スタッフブログ

ボディ(トップ)剥がれ / Ovation 1687-8

あちこち剥がれています。

弦高が高くて弾けない原因は、これ。

何故かと言えば。

ネック角度が狂った為→弦高が高くなる。

ボディがひしゃげて→角度が狂う。

ボディがひしゃげて→トップ剥がれた。

この年代の接着剤は柔らかく、剝がれやすくなっているものも沢山見ました。

 


ふわふわした接着剤を除去してアラルダイトで接着します。


もっと締まった音になる筈です。

 


Adamsの場合、音が悪い原因はこれかなと思っています。

 


過去のブログでも何度も見て頂いております。


ジョイント部の空洞。


少しでも強度が上がるようにエポキシパテで補強します。


でも弦を緩めず放置すれば必ず、また支障は出ます。

 


Ovationのネック角度を決めるのは難しいです。

通常のトラディショナルなサドルであればここまで高くはしません。


リフレットしました。

この部分の処理が大変です。


元のフレットのエッジは斜め過ぎてカッコ悪いので立てます。


リフレットしましたので、ナットも作り直します。

 


通常はヒールを削って角度を調整しますが、Ovation の場合は、シムを用いて調整します。


勿論決まりではありませんが、Ovationの工場と同じ方式でセットします。


Adamsを指板修正する場合は、ヘッドのこの出っ張りに触れて(削れて)も良いか否か検討して頂きます。


その部分が多少削れても良い場合は、真っすぐに指板を調整できます。

 

指板の調整は、フレットが乗る溝の部分が真っすぐに揃えば良いので、その他のフレット同士の間(弦を押さえる所)は歪んでいても問題はありません。

なので、多少カッコ悪くてもナットの前が削れていなくても問題ありません。

しかし、ヘッドの出っ張りを触らずにやる場合は、ヘッドに行かない様に1フレット目で削る手を止めますので削れ方が少なくなります。

1フレット目から真っすぐになっているか確認し、ダメなら辻褄が合うように改めて調整し直します。

 

ボディ割れ(ネック角度狂い) / Gibson LG-2


 

この状況は何と言えば良いのでしょうか。

以前1度聞いた事が…ショルダー部が潰れてリンゴのようになってしまう…アップル何とか…

こんな感じ→  https://www.m-guitars.com/blog/2118/  

 

ネック(指板)がサウンドホール側へずれてしまって、弦高もかなり高くなってしまっています。

ズレを修正して、割れを接着しますが、1番重要な作業はこの修正箇所周辺の力木の剥がれをしっかり接着する事。

 

ズレを戻せばネックの角度もある程度は戻りますが、かなりな見た目の状況ですのでネックを抜いて角度を修正する事も予定しています。

 


 


 


 

 

 

ボディのズレを戻しただけで、角度も十分良い状態になってしまいました。

修理代も見積もりより大分安くなりましたー。


 


 


 

割れ修理は勿論大事ですが、それより力木の剥がれを見落としちゃいけません。

ちからぎっ!とは、よく言ったもんです。

 

 


 


 


 

指板(ネック)の状態は良くありませんでしたので、修正して新しいフレットに交換。

新しいフレットに交換したら、新しい第1フレットに合わせてナットも作り変えます。(もしくは調整します。)

 

このような事も勿論ですが、あんな事やこんな事いろんな事が起きなように、弦は必ず緩めましょう!

335のように中心にブロックが入っていたり、厚い板にネックが付いているギターであればそんなに心配しなくても大丈夫かと思いますが、

製作家の先生や、有名なメーカーが緩めない事を推奨してもそれが「アコースティックギター」であればしっかり緩めましょう。

いつの頃からか、クラシックギターをクラギと呼んでフォークギターをアコギと呼ぶ人が出てきましたが、どっちもアコースティックギターでございます。

 

 

ネックリセット / Martin Custom


 


 


 

 

ネックの反りを修正したり、角度もネックを取り外すことなく、ネック修理専用のアイロンを使って修正する事もあります。

ネックを外しませんので、預かり期間と修理費を抑える事が出来ますが、当方ではお勧めはしておりません。

お勧めしない理由としては、確実な修理とは言えず、修理としては簡易的でまた元に戻ってしまうデメリットがあるからです。

メリットは「早い、安い」。

私の場合経験上、メーカーによっては良い結果が全くイメージ出来ないブランドもあるのですが、なんでもアイロンで直してしまう人もいますから、これは私の技術力不足の為かもしれません。

