フレット

フレット交換 / Martin 00-18(50’s)


スタッフの山口です。

前回の続きでMartin 00-18の修理、今回はネックリセット後のフレット交換です。


フレットを抜いて指板修正をします。指板のRが崩れている場合もありますが、修正できる範囲でRの調整も行います。


指板修正後はドレメルやミニノコ、フレットソーなどを使い、溝をきれいに整えます。


いざフレット打ちです。


軽量の玄能を使って一本ずつ丁寧に打っていきます。専用工具のフレットプレスもありますが、やはりこの古典的なフレット打ちが一番しっかりと見守りながらできる気がします。


フレットのエッジカットの後はサイドを整えます。まずは荒目に落としちゃいます。


指板サイドをピシッときれいに仕上げるためにはここ重要ですね!


後はいつも通りすり合わせと磨き。


今回ナットは調整だけでいい感じですのでナットはそのまま。基本的には新調しますが象牙などリプレイスメントできないものはなるべく残してあげたいのです。


サドル低めをご希望でしたのでこんな感じ。サドルのでしろは好みが別れるかもですが、あまり背が高すぎるのは格好良くありません。特にロングサドル。


弦高はかなり低くできるようになりました。


ネックの塗装も自然な感じに仕上がっています。

そろそろ自分のギターもフレット交換するべきか、、というほど自宅のギターのフレットがすり減ってきました。ナットはかなり前から溝が深くなっちゃって、カポなしだとビリつきます。しょっちゅうぶつけるからボディもネックも傷だらけだし、ネックのラッカーはベタついて擦り落としちゃってます。

恐らく共感する同業者さんも多いと思いますが、お客様のギターは一生懸命できるけど、自分のギターのメンテは何故かかなり適当。仕事としてご依頼いただいたからには持ち主に喜んでもらいたい!と思って頑張れるけど、自分のギターは自分さえ気にしなければそれでOKという感じになっちゃってどうも頑張る気になれません。

「人のためならがんばれるけど、自分のためにはがんばれない。人間そんなもんだよなぁ」と悟りながら、渋々自分のギターの錆びた弦を交換した今日でございます。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

ロッド交換、ネックリセット&フレット交換 Gibson / J-50 Double P/G


スタッフの山口です。先週に引き続き、、J-50のダブルピックガードを。

指板を剥がしたところからスタート。今回はロッド交換→ネックリセット→フレット交換のトリプルコンボです。

 


15フレット下にあるこの「隙間」をいつも狙って穴を開けています。今回は指板が剥がれていますのでこの隙間(ネックポケット)に直接ヒートスティックを差し込みましょう。


こんな感じ。

なんか、、パッと見だと養生のタオルがネックを引き抜こうとする人間の手に見えませんか?


この写真も両手でネックを引き抜いているみたいに見えますね!

無事に抜けました♪


指板、ネック、ボディがバラバラになったところで記念撮影。


指板が無いネックは強度が弱いのでこの古い癒着したロッドを抜くのは結構神経使います。


埋木をあの手この手で除去するのも結構大変です。


この作った木片、、、


どこについたかわかりますか?

 


新しいロッドを仕込んだら指板とネックを合わせます。


ネック角度が修正できたら塗装が禿げたネックを再塗装します。

指板を貼り直したので「ついで」ということですね!


表はマスキングします。


いい感じにラッカー塗装できました。


ささくれたヒールも綺麗になりました。


いざ接着してギターの形に戻してあげましょう。


最後はフレット交換。インレイがところどころ崩壊していましたので新しく入れてあげます。


綺麗な指板は個人的には大好きですが、ヴィンテージっぽさは半減します。いい感じに弾き込まれた指板の時は「指板の雰囲気を保ったまま指板修正してください」という難易度の高い要求をされることもあります。


フレットが高さを取り戻しましたのでそれに合わせてナットを新調します。

 


いい感じ。


ロッド頭もいい感じです。


あまりお目にかかれないペグもいい感じ。


 

