修理実績

ネック折れ修理(塗装修正無し) / Martin OO-15


薄皮1枚で繋がっているようです。


過去にも修理しているようですが、接着剤が少なかったか、弱かったようです。

接着剤は何が使われていたかは判別できませんでしたが、タイトボンド等であれば補強が必要…

ネックが折れてしまった時は、焦ってくっ付けたりせず、出来るだけ現状維持して頂ければ助かります。

Martin やGibson等のようにラッカー塗装の場合は、粘着テープ等で固定しますと塗装が反応してしますので、そのまま持って来て頂ければ幸いですが、心配な場合は何か布等で巻いて保護してください。

ただこの状態で布やタオルを巻きますと、ケースに入らなくなるかもしれません。

大げさに保護しなくも、折れている部分が擦れたりしなければ大丈夫です。

 


弦を外して


ペグを外している途中で


ヘッドは取れてしまいました。

このように分離してしまった場合は、移動中ケースの中で動いたりしない様に、もしくは動いても大丈夫なように何か巻いていただければ助かります。

 


 


 

塗装修正無しの場合は、仕上がり具合が区々になります。

修理実績の塗装修正無しのページを覗いていただけますと、いろいろな例がご覧いただけます。

塗装膜がしっかり厚みがあれば、塗装修正無しのプランでも剥げずに割ときれいに仕上がる事があります。

接着後は手触りに違和感がないように研く為、元々塗装が薄かったり、2度目の修理等の場合は、ある程度剥げてしまいます。

 

 

 

レリック等のエイジド加工されたものが好きな人は、修理跡を塗装修正して隠さない方がカッコ良いかも。

 

ネックリセット&リフレット / Martin O-18


スタッフの山口です。

今回は最近滅多にお目にかかれなくなったオールドのMartin O-18のネックリセットとネックリセットとセットだと1万円引きでお得になるリフレット(フレット交換)です。


弦高を調整するサドルが限界です。

よくあるブリッジを削っちゃった、ということは今回はないようです。

 


トップに養生をして指板のハイフレット付近、トップに乗っかっている部分を温めます。


熱々でニカワまたはタイトボンドが軟化すればこのようにナイフを入れることができます。


15フレットを抜いて開けた穴にヒートスティックを差し込み、今度はダブテイルジョイントの接合部を温めます。

穴を開けることにびっくりする方もいると思いますが、マーチン社に持ち込んで修理したとしても同じように15フレットに穴を開けられちゃいます。むしろMartinは修理ができるように設計していて、わざとダブテイル部分に少しだけ隙間が作られています。


無事にネックが外れて恒例の記念撮影。

指板もこれ以上なく綺麗に剥がれました。


ネック角度を修正した分、傾斜をつけたエボニーの薄板を貼り合わせて底上げします。「くの字」で元起きしている場合はこれが不要の場合が多く、ジョイント部付近のトップが沈んでいるケースではこれが必要になることが多いです。


少し飛んで、ネックが無事についたらリフレットに移ります。


フレットのエッジ落としは個人的には勝負所の工程です。斜めに落としすぎるのは皆川ギター工房では御法度です。


また少し飛んで、、フレット交換で高さが復活したら元のナットは低すぎますので新調します。


弦間、形状ともにMartinの特徴を捉えたナットになりました。

ブリッジ同様、ナットにはそれぞれのメーカーに合ったディテールがあります。MartinにGibsonみたいなナットがついているのはとても違和感を覚えます。

先日Gibsonによくあるジャンボフレットが打ってあるMartinを拝見しましたが、それもとても違和感がありました。


弦高も2.5mmになり弾きやすくなりました。


ロングサドルは特に高くなりすぎないようにネック角度を調整する必要があります。ロングサドルブリッジの構造上、高すぎるサドルはブリッジの割れを招く確率を大幅にアップさせてしまいます。


センターもバッチリ、、


6弦側のヒールもバッチリ、、


1弦側のヒールもバッチリです。綺麗に仕上がりました♪


小ぶりなのに圧倒的な貫禄。

家のソファで弾くならこれに勝るギターは無いのでは無いでしょうか。

かっこいい!

