スタッフブログ

トップ割れ修理 / Kamaka Tanor


 


 

ウクレレはギターと違って軽い分、倒したり落としたりした時も意外と無事な場合がありますが、今回はそうはならなかったようです。

ウクレレ専用のストラップの場合は、手を放してしまうとクルっと回って落ちる事があります。

ギターのようにストラップピンを付ける人や、穴を空けずにつけられる落ちないストラップや、独自の工夫をしてる人等、いろいろありますので不安な方は検討されてはいかがでしょうか。

 


 


 

 

 

こちらのウクレレは、演奏中に落ちたかは定かではありませんが、それはそうとして不幸中の幸いな部分は、こちらのトップ板は割れの跡が目立ち難いと言う事。

割れた跡が残らない修理は不可能ですが、スプルースやシダー等のように目立つことがありません。

ギターのトップの場合は、スプルースやシダーであることが多いので、割れてしまうとなかなか目立たない様には修理出来ません。

 

今回の破損とは違い、冬場の乾燥が原因で割れる事はよくありますが、これもとても難しい修理です。

乾燥状態は、割れている事にすぐ気が付きます。

何故なら木が縮んで割れて隙間があるからです。

この状態でしたら接着はとてもしやすくしっかり接着も出来ます。

しかし、季節が進み湿度が戻ると木も元の大きさに戻ります。

そうなると割れの隙間に入れた接着剤が邪魔になり木が歪む原因になります。

なので、工房の養生棚で割れの隙間が閉じるまで置いてから接着したいのですが、ピッタリ閉じていますので専用の工具を使っても上手く接着剤が入らない事もあります。

割れの修理は裏からクリートと呼ばれる割れ止めを貼りますが、それは気休めでしかありませんので冬に乾燥して木が縮めばまた割れが出ます。

 

湿度のバランスが取れている時は、割れはぴったり閉じていますので見た目、割れているようには見えない事もよくあります。

ギターを見るタイミングによっては割れは一切なく、過去に割れた形跡を特定する事も出来ない事もあります。

ピッタリついていれば究極、割れている事になりませんので冬場の乾燥にはお気をつけくださいませ。

 

サウンドホール割れ / Martin OOO-42EC


スタッフの山口です。

今回はよくあるといえばよくある修理、サウンドホールのめり込み割れです。割れた箇所がズレているのがわかりますね。

これも弦の張力によって起こる症状です。

アコースティックギターの天敵は「弦の張力」と「乾燥」であると言えます。


以前も割れて修理したっぽく、割れ止めらしき板がついていますね。周りの雰囲気からすると最初からついているものなのかもしれません。

 


しかし割れた部分はちょうど境目になっていて割れ止めの役目は果たせていないようです。赤く塗った部分は板が貼ってあった場所ですが今回は取り除き、新しい割れ止めを作製します。


サウンドホールのめり込み割れが起きる時は大体こちらのバスバーと呼ばれるブレイシングが剥がれていることが多いです。

アコースティックギターにとってのブレイシングは音色を司るのもそうですが、「割れ止め」という最大の役割があります。

修理屋に持ち込んだ時は今後のことも考えてブレイシング剥がれのチェックもしてもらうことをお勧めします。


写真には写っていませんが、、

ネックをジグで引っ張り、割れてズレた分を戻してスーパーグルーで接着します。

冒頭の画像と比較すると戻っているのが分かるかと思います。割れはジョイント部である14フレット付近まで伸びていました。


トップ板の割れが接着出来たらバスバーを接着します。


バスバーの接着が完了したらちゃんと役割を果たせる新しい割れ止めを製作します。材はスプルース、木目を垂直方向にします。


手前の割れ止めと、奥は接着時の当て木です。


タイトボンドで接着。


いい感じになりました。割れているラインに覆い被さっていますのでいくらかは強度が増したはずです。


めり込み時は大抵、ネックのアングルも狂っています。今回はネック角度が改善され許容される程度まで戻りましたのでネックは外さずにフレット擦り合わせのみ。


割れた部分が気になってベタベタ触ってしまうと修理後に跡が目立ちます。割れてしまった時はなるべく触らずに修理を依頼しましょう。


6弦側は1弦側に比べて目立たないで済みました。


アジャストロッド調整部に干渉しない厚みで割れ止めがついています。


Martinの40番台は指板の両脇にインレイを施すために掘り込んでいるため、その部分の板の厚みが薄くなります。当然、強度が落ちて割れやすくなっていると思います。

このデザインによって強度を落としていることはおそらくMartin社も把握しているはずですが、今更ここを変更することは彼らの伝統ある歴史とファンが許さないのだと思います。


