山口君のページ

ピックガード貼り直し、ロッドカバー交換 / Gibson J-45 Deluxe


スタッフの山口です。今回はGibsonJ-45Deluxe。まずはロッドカバーをオリジナルっぽく作って行きます。


材料を大方の形に切ってビス穴を開けたら表面を傷が残らないように徐々に番手を上げながら磨いていきます。


ロッドカバーは小さいのでピックガードの磨きよりは楽です。土台の木材もツルツルになってしまいました。


左がよく見るGibsonロッドカバー既製品。真ん中が作製した70年代のオリジナルの形で作ったもの。右が元々付いていたモノです。

 

 


ロッドカバーができたら今度はピックガードです。こちらはオリジナルのピックガードが反り返った状態で剥がれていましたので何ヶ月も重石を置いて平らに矯正しておりました。


合板でピックガードにピッタリなジグを作って、今回はタイトボンドで接着しました。

このペグ、好きです。作成したロッドカバーも馴染んでいていい感じです♪

こちらのギターは10年以上前から工房に眠っていました。師匠が勉強も兼ねて僕に任せてくれました。この他にも修理をしたのですがそれはまた後々。

鳴りがよくすぐに買い手がつきました。

長い間メンテナンスされていなかったギターが甦り、誰かの手によってその音が奏でられるというのはとても嬉しいことです。ギターのサウンドホールから「ありがとう!」と聞こえる気がします。

ギターに限らずですが、「モノを修理して永く使うこと」は、作った人も買った人も、また手放した人もそしてそれを直した人もみんながハッピーになれることだと思います。修理っていいな♪

それでは!

 

ネックリセット / Gibson L-OO 1930s


 

お世話になっております。スタッフの山口です。今回は貴重な1930年代のGibson L-00のネックリセットです。

少しずつブログを意識した写真が増えてきましたが、今回は修理前の弦高を撮っておりました。

サドルはギリギリまで削っているのに4mm以上の弦高です。一般的なアコースティックギターでは6弦側12フレットで2.5mmくらいが好まれますのでネックリセットで改善したいと思います。

14フレットジョイントのギターですのでいつも通り15フレットの下辺りのダブテイルの隙間を温めて行きます。

トップのスプルースが指板に付いて剥がれていますが後で修正できますので無事にネック外し完了です。

 

元々センターがズレていたのでネック角度と合わせて小まめに確認しながらセンターも修正して行きます。


ネックリセット後の工程を想定して角度を決めるのですがこれが本当に難しい。完了目前にしてやり直したことも過去何度もあります。

 

ローズ系の指板は穴をなるべく目立たないように埋木します。

忘れましたが今回は事情があってネック接着前に埋木しましたので指板裏面もノミで綺麗に削ります。

 


接着後の写真です。センターのズレもしっかり修正できました。


このくらいサドルが立っていれば安心です。今回はギターの雰囲気に合わせてオイル漬けの牛骨サドルにしました。


ヒール部も綺麗に仕上がりましたので塗装修正は不要。


反対側もOK。

 

最近流行りのインダストリアルな雰囲気のあるヴィンテージギターですね。個人的な印象でしかありませんが、部屋に飾るインテリアとしてはMartinよりGibsonの方が適している気がします。

この年代特有のヘッド形状、真っ黒なエボニーのナット、何より筆記体のロゴがペイントで真っ白なのがイケてます♪

例外なく、ナイスギター!

 

ネックリセット / Gibson LG-3 1950s

 

スタッフの山口です。1950年代のGibson LG-3、ネックリセットを見て行きたいと思います。

写真では分かりづらいですがネック角度が狂ってしまっています。これではサドルを削ったりアジャストロッドで調整しても弾きやすい弦高まで下げられません。

サドルはこれ以上低いと音への影響も顕著になります。ネックリセットほどの修理代をかけたくない、かけられない場合はこのブリッジの上面を削って薄くし、サドルの出しろを稼ぐという方法もありますが、今回は貴重なオリジナルのハカランダブリッジが綺麗に残っていますので、削ったりせずにネックリセットで解決することになりました。

