山口君のページ

ネックリセット&リフレット / Gibson Humming Bird


スタッフの山口です。

今回はネックリセット&リフレットのゴールデンコンボです。長いスケールを当てている写真からもわかるように12フレット上に隙間ができています。

費用もかかりますがその分、オーナー様の満足度も高い修理のコンボ。ちなみに同時に行う場合は工程上、手間も少し省けるので別々で行う場合の料金よりも1万円程お安くなります。

 

 


ネックの元起きも反りも併発しており、写真でも大きく変形しているのがわかると思います。


指板が浮き上がって見えるのは長年の弦の張力で角度が狂い、ネックが起き上がってくの字になっているからそう見えるのです。

このアングルの写真でも見て分かる=相当な重症です。


トップから指板を剥がしてから


ダブテイルジョイントに熱を加えます。


格闘の末、ノックダウン。


勝利の記念撮影。

ネックをトラブルなく外すことができるとホッとします。Gibson、Martinはワンピースネックが当たり前ですが、そうじゃない場合はつなぎの接着部分も温められて分離してしまうこともあります。

 


シリアルが消えていないことからこの個体は初ネックリセットと思われます。


ネックの角度を適正に調整したらシムを製作。ダブテイルジョイントをグッと押し込んだ時の感覚と音で木工精度を把握しながら厚みやテーパー具合を微調整。

シム製作は実は手間と経験が必要とする重要な工程です。手でグッと押し込み、さらにクランプの良い塩梅の力加減でしっかりと強固に組み込めるのが理想的です。


いざ接着。


無事に組込接着ができたらフレット交換。指板修正をしますのでアジャストロッドを少し緩めて締めシロに余裕を作っておきます。


フレット抜いて、、


こんな感じで。良い感じに。

指板に長年の押弦による凹みが見えます。あくまでもフレット溝の部分がしっかり修正できていればわざわざこの跡が消えるまで削りません。

この凹みは残ってた方がビンテージはかっこいいです。もちろん修正して消えちゃう時もあります。


いきなりここでフレット交換完了。

本当は何枚も画像ありますが割愛。


ナットも1フレットの高さに合わせて新調します。皆川ギター工房のリフレット料金には指板修正もナット交換も含まれています。

お店によっては別途費用がかかるケースも多々あるのでご注意ください。


アジャスタブルサドルも凛々しく見える高さに回復。


ギタリストなら一目でわかる弾きやすそうな低めの良い弦高です。


Gibsonはリセット時にヒールが少し飛び出ることがあります。


こうして見ると結構出てます。

しっかり奥まで組み込まれた証でもあります。


ロゴがギリギリのタイプ。この時代のハミングバードでは結構見られる気がします。


オリジナルのペグボタン、雰囲気がかっこいいです。


 

ハミングバードは初年度の1960年からロングスケールで作られていましたが、90年代に所謂リイシューされたものは現在に至るまでJ-45と同じギブソンスケール(628mm)になっています。 

60年代のリイシューとして再生産をスタートしたのになぜ大きくスケールを変えたのかわかりませんが、オリジナルのロングスケールはやはり迫力のある「ハミングバード」の音がします。現行品も名前は一緒ですが別物、という印象は拭えません。

一方、Doveは初年度から現在に至るまでちゃんとロングスケール。

何か理由があるとすればなんでしょう、、。

60年代前期のハミングバードは特に人気が高いので本当に手が届かない価格になってしまいました。先日70年代のハミングバードを修理しましたが、それもとてもナイスギターでした。どちらもピックガードに描かれたハチドリ(Humming Bird)が影響しているのかもしれません。信じるか信じないかは、、、今日も最後までありがとうございました。

 

 