 

初年度のMartin / OOO-42EC。エリッククラプトンがアンプラグドで使用した戦前のOOO-42を基に企画され販売されたモデルです。初年度モノは価格も上がり続けてるそうです。

 

 

アンプラグドといえば、僕が大好きなNIRVANAのKurt Cobainが使用したMartin / D-18E (1959年製)が、ギターの歴史上、最高値の6億円余りで落札された、というニュースが少し前にありました。アコギ好きでカートファンの僕としては史上最高値のギターがエレキではなくアコギであり、それがカートのギターであるということがとても嬉しいのです。

もう一つ、アンプラグドといえば、放送していたMTVとMartinのコラボモデル、MTV-1というモデルがあります。賛否が分かれるであろうサイドバックがマホガニーとインディアンローズの2トーンというイレギュラーな材構成。以前修理で当工房に来たことがありますが、個人的には結構良かった印象があります。もちろん、今回のOOO-42ECもとてもナイスギターでした♪

今回も最後までありがとうございました。

 

リフレット / Gibson J-45

 

よ~く聞かれるご質問…他にも直した方が良いところはあるか。

普段見る事が出来ない力木等は折角、修理屋へ来たのだから見てもらいましょう。

あとは…折角ですからいろいろ見てもらってください。

と言って修理しなければならないか、と言えば全くそんなことはありません。

今回のこの位のフレットだって、気にせず弾いている人もいます。

修理の要不要はオーナーが決めます。

 

修理屋へ行った際にブリッジに少し隙間が見つかりました。

慌てちゃいけません。

 


 


 


 

 

少ししか剥がれていないのですから、しっかり弦を緩めて管理すれば剥がれてしまうような心配はありません。

逆に無理に剥がして貼り直すようなリスクは避けた方が良いと思います。

もっと剥がれてきた際に修理すれば良いのです。

不具合が無ければ無理にお金をかける必要は無いのです。

「剥がれているんだから、貼り直したらもっと音が良くなるんじゃない?」

確かに!そのちょっと剥がれている分、音の悪さが分かる人は修理した方が精神衛生上修理した方が良いかもしれません。

 

※但しスーパーグルー系の接着剤で付いている場合は、突然剥がれる可能性もありますので、その可能性があるギターは貼り直す事をおすすめします。

※スーパーグルーが悪いと言うより、接着剤の量が少ない事が往々にしてあります。スーパーグルーは、はみ出すと拭き取り難い為、生産コスト上スーパーグルーを使う意味が無くなってしまう為です。

これはもうちょっとですっ飛びます。

やり方は色々ですがスーパーグルーは、はみ出さないようにくっ付けます。

 

あとは例えば、「弾き難い訳では無いが、もっと弾き易くならないか。」や「音が、もうちょっとシャキッとなんないか…」

相対的に悪いところはないが、オーナーがそう感じているのであれば、ギターの状態を見て調整のみで出来るのか、修理が必要か、もしくは不可能か、と言う話になります。

 

サドルがとても低く、アジャストロッドが目一杯に締まっているギターだってなんの問題もありません。

オーナーにとって不具合が無ければ、そのコンディションが悪くならないようにしっかり弦を緩めて管理すればアジャストロッドをいじる事も、サドルを削るような事もそうそう無いはずです。

 

ネックリセット&バーフレット→ラウンドフレット交換 / Martin 0-18K(1924)


スタッフの山口です。

博物館にあってもおかしくないようなギターが横たわっています。 1923年製造のMartin 0-18K、オールハワイアンコアのモデルです。今回はこちらのネックリセットとフレット交換を見ていきます。


ネックの順反り加減が写真でもよくわかります。写真でも分かる、ということは重症です。

ネックの角度も狂っていますので仕込み角度を適正にする+フレット交換に合わせて指板修正、このコンボで弾きやすくまだまだ使えるギターにしていきましょう。


弦高は4mmほど。

この写真でお気づきになるかと思いますが、フレットに違和感がありますね。1934年より前はこんな感じの単なる棒状、つまりバーフレットしかありませんでした。オリジナルを重視するなら同じバーフレットを何とか残しますが、実用的に使用するならやはり通常のT型のラウンドフレットが宜しいかと思います。

