修理実績

ネックリセット、リフレット / Gibson J200


 

弦高が下げられなくて弾き辛ければ、ネックの角度を直さなければなりません。

なりませんが、なかなか大変な修理ではあります。

どのメーカーも同じジョイント方式ではない為、修理経験のないメーカーではまずジョイントの方式を調べなくてはなりません。

逆にギブソンのように分かっているものは悩まず、作業を進めます。

但し、通常通りには抜けない場合もあるので気を付けなくてはなりません。

今回は普通でよかった。

過去の修理実績は「こりゃ普通に抜けないわ。」というギブソンがありますので、よろしければそちらも御覧下さい。

このギターは過去にもネックリセット歴があり、ヒールキャップがずれちゃってます。

ちゃんと良い位置に戻しました。

 


ネックに角度が付くとジョイントから先の指板が下がりますので、厚みを付けてストレートになるようにします。


ネックリセットする場合は、指板を修正してリフレットしなければならない事の方が多いようです。


リフレットすれば第一フレットに合わせたナットに交換します。

ナットは交換せずに使いたい場合は、底上げして調整します。(ナットがきれいに外れる場合)


アジャスタブルサドルは、トラディショナルなサドルに置き換えた場合、大分出過ぎた位置で見た目が良くなるので、将来的に沢山下げられるようにしちゃうと、とんでもなく出過ぎたサドルになってしまいます。


蒸気を使わず外すようになってから、塗装が痛んでしまう事が無くなりました。


ですが何れにしよ、取るのは大変。

そして削るのも大変。


ピックガードがずれちゃってますが、それでも古いものはカッコよいです。

 

いつもでしたら、ここまでで終わりですがちょっと珍しいモデルなので、もうちょっと見させて頂きましょう。

当方の過去の修理例にもこの年代のJ-200 に同じ仕掛けがある画像が見られます。


 


 


 


 

トップミュート、ミュートバー等と呼ばれています。

トップが凹まないように、凹んで来たらこれで持ち上げしましょうと言う事らしいです。

 

ネックリセット、フレット交換 他 / Martin D-45


ネックをリセットしますが、ブリッジを直してからリセットします。


蒸気は使わず、ヒートスティックで外します。


この年代頃の物は、木材を使わず紙をシム替わり使っているのでジョイントが緩くなってしまいます。


リセットが出来たら、リフレットしますのでナットも交換します。

分厚い突板の場合は、そのまま叩いて取ろうとすると、このようにきれいに取れず、板まで割れてしまうので気を付けましょう。

 

 


弦高の標準数値にしても、ギターによって高く感じたり、低く感じたり区々ですので、その都度ベストを目指します。

 


アジャスタブルサドルのように作り直さない場合は、指板のアールとサドルのアールが合っていない事があるので、標準の弦高にしてもしっくりこない場合があります。


大半の人は、私も含めて弦高は低目が良いのですが、低目ではピッキングの癖等でビリいてしまったり、フィーリングが合わなかったりする場合があり、その人に合った弦高があります。

 


通常での目標値は、1弦…1.7~1.9mm

6弦…2.4~2.7mm 

ご自身で弦高は高目が良いと分かっている場合は、リクエストしていただくと助かります。

高目なら1弦…2.0~2.1mm

6弦…2.8~2.9mm

数値だけ言えば、この位が目標になるかなと思います。

 

 但し図り方や、見方によっては数値に個人差が出ます。

同じ高さをイメージしているにもかかわらず、数値に差が出ます。

 

 


紙で調整してあるジョイントは、いずれヒールに隙間が出来てしまいます。


弦を張りっぱなしにして、ネックの角度が狂う事があっても、ここに隙間が出来てはいけません。


他のメーカーでも紙で調整してある、修理例が過去にアップしてありますが、やはりジョイントが動いてヒールに隙間が出来てしまっていました。

紙は繊維が通ってないので動いてしまいます。

 

ネック折れ修理(塗装修正あり) / Gibson Les Paul

ポッキリいってなくても、ヒビが入ってしまえば通常のように使用する事は出来なくなってしまいます。

 

出来るだけきれいに仕上げるプランですので、塗装修正もして仕上げます。

 

当方では、ネック折れには、それ用に決めた接着剤を使用する為、補強の要らない修理をします。

色の濃い着色の場合は、合わせやすいので助かります。

 

ギブソンはヘッドに角度が付いている事と、エレキは重いので何かあった時はネックが折れてしまう事がしばしばあります。

倒れない様いつも注意してください。

ケースに入っていても同じです。

ネック折れや他の修理についても、修理実績やブログの中に詳しく述べている記事もありますので、そちらも見て頂ければ幸いです。

 