 

 


15フレットを抜いてヒートスティックを挿入する穴をあけます。黄色いマスキングテープは掘り過ぎないための目印です。貫通してしまったら大惨事です。


指板をトップ板から分離させるためにハロゲンライトで慎重に温めます。修理屋さんによって温め方や道具は様々ですね。


指板とトップの境目にナイフを入れて分離したら今度はヒートスティックでヒール内部のダブテイルジョイントを温めます。とにかくニカワでもボンドでも温めて接着力を弱めます。

 

 

 


写真が一気に飛びます(汗)

ネックヒールを削りネック角度が適正になりました。


クランプで固定しなくても弦に負けて外れないようにジョイントしなければ合格点は貰えません。センターもずれていてはNG。

ネック角度が適正になったことで指板が下がってしまう場合は、指板の底面に同じ材料を足して指板面がなるべく最後までまっすぐになるようにしてあげます。写真をよーく見るとトップ面との間に薄い層が見えますね。

最終チェックとシュミレーション後に接着です。手早く作業しないといけませんので緊張します。

 

 

 


無事接着し完全に乾燥(2〜3日以上)したらフレットのすり合わせをします。フレット交換も行なった場合はナットも作り直しますが今回は交換なしです。


サドルの出しろがいい感じです♪

このサドルを何ミリか高くするために結構な時間と労力、それと修理代がかかります。


弦をチューニングしっぱなしにすると張力でネックが反ったりトップ板が凹んだりブリッジが外れたり、ギターによって多種多様な不具合が出てきてしまいます。


オールドギターやビンテージギターは長い時間をかけて木が安定していますので、ちゃんと弦を緩めて湿度に気をつけていれば修理後の良い状態を長期間維持できると思います。もちろん新しいギターにも当てはまります。当工房オーナーも度々言っていますが、アコギは弾かない時はなるべく弦は緩めましょう。

 

リフレット(フレット交換) / Gibson LG-3

スタッフの山口です。今回はGibsonのLG-3のフレット交換です。角度が悪いので本当はネックリセットしたいところですが、先方の予算を踏まえ今回はアイロンで角度をできるだけ修正してあげてからフレット交換することになりました。

かなり年期の入ったアイロンですが現役です。師匠に何年前から使っているのか今度聞いてみよう。

ネックアイロン修理は簡単そうに見えますが、その後なるべく指板やフレットを削らないで済むように色々と試行錯誤するため意外と難しく、セッティングに時間がかかります。師匠に随時チェックしてもらいます。

 

 

 


アイロンで無事に角度修正できたら今回の主役、『ネックジグ』の登場です。

移転前の工房ではスペースがありませんでしたが、今の工房ではスペース確保が可能になった為、アメリカから取り寄せました。


簡単に説明すると弦を張って演奏する際のネックの反りや角度をメーターで記憶し再現したまま指板修正やフレットの擦り合わせができる、といった優れ物です。


演奏時のネック状態を維持したままフレットを抜き指板を修正します。

 

 

 


少し飛んで、、、フレット交換し、すり合わせたりエッジを丸めたりしながら磨いて行きます。


師匠が長年かけて編み出した工程、レシピは門外不出です。まだ僕がお客さんだった時、師匠の仕上げたフレット交換の仕上がりに感動して弟子入りするに至った、と言っても過言ではありません。

 

 

 


象牙やオリジナルにこだわるなど特殊な事情が無い限りナットは牛骨で新しく作り直します。


フレットが高くなるのに加え、指板もしっかり修正できますので弾きやすさは体感できるほど良くなります。


サドルは低めですがネックアイロンをかけておいたおかげで許容範囲になりました。ネックリセットで得られるサドル高には及びません。


元々『LG』は「Ladies&Girls」の略らしいです。一般的な日本人男性ならこのくらいが肩が疲れないギリギリのサイズだと思います。50年代のビンテージですが、J-45よりもいくらかお手頃価格なので狙い目です。ナイスギター!

