山口君のページ

ネック逆リセット / Gibson Dove


スタッフの山口です。

いつもはネックリセットですが今回は逆リセットをします。ネックリセットをして角度をつけすぎてしまったようです。


この画像を見ればナイスギター間違い無しとわかる方も多いはず。チューンオーマチックサドル。


ヒールにヒビが入ってますのでネックを取るのに苦労するかもしれません。


いつも通り15フレットを抜いて、


ダブテイルジョイント内部を温めていきます。


折れたヒールは持ち堪えてくれそうです。


ネックが無事に外れましたがトップ板が少々剥がれたのとヒール折れを接着してあげたらおやすみなさい、と声をかけます。


ヒールと同じマホガニーの板材で傾斜つけます。


左から右にかけて厚みが増しています。


ダブテイルに合わせてカット。


この画像で「なるほど!」となるのではないでしょうか。


つけ過ぎたネックの仕込み角度をいつもとは逆に戻すのが通称、逆リセットなのです。


折れたヒールを塗装修正するために剥いじゃいました。


マーチンはヒールキャップがついてますがギブソンはないことの方が多いです。ついてないとサンドペーパーを抜くときにヒールがささくれたり欠けることがあります。


センターも結構ズレてたので調整。仕込み角度のつけ過ぎ、センターずれ。当工房ではNGです。

 


角度が決まり、さらに塗装修正も完了。


自分的には上出来です。


ネックリセットの難しいところは仕込んだ後の工程後まで計算して仕込み角度を見極めるところです。


15フレットの穴埋め完了。フレットが太いので助かります。


出過ぎていたサドルもちょうどいい高さになりました。


後ろ。


1弦側。


6弦側。


正面。ほぼ完璧。

ネックリセットはネック折れに並ぶ皆川ギター工房のお家芸と言っても過言ではありません。しかし、師匠も僕も自分たちのアコギはネックリセットを必要としません。それは「弦を緩めている」からです。当工房に持ち込まれるアコギの修理が必要となる原因は弦の張力によるものが6割以上です。なので当工房では弦を緩めましょうと必ずお客様にお伝えしています。弦を緩めましょう活動。発起人は皆川氏です。数年前に僕は密かに心配していました。「みんなが弦を緩めて良い状態を保っちゃったら仕事が少なくなっていくのでは?」と。

しかしありがたいことに修理の依頼は増え続けています。まだまだ「アコギは弾かないときは弦を緩めましょう活動」を続ける必要がありそうです。

話が外れましたが、もちろんGibson Dove、ナイスギターです!チンペーさんを想って今回はダヴにしました。ご冥福をお祈りします。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

フレット交換&ピックガード矯正 / Martin D-28 (1950)


スタッフの山口です。

暑くなったり寒くなったりで人もアコギにとっても体調を崩しやすい時期です。

写真のD-28君も具合が悪そうなので治療していきましょう。


ピックガードが硬く反り返って剥がれてしまっています。通常は交換をお勧めしたい状態ですが、オーナー様のご希望でオリジナルのピックガードを再生して残したいとのことなのでなんとか矯正して戻したいと思います。


今回は他の修理もあるのでそっちを進める間、ずっと矯正しておきます。


そしてブリッジを剥がします。

ブリッジを剥がした理由は、、


恐らくマスキング無しのワイルドなオーバーラッカーでブリッジがテカテカになっていたから。綺麗に剥がすにはトップ材についたままでは不可能なので。


ラッカー塗装を除去して本来のブリッジになりました。

ピックガードが硬く反り返ったのもマスキング無しのオーバーラッカーが原因でしょう。


ブリッジを元に戻したら、


フレット交換です。

フレット交換時には指板修正も行います。

写真のように長年握り込んで押弦した跡、凹みが消えるまで削る必要はありません。

あくまでもフレット溝部がしっかりと修正できていればヨシ。むしろ70年かけて作られたこのナチュラルな凹みはルックス的にも残したい。


当工房ではフレット打ちを昔ながらの玄能でコンコンやります。

師匠が弟子入り間もなかった僕にフレットプレスを買ってくれましたが、結局アコギにはヒール周りなどに使えないので、今はエレキ担当のT君がフェンダー系にたまに使うくらいです。