トップ割れ / YAMAHA ダイナミックギター


スタッフの山口です。

お盆休みに里帰りをして押し入れの奥からこんなギターが出てきた、という方もいるかもしれません。

今回はそんなYAMAHAのダイナミックギターのトップ割れ修理です。


冒頭写真のようにすぐに蒸発する&塗装にも影響しないため、Zippoオイルを垂らして割れてる箇所や範囲を確認します。


今回は指板の両脇とくびれ部分に割れを確認しましたのでそこを修理します。


指板両脇は構造的に弦の張力がかかる場所ですので割れと同時に補強の意味も込めていつもよりしっかりとした割れどめを作りました。ブリッジプレートに使われることの多いメープルですね。


ボンドは表から注入しますが今回は古い割れ跡ということと、場所的にもあ限界があります。


そのためにも裏面からしっかりサポートしてあげるわけです。


しっかりとクランプをかけて一日置きます。


いい感じです。


「ここは修理してあるよー」というメッセージが込められています。


最後の我はくびれのそばです。ここは平面ですので「吸盤型接着剤送込器」が使えます。


たった今、命名しました「吸盤型接着剤送込器」は、空気圧を使ってタイトボンドを割れの奥まで送り込みます。


裏から見てこんな感じで白いボンドが出てくればOK。


元々がトップと指板の境目なのであまり気にならないかと思います。


もし跡が残っていても目立たなくしようと塗装修正や小細工をすると余計に目立ったり変な感じになったりします。

「なるべく余計なことはせずシンプルに」師匠から教えです♪


ダイナミックギター、今となっては時代を感じられるいいネーミングなのではないかと思います。そもそも「ダイナミック」という言葉が1960年代の日本では使われてなかった可能性もありますね。

きっと当時の日本ではまだ珍しい鉄弦のギターなのでガットに比べて「ダイナミック!」な音に感じられたYAMAHAの中堅社員が命名したのは容易に想像がつきます。

それに比べて今回僕が命名した「吸盤型接着剤送込器」は全くセンスも可能性も感じられないので取りやめようと思います。

今回も最後でありがとうございました。

 

 

ネックリセット&リフレット / Martin OOO-18


スタッフの山口です。

本日もネックリセットからスタートです。ブログの「山口くんのページ」カテゴリーを選択していただければネックリセットばかり出てくると思います。


もちろんネックリセット以外の修理もやらせていただいてますが、写真を撮り忘れてしまうことが多い中、なぜかネックリセットの時は撮り忘れない、という不思議な現象が起きています。


過去のブログでたくさん説明していますのでネックの取り外しサクッと。

恒例の記念撮影。


古い接着剤を取り除きます。今回は古傷が開いたようなのでもちろん修理してあげます。


接着剤を取り除いてきれいになっています。


前回の修理では割れ止めが無かったようなので、古傷を再接着と同時に山口式の割れ止めを設置。

この形の割れ止めはサウンドホール周りの場合、有効な手段ではないかと思います。


角度を修正し合体しました。


ダブテイルジョイント部に通じる穴を埋めます。


フレット交換は指板修正をしますのでナットは外します。今回の個体は象牙ナットですので再利用しようと思います。


紙の底上げがついていました。

きっと前回の時も象牙だから、と再利用するために底上げで対応したのでしょう。

ナットが底上げされていることは特に珍しいことではありません。


指板修正はただ真っ直ぐに削るだけではいけません。ネックの状態や調弦した時のネックの動き具合を考慮し、どの部分をどれだけ削り、逆にどこをなるべく削らないようにするのか、角度はどうか、指板のRはきれいに出ているか、インレイの貝の厚みはまだ余裕があるのかなどなど、あげたらキリがないほど気を使い、汗をかく工程です。


もし指板修正をただ真っ直ぐに削るだけだと、良いプレイアビリティを生み出せないことはもちろん、ハカランダなど貴重な指板材を必要以上に削り落としてしまうことになります。

指板修正は修正作業時のイメージ、そして自分の感覚がとても重要になります。


フレット準備中。


玄能でコンコン打ちます。力任せに打っても綺麗に打つことができません。

 