ネックが長年の弦の力によって起き上がってくる「元起き」には、14フレットで「くの字」になっている場合と、指板がトップに沈み込む場合の2パターンがあります。指板がトップより強ければトップが沈み、トップ(ブレーシング含む)の方が強い場合は14フレットを起点に「くの字」になります。一般的に「くの字」の場合は目で見れば元起き症状として判断しやすいと思いますが、トップが沈んで角度が狂っている場合はその症状から元起きと判断するのは素人目には分かりづらいかと思います。

元起きはアコースティックギターの宿命と言われてきたことから、これまで多くのメーカーや製作家が、弦の張力に負けないよう、ネックブロック周りを強化した設計にチャレンジしてきました。でもネックブロック周りが強いから安心、、かと思いきや、余裕で元起きしてたりします。

アコギの場合は特に顕著ですが、弦の力による不具合はそのギターの弱いところに発生します。ネックが反らない、強いネックだから、と安心しても、弦を張りっぱなしにすれば、ネックに不具合が出なくても、その分他の場所(ブリッジやトップ)に不具合が出ます。

僕の相棒のMartin君は毎回しっかり弦を緩めているのでここ10年、コンディションの変化が一才ありません。至って良好。

「弦を張っておかないと逆反りする」、というオカルトがネット上では散見されますが、しっかりシーズニングされている木材で作られているギターであれば、弦を緩めたことで逆反りしちゃう、なんてことはありません。もし弦を緩めたことでトラスロッドに関係なく逆反りしちゃうようなギターであれば、そもそもそれはハズレのギターです。

いつもと同じ結びになりますが、弾かない時はなるべく弦を緩めましょう。

今回も最後までありがとうございました。

バック板欠損 / Gibson J-45

ボディバックの一部が欠けております。

全体的に見ますと、この部分。

 

ライニング部分も欠損しています。

ちゃんとフタが出来るように平にします。

 


 

途中の画像が無いですが、付け足す板は直線で合わさるように直します。

そして中の力木は剥がれているだけでなく、裂けている部分もあります。

見落とすことなく全て接着します。

欠損部分は新しい板を付け足していますが、クリート(割れの境目に付ける割れ止め)は、あまり意味がありませんので付けません。

ボディ割れ修理のクリートは、「もっと接着剤が入ればなー!」と言う時や、「修理やりましたよ!」という証に付けます。

今回のこちらの割れ修理は破損ですが、

ボディ割れ修理の原因1位は「乾燥」ですので、割れ修理をしても乾燥させれば、また割れます。

お気をつけください。

 

多少濃いめになりましたが、全体的には雰囲気は悪く無いと思います。

ピックガードが無くてもそれはそれで皆とは違くて好いです。

 

ジャック周りの割れ修理 / Gibson CF-100E


スタッフの山口です。今回はジャック周りがグダグダになったCF-100Eの修理です。

写真の通り、ピックガード用のセルロイドか何かで長年誤魔化してあったようです。


アッセンブリーをしばらく外しておきますが、外す前にどのようであったかを必ず写真を撮っておきます。


セルロイド板を外してみたらこんな感じでした。


一応、補強はしてあるようですが、もちろんこちらも新しくします。


まずは嵌め込む板の寸法を決めて穴を長方形に整えます。


四隅をドリルで開けてから、


ミニのこで切り取り、


やすりで綺麗な長方形にします。


ここでマホガニーの補強を4枚用意します。長さはボディ厚の内寸で作りました。


ここに補強を2枚、内側から貼ります。


こんな感じで一日置きます。


こんな感じになりました。


同じように残りの2枚の補強を中心部に貼りもう1日経過しました。


ここからは長方形の穴にピッタリに用意したサイド板を貼っていきます。


1mm厚の板を3枚重ねて3mmくらい、ツラが合いましたね。


先ほど映っていたけどスルーしたジグはこのように使います。


内側からみるとこうなってます。


ペグを巻いて内側と外側から挟み討ちで圧力をかけて接着させます。


1日経過しました。


しっかりと蓋ができたようです。


あとは塗装を切りのいいところまで剥がして、、


こんな感じに。


木目を合わせたり描いたりします。


着色前だとこの写真のように見て分かりますが、このあと着色すれば意外と気が付かないと思います。

最後は着色とラッカートップコートで完了です。(写真見つからずここで終了)汗

 


