スタッフブログ

ロッド交換&ネックリセット&リフレット 中編 / Gibson Humming Bird 70’s


スタッフの山口です。

前編のロッド交換の続きですが、今回は主にネックリセット編です。新しいロッドの埋木をある程度ノミで削っていきます。


ネックの指板接地部分も綺麗にしていきます。


特殊だったロッド調整部も無事にGibsonらしくなりました。


指板が剥がしてある状態ですので、ダブテイルジョイント部を温める用の穴はいつもの指板上から開けるよりも容易です。それもあってロッド交換→ネックリセットはよくある組み合わせなのです。


よく見るとダブテイルジョイントの正面とボディとの隙間がなく、ピッタリなので、指板を剥がしていなかったら、穴あけ時にちゃんと狙ったところにあいているか不安になるパターンですね。


熱を加えてジョイントが緩んできました。


無事にバラシ完了、記念撮影。


狙い通りの部分に穴を開けられるので比較的効率良く熱が伝わり、ネックも短時間で外れました。


ここで指板接着。

ネックと指板の境目からタイトボンドがウニュウニュと溢れてきます。タイトボンドは後からある程度拭き取れますが、今のうちに綺麗に拭き取りましょう。


指板が元に戻り、ロッドのボルトナットを装着。いい感じですね!Gibson!


ダボを打っていてもネックと指板の境目は100%ツラが合う訳ではありませんのでサンディングで平らにします。その際に色が禿げる部分がありますのでタッチアップを施します。


全体的にオーバーラッカー塗装で塗装修正。


新品ではないのであくまでもその風合いにこだわって仕上げます。


ただただピカピカに鏡面仕上げにすれば良いわけではなく、ビンテージとして違和感のない程度にあの手この手、です。


ネック角度が決まるまで何度も組んでは外し、を繰り返しながら調整していきます。


センターズレのないように、また、角度はこの後リフレットをすることを考慮し、調弦した際に適正なネック角度になるようイメージしますが、個体ごとにネックの起き上がり方、反り方に微妙な差異がありますのでその辺が腕の見せ所なのだと思います。。


いい感じに角度も決まりいざ組込です!


今回はここまで。次回はリフレットで完了です。

これほどの時間をかけた大掛かりな修理は終盤から徐々に完成時が楽しみになります。見た目はもちろんですが、弾いてみて「サウンドがどうなのか」も楽しみなのです。そこが楽器修理の特権というかなんというか、醍醐味でもあるのです。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

ロッド交換&ネックリセット&リフレット 前編 / Gibson Humming Bird 70’s


スタッフの山口です。

今回は70年代のハミングバードです。大掛かりな修理になるので3つに分けてアップしていきます。ロッド交換→ネックリセット→リフレットの順番で行うのが効率的です。


弦高はスケールを当てるまでもなく、一目で分かる程、激高です。ここまで状態がひどいものは大体角度狂い(元起き)に加え、ひどく順反りになっている場合がほとんどです。

 


サドルもまあ、こんな感じになっちゃってます。

ブリッジの厚みが薄いのは70年代ギブソンの仕様ですので問題ありません。


そしてフレットもぺったんこです。フレット交換時期はオーナー次第ですが今回はロッド交換で指板も剥がして指板修正も必要になりますのでリフレットします。

 

 

 


そして初めて見るこのロッド頭、、。

Gibsonとは思えない形状のロッド頭ですね。オリジナルと思われますが、まるでフェンダーから持ってきたのかという異様な感じがします。


まずは指板を剥がす前にナットを取り外し。

底面が癒着していて欠けちゃいましたがリフレットを予定していますので、どのみち新しいナットに交換になります。


指板の再接着のために数カ所にダボを仕込んだらハロゲン電球で温めながら指板を剥がしていきます。よく温めて、ネックの木目を読みながら慎重に。


無事に指板が剥がれました。上出来です。


古くなったロッドを取り出すために埋木を取り除いていきます。

 


全容が解明されました。太いロッド頭用に溝も広げられています。ワッシャーもナットから2cmほど入ったところに仕込まれているので、やはり製作された当初からこの仕様である可能性が高いですね。


頭部分を取り外して、、


まずは溝を綺麗にして加工していきます。


70年代のGibsonはリセールバリューが60年代ほどありませんのでなかなかこんなにコストをかけた修理は珍しく、色々と貴重な経験になります。


色々と綺麗にしたら記録としてパシャリ。

これが埋まっていたよ、という意味で。


本来のGibsonらしいロッドに変更するため溝をそれ用に加工します。


ロッドは個々のギターに合わせてガスバーナーを使って溶接します。


ロッドエンド完成!


