修理実績
ネックリセット / Martin D-18
ネックをリセットします。
前回とは打って変わって、全く通常通りの外し作業です。
ネックリセットも、今となっては何本やったか数える事も不可能になるほどやりましたが、そうは言っても大変な修理には変わりません。
心配性であがり症の私は、当然ながら今でも、すんごい緊張感の元、勇気を持って携わっているのです。
前回ちょっと触れた,十数年前のGuildは、まともに外す事が出来なかったですし、エクステンションが付いたJ-200 では普通に抜ける構造ではなかったり、どうがんばっても、外れない、外せない場合が何度かありましたが、そこでやめて戻すことは出来ないので、方法を変えて外す事を考えなくてはなりません。
「いい加減慣れたでしょ。」と言われれば、流石に修理屋家業ぅん十年、慣れたと言えばそうかもしれませんが、慣れてこれです。15フレットに穴を開けるときにやっと最近ドキドキしなくなったかもしれません。
人様の大事な物、本当はこんな事したくないのですが、なんで修理屋になったろうと思う時、ビビリだから丁度いいのかもしれないと思っています。
であれば、販売店や製作家になればよかったかと言えば、それはそれで苦労があるはずですから、隣の芝は青く見えるものなのでしょう。
お客様は神様では無いので、お互いが尊重しあうものだと思っていますが、ショップではお客を半神位の扱いしなければならない場合もあるでしょうし。
製作家だって、私が羨ましいと思うような人は一握りだと思いますし。
やはり落ち着くところに落ち着いているのだと思います。
ネックリセット / Marin D-28
ネックの角度が狂ったら、外して角度を修正してリセットしなければなりません。
古いギターであれば過去に、物によっては複数回ネックをリセットしてあるものも少なくありません。
修理する際は、今後また同じ様な修理が必用になった場合は、再度外す事も考えた接着剤を使わなくてはなりませんが、極稀に ”外れちゃこまります!” と間違えた接着をしてあるものに当たる事があります。
アコースティックギターは、接着で組立ててありますが、ネックジョイントに関しては接着で強度を保っているのではなく、テンションが掛かってもヒールが起きない様に組み込む精度で保っています。
ジョイントが緩んで角度が狂う場合もありますが、大体はボディの歪みが原因で角度が狂いますので、”簡単に外れないけど、はずせる様に” 付けなくてはならないのです。
左のギターは、”かなり外し難いかもしれないけど、がんばれば外せると思う” 位の接着の仕方でした。
ダブテールの底と指板の接着面に付いている黒い接着剤は、エポキシ樹脂系の接着剤で接着力に頼らなければならない場合に使う接着材です。
この黒くて、カチンコチンの接着材は、Ovation GuitarのClassic のネックジョイントに使われていたものと全く同じ。
Ovation Classicのジョイントは、他のモデルとは違い、ボルトオンではない精度の悪いジョイントなので、これでガチガチに固めるしかなかったのだと思います。
スーパーシャローボディの場合は、ヒールが短い事もあり、これで固めてもジョイントがもたずヒールに隙間が開いてしまう物も少なくありませんでした。
フレット交換 / Gibson Southern Jumbo
サザンジャンボのリフレットです。
オールドギターの指板は、軽く調整する程度でリフレットできる物は多いと思いますが、時折、結構削らなければならない場合や過去に大分削られていて、もう少し削らなければならない場合に、指板のインレイが消えてしまう事を心配しなければいけない時があります。
それなりに古い貴重なものですから、パーツも出来るだけ残った方が良いとは思いますが、そのものをどうするかはオーナー次第です。
出来るだけ状態やパーツを温存したい人。 使う道具(ギター)ですから余計なコストは掛けずに出来るだけ使いやすい状態に、パーツが無いとか、壊れたりすればその時は、それなりの物を付ければ良いではないか、と言う人。
(もちろん、しっかり修理して、オリジナルパーツも大事にする人も沢山いますが。)
アコースティックギターの場合は、エレキのオールドとは違い、「オリジナルパーツじゃないと、価値がさがっちゃう~。」なんていう人は少ないですから、修理する場合、多くは後者。
何故なら、ほとんどのアコースティックギターは修理しなければ、使い続けることが出来ないからです。
ストラトやレスポールの様にただ、板にネックがくっ付いているだけ(ちょっと言い方が乱暴。)のギターであれば丈夫ですし、パーツはビスで留まっていますので、修理暦が無いものもあり、オリジナルパーツの有無で価値にも差が出ると言う訳です。
私が楽器店のアルバイト時代、”1957年製Gibson LP Jr.”を17万円で委託に出していた時に、店員の先輩に「高けーよ。」って、つっこまれていた時代からオールドギターと付き合ってきたおじさんは、古いのは気を使って弾くものではない、と思ってしまいます。
やはり現在は、所有するだけでもいいのかな。 高いもん。
ピックアップ取り付け / Fishman
