着剤を取り除けば


ピッタリ付くのではないかと


思っていました。

 


 

ある程度きれいになれば良いようなお話だったので、もっとしっかり接着し直してその後、塗装をきれいにすればよいかとも思ったのですが、おまかせ頂きましたので思い切って出来るだけの事をやってみる事にしました。

真っすぐ切り落として、ネック材と同じメイプル材で繋ぐことにしました。

途中、途中の画像がありませんが、反対側の面も同じように真っすぐにします。

プレッシャーの無い状況をいただいておりますが、それなりに必死なのだと思います。

 


 

くっ付けて調整が済んだ状態です。

このヒールの底面の調整は少し難しかった記憶があります。

ちゃんとセンターが出るようにするのは勿論、ボディとヒールをピタッとフィットさせたいですが、そこまで削ってしまいますと角度が付き過ぎてしまう状態でしたので、そうならない手前のところで決めなくてはいけません。

 


 


 


 

 


 

昔、Ovationの代理店で修理をやらせて頂いておりましたので、昔のモデルであれば分かっている事も多々ありますから、出来る修理も多いと思っています。

ですが、電気の事になりますとどうしようもありません。

まだ沢山Ovationを使っている人もいるし、中古市場にも多くあるのだから昔の電気パーツを作ってくれないものかと思ったりします。

一歩譲って、昔通りでなくても外見が同じプリアンプで良いんだけどな。

 

フレット交換 / Gibson CF-100


スタッフの山口です。

今回はGibsonフローレンタインカッタウェイ、CF-100のフレット交換です。

フレットは Made in USAのニッケルシルバーを打っていきます。材質は高さ、幅などは数種類の中からお選びいただけます。

 


指板の幅よりも少し広くフレットをカットします。


ネックバインディングがありますので写真のように両端のタングをカットする必要があります。


専用カッターでタングの端を切り落としたら、、


やすりでタングの残りを削り平らにします。素手でやるとフレットを押さえつける左手が痛くなるので手袋してます。


アールは指板よりもキツめにします。

タングの端もキレイになってフレット打ちの準備完了です。


肝心の打っている途中を全カットです。(撮り忘れ)


フレットの端は斜めに落とさず極力立てて、チクチクしないように丁寧に丸めてあげるのが皆川流です。


交換前からオーバーバインディングでしたが、フレットバインディングが残っている場合も基本的にオーバーバインディングでフレット交換します。

 


フレット磨きまで終えたらナットを新調してサドルを調整して出来上がり。


Gibsonは指板幅に対して目一杯外側に弦を通しますので斜めに落としすぎると弦落ち確率アップしちゃいます。


ヴィンテージギターのフレットは磨きまくってピカピカすぎるより適度に磨いている程度の方が質感がかっこいいと思います。

CF-100は個人的にGibsonのイケメン枠です。

ヴィンテージの貫禄がある姿にフローレンタインカッタウェイ、これは萌えます。。

ヴァイオリンもチェロも全て同じようなルックスをしてますが、ギターのルックス、デザインは本当に多岐に渡りますよね。見た目だけでも買ってしまう楽器ってギターくらいじゃないでしょうか。

 

ファッションとして、楽器として、とにかくギターっていろんな選び方、楽しみ方があってすごいな、、とつくづく思う今日この頃です。

今回も最後までありがとうございました。