ピックガードが片方ないですが、、全体的にいい感じです。

ケースの蓋を開けた瞬間に「いい感じ!」と思えるルックスのギターはたくさんありますが、先日2000年頃の Martin OOO-28ECのお客様がいらっしゃって、とても「いい感じ!」のルックスでした。ECは元々トップにエイジドカラーで着色?されていますが、まるで50年代頃のルックスのようなリアルさで迫力がありました。聞くと新品で買ってずっとメインで弾いているとのこと。

弾き込まれたギターのルックスはやはり迫力があってかっこいいですね。そしてそんなルックスのギターはもちろん音も素敵です。

僕の私物のギターはまだまだ幼いルックスなので迫力が出るようにがんばります。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

 

フレット交換 / Thumb W-40MP

Tree of Lifeのギターでございます。

リフレットいたします。

Thumbです。

 

サムと言うジャパンヴィンテージと呼ばれる類のブランド。

寺田楽器のブランドですね、他にはVGが有名です。

OEMのメーカーと言う印象がとても強くあります、あれもこれも寺田で作っている。

そのメーカーですので、サムのクオリティーもやはり同等なものがあります。

 

 


 


 

このW-40MPと言うギターのグレードが今一つ分かりませんが、おそらく見た目にそぐわず安かったのではないかと思います。

前回のブログとまた同じような展開ですが…

たまにしかやらない修理が続いたり、滅多に来ないギターが続けて来たり、ジャパンビンテージのリフレットが続いたり、修理屋あるあるなのだと思います。

 

 

 

 

この時代の国産ブランドは現在より多かったかのか少なかったのか分かりませんが、いろいろと知っているのはやはり沢山あってそれぞれが有名っだったのだと思います。

それから時代が過ぎていつしかジャパンヴィンテージ等と呼ばれるようになり、当初私はこのジャパンヴィンテージと言う呼び方に抵抗がありました。

思い入れが強いのは誰しも何かしら持っているものですが、静かに大事に持っていれば良いのに…と。

何か無理して持ち上げている気がして…。

ですがこうして価値を見出す人が居たからこそ新しい世界が出来て、もしかしたら無くなって行ってしまってたであろうモノ達がちゃんと使える物として残っているのだろうと思います。

一昔前までは、大昔の安いギターのリフレットの依頼が当たり前になる日が来るとは思いもしなかった。

自分のアンテナは決まった電波しか捉えないけど、知らないチャンネルが沢山あるのだろうとなと思う今日この頃でございます。

 

フレット交換 / Jullian


ジュリアンギターの


フレットを


交換します。


スタッドの無い大昔のフレットはこのように凹ませてひっかりを作ります。

Jullianと言う昔の黒澤楽器のブランドのようです。

少し調べようとしましたが、詳しくわかる資料は見つかりませんでした。

低価格帯のブランドのようです。

 


弦の位置が内側に寄っていますが、通常はもう少し外側。


フレットのエッヂは


丁寧に

角を取ります。
 
 
 
 
 
 
 

 


 

低価格帯ギターの修理依頼の際に某ショップで「買い替えた方が安いですよ。」と言われました。

と聞く事が時折あります。

おそらく親切心もあってそう言ったのかもしれません。

ただ修理屋として1番困ってしまいますのは、修理完了後に放置されてしまう事なので出来るだけ定価価格帯の物は預からない様にしているお店もあるかと思います。

しかし私は修理屋ですし、自分の持ち物も何回も直して使い続ける性分なので預からない訳いかないのです。

思い入れのあるものは替えがききません。

私の20年位前に30万円で買った軽自動車は今でも普通に使っています。

幸い修理等でも皆さんイヤな感じはなく良心的に対応して頂いています。

中にはギターの修理屋で「10万円以下はギターじゃない。」等とのたまうヤツがいると聞いたことがあります。

預かりたくないのは、それはそれでいいが、その人を悲しませることは無いと思うのだが。

 

