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サウンドホール割れ / Martin OOO-42EC


スタッフの山口です。

今回はよくあるといえばよくある修理、サウンドホールのめり込み割れです。割れた箇所がズレているのがわかりますね。

これも弦の張力によって起こる症状です。

アコースティックギターの天敵は「弦の張力」と「乾燥」であると言えます。


以前も割れて修理したっぽく、割れ止めらしき板がついていますね。周りの雰囲気からすると最初からついているものなのかもしれません。

 


しかし割れた部分はちょうど境目になっていて割れ止めの役目は果たせていないようです。赤く塗った部分は板が貼ってあった場所ですが今回は取り除き、新しい割れ止めを作製します。


サウンドホールのめり込み割れが起きる時は大体こちらのバスバーと呼ばれるブレイシングが剥がれていることが多いです。

アコースティックギターにとってのブレイシングは音色を司るのもそうですが、「割れ止め」という最大の役割があります。

修理屋に持ち込んだ時は今後のことも考えてブレイシング剥がれのチェックもしてもらうことをお勧めします。


写真には写っていませんが、、

ネックをジグで引っ張り、割れてズレた分を戻してスーパーグルーで接着します。

冒頭の画像と比較すると戻っているのが分かるかと思います。割れはジョイント部である14フレット付近まで伸びていました。


トップ板の割れが接着出来たらバスバーを接着します。


バスバーの接着が完了したらちゃんと役割を果たせる新しい割れ止めを製作します。材はスプルース、木目を垂直方向にします。


手前の割れ止めと、奥は接着時の当て木です。


タイトボンドで接着。


いい感じになりました。割れているラインに覆い被さっていますのでいくらかは強度が増したはずです。


めり込み時は大抵、ネックのアングルも狂っています。今回はネック角度が改善され許容される程度まで戻りましたのでネックは外さずにフレット擦り合わせのみ。


割れた部分が気になってベタベタ触ってしまうと修理後に跡が目立ちます。割れてしまった時はなるべく触らずに修理を依頼しましょう。


6弦側は1弦側に比べて目立たないで済みました。


アジャストロッド調整部に干渉しない厚みで割れ止めがついています。


Martinの40番台は指板の両脇にインレイを施すために掘り込んでいるため、その部分の板の厚みが薄くなります。当然、強度が落ちて割れやすくなっていると思います。

このデザインによって強度を落としていることはおそらくMartin社も把握しているはずですが、今更ここを変更することは彼らの伝統ある歴史とファンが許さないのだと思います。


 

初年度のMartin / OOO-42EC。エリッククラプトンがアンプラグドで使用した戦前のOOO-42を基に企画され販売されたモデルです。初年度モノは価格も上がり続けてるそうです。

 

 

アンプラグドといえば、僕が大好きなNIRVANAのKurt Cobainが使用したMartin / D-18E (1959年製)が、ギターの歴史上、最高値の6億円余りで落札された、というニュースが少し前にありました。アコギ好きでカートファンの僕としては史上最高値のギターがエレキではなくアコギであり、それがカートのギターであるということがとても嬉しいのです。

もう一つ、アンプラグドといえば、放送していたMTVとMartinのコラボモデル、MTV-1というモデルがあります。賛否が分かれるであろうサイドバックがマホガニーとインディアンローズの2トーンというイレギュラーな材構成。以前修理で当工房に来たことがありますが、個人的には結構良かった印象があります。もちろん、今回のOOO-42ECもとてもナイスギターでした♪

今回も最後までありがとうございました。