 

その他にもジョイント部にクサビを打ち込んで角度を修正する方法もありますが、ネックリセットする事と比較すると少しは安く上がるのかもしれませんが、見た目も悪くなりますし、現在ではあまりメリットが感じられない方法のような気がします。

大昔はネックリセットする事より、ジョイント部にクサビを打ち込んで角度を修正する修理屋さんも多くあったように思います。

その場合は、指板を14フレットまで剥がしてジョイント部にクサビを打ち、ヒールに隙間が出来ますのでそこも修正しなければなりません。

現在では道具の進化もあり、ネックを外す事は、どの修理屋でも可能になりました。

 

 


 


 


 

 

 

ネック折れ修理(塗装修正無し) / Gibson J-45


当方のネック折れ修理は、タイトボンドは使わず、補強しなくて良い接着をします。


しっかりと奥まで接着剤が行き渡る様、亀裂程度の割れは出来る限り開いて接着剤を差し込みます。


手で広げようとすると力が入り過ぎて想定以上に折れてしまう事があるので、開きずらい時にはクランプを使って開きますが、いずれにしても大きく開いた方が接着剤がよく行き渡ります。

 

 


塗装修正無しの仕上げの場合は、見た目は気にしない前提ですが、手触りに違和感が無いように仕上げます。


塗装が欠けてしまっている部分は、埋めて修正します。


何度も親指でこすりながら変な感じが無いか確認します。

 

 


 

いつも見て頂いている方々には、毎回同じような修理ばかりで申し訳ないです。

なのですが、補強要らずで、塗装修正もしない修理をしている修理屋は割と少ないと思いますので、修理例を出来るだけ多く見て頂きたいと思っている次第です。

塗装修正無しの場合は見るも痛々しい見た目になる場合がありますが、それも全部見て頂きたいのです。

塗装修正をしない仕上がりと塗装修正した仕上がりも比較もして頂きたく、どの程度塗装が出来ているのか。

勿論、日常他の修理もやっていますが、ネック折れ修理など沢山見て頂きたいものはこのように多くなってしまいます。

ご了承頂いて、今後とも末永くお付き合い願えれば幸いでございます。

 

 

 

フレット交換 / Morris

 

リフレットのタイミングは、それぞれですが、こんな感じになってくるとそろそろ変え時かなと感じ人が多いかもしれませんが、もっとフレットが減っても関係なく使っている人も多いです。

いつフレットを取り替えたら良いか考えあぐねている人も多いと思いますが、交換時期が分からない方は何かしら不都合が出てきたら交換の時期とすれば良いかと思います。

音がつまる(ビリつく)、弾き難くなった、等々…

 


 


 


 


 

ギター、車、時計、鞄、いろいろと普段使いの道具はありますが、大事に使い続けている物ってとてもカッコよいです。

私にとって大事にすることと言うのは、”傷つかない様につかいましょ。”という事ではなく、調子が悪くなったら調整したり壊れたら修理して使い続けているものなので、そう物をいつもカッコよいなと感じます。

 

ネック折れ修理(塗装修正無し) / Epiphone Masterbilt


ネックが折れています。

丸く飛び出しています。


押してパチッと収まれば一件落着なのですが、戻りません。


押して戻らない部分は、戻らない原因部分を削ったりして戻します。


一向にきれいに収まらないので、取ってしまいました。

 

 


取り外してしまえば、やりやすくなりますが、ダメージが大きくなるかもしれないので、あまりやりたくは無いのですが…


しかしそのままくっ付けてしまう訳にはいきません。

取っちゃって正解でした。


塗装修正は無しのプランなので、剥げた所はそのまま。

欠けた部分は、足して手触りに違和感が無いようにします。


まだ新しいから、ショックだったでしょうね。

 

ハードケースに入っていても倒れた際には、中で折れている事はよくあります。

いずれにしても、倒れない様に気を付けて下さい。

そして弦は、しっかり緩めてね。

 

 

リフレット / Fender Stratcaster


おっと、撮る前に抜いてしまった。

いつも途中までやって気が付きます。


もしくは忘れたまま過ぎてしまいます。

 


3弦辺りもフレットが、こんなに減っています。

 