安い物だからと言いて、修理代が安くなるわけでもないので、思い入れと修理代を天秤にかける事になります。

自分の物も見積もりの段階で諦めたりする事もありますが、「もう修理はいいか。」と「流石に使い切ったな。」と思うまで使うのが私の理想でございます。

 

 

フレット交換 / Gibson ES335


リフレットしましたら、牛骨にて交換します。


このギターにとって何度目かのリフレットになるかと思います。


見ての通りバインディングがこのように削られてしまうと、とてもやり難いのです。


インレイは外さずそのまま削っても良いのですが、薄くしたくない場合には一旦はずしておきます。

 

Gibsonのバインディングは元々フレットバインディングと言う形状なのですが、リフレットする際にはオーバーバインディングにリフレットされます。

ですが、こちらは何が気に喰わなかったのか、削って削って…フレットにオーバー出来ない位バインディングが削られちゃって、バインディングの上にフレットが乗せられません。

どーにもなんないのですが、出来る限りカッコ悪くならない様にがんばります。

 


 


 


 

通常のリフレットもフレットのエッヂは出来るだけ斜めにし過ぎない様に仕上げる為、フレットエッヂの角はきれいに取って演奏中チクチク痛くないようにしますが、今回は通常通りでは絶対にエッヂが痛いので、いつもより何回も削っては触って確かめて削って…

フレットのエッヂは斜めに削り落としてしまえばこのような面倒は無いのですが、見た目がカッコよく見えないのと手抜きしている感じがやはり好ましく無いのです。

 

インレイは指板を調整した分、僅かですが収まるスペースを掘り下げて戻します。

売らないで持ってればな~。

って、私も思っているおじさんの一人です。

 

フレット交換 / Guild F-50


作業を始める前には各段階で何度も確認が必要になります。

 


セッティングする場所ではバイスで1ヶ所固定なので作業は安定しない為、実際の作業は台に移動して行います。


指板修正と、フレットを打ちましたらすり合わせも同様に。

すり合わせが終りましたら、細かい仕上げ作業等はジグから解放します。

 

上の最初の画像段階では入念に、全体的に見て、部分的に見て、セッティング前と後ではどのように変化するか、詳しく見て詳細を把握します。

その際にフレットが付いたまま指板の状態を見る為の定規があります。

ネック角度が悪く無ければ最終フレットまで定規が当たっていても問題ありませんが、角度が悪ければ長い定規ではネックの状態は図れません。

その為に2種類の長さの定規が必要になります。

 


 


 

 

 


 

フレット交換の際に通常のニッケルにするか、ステンレスにしてみるか、1度は迷った方もいるかと思います。

迷う理由は、ステンレスにした場合どの程度音が硬くなるのかが気がかりだったのではないでしょうか。

私も古い人間ですので昔から「ステンレスフレットは音が硬いのですよ。」と刷り込みはありました。

そしてステンレスフレットのギターを弾いた時、「ニッケルならばこのギターの音はもっとマイルドなのだろうか。」「ホントにそんなに音が変わるものなのかな。」(フレットの太さ等でも)等と考えていました。

これを「修理どうでしょう」と言う動画で検証してる方がいらっしゃいます。

この方とは面識はありませんが信頼できると思いますのでお勧めです。

修理動画には、ただ言葉も無くきれいに素晴らしい動画や、「これよく出したな。」や、「ウソ言うな!」なものまでいろいろありますが、こちらは私のようなプロでも多々勉強になります。

私の大先輩の村山さんもそうですが、スゲーなと思う人はやはりキチっとちゃんとしてます。

話が逸れました。

フレット。ステンもニッケルも音には変わりはありません。

1~2年前これを見て溜飲が下がりました。

 

ナットの話では、象牙にしたら音が何たらかんたらを見聞きする度、「違うのにな。」と思います。

エボニーナットやブラスナットと比較したら流石に違いがわかりますが、象牙にして良くなったのは材質が理由では無くてナットの精度が良くなったから。作り直した人が上手かったからです。

