山口君のページ

力木剥がれ /Martin D-28

スタッフの山口です。

今回は写真が少ないのでほぼ文章で力木(ブレイシング)剥がれ修理を紹介します。

バック側の力木が剥がれていますね。力木剥がれはボディをコンコンっと叩いた音で剥がれてるか診断します。大事なギターを持ち込んでいきなりコンコンっと叩かれても驚かないでくださいね。お医者さんに例えるなら聴診器を当てているようなもの。8割方、叩いた時の音でどの辺が剥がれているかどうかが分かります。

おおよその場所が把握できたら写真のようにヘラを差し込みます。軽傷の場合はなぜか端の方から剥がれていることの方が多いです。このまま放っておくと中心部まで剥がれていき、最終的には何かの拍子でカランコロンと完全に外れてしまいます。

そうなる前に修理してあげればOK。お客さんが気がつきにくい部分なので別の修理で持ってこられた場合もなるべく力木チェックは行っています。

バック側の場合は専用のターンバックルで突っ張って接着します(外側では大きなカムクランプがサポートしています)。

写真をよく見るとバックのローズウッドが湿っています。これは接着面から溢れてきた接着剤を拭き取った跡。たまに盛大にニカワだらけになっているギターを見かけますが、、、ちゃんとすぐに拭いてあげれば修理した痕跡は残りません。

 

力木の他にもバインディングが剥がれていましたのでこちらも修理。

Martinのバインディング剥がれはMartinクラックのような「名物」としてそろそろ名前が付いてもおかしくありません。


 

マグネティックPUを戻して完成です。

弟子入り間もない頃、修理前のギターを「このギター鳴りますねー!」という僕に「たぶん力木が剥がれてて音が暴れてるだけだよ」と皆川氏。力木を調べてみたら見事に5-6ヶ所も剥がれていました。そして修理後に弾いてみたらなるほど!音量は修理前より若干小さく感じるものの、しっかりと粒立ちの良い上品な音に変わっていて感嘆しました。力木が剥がれまくってガビンガビンの音が良く思えても、弾いている本人に鳴ってる感があるだけであって、聞いている側が良い音と感じるかどうかはまた別の話。そして何より力木剥がれを放置してしまうとギターの強度も落ちてしまいますので、なるべく軽傷のうちに直してあげましょう。

最後に、今回のようなギター内部の修理をする場合、中の埃や塵は集塵機とエアコンプレッサーで綺麗に取り除いてから行います。今回のギターはとても綺麗でしたが、たまに驚く程いろんな類いの塵や埃が溜まっているギターがあります。音に分かるほどの影響はないかも知れませんが、、、剥がれはじめた力木の隙間に埃が付着してしまっていたり、匂いが篭ってたり、ピックを中に落としてひっくり返して取ろうとしたら埃が顔に降ってきたり、と百害あって一利なし。たまにギターの内部も気にかけてあげてくださいね。

 

そういう僕は今日、自分のメインギターの弦交換を1年ぶりにしました(ノ_<)もう少し自分のギターも気にかけてあげようと思ったのであります。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

 

ピックガード交換 / Martin D-76


スタッフの山口です。

今日の修理はピックガード交換です。剥がれてきたり浮いてきたり様々なトラブルが起きるパーツの一つです。


反る力によって起きるトップ割れ、通称「マーチンクラック」という言葉が有名ですね。確かにピックガード交換修理は8〜9割がMartinな気がします。

今回は幸いピックガードの粘着力が弱くトップ割れは起きていません。剥がすのもすんなりです。


原材料高騰対策とSDGsの観点から、少しでも効率よく無駄の出ないように切り出します。ベッコウ柄などの場合は好みの部分を狙って切り出すのでこうはできません。


サイズを見ながら面取りし、いい大きさになったら水研ぎします。傷が消えるまでバフでも磨きます。


師匠のOKが出たら両面テープを貼り付けて形に合わせてカット。その後テープがはみ出ないようにサンドペーパーをうまく使って余分なテープを削いでいきます。実はここら辺の工程が一番緊張します。手が滑ってしまったら目も当てられません。切り出しから再出発になってしまいます。