今回は元の溝がほんの少しだけ広いので腐食防止のラバーを履かせることができました。


溝のRに合わせて埋木を製作。


また何十年後かにお目見えするであろうロッド君に別れを告げます。


埋木完了!

正直なところ、ロッド交換は指板を貼るまでちゃんと機能するか分からない部分もありますので、ある程度想像でシュミレーションしなければなりません。

 

今回のギターはロッドでなんとか弦高を下げようとして締め切られていました。

ロッド調整は弦高を下げる目的として行うものだと間違えて捉えている人が世の中には非常に多い気がします。ネックの状態を見ずに、「弦高上がってる!→よし!ロッド調整だ!」みたいな感じ。

アジャストロッドの本来の目的はネックの補強に加えて、「ネックの反りを調整するもの」ですので、「弦高を下げる」目的ではありません。アジャストロッドでネックを正しくリリース調整し、弦高はサドルの高さで調整をします。

弦高が高いな、、と感じたら、原因の所在及びトータルで正しい調整ができる人に見てもらうことをお勧めします。

次回はネックリセットからお届けいたします。

今回も最後までありがとうございました。

 

ボディ割れ修理 / Gibson J-160E


 


 


 

Gibson J-16Eのボディ割れ修理でございます。

お預かりの際に聞いたかもしれませんが、大分前の事で忘れております、何か角のあるようなところに落としてしまったのかもしれません。

これは所有者は大変ショックかと思いますが、不幸中の幸いとでも言いましょうか、トップでなくてまだよかったのではないかと、少し思います。

ギターの場合、正面はスプルースやシダー等が使われることが多く、シースルー部分は跡が目立ってしまいます。

 

 

 


色が飛んでしまっている所は


塗装前に筆で

タッチアップして

割れ跡が多少でも目立たないように色は少し濃く塗装してあります。

ですが、最近は割れ跡が見えてしまっても、最後に少し濃くしない方が返ってきれいかなと感じたりします。

きれいに出来ているか、イマイチか否かは完全に主観なので正解が分かりません。

こういった好みの部分は年齢によって変わっていくものなのでしょうか…。

 

文句ない仕上げとしては、サイド片側全体リフィニッシュすれば、きれいに修正出来ると思いますが修理代が高くなってしまいます。

どっちが良いのでしょうか、修理代は倍以上になってしまいますから、高くない方が良いと思ってやっておりますが…

そう思いつつ、ネック折れ修理なんかでは、ネック全体塗り直している修理屋さんもありますし…

 

 


見方によってそれ程、濃く無く見えます。


内側から補強。


J-160Eでした。

私の場合、修理の鉄則は、「わざわざ広げない」「難しくしない」と教わって来ましたので、それは根付いていると思っておりますが、ついつい考え込んでしまいます。

不惑の四十は、当の昔に通り過ぎたのに、未だに迷いがあります。

「よそはよそうちはうち」と思いつつ、よそはどうやっているのかな?

等と気になったりします。

 

ネックリセット / Martin D-28


スタッフの山口です。

当工房の僕のブログを見ていただいてる方にはネックリセットばかりで申し訳ないのですが、、今回もネックリセットです。ネックリセットをしている当人は全く飽きません。それぞれ修理の中にも好き嫌いがあると思いますが、ネックリセットは好きな修理に入ります。


僕の担当は「ちゃんとメンテナンスしてから、なるべく最良の状態で販売したい!」というショップ様からの依頼が多いです。 

写真を見る限り、弦高はそんなに高くないですが、サドルが限界まで下げられていてこれ以上下げられません。

 