 

ネックリセット / OOO-45コピー


 

残暑見舞い申し上げます。スタッフの山口です。

今回は手工品のooo−45モデルのネックリセットを見ていこうと思います。

珍しく修理に取り掛かる前に写真を撮りました。よく見るとヒールに隙間が出来ています。

近年の本家マーチンでもたまに見られる不具合です。原因はダブテイルジョイントの精度が悪かったり、シムに紙が使われていたりでこうなることが多いです。

今回はどうやら精度が甘く長年の弦の張力に負けて隙間ができたようです。


コピーモデルですがこちらは本家顔負けの雰囲気がありますので、恐らく見えないところもマーチンと同じ構造だと予想し15フレットを抜きます。


予想通りダブテイルのポケットがありました!よかった。

ダブテイルジョイントを温める前に指板を温めてトップから指板を剥がしておきます。

少し飛んで、綺麗に外れました。

 

 


今回はこちらに注目。ドリル跡が確認できますでしょうか。真っ黒で良質なエボニーは埋め木しても目立たないですね。


こちらはネック角度を適正にしたことで下がってしまう指板に足す下駄を作成中。こちらも一応エボニーですが縞のある黒檀ですね。


ネックバインディングがありますので下駄に合わせてバインディングも足してあげます。


これはフレットを戻した後の画像。よーく見ると跡が確認できます。

 

 


後はいつものように接着剤を付けずにシュミレーション。


センターのズレはないか最終確認。元々ズレている個体もよくありますのでその時は角度と同時進行でできるだけ修正してあげます。


バインディングは足した部分が分かりやすいです。

ネックバインディングがない28シリーズの場合はエボニーですのでドリル跡同様目立ちません。

 

 

サドルもベストな感じです。ロングサドルは高すぎると特にカッコ悪くなってしまいます。逆にサドルが低くてもせっかくお金をかけてネックリセットを頼んだのにあまり意味がない、、と残念がられてしまいます。

本物のマーチンと雰囲気は違いますが、高級感とヴィンテージ感は本家に負けないギターですね。もしかたらマーチンの工場で働いていた職人さんが独立して作ったとかでしょうか。専門学校生の卒業作品の可能性もありますが、どちらにしてもウン十万円はしそうですね。

 

今日修理が完了した12弦ギターはネックリセットし終え、フレットのすり合わせも終わっていましたが、想定していたよりサドルが低めに仕上がってしまいました。そのまま納品するか迷いましたが、師匠に相談したところ「納得が行かないならやり直した方がいい」とのこと。

よし、と、もう一度、一からネックを外し、リセットし直しました。今日やっと完了。サドルの出もちょうど良く「納得」できる仕上がりになりました。ネックリセットは接着後にフレットはすり合わせなのかリフレットなのか、リフレットなら指板修正はどの程度か、アジャストロッドの有無や調整幅など、多くのことを想定しながらやらなくてはなりません。経験と想像力を頼りに戦う修理ですので、納得のいく仕上がりの時は喜びもひとしお。大変ですが達成感があり好きな修理の一つです♪

 

ナット交換 / Yamaha L-10ES

 

お世話になっております。スタッフの山口です。今回は最もポピュラーなメンテナンス、「ナット交換」について詳しく見ていこうと思います。弾きやすさや音に直結するパーツですので、修理職人を志す者にとって最も基本的でありながらとても難しく繊細な作業の一つ。終始0.1mm単位の精度を必要とします。

まずは既存のナットを外したら溝に付着した古い接着剤を取り除き、底面と指板面を整えます。写真は素材の牛骨をぴったり幅に合わせてはめ込んだところです。サドルもそうですが基本キツすぎず緩すぎず。削り過ぎてガバガバになってしまったらやり直しです。


ナット側面を指板側とネック側に合わせたら初めに1弦と6弦の溝の位置を決めます。ナットファイルが突板を傷つけてしまわないように養生は忘れてはいけません。


お客さんから特に指定がなければ大体こんな感じが良い感じです。弦落ちしないようにやたらと内側に溝を掘っている物がありますが、それでは弾き辛くなってしまいます。


無事に各弦の溝の位置が決まりました。専用の定規がありますがそれを信用して進めて行くと何故か微妙になることが多いので、後は自分の目と感覚を信じて溝を掘って行きます。