フレット交換は各工房や職人により工程も仕上がりも本当に様々です。

 

一般的なメンテナンスの一つですが、経験と技量、根気とこだわりなど全てが現れるのがフレット交換なのです。


フレットのエッジは立てますがチクチクしないよう一本一本丁寧に丸めます。どこを見ても同じ丸みと形にできれば理想的です。


フレット交換後はナットとサドルを新調します。


オールドマーチンは底面が突板と同じ傾斜が付いていますので加工の難易度がアップします。近年は指板と同じ平らな底面になっています。


ナットやサドル、ブリッジなどのディティールは幾多のヴィンテージギターを見て、修理してきた皆川氏のこだわりが詰まっています。

100点をもらえた時はとても嬉しいですが、そうで無い時はやはり悔しいです。


マーチンのナット溝は外側から2.75mmくらいが理想的です。ギブソンは気持ち外側です。


元のナットよりはマーチンのナットっぽいですね。


最後はしばらく矯正していたピックガードを戻しましょう。


専用ジグで接着。


ヌルヌル滑りますのでタイトボンドでピッタリと元の位置につけるのは意外と難易度高いです。


ナットも指板もフレットも良い感じでは無いでしょうか。


ブリッジも余計なお化粧を落とし本来のすっぴんに。


1950年製のMartin D-28。

仕様においても音色にしても最近はやはり「D-28が至高」と言われてきたことに納得することが多いです。もちろん好みは人それぞれですが。


ピックガードもピカピカよりこっちの方がいいとなりあえてこの感じで。

 


 

先日NHKで福山雅治さんが所有する1940年製D-45をマーチン本社に修理依頼するという企画を軸として、マーチンの歴史や本家としての伝統を重んじる気概やこだわりを紹介する番組が放送されていました。修理方法や引退したマーチン職人の「計測は2度、切るのは一度」という言葉など印象的でとても興味深く、勉強になりました。

僕の師匠のさらにその師匠にあたる大先輩が何十年も前に本家マーチン社でその伝統的な修理方法を学び、日本に持ち込んだ、という話を皆川氏から聞いたことがあります。マーチンのスピリットが日本で世代を超えて受け継がれ、そしてちゃんとこの僕自身にも受け継がれていると思いました。自分ももっと経験を積み、学び、そして技術を磨き、それを次の世代に伝えることの大切さなど、勝手にその壮大な使命を感じました。

番組後半に福山雅治さんが「この貴重なギターを僕が所有することで、この音をレコーディングやライブを通して皆さんとも共有していきたい」的なことを言っていたのがとても好感が持てましたね!

ということで最後は少し話が外れてしまいましたが、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

突板交換 / Hefnerエレキ


スタッフの山口です。

ショップ担当なのでネックリセットばかりやっている私ですが、今回はまた珍しくエレキの突板交換です。


画像が多めなのでサクッと行きます。

突板が劣化して割れています。


まずは特徴的なペグを外しましょう。


普段扱わない種類のメーカーのペグなので念の為元の位置に戻せるようにナンバリングすることにしました。


こういう珍しいものはブッシュも無くしたら大変です。

そうじゃなくても無くしてはいけませんが。


第一難関です。

このロゴ、フェンダーと違いプラスティック製のもの。当然経年劣化で割れやすいことが予想されます。


めちゃくちゃ慎重に、、。


確保ー!!