フレットの交換時期についても多い質問の一つです。

フレット交換するか否かについても、修理した方が良いか否か、聞かれた時と答えは同じです。

オーナーが決めればよいのです。

「このフレットまだ交換しないの?」→と言われたって音もビリつかないし、弾き難くもないし不都合が無いのですから。

「もう交換しちゃうの!」→と言われても交換したいのですから。

「修理した方が良いのかな?」と考えた時は、弾いていて不都合が無ければ無理にお金を掛けなくても良いと思います。

ネックの角度が狂ってたって、その人が弾く分に問題が無ければ修理する必要は無いのですから。

それでもと言う方は「ネックの状態がこうで、力木がこうなってて…」等々、修理屋が教えてくれますから、把握したうえでオーナーが決めればよいと思っています。

 

 

 


おっと、フラッシュが焚かさってしまった。「~さる」って北海道弁なんです。


身内が北海道にいたり、若い頃一人でバイクで回ったり、縁があります。

 

7日間、1日も連泊せずに走ったけど、「ほっかいどー、でっかいどー」と、誰が言ったか、ホントでした。
またバイクで行きたいな~
 
 

 

フレットのエッヂは斜めにし過ぎない様に仕上げます。

好みの差ではありますが、斜めに削り落してしてあると手抜きに見えて好きではないのと、ナットの溝の位置を余計に(特に1弦の位置を)内側に入れなくてはならなくなるのが好きでないんです。

 

 


 


 


 

Fenderのナットは作り慣れていないので思いの外、慎重になったりします。

昔若い頃、「あれ、何でちゃんとできないんだー…」とハマった事があります。

エレキの修理が慣れている人にはなんて事ないかもしれませんが、振動がヘッド側に逃げない様に、かと言って溝がきつ過ぎてはダメ。

どのナットも注意点は同じですが、これの場合ヘッドに角度が無い分ダメさが出やすいのです。(3弦にガイドが無いとホントやです)

 

デカール(ロゴ)交換 / Martin


 

ご常連さんが入手したマーチンのロゴ(デカール)の1833の1が欠けて無くなってしまっているのが、どうしても気になって仕方がない、らしいです。

皆川ギター工房が始まって以来、一貫して言ってきましたのは、演奏性や強度等に関わらないキズ直しは(リフィニッシュも)基本的にお断りしております。と。

キズ付けた直後はショックですが、直しても使ってればまた必ず付きます。

傷もその楽器の歴史の一部ですから、その傷も愛でて頂ければ幸いです。と。

但し、借り物をやっちまった…や、どーしても…と言った場合にはお預かりする事はあります。

Martin(オールドタイプ)のデカールはまだあるし、今回はお断わりする理由が無いのでお預かりいたしました。

昔、修理に必要な事がありまして、業者さんからは「修理で使うのであれば作りますが…贋作用であれば作りません。」と釘を刺されて作って頂きました。

今でも時折お世話になりますが、贋作用は作らないと言うだけありまして、原寸を何十倍に拡大して細部まで再現するとおっしゃっていました。

技術も倫理的にも信頼出来ます。

 


艶消しは、元のカサカサな感じでは無く、艶を2~3分増した感じに仕上げ。


90年代中半頃までの雰囲気になったのではないでしょうか。


ボロボロになるまで弾いてほしいです。

 

 

ネック折れ修理(塗装修正無し) / ESP


基本的には、強い接着剤で(タイトボンド等使わず)しっかり接着すれば問題無し。

ですが、ぴたっと閉じなければダメです。


細かい破片等が噛んでいれば、きれいに取り除きます。

 


何度もクランプを掛けて確認してから、接着します。

これだけ激しければ当然正面も割れています。
 
 
 
 

とにかく使えるようにする、プランです。
出来るだけきれいに、塗装も修正するプランになった場合は、このケースは全部剥がして塗り直しになりますが、いずれにしても明るいシースルーですので割れの跡は、ある程度残ると思います。

 

 


塗装のクラックは消えるところと消えない所もあります。


塗装が欠けてしまっている部分はクリアを盛って平らにします。


見た目は気にせずとも、手触りに違和感があってはいけません。


正面側は、平らにして黒くすれば目立たなくなります。

 

 


 

もう一つの修理は、ストラップピン部分。

根元からえぐれてしまっています。

力が掛からない部分であれば、見た目だけ修正出来れば良いですが、ストラップを掛けても大丈夫にします。

ストラップピンを打てるように円柱に掘って、木を埋めます。

 


足りない木部はパテ埋めです。


下穴を空けてからビスを打ちます。


下穴は、大きすぎ過ぎると緩くなってしまうし、小さいときつ過ぎて失敗の元になります。


ちょっとだけきつい位が良いです。

下穴を空けずに、もしくは下穴が小さ過ぎて木を割ってしまった方もいると思います。

必ず、使うビスのサイズに見合った、下穴を空けましょう。

 