はみ出たフレットをカットします。


フレットのエッジを落とします。


フレットエッジを綺麗にまっすぐ落とすのも経験と感覚、頭の中でイメージしながら行うことが重要です。


約1時間ほどかけてフレットを磨いていきます。


フレットが完了し、ナットの底上げも完了。


いい感じです。


フレットのてっぺんと左右がビシッとまっすぐに揃っていればヨシ。フレットエッジが描く直線はプレーヤーはあまり気にしないところですが、いざそれを気にする人が見た時に「うむ」と言わせたいのです。

もちろんある程度の精度ならプレイアビリティに影響は出ませんが、、こういうところにこそ、こだわりが詰まっています。


15フレットに開けた穴はどこでしょう。ローズウッドは埋木跡がわかることが多いですが、今回のようにうまく馴染むとニヤケ顔になります。


弦高もいい感じになり、


サドルも狙い通りの高過ぎず低過ぎず。

 


ネック角度もフレットも見違えるように蘇りました♪


年相応の深みのある面構えですがとても綺麗なお顔ですね!


このルックスで音もナイスギターじゃない訳がありません。


 

ブラジリアンローズウッド特有の木目や質感はやっぱりいいですね!

噂ではブラジル政府は本当は少し前からハカランダを解禁したいとか。1969年のワシントン条約から既に50年以上経過している訳ですから可能性は充分にあるとは思いますが、「希少性」の観点からビンテージギター業界はそれを良く思わない可能性もあります。

ダイヤモンドは採掘量に対してわざと流通を制限して価値を押し上げることに成功してきた、という逸話がありますが、ハカランダを解禁するとしても出荷量をうまくコントロールすることができるのであれば価値の暴落はそうそう起こらないと思いますので、環境保護問題をクリアできるならぜひ解禁してほしいなと思います。

先日ハカランダブリッジ材がとうとう在庫がほぼなくなりまして、師匠皆川と色々当たって探したりしていましたが手に入らない状況が続いています。そんな中、質の良いココボロがネットに転がっていましたので「ブリッジ材の良さそうだ」となり、試しに仕入れてみました。質感はやはりハカランダとは違いますが、仕上がったブリッジは一見、ハカランダの要素はあっていい感じでした。(写真参照)

インディアンローズもまだストックがありますが、ブリッジ交換の際はココボロも承れますのでぜひご相談ください。

今回も最後までありがとうございました。

 

ネック折れ / Gibson J-45HCS ADJ


スタッフの山口です。

今回はネック折れ修理です。当工房で受け付ける頻度TOP3に入る修理ですが、Gibson(系含む)が多い印象です。ロッドの掘り込みがあって強度問題も関係してるとは思いますが、単純に使っている人が多いから、というのもあります。


本来は境目がない部分に塗装の吸い込みがありますので以前にも折って修理されているようです。

 


補強した部分は強度が増していますので、また倒したりぶつけたりした時はそのすぐ近くの無垢の部分が折れます。それは言い換えれば、二度と折れないように”過度な”補強をしても、結局補強されていないすぐ近くの部分が折れるのであまり意味がない、と言えます。もちろん再発しないための”適正な”補強には意味があります。

 


幸い前面は今回も無事なようです。


取り外したパーツは必ずケース内に一旦しまいます。その辺に置いておくと「あれ、これどのギターのだったっけ?と最悪な事態を招きます。そのためにもケースごとお預かり致します。


ここから先は企業秘密部分になりますのでサラッと。


基本的には補強が不要と判断した場合、特殊な接着剤で接着するのが皆川流です。もちろん状況に応じて補強を施す場合もありますが、9割方補強は不要です。


養生の紙に都議会議員選挙の告知が。。

明日は参議院議員選挙ですね。皆さんもギターは一旦置いて投票に行きましょう。

このままではギターを楽しむことすらできない社会になってしまうかもしれません。


あとは数日寝かせます。


ご存知の通り、塗装修正の有無で修理料金が変わります。演奏性と強度に差はありません。万が一、売ることになってもブラックライトなどを当てて修理歴がないかをチェックされますので査定額にもあまり影響はありません。