※交換するパーツの質量の差が大きいほど音質に差が出ます。

フレットの太さで音も変わるかと言えば、それよりリフレットの精度の方が差が出るのではないかと思います。

確かに太さ硬さが変われば理屈として分かる気がしないでもないですし、聞き分けちゃう耳が良い人もいます。

ただ傾向として上手い人は音がどうのこうの細かい事言う人はほぼ居ず、軽く気にする程度、全く気にしない人も。

重きを置くのはプレイヤビリティ。

そして、私のオールドマーチンはステンレスフレットのナイスプレイヤビリティ。

 

 

ネックリセット&リフレット / Framus 12弦


本年も宜しくお願い致します。

スタッフの山口です。新年一発目は12弦ギターのネックリセット&フレット交換というヘビーな修理です。


弦高は高いですが、


サドルはもう下がりません。

ネックリセット屋の出番です♪


あと今回はボトム割れのトリプルコンボです。


珍しいメーカーの場合はダブテイルジョイントかどうかをネットで調べたりします。そうするとネックリセットしている人がブログを書いていたりします。

それが皆川氏が過去に書いたブログだったりします。笑


今回も過去の皆川ギター工房のブログ通りに進めます。


ダブテイルジョイントを温めてネックを抜きますが今回はヒール脇のサイド板が割れてしまいました。


やたら弱いな、と思ったのとボトム割れが気になったので中を調べたらネックブロックとバックが接着されておらず隙間が空いていることに気づきました。


エンドブロックも案の定、浮いていました。

これでは十分な強度が得られない気がします。


サイド割れを直してネック角度を修正します。


写真じゃ分かりづらいですが、ネックブロックがスプルースです。これもあまり強度が足りなくなりそうです。


ネックがついたらリフレットに移ります。

先週も登場しましたが、便利だけど使いこなすのが難しいやつです。


この状態をメーターに記憶させます。


弦を張った状態のネックの指板を修正します。


フレット打ち。


フレット交換は技量が試される修理だと思います。


個人的にはこのフレットサイドの処理が一番気合いが入ります。

ここがガタガタだと師匠のOKはもらえません。


フレットが新しくなると気持ちいいです。


今回は0フレットがあるので12弦ギター修理の難関、ナット交換はしなくてOK。


指板もフレットもネック角度も改善し、良い面構えです。


0フレットは1フレットより高さも幅もあるものにします。


サドルに余裕も出て、弦高も下がりました。


フレット交換はやるたびに腕が上がる感覚があるので、毎回気合いを入れてそれを実感できるように頑張っています。


好きな方には生唾ものの良いギターですが、、どうしても細かい部分を見ると惜しい、という作りでした。でもこの「惜しい」が個性のあるグッドサウンドを生み出してたりするので、ギターのそういうところが面白いよなぁ、 と思います。

今年も皆川ギター工房をどうぞ宜しくお願い致します。

 

フレット浮き すり合わせ / Gibson L-OO


分かり易くフレットが浮いてます。

音が詰まったり、ビリついてしまう場合はフレットが浮いていないか見てみましょう。

 


フレットのエッヂは切って斜めに削っただけです。

これだと演奏中チクチクしてストレスになります。


14フレット以降は、ぼぼ切っただけのような状態です。

あまりよその仕事は悪く言わないけど、

こっちは触らないからと言っても、ちょっとひどいね。

 

 


 

これはどういう状況かと言いますと、ネックジグなる道具に括り付けてある状態です。

以前にアップしたブログの中でも説明してる部分があります。

チューニングしてある状態のまますり合わせの作業が出来る、と言う代物。

しかも演奏中のようにギターを横にした荷重状態を再現してます。

 