溝の深さをある程度調整したら一旦ナットを外して各メーカーの形っぽく成型します。今回はYAMAHAなのでYAMAHAっぽく。


成型が終わったら溝の最終調整です。1フレットとの関係をギリギリまで詰めて行きます。


ネックバインディングが縮んでしまっていますが指板にはピッタリ接しています。


弾きやすくなり音も改善しました。どんなに高価なギターもナットが安っぽかったり残念な仕上がりだと音もルックスも台無しです。消耗パーツですがとても大事です。


父が似たようなYAMAHAのギターを持っていて初めて弾いたギターはYAMAHAでした。

弟子入りした初めの頃は削り過ぎ、掘り過ぎで何度も作り直したりでとても憂鬱な作業でした。最近はコツや感覚を覚えてきて作り直すことも少なくなりました♪時間は師匠の倍近くかかりますが(汗) 

今回もご覧いただきありがとうございました。

 

 

ウクレレ ブリッジ交換 / Kamaka

 


 

お久しぶりです。工房スタッフの山口です。しばらく写真の整理が出来ていなかったためご無沙汰になってしまいました。またちょくちょく登場させていただきます♪

今回はKamakaのウクレレのブリッジ交換です。見ての通り、4弦側が欠けてしまっていますね。今回は新しく作り直します。同じ材、同じ寸法で完成を目指します。


丁度いい大きさのインディアンローズウッドを並べて撮影。色味は薄く見えますが、磨いたりオイル塗り込んだりで恐らく完成時は同じような色になる感じがします。


ある程度同じサイズにカットしたら先にサドルの溝を掘ります。アコギの場合はトップに貼ってからですが、ジグはギター用の物ですのでウクレレに貼ってからでは難しいです。なので良い大きさの板にしっかりと固定して。


一気に深くは掘れませんのでルーターを何度も同じ位置で繰り返し掘っていきます。しっかりと固定しないとラインがズレたりして溝の側壁の精度が悪くなってしまうため、写真で分かる通り端材でガチガチに固定しました。


とりあえず無事に溝が掘れてパシャリ。後は元のブリッジと同じ弦長になるように前後を意識し、気を付けて成型していきます。


成型し終えたら弦の太さに合わせて切れ目を入れました。小さい鋸と精密ヤスリで各弦の太さに合わせるのですが手作業ですのですごく緊張した記憶があります。


磨いてレモンオイルをしつこく塗ったばかりですので元のブリッジよりも濃く見えますが、オイルが落ち着いたら同じような色合いになりました。後はトップに貼ってサドルを作って完了なのですが、写真を撮り忘れてしまい今回はこれでおしまいです(*_*)

来週はYAMAHAのギター修理をお送りします♪

 

 

 

 

 

 

 

ブリッジ交換x 3 / Martin/ Gibson (山口君のページ)

いつも皆川ギター工房のブログをご覧いただきありがとうございます。スタッフの山口です。

今日はブリッジの作製をまとめて3個見ていきたいと思います。既製品のブリッジも売られていますがそのギターの型や年代、仕様に沿ってなるべくオリジナルに忠実に一から作っていきます。


まずはMartinのOOO-18、加工前の材料です。


剥がした後にぴったり同じサイズになるように。そしていい感じの木目の部分を型取ります。


初めからピッタリで型取ってしまうと削ったり磨いたりしているうちに小さくなってしまうので、最後にピッタリになるように、逆算してとりあえず大きめに作ります。


元のブリッジは弦高を下げる為に削り落とされています。ブリッジ交換修理の依頼はほとんどがこれに起因しています。ブリッジが薄いと音も変わってしまいます。

 


根気のいる作業ですが地道に擦って成型します。


なんとなくマーチンっぽくなって参りました。


ブリッジのディテールに師匠がOKを出してくれたら元の場所に接着です。


弦長を正確に測ってルーターで溝を掘ったら出来上がり♪

 