貼り付けは一発勝負。あの手この手で位置を決める目印を。経験上、大体2〜3点を押さえておけば大丈夫。


塵や空気が入らないようにします。せっかくお金をかけてピックガードを新調したのに凸凹してたらガッカリしますよね。トップ側もできる限り平らに仕上げてから貼ります。


ここからは番外編。ヘッド磨きに移ります。長年の脂や埃、場合によってはヤニなどの汚れがヘッドには付着します。弦交換の時はたくさん触れるところですが、ボディと違いペグもあるので拭きにくいところですね。


なるべくラッカーの塗膜が薄くならないよう、変性しないよう、皆川氏厳選のワックスで磨きます。コンパウンドは入っていません。企業秘密ですが聞けば教えてくれるかもしれません(^ ^)


ほら、ピカピカです。


背面もゴシゴシしましょう。


ラッカー特有の輝きを放っていますね。


傷や打痕がないのでいい感じですね。


新品時のようです。このギターはまた特別綺麗ですね。


ピックガードも新しくなりまさにミンク品と言えるビンテージギターです。


 

アメリカ建国200周年記念モデルのD-76。1976年に1776本作られたそうです。インレイの星は建国時の13州を表しているとか。言わずもがな、ナイスギターです。

話は変わりますが、SDGsという言葉、楽器業界には耳の痛い言葉だと思います。ハカランダを始め世界中のローズウッド系樹種やマホガニー系樹種などの伐採による環境破壊や絶滅危惧種の増加に大きく関わってきたからです。少しずつ持続可能なカタチを目指す動きもありますが、まだまだが課題が多いのも事実です。どんな楽器も使い捨てにせず、メンテナンスやリペアをして長く使い続けることが一番簡単に貢献できる方法ではないかと思います。メーカーも今までの仕様、材料に拘らず新しい素材の開発をさらに進めて「古き良きものを大切に、また一方でこれからは新しい技術と素材でさらにいいものを目指す」これが楽器業界にとっての健全な姿になっていくのかな、と思います。

日本は林業の衰退から逆に杉や檜が生え過ぎちゃって花粉症が増えているくらいなので、その辺の樹種を最新の技術で楽器に向く材料にできたら一石二鳥なのになぁ、、と随分前から考えたりしてます。YAMAHAあたりはもう着手しているかも?国内楽器メーカーに期待したいですね。

全然話が変わってしまいましたが、、今回も最後までありがとうございました。

 

フレット交換 / Gibson Humming Bird メープルサンバースト


スタッフの山口です。

今回はフレット交換を見ていこうと思います。通常Humming  birdはネックバインディングがありますが、今回のHBはありません。Limited Editionなのでイレギュラーですね。


突板を破損しないようにナットを外します。


ナットが写真のように外せたら一安心です。

ナットは消耗品ですので外そうと思えば外せるけれど、弦交換ぐらいでは外れないように、絶妙な接着加減が必要とされます。

たまにガチガチに接着されてしまっている残念な場合は鋸で切れ目を入れて破壊しなくてはなりません。


指板修正時の画像を撮り忘れました。指板修正後はフレットを打ち、カットしてすり合わせます。

フレットの種類はご相談ください。実際に見て決めていただいても大丈夫です。


今回は一番よく使われる型番です。

弾いていてチクっとしないようにフレットの角を丸めます。一本一本丁寧に時間をかけます。とても大事な工程なのです。


フレット磨きは番手を3段階くらい上げながら最後はスチールウールで程よいピカピカ加減で仕上げます。


新品のフレットは気持ちがいいもんです。


基本的にナットは1フレットの高さに合わせて作り直します。元のナットを使われたい場合は底上げで対応もできます。


ナットも材料のご指定は可能ですが、基本的に象牙は新規でお造り致しません。動物愛護のためにも人工象牙と謳われるタスクにしましょう。

ご指定がない場合はお勧めである牛骨でお作りします。師匠の皆川も僕も牛骨が一番好きです。


ナットとサドル料金はフレット交換の金額に含まれますのでご安心ください。

牛骨以外の素材指定がある場合は追加料金が必要になります。


ナットが決まったら弦高を決められますのでサドルを作って行きましょう。

 