今回もオーナーの要望で普通のラウンドフレットに交換します。


今は同じバーフレットの打ち替えは基本的にお断りしています。打つのも大変だから高くつくしプレーヤーは弾きづらいし、メンテナンスもこれまた大変。いいところは一つもありません。


いつものように指板を剥がしていきます。

この時代の特徴なのか100年間の間に削られてこうなったのかはわかりませんが、指板がとても薄いため終始慎重に進めます。下手すると簡単にパキッと逝ってしまいます。


無事にネックが外れました。ダブテイルジョイント部にメイプルのシムが挟まっています。流石に100年の間にネックは何度かリセットされているようです。


1920年代にはタイトボンドではなくニカワ接着されているため、写真の通りタイトボンドが使われていることからもネックリセット経験済みの個体ですね。


いつものアングルで記念撮影。


シムは新しく作り直すので削ぎ落とします。溝に残った古い接着剤も根こそぎ綺麗に掃除します。


角度の修正幅が大きい場合はヒールの内側をある程度予測してノミで削ります。


ノミはよく研いでおき、力を入れずに優しく扱わないといけません。。

そういつも自分に言い聞かせます。


ネックが無事ついたらバーフレットを抜いて溝を整えていきます。このままの溝だと太過ぎてフレットを打つことができません。

(ネックリセット中はいつも写真を撮り忘れます。)


溝はこの縞黒檀の薄板を使います。


こんな感じで薄さなどを調整しながら1本の溝に薄板を2枚。あとで2枚の薄板の間に溝を掘り直してフレットを打てば、元の溝の中心にフレットを打てますのでピッチが狂うこともありません。


余計な部分は上も横もカット。


調弦時にネックが真っ直ぐになるように指板をサンディングで修正したら、、


普通のラウンドフレットを打ちます。

ここまででかなりの時間を要します。


ナットは新しいフレットの高さに合わせて新調します。


フレットが変わると顔つきも現代的に変わりますね。


サドルの高さもいい感じになりました。


もちろんですが、センターズレも無し。


ヒールも隙間などはなく、塗装修正もしていませんが綺麗に仕上がりました。


こちら側もOK。


均一に鮮やかにフレイムの杢が出た素晴らしいハワイアンコアですね。ここまでびっしりと杢が出た個体はなかなかお目にかかれません。もちろんサウンドも素晴らしく、ため息が出ちゃいます。


 

1924年製、101歳のギターです。今回のリペアによって状態も良くなり、素晴らしいコンディションで現役続行です。今後も誰かの手によってリペアされながらギターとして100年後も存在していることを願います。

ハワイアンコアは正式名称はアカシアコア。ハワイ原産のアカシアコアは吹き付ける海風によって木がしなって綺麗なフレイム模様が入ることからハワイ産のアカシアコアに限って「ハワイアンコア」と特別に呼ばれるそうです。ハワイ以外のアカシアコアは一般的にコア、やアカシアコアと言われるそうです。

自宅にホームセンターで買った「アカシア」で自作したチェストがありますが、あれはコアとも書かれていないし、産地も不明、、ネットで検索するとニセアカシアと言う何とも失礼な名付けをされた樹種もありました。

 

 


 

当工房には師匠皆川が長年かけて集めたギターに関わる書物が何十冊もありますが、中でも自分が好きなのがこの木材活用ハンドブック。

この木材でベンチを作りたいな、あ、こっちの材も良さそうだなー。床はこの木材でフローリングにして、、テーブルはこれで1枚板にして、、そんな妄想をしてしまいます。

母方の実家が木材店で父親は木工職人なのでその血が騒ぐのだと思います。

でも、ギターではなく家具や自宅の内装などの想像ばかりするのは音響特性を気にしなくていいからでしょうか。。。

 

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

ネックヒール折れ修理 / Ovation 1778T


 


 

毎週必ず、土曜日に山口と交互にブログをアップしているのですが、何かとドタバタしており先週は、すっ飛ばしてしまいました。

週の途中で上げようかと思ったのですが、そのままスルーしてしまいました。

もし、ご心配してくれた方がおられたなら、すいませんでした。

では、気を取り直して今週のブログへまいります。

 