と叫びたくなりました。

その辺に置いておくと壊れますのでこんな感じで保管しましょう。


あとは古くなった突板を外しましょう。


今回は隙間からドライヤーで温めました。


接着剤も古く劣化していたので簡単に剥がれてくれました🎵


ロゴのダボ穴を先に開けてそれを起点に進めます。


裏から見るとこんな感じ。


段つきヘッドに合うようにドライヤーで温めて湾曲させましょう。

ですが、ドライヤーでは無理でした。


考えた末、ジャム瓶に熱湯を入れ瓶に密着させる方法を。冷めたら熱湯を交換しこれを繰り返します。


ジャム瓶方式が功を奏し、ヘッドにフィットするようになりました。

 


クランプ用ジグを作成。


木を少々荒らします。


突板の接着面も荒らします。


クランプ!


接着後はスクレイパーとサンディングでサイズを調整します。


バフ掛けもOK。


元の穴を広げないよう、慎重に突板の径を合わせます。


安全地帯に保管しておいたロゴを戻します。

いい感じではないでしょうか。

ヘフナーといえばポールマッカートニーのバイオリンベースですがこんなクールなエレキもあるとは。今回は音出ししていませんが個性的なサウンドのナイスギターで間違い無いでしょう。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

番外編/ ネック枕(ネックピロー)作り


スタッフの山口です。

インフルエンザでしばらく寝込んでおりました。今回は病み上がりなのでライトに、番外編です。

写真は使い古されたGU○CIの財布だったであろう牛革。なぜかこれを見ていてネック枕を作ろうと思い立ちました。

私の実家が木工を生業としておりますので、赤松や杉などの端材には困りません。

寸法は皆川氏の30年以上愛用するアコギ用枕を基にしています。

皆川氏本人が作ったのかとずっと思っていたのですが、聞いてみれば中尾貿易時代に一緒に働いていた営業の方が何となく空き時間に作ったものだそうです。

 

僕もサクッと30年使えるネックピローを作りたいと思います。

作業台を作製した時の余りのフェルトを、、

 


底面に接着剤を塗って、、


貼り付けます。


余計な部分をカット。


ネックが接する部分はクッションと、、


ここで登場、スーパーブランド。


日本一高級感のあるネック枕かもしれません。正規のコラボなら○万円です。


端材が4個分あったので4個出来上がってしまいました。

2時間かかりましたが30年以上使えると思えば大した手間ではありません。


何となく底面にも気を遣う事でいい製品ぽく見えます。

いい印象を与えるには足元は絶対に大事なのです。


アコギを扱うネックピローとしてはこれが世界一使いやすいと思っています。既製品も購入したことがありますが、安定感や養生不足で仕事には使えないものばかりでした。

これが家に一つあればテーブルで楽々弦交換できるので便利!お勧めです。

今回も最後までありがとうございました。

 

ボディ破損 / Morris W-25(最終回)


スタッフの山口です。

とうとう6週目になりました、Morris W-25。青春時代これ弾いてたなぁーと聞こえてきます。

 


完成間近にレフティーへの変更となり、ピックガードを早速製作です。アコギはこれを反転したものにしないとですね。

 


Morrisのピックガードは製作したことがないので本家マーチンのピックガードを目指します。ピックガードが変わるだけでも高級感が出ます。分かる人なら「お?ピックガードの雰囲気いいじゃん!」「XX年代のマーチンに寄せてるねー」などというマニアックな会話になるのです。


ナットもレフティー仕様に。普段と左右逆の作業になります。逆にやるだけ、なのにとても手間取ってしまいます。


一般的にはレフティーモデルは価格上乗せで高く売られていますので近年の多様性、ダイバーシティを目指す社会にはフィットしていないな、と思います。


弦間も形もしっかりとマーチンのように。

 


サドルの溝も一度埋木処理を施し、弦長を測定、補正して掘り直しました。


写真は載せていませんがフレットを擦り合わせたのでサドルは少し低めになりましたが、許容範囲です。


レフティーチェンジ完了!どうでしょうか、なんとなくギターから滲み出てくる高級感、、。ピックガードもいい感じです。

自分もオーナー様には及びませんが愛着が湧いてきました。


自分の中で「ブラックジャックギター」と命名。かっこいいです。


サイドは逆に傷を隠すため少し着色。

トップと同じく、潔くそのままにしたほうが良かったかな、と少し後悔。


内側もこんな感じです。

正直、想定より良い仕上がりで満足です。

Before
After

2年以上お預かりしましたが無事に修理完了です。見てくださいこの面構え。

レフティーの違和感を消すため画像反転。

どうでしょうか。この高級感?風格?