 

 

 

アコギのトップ等ナチュラルカラーの割れは、目立たなくなればラッキーと言う感じなので、割れの跡は残る事は前提として下さい。

割れの跡が見えてしまうのが好まない場合は、色を濃く塗ってしまう事も時折ありますが、仕上げはオーナーの好みがわかれるところではあります。

 

ブリッジ交換x 3 / Martin/ Gibson (山口君のページ)

いつも皆川ギター工房のブログをご覧いただきありがとうございます。スタッフの山口です。

今日はブリッジの作製をまとめて3個見ていきたいと思います。既製品のブリッジも売られていますがそのギターの型や年代、仕様に沿ってなるべくオリジナルに忠実に一から作っていきます。


まずはMartinのOOO-18、加工前の材料です。


剥がした後にぴったり同じサイズになるように。そしていい感じの木目の部分を型取ります。


初めからピッタリで型取ってしまうと削ったり磨いたりしているうちに小さくなってしまうので、最後にピッタリになるように、逆算してとりあえず大きめに作ります。


元のブリッジは弦高を下げる為に削り落とされています。ブリッジ交換修理の依頼はほとんどがこれに起因しています。ブリッジが薄いと音も変わってしまいます。

 


根気のいる作業ですが地道に擦って成型します。


なんとなくマーチンっぽくなって参りました。


ブリッジのディテールに師匠がOKを出してくれたら元の場所に接着です。


弦長を正確に測ってルーターで溝を掘ったら出来上がり♪

 

 


次はGibson、60年代前半のLG−0です。


お客さんの希望は60年代のオリジナルのプラスティック製ブリッジが歪んで剥がれてしまった為、これを機にローズウッドで作り替えたい、とかだと思います。


地道に慎重に、コツコツとヴィンテージギブソンのアッパーベリーブリッジを目指します。


通常Gibsonのプラスティック製ブリッジは接着剤ではなくボルトナットで固定されています。もうボルトの穴は使わないので同じマホガニーで埋木を施しました。


ラッカーの塗装面に貼っても強度はありません。


ブリッジの大きさとピンホールを合わせ、塗装を剥がして木を露出させてから接着します。


サドルが入るとさらにいい感じに♪


レモンオイルで丹念に磨いて完成です。

インディアンローズかハカランダか忘れてしまいましたが50年代〜60年代のGibsonのハカランダブリッジもこんな薄めの色でこんな木目が多い気がしますね。

Gibsonらしいカッコいいブリッジができて喜びも一入です♪(お客さんもそうだと嬉しいです)

 

 


ラストの3個目はGibsonLGー1。


今回は「エボニー(黒檀)でオリジナルのプラスティックっぽいブリッジに作り換えて欲しい」とのオーダー。このギターのちょっと前に同じオーダーで師匠も作成していました。


通常はいかにウイングに角を立たせるかが大事ですがこれは逆です。プラスティックブリッジに似せるには角を落としヌルッとした丸みが鍵となります。


良い感じにサンドペーパーの番手を上げていきます。ブリッジ作成はオリジナルのディテールを目指しながら、とにかくコツコツとやるのがコツです。


LGー1なので今回はボルト穴をスプルースで埋木して塗装を除去します。


ピッタリ合わせるのが本当に難しい、、。

無事に接着し弦長を測ったところ以降の写真を撮っていませんでした( ̄▽ ̄)確かプラスティックぽく完成したと思います。
ブリッジの作製は完全にオーダーメイド製作で手間がかかる為、修理代は意外と高く付いてしまいます。もしブリッジを削らなければならないくらいネックの角度が狂ってしまった場合は、とりあえずコスト重視でブリッジを削り落として弦高を下げるのも選択肢の一つですが、その後さらにネック角度が狂い、いずれネックリセットに至った場合はブリッジも作り直す分、トータルの修理費用は上がってしまう事になります。ブリッジを積極的に削ってしまう修理屋さんもあると思いますが、ブリッジを削り落とすだけが選択肢ではありません。なのでサドル調整で弦高が下げきれなくなってしまった場合は是非一度、皆川ギター工房にご相談ください。そして何よりもネック角度が狂わないように、ギターを弾かない時はなるべく弦を緩めておくようにしましょう。(と、師匠がいつも言っております)