普段あまり見ない珍しい修理は、順番を飛ばして公開する事があります。

これも上げた記憶があるのですが探しても見つかりませんでしたのでので、順番通りに書いてみようと思います。

Ovationのヒールが折れてしまう原因はこのボルトを固定する金属のベース部にあります。

これ以前のカマンバーと言うロッドが入ったネックも同じような金属がヒール部分にあります。

Ovationは、ネック角度をシムを使い調整する為、ギャップが生じます、その状態で力加減せず締め込むと割れます。

カマンバーの場合は、シムを貼れる金属部分があるので、正確にシムを貼ってやればボルトをある程度強く締め込んでもヒールは割れる事はありません。

 


割れ部分に充填されている接着剤を取り除けば


ピッタリ付くのではないかと


思っていました。

 


 

ある程度きれいになれば良いようなお話だったので、もっとしっかり接着し直してその後、塗装をきれいにすればよいかとも思ったのですが、おまかせ頂きましたので思い切って出来るだけの事をやってみる事にしました。

真っすぐ切り落として、ネック材と同じメイプル材で繋ぐことにしました。

途中、途中の画像がありませんが、反対側の面も同じように真っすぐにします。

プレッシャーの無い状況をいただいておりますが、それなりに必死なのだと思います。

 


 

くっ付けて調整が済んだ状態です。

このヒールの底面の調整は少し難しかった記憶があります。

ちゃんとセンターが出るようにするのは勿論、ボディとヒールをピタッとフィットさせたいですが、そこまで削ってしまいますと角度が付き過ぎてしまう状態でしたので、そうならない手前のところで決めなくてはいけません。

 


 


 


 

 


 

昔、Ovationの代理店で修理をやらせて頂いておりましたので、昔のモデルであれば分かっている事も多々ありますから、出来る修理も多いと思っています。

ですが、電気の事になりますとどうしようもありません。

まだ沢山Ovationを使っている人もいるし、中古市場にも多くあるのだから昔の電気パーツを作ってくれないものかと思ったりします。

一歩譲って、昔通りでなくても外見が同じプリアンプで良いんだけどな。

 

フレット交換 / Gibson CF-100


スタッフの山口です。

今回はGibsonフローレンタインカッタウェイ、CF-100のフレット交換です。

フレットは Made in USAのニッケルシルバーを打っていきます。材質は高さ、幅などは数種類の中からお選びいただけます。

 


指板の幅よりも少し広くフレットをカットします。


ネックバインディングがありますので写真のように両端のタングをカットする必要があります。


専用カッターでタングの端を切り落としたら、、


やすりでタングの残りを削り平らにします。素手でやるとフレットを押さえつける左手が痛くなるので手袋してます。


アールは指板よりもキツめにします。

タングの端もキレイになってフレット打ちの準備完了です。


肝心の打っている途中を全カットです。(撮り忘れ)


フレットの端は斜めに落とさず極力立てて、チクチクしないように丁寧に丸めてあげるのが皆川流です。


交換前からオーバーバインディングでしたが、フレットバインディングが残っている場合も基本的にオーバーバインディングでフレット交換します。

 


フレット磨きまで終えたらナットを新調してサドルを調整して出来上がり。


Gibsonは指板幅に対して目一杯外側に弦を通しますので斜めに落としすぎると弦落ち確率アップしちゃいます。


ヴィンテージギターのフレットは磨きまくってピカピカすぎるより適度に磨いている程度の方が質感がかっこいいと思います。

CF-100は個人的にGibsonのイケメン枠です。

ヴィンテージの貫禄がある姿にフローレンタインカッタウェイ、これは萌えます。。

ヴァイオリンもチェロも全て同じようなルックスをしてますが、ギターのルックス、デザインは本当に多岐に渡りますよね。見た目だけでも買ってしまう楽器ってギターくらいじゃないでしょうか。

 

ファッションとして、楽器として、とにかくギターっていろんな選び方、楽しみ方があってすごいな、、とつくづく思う今日この頃です。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

ネック折れ修理(塗装修正無し) / Martin OO-15


薄皮1枚で繋がっているようです。


過去にも修理しているようですが、接着剤が少なかったか、弱かったようです。

接着剤は何が使われていたかは判別できませんでしたが、タイトボンド等であれば補強が必要…

ネックが折れてしまった時は、焦ってくっ付けたりせず、出来るだけ現状維持して頂ければ助かります。

Martin やGibson等のようにラッカー塗装の場合は、粘着テープ等で固定しますと塗装が反応してしますので、そのまま持って来て頂ければ幸いですが、心配な場合は何か布等で巻いて保護してください。