トップの色を黄色く着色し馴染ませたら逆に勿体無い、と考えた当工房のこだわりが伝わりますでしょうか。

壊れたら直せばいい、そしてそれは隠さなくてもいいのではないか。傷跡はそのギターの歴史であり、またそれがまた個性となっている。傷跡は「男の勲章」という価値観を体現したようなギターですね!

裸で持ち込まれたのでたまたま工房で遊んでいた高級感のあるハードケースに入れて納品完了!

オーナー様にもとても喜んでいただき、私たちも喜びと達成感で満たされることとなりました。このギターもオーナー様の心意気も当工房の気概も、全てプライスレス。お父様も喜んでおられると嬉しいですね!

1ヶ月半の長編修理ブログにお付き合いいただきありがとうございました。

今後とも皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の伍)


スタッフの山口です。

今週で第五回となりました、Morris W-25のボディ破損修理。いよいよ納期も迫ってきた頃の様子です。

バインディングを新しくしたところはどうしても色が異なってしまうため、まずはバインディングを焼けたように色付けします。


焼けた様に見せるために配合した塗料を皆川氏は作り置きしていますが、それを使ってしまうといつまで経っても自分で作れませんので見様見真似で作りました。

なんでも初めは真似です。真似して真似して、いつか新しい道が開ける。ギター演奏もギター修理も同じです。


ブリッジは元々付いていたものを戻すだけです。1年10ヶ月ぶりにご対面。ここまでくるのにそれだけ長い期間を必要としました。

毎日このMorrisだけを修理していれば数ヶ月で完了できるかもしれませんが、それでは完成までの期間、無収入になってしまいます。また、他のお客様の納期が全て後ろにズレてしまうため、他の修理の合間合間に進めなくてはこういった大掛かりなご依頼はお受けできないのです。


前回トップの塗装は剥がし済み。今回、ブリッジの接着は本家のマーチンと同じように塗装が乗って無い状態で接着しますが、塗装前につけてしまっては磨けませんので、先に接着部のみマスキングします。


この年代のMorrisなどの国産ギターはこの手間を省くため、トップ全面に塗装し、ポリウレタン塗装の上から瞬間接着剤のようなものでペタっとブリッジを貼ってあります。

アコースティックギターの音は、弦→サドル→ブリッジ→トップ板(サウンドボード)の順で弦振動が伝達し、生み出されるものです。


このように手間をかけてブリッジとトップ板を木材同士でニカワやタイトボンドで直接密着させるのと、手間を省いてブリッジとトップ板の間に瞬間接着剤とポリウレタン塗膜が入る接着では、音の良し悪しに差が出るのは当然と言えます。

 


トップは下地を先に吹きますのでまずはトップのみを残しマスキング。


トップの下地が硬化したら全体にトップコートを吹きます。バックも割れていましたが筆でタッチアップし木目を馴染ませたためいい感じですね。ウレタン塗料の食い付きを良くするために、ボディ全体を荒らします。


塗装スタンバイ中。白っぽくなっているのは表面を荒らしたから。


皆川工房特注の塗装ブースで吊り下げます。


トップコートを吹き終えたら完全に硬化するまでしばらくはこのまま。


ブリッジの接着面はマスキングして塗膜がありませんのでこんな感じに。ブリッジを貼る前に塗面を水研ぎしバフ掛けをします。


バフ掛けが済んで鏡面仕上げになりましたので、満を持してブリッジ接着です。


完成が見えてきてウキウキでヘッドのお掃除。


ペグを戻して、、


いい面構えになりました。


修理跡がここまでハッキリ分かると逆にお金をかけて修理した感があってカッコイイと思います。

アコギではあまり見たことのないルックスですね。


ヨシ!あとは元のピックガードをつけて完成だぁぁぁ!