良い感じです。


指板もフレットも綺麗になって気持ちがいいです。


ピンボケしてますがフレットの端はなるべく立たせたいと思って仕上げています。斜めに落とし過ぎているのは弦落ちしやすいし格好が悪いです。


完成。ピックガードにハチドリが居ないのにハミングバードとは、、、なんとなく寂しい気がしてしまいます。

フレット交換をするタイミングは人それぞれです。弾いていて気にならないのであればまだ大丈夫です。

以前、自分のギターで長持ちさせようと高さのあるフレットに打ち替えたのですが高過ぎて抑えづらく、結局すり合わせして低くしたことがあります。

サドルもそうですがフレットも「高ければいい」というわけではありません。答えは「オーナーの好み次第」なのです。

今回も最後までありがとうございました。

ブックマッチ離れ&力木剥がれ / YAMAKI


スタッフの山口です。

今回はブックマッチ離れ(トップ割れ)と力木剥がれを見ていきます。写真のブックマッチ部分に隙間ができてしまっていますね。乾燥し木が縮む事で古くなった接着面がその縮む力(← →)に耐えられなくなったのでしょう。


このような割れは大抵力木も剥がれています。トップ板の骨となる力木が剥がれることでトップ板が自由気ままに動きやすくなってしまうのです。

薄い木の箱であるアコースティックギターにとって、力木は強度維持には欠かせない重要なパーツなのです。


今回はブリッジも跨いで隙間ができていますのでこいつも一旦剥がします。


自作の専用ジグを左右に当ててクランプ。隙間がくっつくことを確認できたら接着します。


一日経過したらご覧の通りピッタリとくっつきました♪


ブリッジを挟んでボトム側もOK。

ちなみに割れた所を気にして触っていると汚れが隙間に入り込んでしまい接着後も跡が残ります。特にトップは目立ちますので、割れに気が付いた時はなるべく触らずに修理屋さんへ行きましょう。


トップ板の次は力木修理。バック側は問題なかったのですが、トップ側は至る所が剥がれていましたので、、、


あっち、こっち、


あ、ここも、あそこも、、


こんな所も、、、と言った感じです。

サウンドホールから一度に掛けられるクランプの数は限りがありますので、今回は4日間かけて剥がれている全箇所を接着しました。

力木修理は簡単そうで意外と時間も手間もかかる修理の一つなのです。


力木のサポートを無事に得られましたのでブリッジを戻しましょう。


理論上はブリッジもブックマッチ部の強い味方になります。


多分付けなくても大丈夫だと思いますが、念には念を、ということでクリートと呼ばれる補強も付けました。

「ここを修理したよー」という後世へのメッセージ的な意味合いもある気がします。


ペグやヘッドが腐食していましたのでクリーニングします。


ペグを外すことでヘッドのワックス掛けも捗ってピカピカです♪


縦ロゴも縦ロゴらしく凛々しく見えるようになりましたね。


こちらのYAMAKIが当時のMartinコピーだと考えると、シャーラー製ペグ=80年代製でしょうか。


弦を張ったら完成。


長年隙間が空いていたので跡が残りましたがブックマッチ部分は意外と気になりません。


力木剥がれも直りましたので音も引き締まっていい感じです。


国産オールドギター、当時はMartinのコピーモデルという位置付けだと思いますが、最近はジャパンビンテージと言われて人気もありますね。YAMAKIも人気があるメーカーの一つ。


バックはハカランダらしい豪快な木目となっています。この辺の年代は思い入れのある人も多く、修理に持ち込まれる国産オールドギターも増えてきました。ギターに限らず、今やMade in Japanは立派なブランド力がありますので見直されるのは当然のことのように思います。

どんなギターであれ、一途に長年同じギターを使い続ける人はとてもカッコイイです。

今回も最後までご覧いただきありがとうございます。

 

 