フィッシュマンP.Uのコードの付け根の部分、(赤っぽい本体と黒いコードの接点)は非常に弱くて扱いが荒いと断線し易いので、コードを穴に通す際、また逆に抜く際、手をギターの中に入れて作業する際、コードに指が掛かって引っ張ってしまわない様に気をつけて作業します。
中古のP.Uを流用して付け直すのはちょっとやり辛いと最近書きましたが、フィッシュマンの場合はこの部分がやられている事があるので、付け直した後にノイズが出てしまう事があります。
ネックリセット / Martin OOO-28
きっと始めからその方法でやっていたら、後から見た蒸気を使う方法は、「うあ。蒸気を使ってる!」などと思うのでしょうね。
いつもお返しする際に、1日終わりましたら、弦は緩める事をお奨めします。
緩める事が良いのか、張っておいた方が良いのか、少し緩めていたけど・・・等分からないと言う方がとても多いですが、緩めないとこのようにネックの角度が狂ったり、反ったり、ネックにしわ寄せが来なければ、ブリッジが剥がれたり、ブリッジがはがれなければ、トップが大きく歪んだり、どこかしらに不具合が出る可能性が高くなります。
弦は緩めて下さい。緩い分にはいくら緩くても大丈夫です。
不良率を出来るだけ下げたい、安いギターはすごく丈夫なギターもありますが、それは稀だったり、たまたまだったりします。
高いギターも平気なヤツもたまにあるみたいですが、それも稀なので、「張りっぱなしでよい説」の参考にしない方がよろしいかと存じます。
ネック折れ修理(塗装修正無し)/ made in indonesia
管理さえしっかりやっていれば、何も問題なく使用していけるのですが、こういった部分が安いギターの弱点のひとつかなと思います。
音の良し悪しは、個人の好み。
安いギターは、お金を掛けたら勿体無いと言っているのではなく、上位機種であっても、演奏する道具として直して大切にするが、安く上がるのであればその方が良いと言う人が多いと言う事です。
もちろん、思い入れや、精神衛生上出来るだけきれいに仕上げたい方もいますので、どちらをお奨めしている事でもありません。
あしからず。
ブリッジ修理(ピックアップ付き) / Takamine Guitar
タカミネギターのブリッジ剥がれです。
どのブランドもそうですが、普段やりなれないものは、何でもマーチンやギブソンと同じ様に考えて観察もせずに作業を始めてはいけません。
パーツの取り付け方には、各ブランドいろいろ工夫してある事があります。
特にピックアップ付きの場合、ブリッジに工夫がある事がよくあるので、外す際にP.Uを断線させたり、再セットし辛くなったりと、不具合が出ないよう、よく見て作業を進めます。
タカミネも何度もやってますが他と比べると、ほとんどやってないに等しいので、「きっと全部同じではないはず。」と用心しながら、進めます。
しっかりセット出来ましたら、調整して完了です。
修理する上で、接着材を何を使うか、人によってはタイトボンド一本やりだったり、ニカワだったり、いろいろ使ったりと、それぞれです。
ブリッジの接着材を考える場合は、タイトボンドで強度は十分なのかと言う事、このギターを20年後にブリッジ以外もしくはブリッジの修理でブリッジをはがす可能性があるのか否か、等考えて決めます。
このタカミネとオベイションは、1番最初にエレアコと言う物を真剣に考えたメーカーかなと思っています。
勿論、アリアやヤマハもよかったですが、オベイションギターの母国アメリカの、カマンミュージックコーポレーションはオベイションと同時にタカミネも代理店として取り扱っていました。
ですので、リッチーサンボラはオベイションでもジョン.ボンジョビはタカミネを使っていました。(画像のタカミネを見て 思い出してしまいました。)
ピックアップ取り付け / Highlander

最近はめっきり、付ける人がいなくなった、ハイランダー、昔は良いピックアップ代表と言う感じで流行りましたが。
現在ではもっと安くて、パフォーマンスがよいものがいくつもありますし、ハイランダーは取り付けが面倒なイメージ+バランス出しが非常に難しかったイメージがあるから他社に抜かれたのかな。
今回は、このクセの付いた中古をつけたいです。と言うんですから、いやんなっちゃいます。
ブリッジ交換 / ウクレレ
ローズウッド以外にもマホガニーも同じ様なことがあります。
本物のマホガニーは現在では、ホンジュラスマホガ二ー(Swietenia macrophylla アメリカンマホガニー)だけ。
キューバンマホガニーも枯渇してしまった本物のマホガニー。過去5世紀に渡り、無差別な過剰伐採によって現在は資源としては見ることはなく、古い家具なのでしか見ることはないらしいです。
マホガニーの名が付く物は他にもありますが、仮に人間に置き換えてみると、外国の人から見れば「あれは、ファミリーに違いない。」と思われても、当人同士は言葉も通じず、
「君、誰?」と言う、可能性としては、大昔、母国を出て行ったひーじいさんの、じいさんさんの子孫?くらい遠いのでは。(と、想像しています。)
様々な業界でも、都合よく呼び名をつけている物も沢山あるのではないかと想像してしまいますが、でもそうしないとコスト的に新しい物を作り続ける事が出来なくなってしまいますから、時代時代で良いものを見極めて行く事が大事なのかもしれないですね。