それに加えて綺麗な「くの字」で元起きしているのが写真からわかると思います。

写真でわかるレベルは重症だということは過去のブログでも書いていますが、、

写真でわかるレベルは重症です。^_^


元起きして角度が狂うとその分だけ弦の張力がナットから上方向へかかります。その分さらに元起きネックの順反りがが加速していきます。


いつも通り15フレットに穴を開けちゃいます。これに驚く人も多いと思いますが、ここが一番ギターにとって優しい穴開け場所になります。穴を開けないでネックを外すことができるダブテイルジョイントはありません。指板を剥がせば可能ですが、ダメージはそっちの方が大きいです。


トップに載っている指板を剥がすため、ハロゲン電球で温めて行きます。


写真が飛び飛びですいません。

ダブテイル内部に熱を加えてネックはずし成功。この外す工程がネックリセットで一番リスクがあると言っても過言ではないです。


但し、経験値や技術力が問われるのはここからです。センターズレの無いよう、ある場合は修正してあげながら、仕込み角度を調整し、組み込んだ時の木工精度など、指板修正がこのあとあるならそれを計算、逆算、弦を張った時まで想定します。個体差もそれぞれありますので、ネック外す前にその個体の特性を感覚で覚えておく必要もあります。


全てが整ったらいざ組込み接着です。


 

今回の修理の写真を探してまとめていましたが、どうやらこれ以降の写真は撮り忘れているようです。おそらく原因はこのころ工房に撮影が入っていたからかもしれません。

ご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、テレビ東京の公式YouTubeにてマーチンのネックリセットの過程を取材していただきました。すでに公開されていますので、山口のネックリセットブログだけでは満足できない、という方はぜひ師匠皆川の職人技を動画でご覧いただけますと幸いです。

当初撮影の依頼があった時、「以前テレビで取材されて放送された時、修理依頼が殺到することはなかったから、YouTubeだけなら尚更大丈夫だろう」と二人で鷹を括っておりましたが、よくよく考えたらその時しか見られない地上波の放送よりも、ギターに興味のある視聴者へアルゴリズムがアプローチし、ずっとアーカイブとして残り続けるYouTubeの方が影響力がある、ということに気付かされました。案の定、大変な数の修理依頼をいただきまして、、、大変なことに。。

現在は少しずつ落ち着いてきていますので、引き続きご依頼、ご相談をお待ちしております。

皆川工房はYouTubeチャンネルは開設していません。何しろご依頼いただく修理をするのが精一杯でございまして、撮影や編集をする余裕もなく、、おそらく修理依頼が多いところほどSNSでの発信などできないのではないかと思います。もし修理依頼が少なくなって暇を持て余すようになってしまいましたらYouTubeチャンネル開設や積極的なSNS発信を皆川氏に提案してみようかと思いますが、なるべくそうならないよう、今まで通り日々精進していきたいと思う所存でございます。

今日も最後までありがとうございました。

 

 

ピックガード交換 / Martin OOO-18


Martinのピックガード交換


普段無くなは、ないのですが


ブログになるのは久しぶり。

昔のピックガードは両面テープで貼り付けてないので剥がす事は楽です。

ただし、塗装のない木地に直接接着されている為、剥がす際には順目逆目はどっちに向いているのか感じ取ってヘラを使わないと、木地をむしり取ってしまいます。

いつも必ずうまく行くとは限りませんので、その時は剥がれてしまった破片は元に貼り直します。

 

 


めくれ上がった部分は平らになる様に接着します。


しっかり接着出来ていますが、クリートは一応やった印。

当方のクリートはひし形がほとんどですが、場所や理由により変わります。

ひし形クリートは大き過ぎるととカッコ悪いので小さめに作っています。

なので、「ずらーっと並べずに長いの貼ろう!」や「ここは大き目の1枚にしましょ。」など、その時々の雰囲気で変わる事があります。

 


 


 


 

ピックガード作製で一番大変な作業は、水研ぎの作業です。

保護シールをはがした後サンドペーパーでこすり直します。

水研ぎをすることで、保護シールを剥がしただけの時の艶とは別の美しさが出ます。

保護シールをはがしただけでも十分きれいではありますし、そういうピックガードも見慣れてはいますが、我々には「下敷きのよう」に見えるのです。

ですが水研ぎをする場合は、何度、研ぎ直してもサンドペーパーの跡が消えず、とても苦労します。

 