ロッド交換 / Gibson B-25 1960s


スタッフの山口です。

今回はロッド交換です。捻じ切れてしまっている悲惨な写真からスタート。修理屋としては腕まくりをしてしまうような画像ですがオーナーからしたら青ざめてしまう画像ですね。


ラッカー塗装でもGibsonは塗膜が厚いので指板とネックの境目をナイフでなぞっておきます。こうすることで指板を剥がす際に少しでも塗装の剥離を抑えられます。


指板をなるべく元の位置に戻せるようにダボを数カ所仕込んでからネックアイロンで温めて接着剤(ニカワやタイトボンド)を軟化させます。

 


ネック側の木目をよく見て順目の方向でヘラを入れて剥がします。時間をかけて綺麗に剥がれました。


埋木をノミで取り除いてその下に隠れているロッドを掘り当てましょう。


サビついたロッドのお目見えです。錆びていて癒着しているので慎重に。錆びているのは木が呼吸している証拠。


溝に残った錆や塵を取り除きます。


この鉄芯のトラディショナルなアジャスタブルロッドはGibsonが発明したモノです。


ネックの強度増し+アジャスト効果のある一石二鳥なナイスアイデア、今ではほとんどのメーカーで採用されていますね。

ちなみにMartinがアジャストできるロッドになったのは1985年製からと言われています。それより前の個体は単なる補強ロッドで調整(アジャスト)はできません。


適した長さに切断したら切込ダイスでナット用の溝を作ります。

ちょうど良いところでナットが閉まるように何度が長さを微調整します。この写真のようではまだ頭が出過ぎです。


ロッドエンドは60年代からここに収まります。カタカタと動かぬようエポキシ樹脂を隙間に充填します。


溝とロッドのしなりに合わせて作製した埋木でロッドを仕込みます。


埋木をネック上面を平らにしたら指板を戻します。


指板側とネック側にたっぷりのタイトボンド(またはニカワ)を付けて戻します。溢れ出るタイトボンドをせっせと拭き取ります。

指板がズレずにうまく戻れば塗装修正は不要ですがどうしても段差ができてしまう場合は平らにして塗装修正を施します。その後フレットをすり合わせたら完成。前述したナットからの頭の出具合もOK。

アジャスタブルロッドのアジャストとは「調整」という意味です。たまにネックの不具合を「直す」という感覚でロッドを触ってしまう人がいますが、ロッドはあくまで微調整の役割。調整のレベルを超えたネック不良はロッドでは無力。無理になんとかしようとすると冒頭の画像のようになってしまいますので注意が必要です。

またアジャスタブルロッドは個体によって動き方も微妙に違います。反りを治そうとしても変にねじれてしまう場合もあったり、逆にロッドの調整だけで驚くほど改善する場合もあります。「ネックがおかしいな」と感じたら調整も含めまずはお気軽にご相談ください。

今回も最後までありがとうございました。

 

ブリッジ交換&ネックリセット / Gibson J-50 1960s


スタッフの山口です。

前回と同じギターの修理、今回はブリッジ交換とネックリセットのコンボです。画像も多いのでサクサク行きましょう!

・・・

その前に謎のゴツすぎるブリッジプレートを発見してしまい、、、。急遽こちらも対応することになりました。


ブリッジプレート交換は場所が場所だけに苦労します。見づらいですがブリッジプレートを温める専用工具を使っています(使わない時もある)。ストーブにのせて温めて熱熱の状態で固定しますが、サウンドホールに当たらないように中に入れる時は「電流イライラ棒」を思い出します。


多少強引さが必要になることもあります。

必死だったためこの後の画像はありませんが、なんとかして分厚いのもその下の本来のプレートも剥がしました。

あきらめたらそこで試合終了デス。


ブリッジプレートを剥がしたら今度はヘンテコな形になっているブリッジ。こちらも温めてナイフを入れていきます。


そこそこ綺麗に剥がれました。


インディアンローズウッドですがなるべく似た色味を選択します。良い感じになりそうです。


まずはボール盤で元のブリッジの穴を写します。


少し大きめにカット。


穴を基準に、ある程度大きさを決めます。それでもまだ大きめです。


後はビンテージGibsonぽく成型していきます。腕の見せ所。


この辺で一度「師匠チェック」が入ります。


トップの膨らみに底面を合わせ、


ピッタリ底面が密着したらいざ接着。


ブリッジがついたらブリッジプレートも新しくしていきましょう。大きさ、形、ヨシ!