要するにオーナー様の気持ちで判断するだけです。できるだけ綺麗にしたいか気にせず受け入れるか。


逆光で暗いですが、、完了です。


暗いせいか、シルエットだけでもギブソンのヘッドシェイプの美しさがよくわかり、その完成度の高さを思い知ります。これだけでかっこいいなんてズルいです。


2000年前後のJ-45ですが、25年経って風格が出てきた感じですね!当時は新品のGibsonはビンテージと雰囲気が違う!と感じていましたが、昔からずっとオールラッカーで塗料事体もあまり変えていないのか、面白いことにどんどんビンテージらしい雰囲気が出てくるもので、最近は「ビンテージっぽい」風格の個体もチラホラ見かけるようになりました。20年後はさらにいい感じになっていると思います。


跡が潔く残っていてこれも風格というか勲章みたいなものとして愛し続けてほしいと願うばかりです。

今回も最後までありがとうございました。

ネックリセット / Martin D-18


スタッフの山口です。

今回もネックリセットです。ありがたいことに、一年中ネックリセットしています。

ネックリセットの経験値をこれだけ積める現場環境に自分の身を置かせてもらっていることに対して、感謝の気持ちを忘れてはいけません。


サドルが限界一歩手前、というところでしょうか。ブリッジプレートが削れちゃってることもあって、巻弦の太い部分がサドルに乗っちゃっています。音に影響するのは言うまでもなく、弦高も上がってしまいます。


リセット前に測定。

6弦側の弦高は普通ですが、、


1弦側はやはり少し高めですね。


抜きました。。

ブログを疎かにしてるのではなく、単純に写真の撮り忘れです。この辺は今までもたくさんアップしてるのでお許しください。


センターズレが起きないよう、また元々ズレている場合は修正しながらネック角度の調整をしていきます。

この時、ナット溝の位置が正常か確認するのも重要です。ナットは消耗品ですので必ずしも前回取付けられた(製作された)ナットがちゃんとしているとは限りません。

1弦と6弦の溝の位置がバラバラなら正しい位置を想定してセンターを見なければいけません。リセット後、ナットを交換したらセンターがズレてしまうのは本末転倒です。


センターズレの他、リセット後にサドルの背丈がバカ高くなってしまう、とか、ヒールに隙間ができてしまってなんか誤魔化す、なんてことは避けなければなりません。。

20年後、また他の誰かがネックリセットをした時に、「前回のネックリセットを施した職人は下手くそだな」なんて思われたら悔しいのです。


ダブテイルジョイント部の木工精度は最も重要です。∴ジョイントを強固にするためのシム製作は大事な作業工程。

接着剤頼みのダブテイルジョイントも年に何本かあります。すごく鳴っていて良いギターだなーと思った個体でも、意外にもネック外す時にジョイントがユルユルだった、なんてことも全然ありますのでそれはそれで興味深いのですが、、ジョイントがしっかりと精度が高い方がサウンドも良いに決まってます。


組込後はフレットを擦り合わせてナット調整し、その後弦高調整(サドル作製)を行います。


今回はその前にブリッジプレート修理を行いました。


元々ついていたコンデンサーマイクピックアップを元に戻します。


最後はサドルを作製して完成。このくらいのサドルがカッコいいです。

たまに「弦高はいずれまた高くなっちゃうんだから、サドルは高ければ高い方が良い」という自論を展開する人がいますが、決してそんなことはありません。ブリッジ割れや変形のトラブルはもちろん、ネックに余計な角度をつけることによって生じるデメリットもあるのです。

