スタッフブログ

ブリッジ交換 / Gibson LG-0 60s


スタッフの山口です。

今回は破損したブリッジを新しく作製し交換します。ブリッジは弦の張力がかかる部分ですので剥がれたり割れたりというトラブルも多いです。


ブリッジ割れが起きるところはサドル溝近辺か、今回のようなブリッジピンホール付近ですね。どちらも弦の張力が強くかかるのでよくあるパターン。

今回はボトム側の破片が紛失されています。作り直し以外の選択肢はありません。


まずは熱を加えて剥がしました。

マホガニートップは綺麗に剥がれないケースも多いのですが今回は比較的容易に剥がせました。


工房で転がっていたブリッジプレート用のメープルの端材。


ピンホールを転写します。


何をやっているか分かりますか?


元のブリッジはハカランダでしたが、今回はコスト的な面と木目の雰囲気を考えてココボロで作製することに。通常はインディアンローズで代用することが多いです。


メープルの端材はピンホールの穴あけのサポート役でした。しっかりとした円形じゃないとボール盤のビットがずれてしまいやすいので。


綺麗にピンホールをコピーできました♪


ここで問題発生!

厚みを調整したら白い杢が出てきてしまいました、、。ココボロサイドバックでこの杢ならエキゾチックですが、ブリッジがこれでは依頼主もNGを出すと思います。


ということでふりだしに戻りました。


ピンホールの転写は個人的に緊張する作業。


年季の入った当工房のボール盤。あと50年はいけそうです。


厚みを調整。今回は大丈夫でした。

ウィングのエッジを加工していきます。


ベルトサンダーで結構思い切って削っちゃいます。その場合、基本的にはやり直しは効きませんが、ある程度なら効くような手順で進めます。


アジャスタブルサドルの溝はここらで作っておきます。ルーターは使わず手鋸でいっちゃいます。


サンディングしていると樹種のそれぞれの性格がよく分かります。ココボロはあまり扱ってこなかったので新鮮。


いい感じに成形できているのではないでしょうか。師匠からもOKサイン👍


こうして比べると元のハカランダブリッジと色の差があることがわかりますね。

元のブリッジは酸化して余計黒くなってますので、ココボロも酸化すれば多少暗い方向へ色味が変化するはず。


サドルもキツすぎず緩すぎずでいい感じです。


実際にボディにフィットするかどうかを確かめて、、


ボディのアーチに合わせて底面を整えます。


無理な力をかけずにブリッジがトップに密着したら、いざ接着です。


一日以上経過したらピンホールの径をブリッジピンに合わせていい感じに調整します。


ボルトの目隠しを白蝶貝で。

美しい!


元のブリッジと交代の儀を執り行いました。


サドルもついていい面構えです。


新ココボロブリッジはまだまだ若いルックスですが、マホガニートップとの調和がこれはこれでかっこいいですね!


今回はネックリセットなどしていませんのでサドルの出しろはこんなもんです。ブリッジのトラブルはサドルが低めの方が起きにくいのでこれで維持できれば全く問題ありません。


角度を変えて記念撮影。

もう少し酸化したらハカランダと言われても気が付かない可能性も。経年変化をブリッジでも楽しめます。木っていいな。


 

ブリッジ作製は個人的にはとても好きな修理ですが、始めるまでになんというか、心の準備が必要です。ブリッジの細かいディテールは実力とセンスを試されている気がしてしまうのです。きっと大半のユーザーは気にしていない部分、なので例えディテールが微妙だったりしてもある程度綺麗に再製作されていれば細かいところまでこだわらなくてもいいのかもしれません。

しかし、一方でヴィンテージギターショップやそれらを査定する「プロ」はその細かいディテールの違いからオリジナルなのかリプレイスメントなのかが容易に分かってしまいます。皆川工房はそんな彼らが「ん!?これは、、、どっちだ?」と迷ってしまうようなクオリティーを目指しています。

まだ弟子入りして間もない頃に師匠皆川と居酒屋にて「ギター修理屋をやってて思うのは、実際、修理の細かい部分までは分からないというか拘らないお客さんがほとんどということ。だってそもそもある程度信用してうちに持ち込んでくれてるから。だから例え細かいところで手を抜いたとしてもパッと見で綺麗に仕上がってたらきっとお客さんは満足してもらえると思う。でもさ、もしうちが修理したギターがいつか他の楽器屋さんや工房に持ち込まれて、それをいざ「分かる人」が見た時に、「あの工房やるなぁ、、。」と思わせたい。そこに焦点を置いてるから毎回例外なく手を抜いたり妥協はできないんだ。」と言っていたこの言葉は今の僕の礎となっています。

今回も最後までありがとうございました。