穴も綺麗に開きました。


Gibson特有のボルトナットで固定し、白蝶貝でインレイを入れます。


サドル溝はまだ掘りません。ネックリセットをしてから正確な弦長を測定する為です。


満を持してお馴染みのネックリセット。

 


そして恒例の記念撮影。


60年代初頭はまだロッドエンドがここにあるんですね!60年代中盤以降のロッドエンドはここに顔を出しません。こっちのロッドの方が仕込むのに手間がかかると思います。


ヒールを削った角度分、指板を足して


いざ接着。


ダブテイルジョイントを温める為の穴を塞ぎ、フレットを戻し、すり合わせます。


ブリッジプレートも新しくなり、


 ブリッジも新しくなり、

ネックリセットでサドルの出しろもバッチリ。


センターズレはご法度です。


 

Gibsonでも特に人気のある年代のナイスギターです。最近は値札をぶら下げるなり、すぐに売れてしまうようで価格も上がる一方。ギターに限らずですが、「ビンテージ」と言われるモノは基本的に数が増えることはありませんので、リーマンショックのような事態や大恐慌にでもならない限り中々値段が下がりません。ワインは飲んでしまったら無くなってしまいますが、ギターは弾いてもフレットが減るくらいですし、実用性のあるビンテージ楽器は資産としてもとても優秀だと僕は思います。それに気づいた人たちが買いに走ってるのでしょうか、、本当に手が届きにくい(届かない!?)ものになってしまいました。

それでもアコギはエレキギターに比べたらまだまだお買い得感がありますので僕も引き続き目を光らせてアンテナを張っていたいと思います( ̄∀ ̄)

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

Gibson 拡張されたロッド調整部の掘り込み修正


スタッフの山口です。

今回は珍しい修理を。写真を見るとロッドを調整する彫り込みが大きく広がっているのが分かりますでしょうか。ヘッド裏まで貫通しかけているために白いパテで応急処置が施してあります。今回はこの拡張された掘り込みを本来の大きさに戻すミッションです。


0.5mm厚のマホガニーの薄板を掘り込みのアールに合わせ、それを重ねて接着していきます。木工の修理で同じ素材の薄板をミルフィーユ状に重ねていく方法は度々用いられます。


ちなみにロッド頭に付いてるのは接着剤が付かないようにただ適当なキャップを被せているだけです。


今回は掘り込まれた体積が前後で均等ではないので、まずは根元部分に5枚、、


その後に先端側に4枚重ねて足しました。ロッドカバーも大きめの別のものに付け替えられていた為ビス穴もなんか変なところにあいてますね。


ミルフィーユをヤスリで削り落としそれっぽくタッチアップするとこんな感じになります。


近くでよーく見ると継ぎ足し部の境目が分かります、、がどうせロッドカバーで隠れるのでわざわざリフィニッシュせず筆のタッチアップとラッカーを盛って磨くだけでOK。そしてビス穴も本来の位置に戻しました。

ナットも戻して問題なく調整できるか確認。見た目も違和感なく我ながら上出来です♪

本来の大きさのロッドカバーをつけて完成。

普段は見えない部分ですがネックの強度にも関係してきますので必要な修理と言えます。ただ修理し終えてから思ったのですが、、なぜ掘り込みは拡大されたのでしょうか、、。ロッドを締め切っても奥に掘り込むのなら分かるのですが、、。うーん、謎。

こんな「どうしてこうなった!?」みたいなギター、たまにありますね。

なんとこんなナイスギターの修理でした。そして次回はこのギターのブリッジ作製と毎度お馴染みのネックリセットをお届けします( ´∀`)

今回もご覧いただきありがとうございました。

 