ただこの状態で布やタオルを巻きますと、ケースに入らなくなるかもしれません。

大げさに保護しなくも、折れている部分が擦れたりしなければ大丈夫です。

 


弦を外して


ペグを外している途中で


ヘッドは取れてしまいました。

このように分離してしまった場合は、移動中ケースの中で動いたりしない様に、もしくは動いても大丈夫なように何か巻いていただければ助かります。

 


 


 

塗装修正無しの場合は、仕上がり具合が区々になります。

修理実績の塗装修正無しのページを覗いていただけますと、いろいろな例がご覧いただけます。

塗装膜がしっかり厚みがあれば、塗装修正無しのプランでも剥げずに割ときれいに仕上がる事があります。

接着後は手触りに違和感がないように研く為、元々塗装が薄かったり、2度目の修理等の場合は、ある程度剥げてしまいます。

 

 

 

レリック等のエイジド加工されたものが好きな人は、修理跡を塗装修正して隠さない方がカッコ良いかも。

 

ネックリセット&リフレット / Martin O-18


スタッフの山口です。

今回は最近滅多にお目にかかれなくなったオールドのMartin O-18のネックリセットとネックリセットとセットだと1万円引きでお得になるリフレット(フレット交換)です。


弦高を調整するサドルが限界です。

よくあるブリッジを削っちゃった、ということは今回はないようです。

 


トップに養生をして指板のハイフレット付近、トップに乗っかっている部分を温めます。


熱々でニカワまたはタイトボンドが軟化すればこのようにナイフを入れることができます。


15フレットを抜いて開けた穴にヒートスティックを差し込み、今度はダブテイルジョイントの接合部を温めます。

穴を開けることにびっくりする方もいると思いますが、マーチン社に持ち込んで修理したとしても同じように15フレットに穴を開けられちゃいます。むしろMartinは修理ができるように設計していて、わざとダブテイル部分に少しだけ隙間が作られています。


無事にネックが外れて恒例の記念撮影。

指板もこれ以上なく綺麗に剥がれました。


ネック角度を修正した分、傾斜をつけたエボニーの薄板を貼り合わせて底上げします。「くの字」で元起きしている場合はこれが不要の場合が多く、ジョイント部付近のトップが沈んでいるケースではこれが必要になることが多いです。


少し飛んで、ネックが無事についたらリフレットに移ります。


フレットのエッジ落としは個人的には勝負所の工程です。斜めに落としすぎるのは皆川ギター工房では御法度です。


また少し飛んで、、フレット交換で高さが復活したら元のナットは低すぎますので新調します。


弦間、形状ともにMartinの特徴を捉えたナットになりました。

ブリッジ同様、ナットにはそれぞれのメーカーに合ったディテールがあります。MartinにGibsonみたいなナットがついているのはとても違和感を覚えます。

先日Gibsonによくあるジャンボフレットが打ってあるMartinを拝見しましたが、それもとても違和感がありました。


弦高も2.5mmになり弾きやすくなりました。


ロングサドルは特に高くなりすぎないようにネック角度を調整する必要があります。ロングサドルブリッジの構造上、高すぎるサドルはブリッジの割れを招く確率を大幅にアップさせてしまいます。


センターもバッチリ、、


6弦側のヒールもバッチリ、、


1弦側のヒールもバッチリです。綺麗に仕上がりました♪


小ぶりなのに圧倒的な貫禄。

家のソファで弾くならこれに勝るギターは無いのでは無いでしょうか。

かっこいい!

