ボディ(トップ、サイド、バック)
ボディ割れ修理 / YAMAHA LL-31B
運送中、ライブの準備中、等に時に起きがちなアクシデント。
エンドピン部分に力が掛かった場合は、このようにボトム部が割れる事がよくあります。
現在の物は分かりませんが、ヤマハのケースは底が薄いのでケースに入っていても気を付けなくてはなりません。
ケースに入っていてもネックが折れる事もあり、ヤマハのケースでなくても気を付ける事は同じです。
ケースがしっかりしているので倒れても大丈夫だと思いがちですが、大概のケースはヘッド部分はフリーです。
ヘッドはペグが付いており結構な重量があります。
更に弦をチューニングしたままの場合では、約70㎏の張力が掛かった状態ですので何らかの影響が出る確率が更に高まります。
「いつも大丈夫だから。」と思わずに大事なギターでしたら用心してくださいね!
運送する際、日頃の管理、ライブの時等、いつも大丈夫だったけど皆さん1回大丈夫でなくなった時から、気を付けます。
その1回があった為に、「次のギターからずっと大丈夫です。」確かに学びは大事です。
でも良くない事は1回も無い方が良いですから。
修理屋にお越しになる方は大概は、一期一会。
しかし中には何度も大丈夫でなかった事が起きる人もいますが、「なんかあったらそん時また直せばよい!」
という考えもあるかもしれませんね。
ボディ割れ、剥がれ / Ovation 1761
割れに対して、接着剤がしっかり入ればクリート(割れ止め)は必要ありませんが、接着剤が入って無いような所にはクリートを付けます。
接着剤が入らなかったのですから、これしかありません。
割れの話は何度かしておりますが、今回のように落として割れた場合と冬場に乾燥で割れる場合、
2パターンあると思いますが、どちらかと言えば乾燥で割れる場合の方が面倒かと感じます。
ギターも個体差があって、こっちは大丈夫なのにこっちは大丈夫でない。
そう言う事は往々にしてあります。
もし乾燥で割れた事がある個体なら、冬場の乾燥には多少なりの気遣いは必要かと思います。
(割れたことが無くても気を付けるに越したことは無いです。)
冬場に割れが見つかるタイミングでは、その割れは開いて閉じなくなっています。
そのまま接着剤を入れる訳には行きませんので、当工房の養生棚に置いて閉じるまで待ちます。
修理の際は割れが閉じてしまっているので、接着剤は十分には入りません。
ですので、クリートを付けるしか無いのですが、もっと大きいクリートにすれば効果があるのでは、という考えもあります。
割れに接着剤が入っていないのですから、クリートの大きさは関係ないかと考えています。
クリートが大きくても恐らく、再度乾燥が進めば同じ所が割れる確率は高いと思います。
私のギターもやはり冬は乾燥でトップが凹んで弦高が下がりますので、(割れる程までは乾燥しないですが…)音もぺしゃつくと言いましょうか、…
弦高を上げれば良いのですが、面倒なのでそのまま弾いています。
過湿するグッズ等もありますので、使う価値はあります。
では夏は頑張って乾燥させた方が良いのでしょうか。
必要はないと思います。
弾き込めば良いのです。
弾き込めば湿気は発散されます。
自分のギターは夏場、弦高も好いので夏場の音の方がとても良い音です。
では、弾かないギターの場合はどうするのですか。
知らん。
トップ割れ修理 / Kamaka Tanor
ウクレレはギターと違って軽い分、倒したり落としたりした時も意外と無事な場合がありますが、今回はそうはならなかったようです。
ウクレレ専用のストラップの場合は、手を放してしまうとクルっと回って落ちる事があります。
ギターのようにストラップピンを付ける人や、穴を空けずにつけられる落ちないストラップや、独自の工夫をしてる人等、いろいろありますので不安な方は検討されてはいかがでしょうか。
こちらのウクレレは、演奏中に落ちたかは定かではありませんが、それはそうとして不幸中の幸いな部分は、こちらのトップ板は割れの跡が目立ち難いと言う事。
割れた跡が残らない修理は不可能ですが、スプルースやシダー等のように目立つことがありません。
ギターのトップの場合は、スプルースやシダーであることが多いので、割れてしまうとなかなか目立たない様には修理出来ません。
今回の破損とは違い、冬場の乾燥が原因で割れる事はよくありますが、これもとても難しい修理です。
乾燥状態は、割れている事にすぐ気が付きます。
何故なら木が縮んで割れて隙間があるからです。
この状態でしたら接着はとてもしやすくしっかり接着も出来ます。
しかし、季節が進み湿度が戻ると木も元の大きさに戻ります。
そうなると割れの隙間に入れた接着剤が邪魔になり木が歪む原因になります。
なので、工房の養生棚で割れの隙間が閉じるまで置いてから接着したいのですが、ピッタリ閉じていますので専用の工具を使っても上手く接着剤が入らない事もあります。
割れの修理は裏からクリートと呼ばれる割れ止めを貼りますが、それは気休めでしかありませんので冬に乾燥して木が縮めばまた割れが出ます。
湿度のバランスが取れている時は、割れはぴったり閉じていますので見た目、割れているようには見えない事もよくあります。
ギターを見るタイミングによっては割れは一切なく、過去に割れた形跡を特定する事も出来ない事もあります。
