スタッフブログ

ネックリセット / Martin D-28


スタッフの山口です。

当工房の僕のブログを見ていただいてる方にはネックリセットばかりで申し訳ないのですが、、今回もネックリセットです。ネックリセットをしている当人は全く飽きません。それぞれ修理の中にも好き嫌いがあると思いますが、ネックリセットは好きな修理に入ります。


僕の担当は「ちゃんとメンテナンスしてから、なるべく最良の状態で販売したい!」というショップ様からの依頼が多いです。 

写真を見る限り、弦高はそんなに高くないですが、サドルが限界まで下げられていてこれ以上下げられません。

 


それに加えて綺麗な「くの字」で元起きしているのが写真からわかると思います。

写真でわかるレベルは重症だということは過去のブログでも書いていますが、、

写真でわかるレベルは重症です。^_^


元起きして角度が狂うとその分だけ弦の張力がナットから上方向へかかります。その分さらに元起きネックの順反りがが加速していきます。


いつも通り15フレットに穴を開けちゃいます。これに驚く人も多いと思いますが、ここが一番ギターにとって優しい穴開け場所になります。穴を開けないでネックを外すことができるダブテイルジョイントはありません。指板を剥がせば可能ですが、ダメージはそっちの方が大きいです。


トップに載っている指板を剥がすため、ハロゲン電球で温めて行きます。


写真が飛び飛びですいません。

ダブテイル内部に熱を加えてネックはずし成功。この外す工程がネックリセットで一番リスクがあると言っても過言ではないです。


但し、経験値や技術力が問われるのはここからです。センターズレの無いよう、ある場合は修正してあげながら、仕込み角度を調整し、組み込んだ時の木工精度など、指板修正がこのあとあるならそれを計算、逆算、弦を張った時まで想定します。個体差もそれぞれありますので、ネック外す前にその個体の特性を感覚で覚えておく必要もあります。


全てが整ったらいざ組込み接着です。


 

今回の修理の写真を探してまとめていましたが、どうやらこれ以降の写真は撮り忘れているようです。おそらく原因はこのころ工房に撮影が入っていたからかもしれません。

ご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、テレビ東京の公式YouTubeにてマーチンのネックリセットの過程を取材していただきました。すでに公開されていますので、山口のネックリセットブログだけでは満足できない、という方はぜひ師匠皆川の職人技を動画でご覧いただけますと幸いです。

当初撮影の依頼があった時、「以前テレビで取材されて放送された時、修理依頼が殺到することはなかったから、YouTubeだけなら尚更大丈夫だろう」と二人で鷹を括っておりましたが、よくよく考えたらその時しか見られない地上波の放送よりも、ギターに興味のある視聴者へアルゴリズムがアプローチし、ずっとアーカイブとして残り続けるYouTubeの方が影響力がある、ということに気付かされました。案の定、大変な数の修理依頼をいただきまして、、、大変なことに。。

現在は少しずつ落ち着いてきていますので、引き続きご依頼、ご相談をお待ちしております。

皆川工房はYouTubeチャンネルは開設していません。何しろご依頼いただく修理をするのが精一杯でございまして、撮影や編集をする余裕もなく、、おそらく修理依頼が多いところほどSNSでの発信などできないのではないかと思います。もし修理依頼が少なくなって暇を持て余すようになってしまいましたらYouTubeチャンネル開設や積極的なSNS発信を皆川氏に提案してみようかと思いますが、なるべくそうならないよう、今まで通り日々精進していきたいと思う所存でございます。

今日も最後までありがとうございました。