修理実績

ネックリセット&リフレット / Gibson Humming Bird


スタッフの山口です。

今回はネックリセット&リフレットのゴールデンコンボです。長いスケールを当てている写真からもわかるように12フレット上に隙間ができています。

費用もかかりますがその分、オーナー様の満足度も高い修理のコンボ。ちなみに同時に行う場合は工程上、手間も少し省けるので別々で行う場合の料金よりも1万円程お安くなります。

 

 


ネックの元起きも反りも併発しており、写真でも大きく変形しているのがわかると思います。


指板が浮き上がって見えるのは長年の弦の張力で角度が狂い、ネックが起き上がってくの字になっているからそう見えるのです。

このアングルの写真でも見て分かる=相当な重症です。


トップから指板を剥がしてから


ダブテイルジョイントに熱を加えます。


格闘の末、ノックダウン。


勝利の記念撮影。

ネックをトラブルなく外すことができるとホッとします。Gibson、Martinはワンピースネックが当たり前ですが、そうじゃない場合はつなぎの接着部分も温められて分離してしまうこともあります。

 


シリアルが消えていないことからこの個体は初ネックリセットと思われます。


ネックの角度を適正に調整したらシムを製作。ダブテイルジョイントをグッと押し込んだ時の感覚と音で木工精度を把握しながら厚みやテーパー具合を微調整。

シム製作は実は手間と経験が必要とする重要な工程です。手でグッと押し込み、さらにクランプの良い塩梅の力加減でしっかりと強固に組み込めるのが理想的です。


いざ接着。


無事に組込接着ができたらフレット交換。指板修正をしますのでアジャストロッドを少し緩めて締めシロに余裕を作っておきます。


フレット抜いて、、


こんな感じで。良い感じに。

指板に長年の押弦による凹みが見えます。あくまでもフレット溝の部分がしっかり修正できていればわざわざこの跡が消えるまで削りません。

この凹みは残ってた方がビンテージはかっこいいです。もちろん修正して消えちゃう時もあります。


いきなりここでフレット交換完了。

本当は何枚も画像ありますが割愛。


ナットも1フレットの高さに合わせて新調します。皆川ギター工房のリフレット料金には指板修正もナット交換も含まれています。

お店によっては別途費用がかかるケースも多々あるのでご注意ください。


アジャスタブルサドルも凛々しく見える高さに回復。


ギタリストなら一目でわかる弾きやすそうな低めの良い弦高です。


Gibsonはリセット時にヒールが少し飛び出ることがあります。


こうして見ると結構出てます。

しっかり奥まで組み込まれた証でもあります。


ロゴがギリギリのタイプ。この時代のハミングバードでは結構見られる気がします。


オリジナルのペグボタン、雰囲気がかっこいいです。


 

ハミングバードは初年度の1960年からロングスケールで作られていましたが、90年代に所謂リイシューされたものは現在に至るまでJ-45と同じギブソンスケール(628mm)になっています。 

60年代のリイシューとして再生産をスタートしたのになぜ大きくスケールを変えたのかわかりませんが、オリジナルのロングスケールはやはり迫力のある「ハミングバード」の音がします。現行品も名前は一緒ですが別物、という印象は拭えません。

一方、Doveは初年度から現在に至るまでちゃんとロングスケール。

何か理由があるとすればなんでしょう、、。

60年代前期のハミングバードは特に人気が高いので本当に手が届かない価格になってしまいました。先日70年代のハミングバードを修理しましたが、それもとてもナイスギターでした。どちらもピックガードに描かれたハチドリ(Humming Bird)が影響しているのかもしれません。信じるか信じないかは、、、今日も最後までありがとうございました。

 

 

フレット交換 / Ovation 1687-8


古い


Adamasの


ネックリセット。

一番古いタイプの次の世代のアダマス。

このタイプまではトップ上の指板は接着していませんでした。

フローティングしたまま浮いている状態、ですので指板がフニャフニャしないようにか、音に多少でも芯が入るようにか、カーボン素材が埋め込んであるのだと思います。

このフローティング具合(隙間の幅)は個体差があって、接着されていない為、物によっては共振の原因になる事がありました。

上の画像を見ますと、接着してある跡があります。

何らかの理由で後から接着された物かと思います。

 

 

フローティングしている為、ネックをセットしたままフレットを打つことが出来ません。

ネックは外した状態で新しいフレットを打ちます。(過去ブログに画像があったと思います。)