 

修理屋は写真のような専用ジグを必要とします。どうしてもサイズや修理箇所が毎回違いますので、そのほとんどが自作になります。

ジグ作りはその時の修理一回のために作ることもあり、とても面倒なことではあるのですが、もし優秀なジグが完成できれば、その時点で修理の半分は終わったようなものです。それだけ修理屋にとってジグを考え、作り出すことは大切なスキルの一つであると言えます。

このペグを使ったジグを作った人はきっといろんな便利なジグも作っただろうことが容易に想像ができますね。

本日も最後までありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

you tubeの動画あります。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

※画像は、本編とは関係ありません。

こんにちは。

今回はいつもと指向をかえてブログを更新します。

テレビ東京の公式you tubeチャンネル「再生工房」の取材を受けましたので、そちらを紹介させていただきます。

昔、テレビの取材を受けた時は、仕事が欲しかったのでよろこんで受けまして全く反響無しで寂しかったのですが、今となってはお仕事も十分に頂けるようになりましたので、多少迷いはありましたが、記念に元気なうちに撮ってもらうのも良いかと思い受けました。

特にいつも同じような内容にも拘らず、当ブログへ欠かさず見に来てくださっている方へお送りいたします。

再生工房

よろしければ見てやってください。

ブリッジ厚み足し&ネックリセット /Martin D12-35(60’s)


スタッフの山口です。

今回は12弦ギターをがっつりと修理していきます。ネックリセットと薄くなったブリッジの修復、それとナット交換です。

ブリッジの高さに合わせてネック角度を決めるので必然的にブリッジ→ネックリセット→ナット交換の順番になります。

せっかくネックリセットをするのなら、とこの機会にブリッジを適正な厚みにしてあげるケースは多いです。


スロテッドヘッド、、。強敵です。

単純に弦数が2倍なのでどうしても6弦と比べて手間がかかりますが、修理料金は2倍にはなりませんのでご安心ください。

 

 


 んー、このブリッジ、いただけません。

限界を超えた薄さに見えます。サドルの高さももちろん低いですが、サドルの溝も深さ1mm程しかありません。


温めて接着剤を軟化させてから慎重にナイフを入れていきます。


ダメージを最小限に、いい感じに剥がせました。


大抵のブリッジは弦の張力に起因してこのように反ることが多いです。


今回は予算の関係とブリッジのウィングの厚みが残っていたため底上げで修復。


クランプして一晩おいてこんな感じです。


倍くらいの厚みにUP↑


元のブリッジのウィングの厚みが残っていればウィング上部を削れますので、形も本来の形に近づけることができます。厚みがないと整形しようとして削っていくうちに付け足した材がお目見えしてしまうためです。


反っていた底面を修正し、接着面を整えてからブリッジを接着します。

ブリッジ専用クランプもありますが、写真の通常のサウンドホールクランプ5本の方が使いやすいです。

接着時にピンホール内側の余計に溢れたタイトボンドを拭き取ったりできるので。


ブリッジが付いたらいつも通りのネックリセット開始。

「いつも通りネックリセット」と自然に発してしまうほど、いつもネックリセットさせていただいてます。


ブリッジと同じくこんな感じで。


ネックリセットの途中はこれまでのブログでもたくさん載せてますので今回はサッと。


記念撮影は忘れずに。


適正な仕込み角度にするために、ヒールはかなり削りました。と言っても1mm強くらい。


極浅の溝に一旦埋木をして、、


深いところで4mmほどの溝を新しく作りました。


最後はナット交換です。どこを修理するにしても、古い接着剤は取り除くのが必須です。


12弦はなんと言ってもこのナット作製が一番の難関です。


弦間のバランスと主弦/副弦の間隔に注意しないといけません。昔ですが完成間近で溝を掘りすぎちゃって放心状態のまま作り直したことがあります。


ナット調整の後はサドルです。

弾きやすい弦高を確保しつつこれだけサドルが出ていれば安心です。


6弦側、4mmあった弦高も2.5mmに、


1弦側も1.6mmほど。これは弾きやすい弦高といえますね。


ナットも新しくなり、


削ったヒール部分も綺麗に仕上がってます。


こっち側もOK。


派手な杢のハカランダ単板3ピース。


サイドも派手です。


派手を通り越してここはもう強烈な波紋状のエゲツない杢目です。


 

