このMartin のようにアジャストロッドでは無かったり、アジャストロッドが一杯まで締めきってしまっている場合、反りを直す方法は2~3ありますが、その方法の良し悪しはオーナーの意向に副うのか否かです。
先ず、何も考えず使っている人が多いのはアイロン(ネックヒーター)。これだけに頼っていてはネック修理の50%以上は不可能になってしまいます。
アイロンは効果がある無しが、メーカーによって差が出てしまうので、アイロンを使ってのネック反り矯正は勧めません、先ずアイロンによる効果がどの程度のものか説明が必要です。
長年やってきて不思議に思うところが、どの接着剤を使ったもの、どの年代のどの工場のも、等で差が出るものではなく、メーカーによって差が出るような気がします。ただこれは断言出来ませんが、「やはりそうだ。」と思う事が多いと言う事です。
Martin の場合は、イメージ通りには行かない事が多く、上手くいったはずの物も後に戻ってしまっている物もいくつか見て来ているので、私の中ではMartinはアイロンが効かない事になっています。
ただしオーナー次第では、無理くり何度もアイロンをかけてとりあえず何とかやってみて、その後ダメならその時考える。という方もいなくはありません。
次が、指板(フィンガーボード)を修正して(削って)反りを無くす方法です。
この方法はとても確実で作業内容はリフレットですので、修理後の演奏性も良いです。
ただし、程度によっては修正部分がかなり削られてしまう事になるので、その点は注意が必要です。
近年、指板やフレットを削る(調整、修正)作業において”ネックジグ”と言う、この作業に便利なアタッチメントを使う人が増えています。
これは良い道具なので、あるに越した事はありませんが、ただしこれだけに頼ったら、失敗(失敗か否かはその人による)してしまうケースも考えられます。
完璧な状態を求めたいが為の道具なので、完成形に至る以前の状況でなら全てこれを使いたと思います。
もちろん修理する上でもこれが有効な場面はありますが、何でもこれを使ってやる人はどのケースにおいても削りすぎている意識はないでしょう、古い楽器の材料は貴重なので削り過ぎず直せれば「モアベターよ。」と言う事です。
もうひとつは、画像にあるように指板を貼り直して修正するやり方です。
アイロンで期待する効果を実際に手を加えて、欲しい状態を確実に作り出す作業です。
アイロンでは1度暖められた接着剤が冷えて再度硬化する事と比較すると、貼り直す場合は強度も期待できます。
ただし一旦剥がしてしまった指板は歪みますので、貼り直した際は両サイド、指板面も修正して、新しいフレット打ちます。
修理の費用と納期は紹介した順番に大きくなります、どの方法がベストなのかは、見積もり後の検討で最終的にオーナーが決めます。
このギターの修理を3回続けて見ていただきましたが、ここまでやるには、修理費用がどれくらい掛かったのか気になる方も居ると思います。
このギターはこの他にも力木(ブレーシング)の剥がれも修理しています。
気になる方はメールにて問い合わせ頂ければ、そういった質問にも回答差し上げます。