ネックが長年の弦の力によって起き上がってくる「元起き」には、14フレットで「くの字」になっている場合と、指板がトップに沈み込む場合の2パターンがあります。指板がトップより強ければトップが沈み、トップ(ブレーシング含む)の方が強い場合は14フレットを起点に「くの字」になります。一般的に「くの字」の場合は目で見れば元起き症状として判断しやすいと思いますが、トップが沈んで角度が狂っている場合はその症状から元起きと判断するのは素人目には分かりづらいかと思います。

元起きはアコースティックギターの宿命と言われてきたことから、これまで多くのメーカーや製作家が、弦の張力に負けないよう、ネックブロック周りを強化した設計にチャレンジしてきました。でもネックブロック周りが強いから安心、、かと思いきや、余裕で元起きしてたりします。

アコギの場合は特に顕著ですが、弦の力による不具合はそのギターの弱いところに発生します。ネックが反らない、強いネックだから、と安心しても、弦を張りっぱなしにすれば、ネックに不具合が出なくても、その分他の場所(ブリッジやトップ)に不具合が出ます。

僕の相棒のMartin君は毎回しっかり弦を緩めているのでここ10年、コンディションの変化が一才ありません。至って良好。

「弦を張っておかないと逆反りする」、というオカルトがネット上では散見されますが、しっかりシーズニングされている木材で作られているギターであれば、弦を緩めたことで逆反りしちゃう、なんてことはありません。もし弦を緩めたことでトラスロッドに関係なく逆反りしちゃうようなギターであれば、そもそもそれはハズレのギターです。

いつもと同じ結びになりますが、弾かない時はなるべく弦を緩めましょう。

今回も最後までありがとうございました。

バック板欠損 / Gibson J-45

ボディバックの一部が欠けております。

全体的に見ますと、この部分。

 

ライニング部分も欠損しています。

ちゃんとフタが出来るように平にします。

 


 

途中の画像が無いですが、付け足す板は直線で合わさるように直します。

そして中の力木は剥がれているだけでなく、裂けている部分もあります。

見落とすことなく全て接着します。

欠損部分は新しい板を付け足していますが、クリート(割れの境目に付ける割れ止め)は、あまり意味がありませんので付けません。

ボディ割れ修理のクリートは、「もっと接着剤が入ればなー!」と言う時や、「修理やりましたよ!」という証に付けます。

今回のこちらの割れ修理は破損ですが、

ボディ割れ修理の原因1位は「乾燥」ですので、割れ修理をしても乾燥させれば、また割れます。

お気をつけください。

 

多少濃いめになりましたが、全体的には雰囲気は悪く無いと思います。

ピックガードが無くてもそれはそれで皆とは違くて好いです。

 

ジャック周りの割れ修理 / Gibson CF-100E


スタッフの山口です。今回はジャック周りがグダグダになったCF-100Eの修理です。

写真の通り、ピックガード用のセルロイドか何かで長年誤魔化してあったようです。


アッセンブリーをしばらく外しておきますが、外す前にどのようであったかを必ず写真を撮っておきます。


セルロイド板を外してみたらこんな感じでした。


一応、補強はしてあるようですが、もちろんこちらも新しくします。


まずは嵌め込む板の寸法を決めて穴を長方形に整えます。


四隅をドリルで開けてから、


ミニのこで切り取り、


やすりで綺麗な長方形にします。


ここでマホガニーの補強を4枚用意します。長さはボディ厚の内寸で作りました。


ここに補強を2枚、内側から貼ります。


こんな感じで一日置きます。


こんな感じになりました。


同じように残りの2枚の補強を中心部に貼りもう1日経過しました。


ここからは長方形の穴にピッタリに用意したサイド板を貼っていきます。


1mm厚の板を3枚重ねて3mmくらい、ツラが合いましたね。


先ほど映っていたけどスルーしたジグはこのように使います。


内側からみるとこうなってます。


ペグを巻いて内側と外側から挟み討ちで圧力をかけて接着させます。


1日経過しました。


しっかりと蓋ができたようです。


あとは塗装を切りのいいところまで剥がして、、


こんな感じに。


木目を合わせたり描いたりします。


着色前だとこの写真のように見て分かりますが、このあと着色すれば意外と気が付かないと思います。

最後は着色とラッカートップコートで完了です。(写真見つからずここで終了)汗

 


 

修理屋は写真のような専用ジグを必要とします。どうしてもサイズや修理箇所が毎回違いますので、そのほとんどが自作になります。

ジグ作りはその時の修理一回のために作ることもあり、とても面倒なことではあるのですが、もし優秀なジグが完成できれば、その時点で修理の半分は終わったようなものです。それだけ修理屋にとってジグを考え、作り出すことは大切なスキルの一つであると言えます。

このペグを使ったジグを作った人はきっといろんな便利なジグも作っただろうことが容易に想像ができますね。

本日も最後までありがとうございました。