12弦ギターは需要が少ないせいか、比較的相場が安い印象があります。製作、リペアともに6弦より手間がかかっていますので少々違和感がある気もしますが、物の値段はそれだけで決まるものではないので理解はできます。

この音色はやはり12弦でしか出せないので、実は1本は持っていたいと思う人も多いのではないでしょうか。弦の張力が強い分、12弦は状態が悪いものも多いと思われますので、オークションなどで中古購入される場合はリペア料金も見据えて購入されることをお勧めします。あ、でもこれは12弦に限ったことではないか。。

よくワンオーナー品、という言葉を目にしますが、そのオーナーが適正な保管方法を守って使用していたとは限らないので、「ワンオーナー品=状態が良いはず」と解釈するのは危ういと思います。おそらく車と同様、出所がしっかりしていて、修理履歴などがちゃんと把握できている個体、という意味で使われているのだと思います。

とりあえず、12フレットジョイントのハカランダ12弦ギター、とってもとってもナイスギターでした♪ 自分は12弦ギターを手にすると、どうしてもイーグルスのTake It Easyを弾きたくなってしまいます。^ – ^

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

 

サウンドホール欠け / Gibson J-45 1969


激しく弾かれサウンドホール周りは


削られ薄くなり、口輪は剥がれ


欠けて無くなってしまっている部分もあちこち。

これはこれでカッチョイイとおもいます。

当方では傷直しやリフィニッシュ等、演奏性や強度に関わらない修理は基本お断りしております。

何がしのご事情があれば改めて伺わせていただきます。

 

凄く気を付けていても、使っていけばやはり傷はつくものです。

その直後はショックですが、その傷もそのギターの歴史の一部として愛でてもらえれば幸いです。

と、このように生意気にもお断りするのですが、場合と程度もございます。

 

 

 


 


 

欠損部分は、スプルースで作り直して雰囲気を合わせます。

 


天井を撮っているのではなく、中の補強の様子を撮っています。


正面


69年製 J-45 

69年製のGibsonは、60年代Gibsonでも70年代Gibsonでもない雰囲気のGibson なのです。

このルックスですから私が若い頃は全く興味がありませんでしたが、良さが分かった今では好きなギターのひとつです。

私が大好きな、あの方がデビュー直後に使っていた実物(69年、J-45)を数年前にリフレットやらせてもらいましたがホントにすごくよかったです。

 

ブリッジ交換(作製) / Martin D-28


スタッフの山口です。

今日はブリッジの交換です。写真はすでにブリッジを剥がしたところです。


ブリッジを交換する理由は主に2つ。

①割れてしまい接着で修理しても強度が保てない場合

②弦高を下げきれずサドルの出しろを稼ぐために上面を削って薄くされちゃっている場合

画像からわかるように、今回は②のケースです。


エボニー材に少し大きめに墨入れしてベルトソーでカット。

エボニーを見るたびに「これって炭じゃなくて木なんだよな、、すごいな。」と感心してしまいます。近年は上質なエボニーは枯渇していますが「そりゃそうなるだろう」と思います。


ブリッジの作製は個体に合わせて完全なハンドメイド。同じ機種でも寸法は同じようで同じじゃない場合が多いです。例え寸法が同じでもピンホールが微妙に前後ズレてたりします。


両面テープでガッチリ旧ブリッジと新ブリッジを重ねます。

この時点では新ブリッジは一回り大きいのが画像からもわかると思います。


作製手順は師匠から習ったわけではないので半分は我流です。皆川氏は随所随所のツボを教えてくれたので僕はそれを参考にいつからか自分が作りやすい方法で進めるようになりました。

この画像のようなマーキングは分かる人にしか分からないはず。企業秘密です。


自分の中ではここが最重要ポイント。ベルトサンダーで思い切って結構ごっそりウィングを削ぎ落とします。経験上、ここでビビって手前で止めるとエッジがあまり立たずで仕上がりに差が出ます。