ネックリセット/ Martin C-1


スタッフの山口です。

今回もネックリセットです。得意先のショップさんからご依頼いただく修理の45%くらい(体感です)がこのネックリセット修理、ということで基本的にショップ担当の僕のブログの回はネックリセットが多いのです。どうかご容赦ください。

珍しく修理に取り掛かる前に弦高を測りました。6弦12フレットで4mmありますね。これではリンゴを握り潰せる握力の持ち主でも弾いていて疲れてしまいます。


いつも通り指板とトップ板の間にナイフを入れて引き離しますがそのために温めているところ。温めるためにLEDではなく消費電力の大きい100Wのハロゲン電球ですので昨今の電気代の値上げの影響をモロに食らっております。


ダブテイルジョイントも温めて分離します。100年近く前のギターですが今まで何回この姿になったのでしょうか。0回かもしれないし3回かもしれません。

とりあえず恒例の記念撮影。


ジョイント部分に古いシムが貼り付いているので最低一回はネックリセットしている可能性が高いです。たぶん。


修正角度に比例して指板を足してあげます。そうしないとヘッド側から見た時にハイフレット(14フレット以降)がお辞儀してしまいます。


クランプで固定している画像。タイトボンドやニカワは最低一日以上圧着固定が鉄則です。


ギターがリフレッシュして喜んでいるような笑っているような顔に見えますね。

さあ、接着です。


ネックをつける前に何度も仕込み角度の加減を確認します。


左右のズレがないかも大切です。


ヒールを横から見てボディと隙間ができていないかも要注意ですね。


無事にネックがついたらフレットのすり合わせと調整、最後にクリーニングして完了です。


日本にアコギのネックリセットまで請け負っている工房はインターネットで検索しても数えられるくらいしかありません。そんな中でも当工房オーナーの皆川は今まで何百本とネックリセットをしてきた謂わば「プロのネックリセッター」。

そんな師匠から教わったネックリセットのノウハウはとても貴重で、自分は大変恵まれた環境にいるのだ、と思います。

感謝🙏

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

アジャスタブルサドル戻し Gibson J-45 BLK(1969)


スタッフの山口です。

60年代Gibsonといえばアジャスタブルサドルですが、ノーマルサドルに変更されていることがよくあります。ピックアップを仕込むため、単純に音の好みなど理由は様々です。今回はショップの依頼ですので「ノーマルサドルからアジャスタブルサドルに戻した方が早く売れるから」という理由でしょうか。


初めにブリッジを剥がす必要がありますが、その前にこの厚型ピックガードを剥がします。これがあるとブリッジを剥がすのに大変邪魔になります。

この厚型ピックガードはいつも修理の邪魔をしてくるのです。


そしていつもこのベタベタ取りに苦労するのです。


ピックガードを退けたおかげでいい角度でナイフを入れられました。裏側から見ると本来のアジャスタブルサドルの溝が埋められているのが分かりやすいですね。


埋木が甘かったので10分ほどで本来の姿に戻りました。それに比べてピックガードのベタベタ取りは1時間近くかかりました、、、。修理箇所の近くのパーツで苦労するのは修理あるあるかもしれません。


アジャスタブルサドルがちゃんと収まるのを確認し、接着面をキレイ且つ少し荒らしてブリッジを接着します。


いつかまた誰かが苦労するであろうベタベタになるであろう両面テープでピックガードを戻します。両面テープは一発勝負。位置がズレないように空気が入らないように慎重に貼り付けます。


アッパーベリーブリッジの方がGibsonらしいですが、このベリーブリッジのアジャスタブルサドルタイプは過渡期の1968年後半〜1969年のわずか1年〜2年弱しかありませんのでこちらの方が希少性が高いとも言えます。


1960年〜1970年のGibsonは過渡期。それこそがオールドGibsonの魅力でもある、と言う人も多いのではないでしょうか。

 


 

当時はきっと色々な事情があって都度仕様変更がされていったのだと思います。単純に構造的改善を求めた結果だったり、経済的な事情であったり。きっと今現在も進化し続けているのだと思いますが、結局売れ筋は60年代までのリイシューモデルばかりで「古き良きGibson」なんて言われたりするのはメーカーとしては心苦しい部分もあるかもしれません。