 


 


 

Ovation は色々面倒な事が多いのですがアダマスの場合、面倒その1は、ヘッドの飾り。

ナット調整の際にヤスリが触れてしまいます。

ナットはセットした状態で調整し、弦を張って確かめます。

かなり細かい作業です、ちょっと削って、弦を張って見て、ちょっと削って、弦を張って見て、これを何度も繰り返します。

通常ならセットした状態でこの繰り返しが出来るのですが、こいつはヤスリが当たってしまう為、いちいち外して、作業を繰り返します。

私の場合、Ovation は大昔からの付き合いで慣れてはいますけど、それでもめんどくせーですから、他の修理屋さんもさぞかし面倒臭かろう存じます。

 

 


 

これを始めて見たのは、南こうせつが弾いていたのを見たのが初めてでした。

「なんだこれ?大体ギターのようだけど、ギターなのかしら?」

あれから45年以上たったかとおもいますが…。

当時は情報が少なくて、雑誌位しか無かったかと思います。

新しいギターの事や、エレキを持ち始めた頃等は、「どうやってロックの音に(歪み)出来るんだ?」

とか、分かんないことだらけでした。

今では、何でもすぐにわかる事が出来ます。

良い事のような、良くない事のような。

 

トップ割れ / YAMAHA ダイナミックギター


スタッフの山口です。

お盆休みに里帰りをして押し入れの奥からこんなギターが出てきた、という方もいるかもしれません。

今回はそんなYAMAHAのダイナミックギターのトップ割れ修理です。


冒頭写真のようにすぐに蒸発する&塗装にも影響しないため、Zippoオイルを垂らして割れてる箇所や範囲を確認します。


今回は指板の両脇とくびれ部分に割れを確認しましたのでそこを修理します。


指板両脇は構造的に弦の張力がかかる場所ですので割れと同時に補強の意味も込めていつもよりしっかりとした割れどめを作りました。ブリッジプレートに使われることの多いメープルですね。


ボンドは表から注入しますが今回は古い割れ跡ということと、場所的にもあ限界があります。


そのためにも裏面からしっかりサポートしてあげるわけです。


しっかりとクランプをかけて一日置きます。


いい感じです。


「ここは修理してあるよー」というメッセージが込められています。


最後の我はくびれのそばです。ここは平面ですので「吸盤型接着剤送込器」が使えます。


たった今、命名しました「吸盤型接着剤送込器」は、空気圧を使ってタイトボンドを割れの奥まで送り込みます。


裏から見てこんな感じで白いボンドが出てくればOK。


元々がトップと指板の境目なのであまり気にならないかと思います。


もし跡が残っていても目立たなくしようと塗装修正や小細工をすると余計に目立ったり変な感じになったりします。

「なるべく余計なことはせずシンプルに」師匠から教えです♪


ダイナミックギター、今となっては時代を感じられるいいネーミングなのではないかと思います。そもそも「ダイナミック」という言葉が1960年代の日本では使われてなかった可能性もありますね。

きっと当時の日本ではまだ珍しい鉄弦のギターなのでガットに比べて「ダイナミック!」な音に感じられたYAMAHAの中堅社員が命名したのは容易に想像がつきます。

それに比べて今回僕が命名した「吸盤型接着剤送込器」は全くセンスも可能性も感じられないので取りやめようと思います。

今回も最後でありがとうございました。

 

 

ボディ割れ修理 / YAMAHA LL-31B


ケースを箱に入れて発送しても


少し強めにドンと置かれた場合は、

しっかりクッションが入ってないと、薄いケースでは守られません。

運送中、ライブの準備中、等に時に起きがちなアクシデント。

エンドピン部分に力が掛かった場合は、このようにボトム部が割れる事がよくあります。

現在の物は分かりませんが、ヤマハのケースは底が薄いのでケースに入っていても気を付けなくてはなりません。

 

 

接着剤を流し入れたら

出来る限り段が残らないように密着させます。

ケースに入っていてもネックが折れる事もあり、ヤマハのケースでなくても気を付ける事は同じです。

ケースがしっかりしているので倒れても大丈夫だと思いがちですが、大概のケースはヘッド部分はフリーです。

ヘッドはペグが付いており結構な重量があります。

更に弦をチューニングしたままの場合では、約70㎏の張力が掛かった状態ですので何らかの影響が出る確率が更に高まります。

 

 


いつも言いますが


茶色ボディの黒杢目は


跡が馴染みやすい。

 


 

「いつも大丈夫だから。」と思わずに大事なギターでしたら用心してくださいね!