、、と喜んでいたのも束の間、お客様から「左利きなのでせっかくだからレフティモデルにできないか」とのご相談が。追加の見積もり料金と納期+1ヶ月をご了承いただき、いざレフティにチェンジすることになりました。

ということで次週の最終回は「Morris、レフティに変更する」の巻です。

とうとう完結します。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

ボディ破損 /Morris W-25 (其の肆)


スタッフの山口です。

今週もモーリスの画像を見ていただきます。タイトルの漢数字も「其の肆」という馴染みのないものに。(4=肆だそうです)

写真はトップ板を既に付けてルーターでトリムとバインディング部分を削り落としたところです。


皆川工房ブログあるあるですが、肝心なところの写真を撮り忘れました。トップを貼り合わせる大事な部分の写真がいくら探しても見つかりません(汗)

大事な工程は必死になっている場合が多くよく撮り忘れます。

 


地道な作業が延々と続きます。ネックリセットなどと違い、こういう製作に近い修理は普段あまりやらないことが多いので何度も立ち止まってしまいます。


トリム作り。


今回は元と同じく本物の貝ではなくパーロイドで。


最後に外周のバインディングです。


おお、見慣れたアコースティックギターの形になりました。


バインディングは始めはスクレイパーで落とします。


トップが汚れてしまいましたが大丈夫です。

バックとサイドも合板ですがなんとか表側の第一層が持ち堪えてくれました。擦るうちに中の第二層であるベニヤが出てくると厄介なことになります。

粉だらけになるので人が少なくなった夜を見計らって、工房の外でひたすらゴシゴシ。昔のモーリスやヤマハの国産ギターは塗膜が薄いことが多々ありますが、剥がすときはポジティブ要素になります。ただ通常の修理の場合は塗膜が厚い方が助かります。

次回はとうとう塗装に移ります。そろそろ皆様の「またモーリスか、、」という声が聞こえてきそうですが、、

あと2週分は引っ張れると確信しておりますのでどうかお付き合いの程宜しくお願い申し上げます。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の参)


スタッフの山口です。

とうとう3週目に突入しましたが、まだ道のりは遠そうです。

写真は折れたXブレイシングを整えているところ。


修理は極力使えるところは生かします。一般的にオリジナルに近いほうが楽器修理は良いとされていますので今回も継木して直します。


直角も出ていい感じ。


ほら、いい感じです。


何となく出来そうな気がしてきました。


仮加工したトップ板をはめてみてさらに希望が見えました。


ここで先週予告しましたオリジナルジグの登場です。


長ーいクランプを用意して、、


こんな感じで。


サウンドホールから入れられるジグの大きさには限りがありますので、中で組み立てられるようにする必要があったのです。

簡単な作りですが、バックである底面に置きながら組める、というのはボディー内部での作業には便利。というのがこのジグのいいところですが、たいしたものではなく恐縮です。


うん、ちょうど中が見やすいです。

これは今後もエンドブロック付近の修理に使えそうです。


来週はいよいよここを塞ぎます。

自分の中ではピッタリとブックマッチできるか一番心配していた工程ですが果たしてうまくいくでしょうか。

次週もお付き合いくださいませ。なにせ2年間の記録でございます。

 

今週も最後までありがとうございました。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の弐)


スタッフの山口です。今週も早速Morrisボディ破損修理の続きを見ていきます。

破損部の反対側もパックリと剥がれていましたがここは剥がれだけですので接着しちゃいます。

 