このような大げさな装置でやりますとついつい見せたくなってしまいます。

これがどれくらい良いかと申しますと…そんなに万能ではありません。

何でも同じやり方でするのも間違えでは無いとは思いますが…。

私はケースバイケースなんだろうと思います。現状ネックの状態は、ロッドはどうなっているのか、どの様にすり合わせしたいか、色んなことを考えないと(折角良い道具があるのに上手く使いこなせていないだけかもしれませんが、)上手く行きません。

 

 


浮いてるところは押さえつけてすり合わせ。


エッヂは角を取って演奏中に手が痛くならない様に。

 


ハイポジション側は触らないけど、同じように角を取って揃えます。

 


 

浮いているフレットは押さえつけてと書きましたが、叩いてもはねてしまう場合は接着剤で押さえます。

浮いている本数が多い場合は一旦全て抜いて打ち直す場合があります。

 

一旦抜いて、打ち直してやるとしっかり喰い付て気持ちが良いのですが、1本だけ打ち直したところが低くなってしまいます。

そうなると他のフレットが気になりますので、こっちも打ち直さなきゃ、それ直すと、こっちも、となってしまいます。

出来る限り手を加えて出来るだけ良い状態にしたい場合もありますが、当初の不具合を改善するだけならばコストも余計にかからずに済みます。

出来るだけお金を掛けたい方は、是非お申し付けください。

すごく張り切ると思います。

ネックリセット / Martin 00-18


スタッフの山口です。

急激に寒くなってまさに冬。乾燥はアコースティックギターの天敵ですので加湿をお勧めします。


今回もヴィンテージギターのネックリセットです。いつも通り15フレット下のダブテイルジョイントポケットを温めます。


マーチンは本当に素直にネックが外れてくれます。ヴァイオリンのように長く使って欲しいからと、修理を前提として設計されている点だけでも好感がもてるメーカーです。


恒例の記念撮影。


ダブテイルジョイント周辺は古い接着剤や塵を綺麗に除去します。


それをしなければ良い接着ができません。

精度の高いジョイントは音にも影響が出る、はず。


ヒールを調整し角度を正常にしてあげたら、お辞儀する指板の厚みを足してあげます。


これがないとネック角を見た時に14フレット辺りから下に下がってカッコ悪いし、ハイフレットを弾く際に弦高が高くなってしまいます。


ネックとボディを組んで接着したら15フレットを戻していきます。


エボニーは埋木しても馴染むため、ほとんどの人がそれに気づきません。


今回は指板がガタガタなので最低限の指板調整をします。フレットは戻す時のために1弦側にマッキーでチョンチョンと印をつけておきます。1弦側と6弦側がリャンコにならないように。


チップしないようにフレットが抜けたら指板修正開始。


フレット浮き防止のためにフレットに何十年も溜まった手垢や皮脂の汚れを1本ずつ落としていきます。


フレットを打ち直してすり合わせ。良い具合にピカピカに仕上げます。


ネックリセット時はサドルの新調は必須です。


良い具合のでしろになりました。


弦高もバッチリ。


センターもしっかりと調整できました。


多くのギターを手にして思うのは00サイズが日本人の平均的な体格にとって至高のサイズ感なのではないか、ということ。


このヘッドストック、これもまた至高のフォルムではないでしょうか。


当時はヘッドの形は選びたい放題でデザインできたのではないでしょうか。何事もシンプルイズベスト!です。


最後は修理前の画像。いつも思うのは、このギター何十年もどこに眠っていたんだろう、です。アメリカの田舎町の蔵的なところにあったのかもしれないし、ショップのバックヤードにあったかもしれない。どちらにしても弦高がまともに弾けるレベルではないのでどこかに長年眠っていたのでしょう。家の収納の奥からこれが出てきたら、、と妄想してしまうほどのナイスギターでした🎵

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

フレット交換&ピックガード矯正 / Martin D-28 (1950)


スタッフの山口です。

暑くなったり寒くなったりで人もアコギにとっても体調を崩しやすい時期です。

写真のD-28君も具合が悪そうなので治療していきましょう。


ピックガードが硬く反り返って剥がれてしまっています。通常は交換をお勧めしたい状態ですが、オーナー様のご希望でオリジナルのピックガードを再生して残したいとのことなのでなんとか矯正して戻したいと思います。


