スタッフブログ

ネックリセット&リフレット / Gibson Humming Bird


スタッフの山口です。

今回はネックリセット&リフレットのゴールデンコンボです。長いスケールを当てている写真からもわかるように12フレット上に隙間ができています。

費用もかかりますがその分、オーナー様の満足度も高い修理のコンボ。ちなみに同時に行う場合は工程上、手間も少し省けるので別々で行う場合の料金よりも1万円程お安くなります。

 

 


ネックの元起きも反りも併発しており、写真でも大きく変形しているのがわかると思います。


指板が浮き上がって見えるのは長年の弦の張力で角度が狂い、ネックが起き上がってくの字になっているからそう見えるのです。

このアングルの写真でも見て分かる=相当な重症です。


トップから指板を剥がしてから


ダブテイルジョイントに熱を加えます。


格闘の末、ノックダウン。


勝利の記念撮影。

ネックをトラブルなく外すことができるとホッとします。Gibson、Martinはワンピースネックが当たり前ですが、そうじゃない場合はつなぎの接着部分も温められて分離してしまうこともあります。

 


シリアルが消えていないことからこの個体は初ネックリセットと思われます。


ネックの角度を適正に調整したらシムを製作。ダブテイルジョイントをグッと押し込んだ時の感覚と音で木工精度を把握しながら厚みやテーパー具合を微調整。

シム製作は実は手間と経験が必要とする重要な工程です。手でグッと押し込み、さらにクランプの良い塩梅の力加減でしっかりと強固に組み込めるのが理想的です。


いざ接着。


無事に組込接着ができたらフレット交換。指板修正をしますのでアジャストロッドを少し緩めて締めシロに余裕を作っておきます。


フレット抜いて、、


こんな感じで。良い感じに。

指板に長年の押弦による凹みが見えます。あくまでもフレット溝の部分がしっかり修正できていればわざわざこの跡が消えるまで削りません。

この凹みは残ってた方がビンテージはかっこいいです。もちろん修正して消えちゃう時もあります。


いきなりここでフレット交換完了。

本当は何枚も画像ありますが割愛。


ナットも1フレットの高さに合わせて新調します。皆川ギター工房のリフレット料金には指板修正もナット交換も含まれています。

お店によっては別途費用がかかるケースも多々あるのでご注意ください。


アジャスタブルサドルも凛々しく見える高さに回復。


ギタリストなら一目でわかる弾きやすそうな低めの良い弦高です。


Gibsonはリセット時にヒールが少し飛び出ることがあります。


こうして見ると結構出てます。

しっかり奥まで組み込まれた証でもあります。


ロゴがギリギリのタイプ。この時代のハミングバードでは結構見られる気がします。


オリジナルのペグボタン、雰囲気がかっこいいです。


 

ハミングバードは初年度の1960年からロングスケールで作られていましたが、90年代に所謂リイシューされたものは現在に至るまでJ-45と同じギブソンスケール(628mm)になっています。 

60年代のリイシューとして再生産をスタートしたのになぜ大きくスケールを変えたのかわかりませんが、オリジナルのロングスケールはやはり迫力のある「ハミングバード」の音がします。現行品も名前は一緒ですが別物、という印象は拭えません。

一方、Doveは初年度から現在に至るまでちゃんとロングスケール。

何か理由があるとすればなんでしょう、、。

60年代前期のハミングバードは特に人気が高いので本当に手が届かない価格になってしまいました。先日70年代のハミングバードを修理しましたが、それもとてもナイスギターでした。どちらもピックガードに描かれたハチドリ(Humming Bird)が影響しているのかもしれません。信じるか信じないかは、、、今日も最後までありがとうございました。