今度はマーキングを外側にずらして上面にアーチを作ります。

 


ある程度寸法が決まったら後は番手をあげて整形しつつ表面を滑らかにしていきます。


マーチンのブリッジらしくなってきました。


一旦レモンオイルまたは蜜蝋で面構えを確認。


こっちからも。


ディテールにはとことんこだわります。「分かる」人が見てもオリジナルか交換したものか「分からない」レベルになるかどうかの負けられない戦いがここにはあります。

 


師匠のチェックをパスしたら接着です。


いい感じです。「ふぅ。」という自分の声が写真から聞こえてきます。

さっきの画像を見直せば分かると思いますが、左右でマーキングがずれていたのは6弦側と1弦側で厚みが異なるためです。


弦長(スケール)を測定します。

NHKのMartin特集番組で長年Martinに勤めたOBの職人さんが「計測は二度、切るのは一度」みたいなことを言っていたのが印象的だったのでそれ以来、どんな時も二度計測する癖がつきました。


溝切りが終わったら新旧二つ並べてみます。


はい!バトンタッチ!


ロングサドルの溝切りをカッコ良く遂行するのはとても難易度が高いです。

やってみれば分かります。


いい感じです。

ウィングにはみ出し過ぎているロングサドルよりこのくらいがスマートです。


凛々しい面構えに乾杯。(自分はあまり酒が飲めないのでジンジャーエールで)


 

王道のアコギD-28のロングサドルは迫力があります。まさに戦艦ドレッドノート。

ブリッジはサドルに伝わる弦振動を広げながらそれをサウンドボードに伝えるとても重要な役割があります。極薄のブリッジから本来の厚みのあるブリッジに交換すると、思った以上に音が良くなります。良くなるというより本来の音になる、という方が正しい表現かもしれません。ブリッジ修理をする中で、何度かそのような劇的にいい変化をモロに感じられたことがあって「ブリッジは安易に削らない方がいい」と個人的には思っています。

「ブリッジを削ってサドルの出しろを確保し弦高を下げる」というのは修理にそれほどコストをかけられない場合のあくまでも応急処置的な修理です。修理というよりは処置。

もちろん、当工房のポリシーはお客様至上主義ですので予算に合わせて修理にするのか処置を施すのかを説明し、オーナーさんに選択していただくことになります。その説明をせず、あたかもブリッジを削るしかないかのように処置を施してしまうような修理屋さんがいたらあまりよろしくありません。ギタリストにとってギターは体の一部みたいなものですので、医者選びもそうですがちゃんと相談できて信頼関係のある修理屋さんに出したいですよね。

そしてその信頼と実績を積み上げることこそが修理屋として一番大事なことだと思います。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

ネック折れ修理(塗装修正あり) / Martin OOO-1

見慣れてはおりますが、

オーナーのショック計り知れない。

今回のように、ある程度面どうしで接着出来る状態の割れ方であれば、あまり悩まず接着が出来ます。

割れの凸凹に合わせて、はめ込むように合わせる場合は、しっかり合わさるまで手間がかかります。

どちらの場合にしてもヘッドが分離している為、接着の際にずれないように気を付けなくてはなりません。

 

 

塗装修正ありのプランで仕上げ

割れていた跡はシースルーである限り見えてしまいます。

シースルーの場合はどうしても跡は見えてしまいますが、こちらのような濃い目の色で杢目も黒っぽいものでしたら、割れ跡は目立ち難くはなると思います。

明るい色の下地の場合は、どうしても目立ってしまいますが、塗りつぶしの着色なら修理跡は隠すことが出来ます。

但し、塗りつぶしになる場合は、色合わせが難しいという難題がございます。

 


 


 

ネック折れ修理は、師匠筋から引き継いだ修理方法を当初から変更なく行っております。

ネック折れ修理は特にと言ってよいほど、方法など修理者により区々です。

You tubeやお預かりしたギター等でも非常に関心する修理も拝見する事もあり、勉強になる事もよくあります。

ですが、長年変わらずうちはうちでございます。

これが一番と思っております。

 

自分の場合、ブログに関しては山口君のように途中経過も無く、ビフォーアフターでなるべく簡単に済ませたいと思っている位なので動画を撮ってアップする等という、ゆとりは到底無い訳ですが見る事はよくあります。