内側も綺麗に仕上がりました。

破損部の修理にこちらが開いている方が都合のいい場合は敢えて先には直しませんが、今回はここは直しても修理がしづらくなったりはしないと判断し先に直しました。。


問題はこちら側。単板であればこういった割れ方はしません。二層目はかろうじて割れていないのは不幸中の幸いです。全部割れていた場合、皆川氏に助け舟を出していたと思います。

元のライニングは使用できないのでノミで削ぎ落としました。


接着剤で合板の表裏の一層目を直します。


こういったジグは作る時は手間ですが、一度作っておくときっといつかまた使える日が来ます。1年後か10年後かはわかりません。


ライニングと一緒に崩壊してしまっている合板の一層目を補修します。


ビフォー画像がないですが、こちらのバックも補修してからライニングを仕込みます。


この一般的なアコギのライニングはわざわざ材からは作りません。この形で売っています。これだけを作っている会社がどこかにあるのかもしれません。


元のライニングと色が若干異なりますが、修理した部分がハッキリわかると言うのは悪いことではありません。車もギターも修理歴の隠蔽は禁物なのです。


バック側はこれでOK。と思いきや、接着が甘かったようでサイドがまた割れちゃいました。


トップ側は同時に力木も直してるのでカオスな画像です。


バックの力木剥がれも閉じてからより簡単ですのでこんな感じに。

 

修理には専用のジグを、そのギターと症状にあったものを自作しないと修理できない場合が多々あります。クラフトマンは設計が変わらない以上は毎回同じジグを使用しますが、リペアマンの場合は多種多様なサイズや形状と、それぞれ違った壊れ方をする為、都度作らなければ対応できないのです。

次回(其の参)は写真に写っている今回の修理のために作成した「山口オリジナルジグ」の登場です。

大したものではありませんが、、どのように使うかは次回をお楽しみに。

 次週もこの続きを予定しています。今しばらくお付き合い願います。敬具

ボディ破損 / Morris W-25 (其の壱)


スタッフの山口です。

今回はこれまた衝撃的な写真からスタートです。中々見られない壊れ方です。予想するにサイドからの衝撃によって大破したといった感じでしょうか。


欠けてなくなっている部分が震源地の可能性大。こちらはオール合板のモデルですので人間で言うと複雑骨折状態だと思われ、先が思いやられます。


エンドブロックはそのまま使えそうですが、、大変そう。


皆川氏と全交換するか、継ぎ足して修理するか長い時間をかけて相談した覚えがあります。


ネック角度は悪くないのと、恐らくダブテイルジョイントのようにネックが外せる構造で作られていないと判断し、お客様とも相談の上、破損した部分を継ぎ足して修理することに。


ここまで状態が悪いとどこから手をつけるか迷ってしまいますがなるべく無駄のないムーブをしたいので、各部の状態をよく診て、考えてから取り掛かる必要があります。

破損部の反対側も剥がれていたのでそのまま接着できるところは最初にとりあえず。

オーナー様より初めにお問い合わせをいただき「これは時間も費用もかかる修理です。何より修理代でこのモデルの元となっている本物のMartin D-28が新品で購入できる額です。それでも修理しますか?」との問いに「父から譲り受けた大切なギターですので構いません。修理をお願いします」とのこと。

そうとなれば腕まくりをしなければなりません。人から見れば安価なギターであっても、お客さまにとってプライスレスなものなのであれば当工房としてもプライスレスな仕事を。

2年という長い修理期間に気が変わってしまうかもしれないノリのお客様だったら断っていたかもしれません。楽器の原価を大幅に超える修理はお客様との信頼関係がないと難しいです。経営上、納品ができなければ大損害となるから。今回のお客様は小まめに連絡もつきましたし、何よりこのギターに対する並々ならぬ愛着が感じられましたのでお受け致しました。

 

こうして2年間の長い旅が始まりました。写真データも膨大で工程も多いので、何回かに分けてアップしていきたいと思います。今日はこの辺で。ありがとうございました。