 


次はGibson、60年代前半のLG−0です。


お客さんの希望は60年代のオリジナルのプラスティック製ブリッジが歪んで剥がれてしまった為、これを機にローズウッドで作り替えたい、とかだと思います。


地道に慎重に、コツコツとヴィンテージギブソンのアッパーベリーブリッジを目指します。


通常Gibsonのプラスティック製ブリッジは接着剤ではなくボルトナットで固定されています。もうボルトの穴は使わないので同じマホガニーで埋木を施しました。


ラッカーの塗装面に貼っても強度はありません。


ブリッジの大きさとピンホールを合わせ、塗装を剥がして木を露出させてから接着します。


サドルが入るとさらにいい感じに♪


レモンオイルで丹念に磨いて完成です。

インディアンローズかハカランダか忘れてしまいましたが50年代〜60年代のGibsonのハカランダブリッジもこんな薄めの色でこんな木目が多い気がしますね。

Gibsonらしいカッコいいブリッジができて喜びも一入です♪(お客さんもそうだと嬉しいです)

 

 


ラストの3個目はGibsonLGー1。


今回は「エボニー(黒檀)でオリジナルのプラスティックっぽいブリッジに作り換えて欲しい」とのオーダー。このギターのちょっと前に同じオーダーで師匠も作成していました。


通常はいかにウイングに角を立たせるかが大事ですがこれは逆です。プラスティックブリッジに似せるには角を落としヌルッとした丸みが鍵となります。


良い感じにサンドペーパーの番手を上げていきます。ブリッジ作成はオリジナルのディテールを目指しながら、とにかくコツコツとやるのがコツです。


LGー1なので今回はボルト穴をスプルースで埋木して塗装を除去します。


ピッタリ合わせるのが本当に難しい、、。

無事に接着し弦長を測ったところ以降の写真を撮っていませんでした( ̄▽ ̄)確かプラスティックぽく完成したと思います。
ブリッジの作製は完全にオーダーメイド製作で手間がかかる為、修理代は意外と高く付いてしまいます。もしブリッジを削らなければならないくらいネックの角度が狂ってしまった場合は、とりあえずコスト重視でブリッジを削り落として弦高を下げるのも選択肢の一つですが、その後さらにネック角度が狂い、いずれネックリセットに至った場合はブリッジも作り直す分、トータルの修理費用は上がってしまう事になります。ブリッジを積極的に削ってしまう修理屋さんもあると思いますが、ブリッジを削り落とすだけが選択肢ではありません。なのでサドル調整で弦高が下げきれなくなってしまった場合は是非一度、皆川ギター工房にご相談ください。そして何よりもネック角度が狂わないように、ギターを弾かない時はなるべく弦を緩めておくようにしましょう。(と、師匠がいつも言っております)

 

ネックリセットMartin O-18 1931 / Martin (山口君のページ)

山口君に、もうしばらく続けてブログを書いてもらいます。

手を写しちゃうところなんかは、私に無いセンスですね~。

さー、今週のお題もはりきって、テキスト付けてくんなまし。

 

 

、、、と言う事でテキストをつけて行きたいと思います。スタッフの山口です。写真はすでにネックを外し角度を決めた後。0.5mm厚のエボニー(黒檀)を階段状に3枚重ねて接着しサンドペーパーで均してから写真のように指板に貼ってあげます。角度をつけるとハイフレットが下がってしまいますので、厚みを足してあげる必要があるのです。ギターによってはこちらの工程が必要ない場合もあります。

指板との境目がなるべく目立たないようにゴシゴシ擦っています。手が写っていますね。冒頭で師匠が書いていますが、元々ブログで使うための写真ではなく、この時はこうした、あの時はこれを使ったなどの修理の記録として写真を撮っていましたので敢えて自分でちょくちょく手も写しているのです。自分の手が好きなわけではないです笑


指板の厚みを足し過ぎると逆にハイフレットが跳ねてしまい、指板修正しなくてはならなくなります。逆に低過ぎるとせっかく下駄を履かせたのにお辞儀してしまいます。この指板の厚みを接着前に調整する工程は非常に難しいです。ギターの為にもコスト的にも余計な修理工程は増やさない方が良いのです。