ちなみに師匠の皆川とよくリイシューモデルがほとんど無い70年代のGibsonは過小評価され過ぎているという話をします。ネットで調べると酷い言われ方をされている記事や知恵袋が散見されますが、それらに囚われずに一度心をフラットにして弾いてみればとても良いギターだったりします。

自分が弾きやすくて音が好きで弾いていて楽しいのであれば、たとえそれが10,000円のギターであってもベストギター、「運命の相手」なのだと思います。なるべく情報やウンチクやアレコレなどに囚われずにギターと向き合っていきたいですね。

でも確かに古いギターは「おおー!」となるものが多いのも事実です。それはきっと木製楽器の宿命かもしれません。

ベリーブリッジとアッパーベリーブリッジのことを考えていたら話が全然違う方向に行ってしまいましたが、、今回も最後までありがとうございました。

 

トップ矯正&ブリッジ交換 / Gibson B-25


スタッフの山口です。

今回はGibson B-25のトップ矯正とブリッジ交換を画像多めで淡々と見ていきたいと思います。画像では分かりづらいですがブリッジ前方が凹んでしまっています。


これまた画像だと分かりづらいですがこの年代特有のプラスティックブリッジが変形しています。今回はエボニーでそれっぽく作り直します。


トップ板が変形しているということはブリッジプレートも変形していますので交換が必要になるのですが、このブリッジプレートを剥がすのが実はメチャクチャ大変な作業です。


プラスティックブリッジは接着剤ではなくボルトでついているだけですのではずのは簡単♪


トップを平らに矯正するためには厚型のピックガードも外します。


このベッタベタの糊を除去する作業も実は大変です。

そして地味な作業。あの手この手でとにかく除去しなければいけません。


苦労してブリッジプレートも外せました。上に置いてみるとトップ板の凹みと同じ形で変形しているのが分かりますね。これはもう御役御免。

左の分厚いのは新しいブリッジプレートを接着するのとトップを矯正するためのジグです。


分厚いアクリル板で自作した矯正ジグで矯正とブリッジプレート交換を同時に行います。

 


クランプを少しずつ強めて行きます。


平らになったら白熱球と湿った布切れでギター内部の湿度と温度を高めて行きます。


いい感じにトップ板が温かくなったら白熱球は消して数日間寝かせます。ありがたいことに当工房の棚は常にこんな感じで入院患者(ギター)が絶えません。

感謝。


すっかり乾燥し数日間寝かせたことですっかり平らに。


矯正前にこうして撮っておくべきでした。


新しいブリッジプレートがしっかりエスコートしてくれているので安心です。


さて次はブリッジ作製。

プラスティックブリッジっぽくエボニーで。


墨入れは多少大きめにしておきます。


ベルトサンダーである程度まで成形します。


細かいところまで似せてあげたい一心でかんばります。


穴の位置は決まっていますのでピッタリサイズを合わせるのも気を使います。


手作業でアジャスタブルサドルの溝切り。


ブリッジプレートで塞がっているので当て木をして、


穴あけ。


新ブリッジプレートは敢えて1mmほど大きめです。


接着面はラッカーを剥がします。マスキングしてサンドペーパーで荒らします。


いざ接着です。新旧並べてパシャリ。なんとなくプラスティックに見えますでしょうか。


一晩クランプをして完了です。


新しいブリッジプレートはアジャスタブルサドルのボルトだけになりスッキリとしました。


ステージ上で弾いていればほぼほぼ気付かれないと思います。音もちゃんとビンテージGibsonです♪

 

プラスティックブリッジは60年代前半しか作られていませんので貴重といえば貴重ですが、何かしらの問題が多いためにGibson社も復活させないのではないかと思います。

なので割れたり変形していて演奏に問題がある場合は今回のような修理にならざるを得ません。もし今現在綺麗な状態もしくは演奏上問題ないのであれば保管状態に気をつけて、すなわち演奏していないときは弦を緩めてあげる事をお勧めします。しつこいようですが・・・( ´ ▽ ` )ノ

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。