この「下敷きの様」と言う表現。

昔、25年位前、ギター屋でミッシェルに遭遇して、お話させて頂いた際、ピックガードの話題になり、ミッシェルの言った表現なのですが、とても適格な表現だと感心してそれから私も同じ言い方にしています。

あ、私のミッシェルはこちら。→ https://anison.aoistudio.jp/artist02

フレット交換(+アイロン) / Gibson B-25


スタッフの山口です。

今回はフレット交換。ネック角度狂い少々、ネックの順反りが少々見られますが、ネックリセットでガッツリ直す予算はないとのことでなるべくそれらを修正することを念頭においてリフレットを進めます。


フレットがぺったんこなのがわかります。

68年製のピックガードは分厚いため、面倒ですが一旦外します。写真を見ても、おそらく前回のリフレット時につけちゃったピックガードの傷がフレットの延長線上にあるのがわかりますね。こうならないように外します。


レモンオイルをナイフにつけて剥がしていきます。ヌルヌルと全方位から。


ベタベタのヌルヌルです。


根気強く綺麗にしました。


指板修正の削り幅を少しでも小さくするため、補助的にアイロン矯正を行いました。


フレットを温めながら抜いていきます。


不要かもしれませんが、抜いたフレットは一応お返しできるよう保管。


指板修正は汗だくになります。


フレット打ちはいつものように玄能で行います。


長めに打たれたフレットをカットします。


切ったフレットのエッジを整えていきます。最初はある程度ゴリゴリに削ります。


少しずつ、


そして真っ直ぐに、


番手を上げていき、


綺麗に仕上げます。


これだけでも綺麗ですがチクチクと手に当たりますので、


均一に角をハンドロールで丸めます。工房によりこの辺の仕上げは個性が出るところかもしれません。


擦り合わせと磨きを終えたら古いナットを外して設置面を綺麗にします。


1フレットに合わせたナットが必要になりますのでナットを新調します。


弦高もいい感じですね。


新しく標準的な高さのあるフレットは本当に弾きやすいです。


ピックガードに新しい両面テープを貼って元に戻します。


最後にサドルで弦高をセット。アジャスタブルサドルなのでわかりづらいですが、、ほぼベストな出しろではないでしょうか。

アイロンの効果を感じ取れました。


こういうふうに見た時に、


ピシッと真っ直ぐフレットが並んでいるかどうかはほぼ自己満足の世界かもしれませんが、一般の方が気が付かないところにこそ、仕事の良し悪しが見えるものです。


フレットが新しくなり、なんとなく背筋が伸びたような印象のGibso君。


 

今回は指板修正前にネックアイロンを挟むことでロッドの効き幅もサドルの出しろも改善しました。ネックリセットも十分選択肢に入りそうな状態でしたが、ネックアイロンとフレット交換である程度イケると判断できたので、なるべく余計な手間とコストをかけないで無事完了。それぞれの症状に合わせて「これでいけそうだ」とか「これでは改善されないだろう」など、色んな選択肢があります。

そして経験からその判断ができなければ、適正な修理はそもそも始められません。

 修理に持ち込む際はなるべくオーナーと相談して修理を選択しますが、どれの方法がベストな選択となるのかはある程度おまかせいただければ幸いです。ネット上には誤った情報もたくさんありますので、鵜呑みにし過ぎず、まずはぜひご相談ください。

ところで、Gibsonは何と言っても「男前」ですね。

音も見た目も、男ゴゴロをくすぐってくる唯一無二のメーカーではないでしょうか。

そして何よりこの「ギブソン!」という響きがかっこいいですよね。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

ネック折れ修理(塗装修正あり)/ Gretsch Tennssee Rose


 


 


 

当方では補強が必要なタイトボンドでの接着では無く、ネック折れに関しては補強の必要のない接着剤を使用しています。

補強の手間がありませんので、その分コストも下げられます。

補強がありませんので、再度アクシデントがあった場合は折れ方が複雑になりずらい為、同じ方法で修理出来る利点があります。

再度折れる時は、一度目の接着部分は強い為、その近辺、イメージ的に1ページ前後の辺りから折れる事になります。

 

 


 


 


 

 