運送する際、日頃の管理、ライブの時等、いつも大丈夫だったけど皆さん1回大丈夫でなくなった時から、気を付けます。

その1回があった為に、「次のギターからずっと大丈夫です。」確かに学びは大事です。

でも良くない事は1回も無い方が良いですから。

修理屋にお越しになる方は大概は、一期一会。

しかし中には何度も大丈夫でなかった事が起きる人もいますが、「なんかあったらそん時また直せばよい!」

という考えもあるかもしれませんね。

 

 

 

ネックリセット&リフレット / Martin OOO-18


スタッフの山口です。

本日もネックリセットからスタートです。ブログの「山口くんのページ」カテゴリーを選択していただければネックリセットばかり出てくると思います。


もちろんネックリセット以外の修理もやらせていただいてますが、写真を撮り忘れてしまうことが多い中、なぜかネックリセットの時は撮り忘れない、という不思議な現象が起きています。


過去のブログでたくさん説明していますのでネックの取り外しサクッと。

恒例の記念撮影。


古い接着剤を取り除きます。今回は古傷が開いたようなのでもちろん修理してあげます。


接着剤を取り除いてきれいになっています。


前回の修理では割れ止めが無かったようなので、古傷を再接着と同時に山口式の割れ止めを設置。

この形の割れ止めはサウンドホール周りの場合、有効な手段ではないかと思います。


角度を修正し合体しました。


ダブテイルジョイント部に通じる穴を埋めます。


フレット交換は指板修正をしますのでナットは外します。今回の個体は象牙ナットですので再利用しようと思います。


紙の底上げがついていました。

きっと前回の時も象牙だから、と再利用するために底上げで対応したのでしょう。

ナットが底上げされていることは特に珍しいことではありません。


指板修正はただ真っ直ぐに削るだけではいけません。ネックの状態や調弦した時のネックの動き具合を考慮し、どの部分をどれだけ削り、逆にどこをなるべく削らないようにするのか、角度はどうか、指板のRはきれいに出ているか、インレイの貝の厚みはまだ余裕があるのかなどなど、あげたらキリがないほど気を使い、汗をかく工程です。


もし指板修正をただ真っ直ぐに削るだけだと、良いプレイアビリティを生み出せないことはもちろん、ハカランダなど貴重な指板材を必要以上に削り落としてしまうことになります。

指板修正は修正作業時のイメージ、そして自分の感覚がとても重要になります。


フレット準備中。


玄能でコンコン打ちます。力任せに打っても綺麗に打つことができません。

 


はみ出たフレットをカットします。


フレットのエッジを落とします。


フレットエッジを綺麗にまっすぐ落とすのも経験と感覚、頭の中でイメージしながら行うことが重要です。


約1時間ほどかけてフレットを磨いていきます。


フレットが完了し、ナットの底上げも完了。


いい感じです。


フレットのてっぺんと左右がビシッとまっすぐに揃っていればヨシ。フレットエッジが描く直線はプレーヤーはあまり気にしないところですが、いざそれを気にする人が見た時に「うむ」と言わせたいのです。

もちろんある程度の精度ならプレイアビリティに影響は出ませんが、、こういうところにこそ、こだわりが詰まっています。


15フレットに開けた穴はどこでしょう。ローズウッドは埋木跡がわかることが多いですが、今回のようにうまく馴染むとニヤケ顔になります。


弦高もいい感じになり、


サドルも狙い通りの高過ぎず低過ぎず。

 


ネック角度もフレットも見違えるように蘇りました♪


年相応の深みのある面構えですがとても綺麗なお顔ですね!


このルックスで音もナイスギターじゃない訳がありません。


 

ブラジリアンローズウッド特有の木目や質感はやっぱりいいですね!