ピッタリついていれば究極、割れている事になりませんので冬場の乾燥にはお気をつけくださいませ。
サウンドホール割れ / Martin OOO-42EC

サウンドホールのめり込み割れが起きる時は大体こちらのバスバーと呼ばれるブレイシングが剥がれていることが多いです。
アコースティックギターにとってのブレイシングは音色を司るのもそうですが、「割れ止め」という最大の役割があります。
修理屋に持ち込んだ時は今後のことも考えてブレイシング剥がれのチェックもしてもらうことをお勧めします。
アンプラグドといえば、僕が大好きなNIRVANAのKurt Cobainが使用したMartin / D-18E (1959年製)が、ギターの歴史上、最高値の6億円余りで落札された、というニュースが少し前にありました。アコギ好きでカートファンの僕としては史上最高値のギターがエレキではなくアコギであり、それがカートのギターであるということがとても嬉しいのです。
バック板欠損 / Gibson J-45
途中の画像が無いですが、付け足す板は直線で合わさるように直します。
そして中の力木は剥がれているだけでなく、裂けている部分もあります。
見落とすことなく全て接着します。
欠損部分は新しい板を付け足していますが、クリート(割れの境目に付ける割れ止め)は、あまり意味がありませんので付けません。
ボディ割れ修理のクリートは、「もっと接着剤が入ればなー!」と言う時や、「修理やりましたよ!」という証に付けます。
今回のこちらの割れ修理は破損ですが、
ボディ割れ修理の原因1位は「乾燥」ですので、割れ修理をしても乾燥させれば、また割れます。
お気をつけください。
ジャック周りの割れ修理 / Gibson CF-100E
修理屋は写真のような専用ジグを必要とします。どうしてもサイズや修理箇所が毎回違いますので、そのほとんどが自作になります。
ジグ作りはその時の修理一回のために作ることもあり、とても面倒なことではあるのですが、もし優秀なジグが完成できれば、その時点で修理の半分は終わったようなものです。それだけ修理屋にとってジグを考え、作り出すことは大切なスキルの一つであると言えます。
このペグを使ったジグを作った人はきっといろんな便利なジグも作っただろうことが容易に想像ができますね。
本日も最後までありがとうございました。
ボディ割れ修理 / Martin DSTG
幸いにヒールは割れておりませんが、ネックブロックも大きく割れてしまっているので、このままくっ付けちゃう訳にはいかないでしょう。
ネックを外して、しっかり修理して、整えてからネックをリセットします。
仮にネックを取らなくても、割れは接着出来るかもしれません。
但し、ネックジョイント部にも接着剤が付いてしまう可能性が高く、そうなった場合は将来的にネックを外す際に非常に取り難い事になりかねません。
マーチンのボルトオンネックは、ジョイント部も接着されている為、唯でさえ取り難く、ダブテールジョイントの方が返って外しやすいのでは、と思うようなものですから、これ以上くっ付けちゃうのは避けた方がよいでしょう。
幸いこの、「真っすぐホゾ(straight tenon)」なら上へ引っこ抜くことが出来るので割れていてもこれ以上割れが広がる心配はありません。
これがダブテイルジョイントの場合は、ヒールから押し出さなければならない為、工夫をしなければ割れが開くばっかりで、ネックが抜ける事はありません。
ネックジョイントの話になりましたので、もう一つ。
Martin OOO-17 だったと思いますが、ネックが取れずに悩んだ記憶があります。
ボルトオンジョイントなのに、引っこ抜けない。
もうすでに取れても良いくらい緩んでいるのに。
絶対上に引っ張れると思っていましたから、「なんで?」
仕方ないので、ダブテイルジョイントと同じようにジグを掛けて押し出してみましたら抜けた。
よくよく見てみますと、一見ストレートに見えて、何となくダブテイルジョイントになっている。
ジョイントがグラグラルーズでも、これでは上に抜ける訳が無いのです。
それ以外にも私の資料とネット検索を駆使して調べられる限り調べて、その答えは見つかりませんでしたが、このモデルは絶対にダブテイルジョイントに違いないと決定した挙句、結果大変な思いした事もありました。
何十年もやっているのに、私、間違ってしまう事があります。
思い込んではいけません。
それ以来、分からないギターに関しては指板を剥がして直接、何ジョイントなのかを確認しています。
トップ割れ&リフィニッシュ(後編) / Ovation Custom Legend 1769

皆様あけましておめでとうございます。
スタッフの山口です。今年も皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い申し上げます。
今回は年末の続きからです。無事に塗装まで終わりましたのでネックやパーツを組み込んで行きたいと思います。
少々赤みが強かったかなぁ、、と思いましたが画像検索するとオベーションも色味やバーストの幅など個体差が結構あり、もっと赤っぽい個体もたくさんありましたのでOKを自分で出しました。
退色するとちょうどいい感じかも。。
トップ割れ&リフィニッシュ(前編) / Ovation Custom Legend 1769