補強があれば、何かアクシデントがあった場合に折れずに済むような気がしますが、補強の理由は、タイトボンドでの接着はそれだけでは持たない為です。

以前参考の為、各ショップのリペア料金表を見ていた際にどちらかのサイトでは、ネック折れ修理接着のみの場合は保証出来ない的な事を読んだ記憶があります。

補強が無いと必ず再発してしまうと言う事では無く、可能性は50%です。

 

 


 


 

こちらのギターは、過去にネック折れ修理をして塗装を施したかのような配色ですが、元々この塗装。

これでしたら、元の雰囲気と然程遠くない雰囲気で仕上げられます。

 

ネックリセット&リフレット / Gibson Humming Bird


スタッフの山口です。

今回はネックリセット&リフレットのゴールデンコンボです。長いスケールを当てている写真からもわかるように12フレット上に隙間ができています。

費用もかかりますがその分、オーナー様の満足度も高い修理のコンボ。ちなみに同時に行う場合は工程上、手間も少し省けるので別々で行う場合の料金よりも1万円程お安くなります。

 

 


ネックの元起きも反りも併発しており、写真でも大きく変形しているのがわかると思います。


指板が浮き上がって見えるのは長年の弦の張力で角度が狂い、ネックが起き上がってくの字になっているからそう見えるのです。

このアングルの写真でも見て分かる=相当な重症です。


トップから指板を剥がしてから


ダブテイルジョイントに熱を加えます。


格闘の末、ノックダウン。


勝利の記念撮影。

ネックをトラブルなく外すことができるとホッとします。Gibson、Martinはワンピースネックが当たり前ですが、そうじゃない場合はつなぎの接着部分も温められて分離してしまうこともあります。

 


シリアルが消えていないことからこの個体は初ネックリセットと思われます。


ネックの角度を適正に調整したらシムを製作。ダブテイルジョイントをグッと押し込んだ時の感覚と音で木工精度を把握しながら厚みやテーパー具合を微調整。

シム製作は実は手間と経験が必要とする重要な工程です。手でグッと押し込み、さらにクランプの良い塩梅の力加減でしっかりと強固に組み込めるのが理想的です。


いざ接着。


無事に組込接着ができたらフレット交換。指板修正をしますのでアジャストロッドを少し緩めて締めシロに余裕を作っておきます。


フレット抜いて、、


こんな感じで。良い感じに。

指板に長年の押弦による凹みが見えます。あくまでもフレット溝の部分がしっかり修正できていればわざわざこの跡が消えるまで削りません。

この凹みは残ってた方がビンテージはかっこいいです。もちろん修正して消えちゃう時もあります。


いきなりここでフレット交換完了。

本当は何枚も画像ありますが割愛。


ナットも1フレットの高さに合わせて新調します。皆川ギター工房のリフレット料金には指板修正もナット交換も含まれています。

お店によっては別途費用がかかるケースも多々あるのでご注意ください。


アジャスタブルサドルも凛々しく見える高さに回復。


ギタリストなら一目でわかる弾きやすそうな低めの良い弦高です。


Gibsonはリセット時にヒールが少し飛び出ることがあります。


こうして見ると結構出てます。

しっかり奥まで組み込まれた証でもあります。


ロゴがギリギリのタイプ。この時代のハミングバードでは結構見られる気がします。


オリジナルのペグボタン、雰囲気がかっこいいです。


 

ハミングバードは初年度の1960年からロングスケールで作られていましたが、90年代に所謂リイシューされたものは現在に至るまでJ-45と同じギブソンスケール(628mm)になっています。 

60年代のリイシューとして再生産をスタートしたのになぜ大きくスケールを変えたのかわかりませんが、オリジナルのロングスケールはやはり迫力のある「ハミングバード」の音がします。現行品も名前は一緒ですが別物、という印象は拭えません。

一方、Doveは初年度から現在に至るまでちゃんとロングスケール。

何か理由があるとすればなんでしょう、、。

60年代前期のハミングバードは特に人気が高いので本当に手が届かない価格になってしまいました。先日70年代のハミングバードを修理しましたが、それもとてもナイスギターでした。どちらもピックガードに描かれたハチドリ(Humming Bird)が影響しているのかもしれません。信じるか信じないかは、、、今日も最後までありがとうございました。