弾かない時は弦をちゃんと緩め、適正な高さのサドルを維持すること、これが正解です。

写真がブレちゃってますが、低めの弦高でいい感じになりました♪

しっかりとシーズニングされた木材で作られていることが大前提ですが、アコースティックギターやクラシックギターのようにボディが空洞のギターの場合、弾かない時にちゃんと弦を緩めておけば早々不具合は起こりません。よってネックリセットが必要となることもほぼありません。

世間では「木が固まるまでは何年か弦を張りっぱなしにした方が良い」とか、「1音だけ下げるのが正解だ」とか、「弦を張っておかないとネックは必ず逆反りする」とか、何の科学的根拠のないことを、あたかも「自分はこの世のギターの全てを知っている」みたいな顔をしながら言っている人を見かけます。

この世界の物理法則がひっくりかえらない限り、木はあくまでも木なので、ある一定方向に長時間、何十キロもの圧力がかかり続ければ、どこかしらが変形したり割れたりするのは至極当然のことです。僕も世の中のギター全てを知っているわけではありませんが、弾かないときはなるべくダルダルに緩めておくのが不具合の出る確率を最大限低くする一番良いギターとの付き合い方であることは間違いありません。

 

自分の「修理屋」という仕事の将来を考えると、弦を張りっぱなしにして不具合が出たら皆川ギター工房に持ち込む、というのをお勧めしたいところではありますが、、。( ´ ▽ ` )

今後とも皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い致します。敬具

 

ネックリセット&リフレット/ Martin D-28


スタッフの山口です。

今回は比較的新しいMartin D-28をお預かりしました。ネック角度不良+順反りということで今回はネックリセットとリフレットのコンボです。リフレットはどちらかというと指板修正を目的として、どうせフレット全部抜くならフレットも新しいものに交換しましょう、というわけです。


いつものヴィンテージとは違い、新めのMartinはアジャスタブルロッド付きです。

ネックの重量も多少増えます。

 


ボディ側ロッド用に全て設計されていますね。この二つの穴は塗装する際に引っかける用の穴なのでしょうか。


いつもネックリセットばかりなのでリセット工程は今回は割愛しました。

組込み後はダブテイルに通じる穴を埋木します。


アジャストロッドがありますので今回は指板修正にネックジグは使いません。


15フレットの溝切りをしてフレット打ち開始です。


フレットプレスもありますが、アコギの場合はフレキシブルに作業できる玄能が最適解なのではないかと思います。ストラトのようにネックが外れるものはプレスする方が良いかもです。


フレットの仕上げまで終わったらナットを新調します。


出来合いのナットも市販されていますが、メーカーやあらゆる年代、何より個体差に対応できる代物は無いので、一見すると面倒ですが一から成形するのが一番仕上がりも作業効率もいいと思います。


Martinぽいナットを作ります。


新しいMartinは底面がフラットというかネックと平行です。伝統的にはヘッドと並行で傾斜がついています。作る方としてはコチラの方が簡単。


弦間がバラバラだと分かりやすく腕を疑われてしまいます。弾きやすさにも直結します。


ある程度溝の深さが決まったら一旦外して仕上げていきます。


いい感じです。


3、4弦のナット溝はそれぞれのペグポストに向かって気持ち斜めに切ってあります。意外と3、4弦の間が広がり過ぎる傾向がありますので注意してください。(自分で作る方は)


フレットのエッジには職人それぞれのこだわりが詰まっています。


僕が特に意識するのは写真のように見たときにフレットの両端が真っ直ぐにビシッと揃っているかどうか。


ここがガチャガチャになったりカーブしないように心がけます。元々指板サイド自体がガタガタの場合もありますのでその時はどこまで修正しようか悩ましいところではあります。


ヒールも問題なし。


こちら側もOK。


弦長補正を施してありますが、個人的には補正していない方が潔くトラッドでかっこいいと思っています。あくまでも個人的には。


 