ピックガード交換 / Martin D-18

ピックガードの歪みは酷くなると元には戻せないので、交換するしかありません。

直貼りしてある昔のピックガードは剥がした跡がきれいです。

逆目の方向から剥がしてしまうと木がめくれてしまうので、順目の方向から剥がさなければいけません。

 

 

新しいピックガードは塗装の上から両面テープで貼ってある為、ピックガードサイドの割れ、いわゆる「マーチンクラック」は起きなくなります。

両面テープで貼ってあるP/Gを交換となった場合は、その粘着テープをきれいに取り除く事がもの凄く手間のかかる作業になります。

どこか良くすると、どこか悪くなる、物事の摂理でしょうか。

全てを良くすると言う事は、不可能なのでしょうか。

全て良く改良されたモノって何かあるのでしょうか。

全て良くなった場合、何か弊害が生まれるのでしょうか。

あ、私の仕事が無くなります。

 

 

 


あまりお金をかけたくない場合は、リプレイス用のピックガードも巷には色々あります。

但しその際にはサイズ感を確認しましょう。


折角買っても大きさが合わなかったり、厚くて野暮ったくなったり、カッコ悪くならない為には、それに合わせて作る事をお勧めします。


その都度作られたピックガードは、大きさは元とほぼ同じく、面取りして、水研ぎして仕上げます。


ピックガード材の保護テープを剥がしただけでは、ただの下敷きのようですが、水研ぎする事で、しっとりと塗装した様な雰囲気を醸し出します。

 

 

ボディ割れ修理 / KoAloha

ボディ割れの修理です。

剥がれた延長部分も割れています。


 

 

 

破片を取って置いて貰ったおかげで、それを貼り戻せます。

破片は、細かく砕けてしまわなければ、大概戻せますので見つかれば取っておいて下さい。

上手く戻るか否かは、状況による事もありますが、あった方がとても助かります。

 


元の破片で直した方が、当然ですが自然です。


割れ修理の跡は残りますが、


見る角度によっては違和感無いと思います。

 

ネック折れ修理(塗装修正あり)/ Martin OMC28


当方のネック折れ修理は、補強無しで心配の無い修理をします。

 


タイトボンドで割れを修理した場合は、再度同じ部分に亀裂が生じたり、それを防ぐ為に強度を補う補強が必要になります。

 


当工房では、ネック折れ修理に適した接着剤の使用で補強が要らない為、余計な手間を省き、コストを抑えた修理が可能です。

 


通常のネック折れ修理では、塗装修正をする場合と塗装修正はせずに仕上げる、2通りの見積もりを出します。


こちらの場合は、出来るだけきれいに仕上げる為、塗装修正ありの仕上げですが、塗装修正無しの仕上げならコストもグッと抑えられます。


杢目や色合いによっては割れ跡がほぼ目立たなく仕上がります。

 

 

 


 

塗装修正無しの場合も「修理実績」にて、いろんな例が見られます。

よろしければ、そちらもご覧頂いて検討頂ければ幸いです。

補強をしないメリットは他にも、同じ樹種であっても状態の違う物をはめ込んで将来的に狂いを出さない事や、再度アクシデントがあった場合に複雑化しない等が当方の考えであります。

これが正しいと言う事ではなく、これが当方の考えですので、補強を入れる事を基本としている修理屋さんもあり、どのような修理がご自身の要望に近いかと言う事です。

大昔に読んだ記事では、「楽器には楽器に相応しい接着剤(おそらくニカワの事を言っていると思う)があり、楽器は呼吸しているのだから強いというだけで接着剤を選んではいけない。可哀そうです。」と、まだ若かった私は叱られている気持ちになりましたが、今となってはそれぞれで良いと思っています。

 

 

ボディ割れ修理/ ウクレレ

落っことしちゃったようです。

修理跡は残るのは仕方ありませんが、割れだけは直しておきたい。

 

 


 

ウクレレは小さくて軽い事が、うっかり落としてしまいやすいとも言えるかもしれません。

ウクレレのストラップは両手を離すと落ちてしまうので、これもうっかりしやすい原因かもしれません。

ギターの様にストラップピンで留めるストラップであれば簡単に落ちる事は無いと思いますが、ギターではギブソン等の小さいストラップピンの場合、ストラップが外れて落ちる事があります。

私の場合、エレキを弾いている時に外れて何度も落ちかけた事があります。

エレキは重量があって、ストラップはしっかりかかっている事を確認したにも関わらず外れます。

恐らくストラップピンをかける穴が弱っていたのだろうと思いますが、お気に入りは使い続けたいですから、何らかの対応が必要になります。

いつもネック折れ修理をお返しする際に「倒さないよう気を付けて下さいね。」と伝えますが、ストラップにも注意が必要だなと改めて感じます。

ネックリセット / Martin OOO-18


 