噂ではブラジル政府は本当は少し前からハカランダを解禁したいとか。1969年のワシントン条約から既に50年以上経過している訳ですから可能性は充分にあるとは思いますが、「希少性」の観点からビンテージギター業界はそれを良く思わない可能性もあります。

ダイヤモンドは採掘量に対してわざと流通を制限して価値を押し上げることに成功してきた、という逸話がありますが、ハカランダを解禁するとしても出荷量をうまくコントロールすることができるのであれば価値の暴落はそうそう起こらないと思いますので、環境保護問題をクリアできるならぜひ解禁してほしいなと思います。

先日ハカランダブリッジ材がとうとう在庫がほぼなくなりまして、師匠皆川と色々当たって探したりしていましたが手に入らない状況が続いています。そんな中、質の良いココボロがネットに転がっていましたので「ブリッジ材の良さそうだ」となり、試しに仕入れてみました。質感はやはりハカランダとは違いますが、仕上がったブリッジは一見、ハカランダの要素はあっていい感じでした。(写真参照)

インディアンローズもまだストックがありますが、ブリッジ交換の際はココボロも承れますのでぜひご相談ください。

今回も最後までありがとうございました。

 

ブリッジ割れ / Kalamazoo KG-14


これは、どういう状況かと言いますと


サドルの溝が割れて


弦を張ると前に傾いて


壊れてしまうんです。

過去にもいろいろやった形跡が見えますが、これは割れ部分を接着するだけでは持たずにまた割れてしまう為、割れは掘って埋めます。

過去の修理部分もよく見てサドルの溝も埋め直し、真っすぐの溝を切り直します。

 


着色が取れましたので


付け足してある部分が

よく分かります。

 


 


 


 

ロングサドルですので、強度を考えればもっと低いサドルが理想ですが、仕方ありません。

 


 

今回の割れを取り除いて埋めるやり方は、これで大丈夫な場合も、ダメな場合もあります。

見るからにダメな場合は、最初から作り直してしまいます。

オリジナルのパーツ、材料は出来る限り残したいので大丈夫そうだと予想が立てば、試したいところです。

それでもクラックが入ってしまった場合は、その場合は、後は修理のやりようがありませんのでブリッジを新たに作り直すしかありません。

 

何につけ判断が難しい場面と言うのがあります。

 

現在私の車を修理に預けているのですが、メーカーに出した場合は周辺パーツ丸ごと交換、修理屋さんならとりあえず悪い所だけ見つけてやってくれます。

 

 

これも丸ごと交換してしまえば間違いませんが、部分修理の場合はしばらく乗ってみななければ分かりません。

修理してもらう立場、修理する立場でも、安く修理したいと思うのはどちらも同じ。

ネック折れ / Gibson J-45HCS ADJ


スタッフの山口です。

今回はネック折れ修理です。当工房で受け付ける頻度TOP3に入る修理ですが、Gibson(系含む)が多い印象です。ロッドの掘り込みがあって強度問題も関係してるとは思いますが、単純に使っている人が多いから、というのもあります。


本来は境目がない部分に塗装の吸い込みがありますので以前にも折って修理されているようです。

 


補強した部分は強度が増していますので、また倒したりぶつけたりした時はそのすぐ近くの無垢の部分が折れます。それは言い換えれば、二度と折れないように”過度な”補強をしても、結局補強されていないすぐ近くの部分が折れるのであまり意味がない、と言えます。もちろん再発しないための”適正な”補強には意味があります。

 


幸い前面は今回も無事なようです。


取り外したパーツは必ずケース内に一旦しまいます。その辺に置いておくと「あれ、これどのギターのだったっけ?と最悪な事態を招きます。そのためにもケースごとお預かり致します。


ここから先は企業秘密部分になりますのでサラッと。


基本的には補強が不要と判断した場合、特殊な接着剤で接着するのが皆川流です。もちろん状況に応じて補強を施す場合もありますが、9割方補強は不要です。


養生の紙に都議会議員選挙の告知が。。

明日は参議院議員選挙ですね。皆さんもギターは一旦置いて投票に行きましょう。

このままではギターを楽しむことすらできない社会になってしまうかもしれません。


あとは数日寝かせます。


ご存知の通り、塗装修正の有無で修理料金が変わります。演奏性と強度に差はありません。万が一、売ることになってもブラックライトなどを当てて修理歴がないかをチェックされますので査定額にもあまり影響はありません。


要するにオーナー様の気持ちで判断するだけです。できるだけ綺麗にしたいか気にせず受け入れるか。


逆光で暗いですが、、完了です。


暗いせいか、シルエットだけでもギブソンのヘッドシェイプの美しさがよくわかり、その完成度の高さを思い知ります。これだけでかっこいいなんてズルいです。


2000年前後のJ-45ですが、25年経って風格が出てきた感じですね!当時は新品のGibsonはビンテージと雰囲気が違う!と感じていましたが、昔からずっとオールラッカーで塗料事体もあまり変えていないのか、面白いことにどんどんビンテージらしい雰囲気が出てくるもので、最近は「ビンテージっぽい」風格の個体もチラホラ見かけるようになりました。20年後はさらにいい感じになっていると思います。