 

 

フレット交換 / Ovation 1687-8


古い


Adamasの


ネックリセット。

一番古いタイプの次の世代のアダマス。

このタイプまではトップ上の指板は接着していませんでした。

フローティングしたまま浮いている状態、ですので指板がフニャフニャしないようにか、音に多少でも芯が入るようにか、カーボン素材が埋め込んであるのだと思います。

このフローティング具合(隙間の幅)は個体差があって、接着されていない為、物によっては共振の原因になる事がありました。

上の画像を見ますと、接着してある跡があります。

何らかの理由で後から接着された物かと思います。

 

 

フローティングしている為、ネックをセットしたままフレットを打つことが出来ません。

ネックは外した状態で新しいフレットを打ちます。(過去ブログに画像があったと思います。)

 


 


 

Ovation は色々面倒な事が多いのですがアダマスの場合、面倒その1は、ヘッドの飾り。

ナット調整の際にヤスリが触れてしまいます。

ナットはセットした状態で調整し、弦を張って確かめます。

かなり細かい作業です、ちょっと削って、弦を張って見て、ちょっと削って、弦を張って見て、これを何度も繰り返します。

通常ならセットした状態でこの繰り返しが出来るのですが、こいつはヤスリが当たってしまう為、いちいち外して、作業を繰り返します。

私の場合、Ovation は大昔からの付き合いで慣れてはいますけど、それでもめんどくせーですから、他の修理屋さんもさぞかし面倒臭かろう存じます。

 

 


 

これを始めて見たのは、南こうせつが弾いていたのを見たのが初めてでした。

「なんだこれ?大体ギターのようだけど、ギターなのかしら?」

あれから45年以上たったかとおもいますが…。

当時は情報が少なくて、雑誌位しか無かったかと思います。

新しいギターの事や、エレキを持ち始めた頃等は、「どうやってロックの音に(歪み)出来るんだ?」

とか、分かんないことだらけでした。

今では、何でもすぐにわかる事が出来ます。

良い事のような、良くない事のような。

 

トップ割れ / YAMAHA ダイナミックギター


スタッフの山口です。

お盆休みに里帰りをして押し入れの奥からこんなギターが出てきた、という方もいるかもしれません。

今回はそんなYAMAHAのダイナミックギターのトップ割れ修理です。


冒頭写真のようにすぐに蒸発する&塗装にも影響しないため、Zippoオイルを垂らして割れてる箇所や範囲を確認します。


今回は指板の両脇とくびれ部分に割れを確認しましたのでそこを修理します。


指板両脇は構造的に弦の張力がかかる場所ですので割れと同時に補強の意味も込めていつもよりしっかりとした割れどめを作りました。ブリッジプレートに使われることの多いメープルですね。


ボンドは表から注入しますが今回は古い割れ跡ということと、場所的にもあ限界があります。


そのためにも裏面からしっかりサポートしてあげるわけです。


しっかりとクランプをかけて一日置きます。


いい感じです。


「ここは修理してあるよー」というメッセージが込められています。


最後の我はくびれのそばです。ここは平面ですので「吸盤型接着剤送込器」が使えます。


たった今、命名しました「吸盤型接着剤送込器」は、空気圧を使ってタイトボンドを割れの奥まで送り込みます。


裏から見てこんな感じで白いボンドが出てくればOK。


元々がトップと指板の境目なのであまり気にならないかと思います。


もし跡が残っていても目立たなくしようと塗装修正や小細工をすると余計に目立ったり変な感じになったりします。

「なるべく余計なことはせずシンプルに」師匠から教えです♪


ダイナミックギター、今となっては時代を感じられるいいネーミングなのではないかと思います。そもそも「ダイナミック」という言葉が1960年代の日本では使われてなかった可能性もありますね。

きっと当時の日本ではまだ珍しい鉄弦のギターなのでガットに比べて「ダイナミック!」な音に感じられたYAMAHAの中堅社員が命名したのは容易に想像がつきます。

それに比べて今回僕が命名した「吸盤型接着剤送込器」は全くセンスも可能性も感じられないので取りやめようと思います。

今回も最後でありがとうございました。