今回は他の修理もあるのでそっちを進める間、ずっと矯正しておきます。


そしてブリッジを剥がします。

ブリッジを剥がした理由は、、


恐らくマスキング無しのワイルドなオーバーラッカーでブリッジがテカテカになっていたから。綺麗に剥がすにはトップ材についたままでは不可能なので。


ラッカー塗装を除去して本来のブリッジになりました。

ピックガードが硬く反り返ったのもマスキング無しのオーバーラッカーが原因でしょう。


ブリッジを元に戻したら、


フレット交換です。

フレット交換時には指板修正も行います。

写真のように長年握り込んで押弦した跡、凹みが消えるまで削る必要はありません。

あくまでもフレット溝部がしっかりと修正できていればヨシ。むしろ70年かけて作られたこのナチュラルな凹みはルックス的にも残したい。


当工房ではフレット打ちを昔ながらの玄能でコンコンやります。

師匠が弟子入り間もなかった僕にフレットプレスを買ってくれましたが、結局アコギにはヒール周りなどに使えないので、今はエレキ担当のT君がフェンダー系にたまに使うくらいです。


フレット交換は各工房や職人により工程も仕上がりも本当に様々です。

 

一般的なメンテナンスの一つですが、経験と技量、根気とこだわりなど全てが現れるのがフレット交換なのです。


フレットのエッジは立てますがチクチクしないよう一本一本丁寧に丸めます。どこを見ても同じ丸みと形にできれば理想的です。


フレット交換後はナットとサドルを新調します。


オールドマーチンは底面が突板と同じ傾斜が付いていますので加工の難易度がアップします。近年は指板と同じ平らな底面になっています。


ナットやサドル、ブリッジなどのディティールは幾多のヴィンテージギターを見て、修理してきた皆川氏のこだわりが詰まっています。

100点をもらえた時はとても嬉しいですが、そうで無い時はやはり悔しいです。


マーチンのナット溝は外側から2.75mmくらいが理想的です。ギブソンは気持ち外側です。


元のナットよりはマーチンのナットっぽいですね。


最後はしばらく矯正していたピックガードを戻しましょう。


専用ジグで接着。


ヌルヌル滑りますのでタイトボンドでピッタリと元の位置につけるのは意外と難易度高いです。


ナットも指板もフレットも良い感じでは無いでしょうか。


ブリッジも余計なお化粧を落とし本来のすっぴんに。


1950年製のMartin D-28。

仕様においても音色にしても最近はやはり「D-28が至高」と言われてきたことに納得することが多いです。もちろん好みは人それぞれですが。


ピックガードもピカピカよりこっちの方がいいとなりあえてこの感じで。

 


 

先日NHKで福山雅治さんが所有する1940年製D-45をマーチン本社に修理依頼するという企画を軸として、マーチンの歴史や本家としての伝統を重んじる気概やこだわりを紹介する番組が放送されていました。修理方法や引退したマーチン職人の「計測は2度、切るのは一度」という言葉など印象的でとても興味深く、勉強になりました。

僕の師匠のさらにその師匠にあたる大先輩が何十年も前に本家マーチン社でその伝統的な修理方法を学び、日本に持ち込んだ、という話を皆川氏から聞いたことがあります。マーチンのスピリットが日本で世代を超えて受け継がれ、そしてちゃんとこの僕自身にも受け継がれていると思いました。自分ももっと経験を積み、学び、そして技術を磨き、それを次の世代に伝えることの大切さなど、勝手にその壮大な使命を感じました。

番組後半に福山雅治さんが「この貴重なギターを僕が所有することで、この音をレコーディングやライブを通して皆さんとも共有していきたい」的なことを言っていたのがとても好感が持てましたね!

ということで最後は少し話が外れてしまいましたが、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。