跡が潔く残っていてこれも風格というか勲章みたいなものとして愛し続けてほしいと願うばかりです。

今回も最後までありがとうございました。

ボディ割れ、剥がれ / Ovation 1761


 


 


 

割れに対して、接着剤がしっかり入ればクリート(割れ止め)は必要ありませんが、接着剤が入って無いような所にはクリートを付けます。

接着剤が入らなかったのですから、これしかありません。

割れの話は何度かしておりますが、今回のように落として割れた場合と冬場に乾燥で割れる場合、

2パターンあると思いますが、どちらかと言えば乾燥で割れる場合の方が面倒かと感じます。

ギターも個体差があって、こっちは大丈夫なのにこっちは大丈夫でない。

そう言う事は往々にしてあります。

もし乾燥で割れた事がある個体なら、冬場の乾燥には多少なりの気遣いは必要かと思います。

(割れたことが無くても気を付けるに越したことは無いです。)


 


 

冬場に割れが見つかるタイミングでは、その割れは開いて閉じなくなっています。

そのまま接着剤を入れる訳には行きませんので、当工房の養生棚に置いて閉じるまで待ちます。

修理の際は割れが閉じてしまっているので、接着剤は十分には入りません。

ですので、クリートを付けるしか無いのですが、もっと大きいクリートにすれば効果があるのでは、という考えもあります。

割れに接着剤が入っていないのですから、クリートの大きさは関係ないかと考えています。

クリートが大きくても恐らく、再度乾燥が進めば同じ所が割れる確率は高いと思います。

 


 

私のギターもやはり冬は乾燥でトップが凹んで弦高が下がりますので、(割れる程までは乾燥しないですが…)音もぺしゃつくと言いましょうか、…

弦高を上げれば良いのですが、面倒なのでそのまま弾いています。

過湿するグッズ等もありますので、使う価値はあります。

では夏は頑張って乾燥させた方が良いのでしょうか。

必要はないと思います。

弾き込めば良いのです。

弾き込めば湿気は発散されます。

自分のギターは夏場、弦高も好いので夏場の音の方がとても良い音です。

 

では、弾かないギターの場合はどうするのですか。

知らん。

 

ネックリセット / Martin D-18


スタッフの山口です。

今回もネックリセットです。ありがたいことに、一年中ネックリセットしています。

ネックリセットの経験値をこれだけ積める現場環境に自分の身を置かせてもらっていることに対して、感謝の気持ちを忘れてはいけません。


サドルが限界一歩手前、というところでしょうか。ブリッジプレートが削れちゃってることもあって、巻弦の太い部分がサドルに乗っちゃっています。音に影響するのは言うまでもなく、弦高も上がってしまいます。


リセット前に測定。

6弦側の弦高は普通ですが、、


1弦側はやはり少し高めですね。


抜きました。。

ブログを疎かにしてるのではなく、単純に写真の撮り忘れです。この辺は今までもたくさんアップしてるのでお許しください。


センターズレが起きないよう、また元々ズレている場合は修正しながらネック角度の調整をしていきます。

この時、ナット溝の位置が正常か確認するのも重要です。ナットは消耗品ですので必ずしも前回取付けられた(製作された)ナットがちゃんとしているとは限りません。

1弦と6弦の溝の位置がバラバラなら正しい位置を想定してセンターを見なければいけません。リセット後、ナットを交換したらセンターがズレてしまうのは本末転倒です。


センターズレの他、リセット後にサドルの背丈がバカ高くなってしまう、とか、ヒールに隙間ができてしまってなんか誤魔化す、なんてことは避けなければなりません。。

20年後、また他の誰かがネックリセットをした時に、「前回のネックリセットを施した職人は下手くそだな」なんて思われたら悔しいのです。


ダブテイルジョイント部の木工精度は最も重要です。∴ジョイントを強固にするためのシム製作は大事な作業工程。

接着剤頼みのダブテイルジョイントも年に何本かあります。すごく鳴っていて良いギターだなーと思った個体でも、意外にもネック外す時にジョイントがユルユルだった、なんてことも全然ありますのでそれはそれで興味深いのですが、、ジョイントがしっかりと精度が高い方がサウンドも良いに決まってます。