毎日のように見ますが本当に面白くて、素晴らしくて勉強になる人からそうじゃない人まで、いろいろあって見飽きる事がありません。

 

ネックリセット / Gibson SJ-200


スタッフの山口です。

キングオブフラットトップの登場です。言わずもがな、この貫禄。


弦高は6弦12フレットで3mm超え。


なぜか14フレットにスケール置いて写真撮ってますね、、。

とりあえず12フレットでも2mmを超えてそうです。


ブリッジのデザイン上、ブリッジピンからサドルまで距離がありますので、サドルはもう少し高くして弦のテンションを稼いだ方がハリのあるキングらしいサウンドになります。

ということで今回はキングをネックリセットしていきます。


指板の脇が割れています。修理済みかもしれませんが、ネックを温めているうちにニカワやボンドが接着力を失ってしまい再発する恐れがあります。

あとで「ここは割れていなかった、弁償してほしい」と言われたら路頭に迷ってしまいますので、ネックを外す前になるべく傷や不具合がないか記録として写真を撮っておきます。


フレットを抜いて小さい穴から、


少しずつ径を広げます。


修理屋によっては真ん中に一発の人もいますが自分はダブテイルの両サイドの近くをめがけて2発あけます。


ギブソンはヒールとボディの境目に予めナイフをなぞっておいて分離時の余計な塗装割れを防ぎます。


指板をトップから剥がしてダブテイル内部を温めます。


このまま2時間かかる時もあります。。


ネックが外れましたがやはり古傷が痛むようです。

今気づきましたがブレーシングがこの時代特有の感じですね。


修理中の修理中。。


いざネック角度を補正していきます。


角度が正常に戻ったら角度がついた分、案の定、ハイフレットが下がってしまいましたので勾配をつけたエボニーやローズウッドの薄板で下駄を履かせます。


前回も似たようなことを書きましたが、、ネックバインディングはあっても追加料金はないです。


ネックバインディングがあると何かと手間がかかります。


ちょっと飛んで、、ネックがつきましたのでフレットのすり合わせを進めます。


うーん、、ギリギリ!もう少しでフレットレスギターです。


磨いてあげたら、、


今回はナットも交換依頼がありますので元のナットを四苦八苦して外します。

写真のように元のナットが取れない場合は切ったり破壊する場合があります。


ナットの溝は綺麗にして


ナット作製。今回もオーソドックスな牛骨ナットに。


3弦が髪の毛一本分右だったかな、、と今写真をみて思いました。


センターズレもなく無事に完了です。


ヘッドをクリーニングします。


ペグを外した方が結果的に早く綺麗にできますね。


良い感じです。


塗装修正も不要でした。


良い仕上がりだと思います。


正面もOK。


ネックバインディングがあると指板の厚みを足した跡は残ってしまいますが、許容範囲。


サドルもキングらしい高さで威風堂々と復活です。


さすが、貫禄のあるルックスですね。50年代といえばロカビリー全盛期かと思います。ファッションも50年代は魅力的な時代です。


トップとは違うサンバーストでイカしてます。


先日、当工房オーナーの皆川がアドバンスギターさん(TC楽器)が自身の錚々たる在庫を元に出版したキングオブフラットトップ徹底特集本の新刊を購入して二人で見入っておりました。とても貴重な内容でしたのでご興味のある方はぜひ下記のリンクよりお求めください。

GIBSON KING OF THE FLAT-TOPS ~幻のギターを解明する世界初のSJ資料集~

 

当工房には師匠皆川が長年買い集めてきたギターの特集専門誌が多数あります。たまに見始めると時間を忘れて見入ってしまいます。ネットで検索すれば出てくる情報もたくさんありますが、やはり当時の実本でないと得られない情報もたくさんあります。今回のアドバンスギターさんの新刊も20年後にはとても貴重な情報源となる貴重なものになるのではないかと思います。

以前国産ギターの当時の広告などをコレクションしているお若いお客さんがいらっしゃいましたが、それもとても興味深かったです。弾くだけじゃなく色んな楽しみ方ができるギターにはやはりロマンがありますね。

今回も最後までありがとうございました。