ロングサドルは出過ぎるとハンサムではありませんので低すぎず高すぎず。ショートサドルよりもシビアです。今回はあまり覚えていませんが、写真を見る限りと納品済み販売済みであると言うことは「良い感じ」だったんだと思います。


よーく写真を見てみてください。指板に厚みを足したのが分かるはずです。黒く塗ってあげることもありますが、パッと見でそれっぽく、気にならなければ塗りません。


13フレットをよく見ると穴の跡を確認できます。

バーフレットですね。リフレットは通常のフレットより何倍も大変だそうです。バーフレット交換は僕はまだ未経験です。


デデン!お待たせしました。Martin 0-18 1931年製の全身画像です。もはやヴィンテージというよりアンティークに近いです。アコギの博物館に飾られるであろうオーラを感じます。1931年といえば満州事変があった年、それから90年が経ち、大日本帝国も中華民国ももうありませんがこちらのギターは当時のままです。もしかしたら200〜300年後はストラディバリウスのような価値になるのでしょうか。

 

 

 

 

ブリッジ交換、ネックリセット / Gibson CF-100 (山口君のページ)

スタッフの山口です。今回のギターはGibson CF-100のブリッジ交換とネックリセットの修理です。まずはネックリセットの前にブリッジ交換。初めからブリッジが無い状態でこの工房に入院しましたので交換と言うか作成です。写真に写っている角材をちゃんと50年代のGibsonらしいブリッジに成型して行きます。

ぴったり元のブリッジ跡に合わせて切ったり削ったり。オーバーサイズはカッコよくないのでNGです。

ブリッジ材がまだ平たいうちにボール盤でピンホールの穴あけをする必要があります。手前に見えるのは他のギターのブリッジプレート修理の際に余ったメイプルの切れ端。こちらを経由してトップに空いたピンホールにぴったり同じ場所に穴を空けます。


ちょっと飛んで、、、ブリッジの成型が終わり接着できたらネックリセットに移ります。いつも通り15フレットにヒートスティックを挿してダブテールジョイントを温めます。アコースティックギターのネックがこうしてちゃんと外して修理できるように設計されているってすごいなって思います。それを言ったらボルトオンジョイントは接着剤を使わない分もっと効率的と言うことになりますが、、、。


無事にネックが抜けました。弟子入りして初めてこの光景を見た時はとても不安な気持ちになりました。今はすっかりシャッターチャンスに。インスタ映えってやつですね。


前回リセット時のシムが張り付いています。近年のマーチンはこのシムに厚紙を使っている時があります。紙も同じ木が原料だからと考えての事だと思うのですが、当然接着剤で一度ふやけた紙は弱く、ネックが緩んでヒールに隙間が出来てしまう事が多いです。

温められてスライム状になった接着剤を取り除いたらとりあえず一晩乾かします。画像はありませんが、その後綺麗にしてから角度を決めたり指板を足したりして再接着です。

オリジナルに忠実ないい感じのディテールで仕上げる事ができました。本来はブラジリアンローズウッド所謂ハカランダのブリッジですが、今回は先鋒と相談の上、インディアンローズウッドでの作成となりました。当工房にもブラジリアンローズウッドのブリッジ材は辛うじてまだ在庫があります。当然またいつ仕入れられるか分からない状況ですのでブラジリアンローズウッドのブリッジ作成交換を予定している方は是非お早めにご検討下さいませ(^-^)/

この後は弦長を測ってオリジナル通りロングサドルの溝をルーターを使って掘ります。

できるだけ細かいディテールにもこだわり、長い時間と労力をかけ、さらに師匠の指南も加わり無事復活です。ルックスもいいですが音も良し。非常に軽くて乾き切った音。人それぞれ好みもあるとは思いますが、きっとこれは「良いギター」です。所有はできなくてもこんな良いギターを弾く事ができる、この仕事のいいところだな〜といつも思います。