組込後はフレットを擦り合わせてナット調整し、その後弦高調整(サドル作製)を行います。


今回はその前にブリッジプレート修理を行いました。


元々ついていたコンデンサーマイクピックアップを元に戻します。


最後はサドルを作製して完成。このくらいのサドルがカッコいいです。

たまに「弦高はいずれまた高くなっちゃうんだから、サドルは高ければ高い方が良い」という自論を展開する人がいますが、決してそんなことはありません。ブリッジ割れや変形のトラブルはもちろん、ネックに余計な角度をつけることによって生じるデメリットもあるのです。

弾かない時は弦をちゃんと緩め、適正な高さのサドルを維持すること、これが正解です。

写真がブレちゃってますが、低めの弦高でいい感じになりました♪

しっかりとシーズニングされた木材で作られていることが大前提ですが、アコースティックギターやクラシックギターのようにボディが空洞のギターの場合、弾かない時にちゃんと弦を緩めておけば早々不具合は起こりません。よってネックリセットが必要となることもほぼありません。

世間では「木が固まるまでは何年か弦を張りっぱなしにした方が良い」とか、「1音だけ下げるのが正解だ」とか、「弦を張っておかないとネックは必ず逆反りする」とか、何の科学的根拠のないことを、あたかも「自分はこの世のギターの全てを知っている」みたいな顔をしながら言っている人を見かけます。

この世界の物理法則がひっくりかえらない限り、木はあくまでも木なので、ある一定方向に長時間、何十キロもの圧力がかかり続ければ、どこかしらが変形したり割れたりするのは至極当然のことです。僕も世の中のギター全てを知っているわけではありませんが、弾かないときはなるべくダルダルに緩めておくのが不具合の出る確率を最大限低くする一番良いギターとの付き合い方であることは間違いありません。

 

自分の「修理屋」という仕事の将来を考えると、弦を張りっぱなしにして不具合が出たら皆川ギター工房に持ち込む、というのをお勧めしたいところではありますが、、。( ´ ▽ ` )

今後とも皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い致します。敬具

 

ネックリセット / Martin Bolt on Neck


今回は


ボルトオンネックの


Martin


です。

おそらくヒールに隙間が出来てヒールキャップも取れてしまった為、接着剤でくっ付けようとしたのだと思います。

周りが接着剤で汚れています。

過去にも説明しておりますが、目に見えるヒールの隙間を接着しても意味がありません。

ダブテールジョイントであればジョイント部の精度、ボルトオンジョイントであればボルトが正しく締まっているかが重要です。

 

 


 

ボルトオンジョイントのネックの場合、指板がトップから剥がれれば、後はボルトを緩めてネックは外れるはずなのですが、Martinは一味違います。

ジョイント部も接着しちゃってます。

まだこれに慣れなかった頃は、何で外れないのか分からず、すごく面食らった事をブログに書いた記憶があります。

最初の時は、「きっと新人さんが間違えたんだろう。」等と思っておりました。

2回目の時「外れねーな…もしや?」「これもか。」と成り、3度目からはマーチンのボルトオンネックは中まで接着してある事が分かって取り組みますが、かえってダブテールジョイントより面倒くさいです。

 


 


 


 

ですので「ジョイント部も接着する。」がMartinの正式なセットの仕方ですから、リセットする際は困ってしまいます。

「ボルトオンだけど接着しないと持たないの?」「実際隙間が出来たし。」

「いや。接着剤はいらんだろ。」「ボルトがしっかり締まればよいのだから。」

と、堂々巡りして、外す際になるべく面倒くさくならないように、少し接着するという、自分でも「なんだこれ。」と言うような事をやったりします。

 

 

「マーチン、問題多すぎー!」等と言う人もいると思いますが、Martinの名誉の為に言える事は、それだけ見る機会が多いと言う事。

どのメーカーも完ぺきなものは、なかなか無いと思います。

Gibsonがネック折れやすい等と言う人もいたと思いますが、Gibsonを持っている人がとても多いんです。

その角度の付いたヘッドのネックでなければGibsonでな無くなってしまいます。

確かにFenderは倒しても簡単には折れず強いです。

比べちゃいけません。

それぞれが、それである為に、それなのですから。