ネックを外す為に熱を利用して接着剤を緩ませて外します。

以前は蒸気を使っていましたが、その場合確実にジョイントのポケット(あり継ぎの空間)に蒸気を送りこまなければなりません。

現在は、ヒートスティックと言う棒全体を熱せられるものを差し込んで温めますので、突っ込めば温まるのですが、やはりポケット部に熱源があった方が効率は良いです。

ですので、ヒートスティックであっても、ジョイントのポケットに貫通するように穴をあけます。

いろんなメーカーがこのダブテールジョイントを採用していますが各メーカー特徴があり、慣れないメーカーでは、ジョイントのポケットがどこにあるか分からず何度も穴をあけ直す事もあります。

画像のジョイント部ネック側、ボディ側両方に2本ずつ溝が付いています。

そこがジョイントのポケット、(隙間)です。

そこに半田ごてに付いた棒(ヒートスティック)が差し込まれます。


ネックリセットをする事で最大の問題はクリアしますが、より良い調整をする為には、リフレットが必要になる場合が多いです。


ナットも合わせて作り直します。


サドルの高さは好みが分かれますが、高すぎず低くない高さが理想ではあります。


ネックヒールの接地面はジョイントの強度にはあまり重要ではありませんが、隙間なくぴたっとついていた方が見た目は良いです。


ジョイントの強度で重要なのは先ほどの画像にある、ダブテールジョイントとの継手です。


そのダブテールジョイントを接着する前に、テンションをかけてもヒールに隙間が出来ないかチェックしますが、いくらジョイントの精度が良くても弦を張りっぱなしにしても良いと言う訳ではありません。

 

 

ネックの角度が狂う原因はジョイントの精度が原因では無いので、ここに隙間が出来てしまうのは問題外です。

ジョイントの精度が甘いものは、一所懸命ネックのメンテナンスに気を配ってもいずれヒールが浮いてきてしまいます。

ヒールに隙間が出来てしまったものは、ネックを外して根本的な修理が必要になります。

リフレット(フレット交換) / Gibson B-25


過去に何度かすり合わせをしている為、ずいぶんと低いフレット。


更に弦が当たった跡が削れています。


エレキでは、フレットレスワンダーなんて言うのがありますが、こちらは違います。


後で欠けも直します。


指板調整が終わった状態ですが、まだ途中ではないか、と思う人もいると思いますが、これでいいんです。


フレットが乗る部分が調整出来れば、それ以上は削り過ぎになってしまいます。


指板が凹んでいる部分を埋めてあるものを時折見ますが、やらない方が見た目は良いです。


弾いていて気になると言う人に会ったことはありませんので、埋める必要は無しです。

 


第1フレットの高さに合わせてナットも作り直します。


一応ハカランダで破片を作ってみましたが、色が少し薄いですがいいでしょう。


サウンドホールの削れは、ご友人に「直さないとだめ。」と言われたようですが、私が「ご当人が気にならないのであればこれもカッコよい。」と申しまして、そのままです。

 

フレット交換(リフレット)/ Martin OOO-42


非常に多い質問の一つに、「フレットは、まだ大丈夫ですか。」があります。

 


どのパーツにおいても、使えるか否かはそれぞれ感じ方に差がある為、判断はオーナーがすれば良いのです。

凄く減っても交換しない人、ちょっと減ったら交換する人、区々です。


私が弾き難く感じたり、ビリつきが気になってもオーナーが問題を感じなければ交換する必要は無いのです。


現状より良くしたい時に、どうすれば良いか考えればよいのです。

「もうちょっと弾き易くしたい。」や「音がつまり気味なのを改善したい。」等々。

 

 

車や機械は点検整備をしなければ、故障して危険があったり、周辺に迷惑をかけてしまいかねないので、それはプロが交換を勧めれば交換した方が良いのですが、楽器の場合は全く自由です。

楽器屋に「これは、~…しなきゃダメですよ~。」等と言われたという話をよく聞きますが、持ち主が問題無ければ「~しなきゃダメ」等と言う事は絶対にありません。

 

 


 

この辺りは楽器に対するの考え方の違いですが、私の場合は「無理に修理しなくても…」と言うスタンスです。

修理屋なのに。

力木は剥がれていない方が私は音が良く感じますが、力木が剥がれていた方がボディ全体が響いて良く感じる、と言う人もいます。

トップ(表板、サウンドボード)が効率良く振動するにはサイドバックがしっかりしている事が条件ですが、バックの力木が剥がれていた方が弾いていて気持ちよく感じる場合もあるようです。

楽器の場合は、通り一遍等に「こう。」と決める事は、なかなか難しいと思っています。