今回は新しめのD-28でしたがオールドとは随所随所に違うところがあり興味深かったですね。

新しいギターでも古いギターでも関係なく不具合は出てくるものです。環境や弦の張力、木材が動きやすいものや、ネックは強いけどボディが弱いとか、同じメーカー同じ年式でも個体差が必ずあります。最近流行りのカーボン製ギターなどは個体差が一切なく安定した工業製品として確立されていますが、、何でしょうか、、何というか、、個々の個性がないモノに人間は愛着が湧かないモノだと思っています。人間も、みんな同じ顔、同じ性格、同じ声だったら果たして愛すべきパートナーをどうやって見つければいいのでしょうか。。

童謡詩人の金子みすゞさんの「みんな違ってみんないい」という言葉が多くの人に響き続けています。ギターも同じで「みんな違ってみんないい」、そんなところに奥深さや面白さ、そしてロマンがあるのではないでしょうか。

どんなギターでも、他人が何と言おうとも、自分が良いと思ったギターは自信を持ってその個性を尊重し、付き合ってあげてほしいと思います。この世に完璧な人間がいないように、ギターも完璧なものはないと思っていて、そこがまた愛らしくも感じるのです。

今回も最後までありがとうございました。

 

サウンドホール割れ / Martin OOO-42EC


スタッフの山口です。

今回はよくあるといえばよくある修理、サウンドホールのめり込み割れです。割れた箇所がズレているのがわかりますね。

これも弦の張力によって起こる症状です。

アコースティックギターの天敵は「弦の張力」と「乾燥」であると言えます。


以前も割れて修理したっぽく、割れ止めらしき板がついていますね。周りの雰囲気からすると最初からついているものなのかもしれません。

 


しかし割れた部分はちょうど境目になっていて割れ止めの役目は果たせていないようです。赤く塗った部分は板が貼ってあった場所ですが今回は取り除き、新しい割れ止めを作製します。


サウンドホールのめり込み割れが起きる時は大体こちらのバスバーと呼ばれるブレイシングが剥がれていることが多いです。

アコースティックギターにとってのブレイシングは音色を司るのもそうですが、「割れ止め」という最大の役割があります。

修理屋に持ち込んだ時は今後のことも考えてブレイシング剥がれのチェックもしてもらうことをお勧めします。


写真には写っていませんが、、

ネックをジグで引っ張り、割れてズレた分を戻してスーパーグルーで接着します。

冒頭の画像と比較すると戻っているのが分かるかと思います。割れはジョイント部である14フレット付近まで伸びていました。


トップ板の割れが接着出来たらバスバーを接着します。


バスバーの接着が完了したらちゃんと役割を果たせる新しい割れ止めを製作します。材はスプルース、木目を垂直方向にします。


手前の割れ止めと、奥は接着時の当て木です。


タイトボンドで接着。


いい感じになりました。割れているラインに覆い被さっていますのでいくらかは強度が増したはずです。


めり込み時は大抵、ネックのアングルも狂っています。今回はネック角度が改善され許容される程度まで戻りましたのでネックは外さずにフレット擦り合わせのみ。


割れた部分が気になってベタベタ触ってしまうと修理後に跡が目立ちます。割れてしまった時はなるべく触らずに修理を依頼しましょう。


6弦側は1弦側に比べて目立たないで済みました。


アジャストロッド調整部に干渉しない厚みで割れ止めがついています。


Martinの40番台は指板の両脇にインレイを施すために掘り込んでいるため、その部分の板の厚みが薄くなります。当然、強度が落ちて割れやすくなっていると思います。

このデザインによって強度を落としていることはおそらくMartin社も把握しているはずですが、今更ここを変更することは彼らの伝統ある歴史とファンが許さないのだと思います。


 

初年度のMartin / OOO-42EC。エリッククラプトンがアンプラグドで使用した戦前のOOO-42を基に企画され販売されたモデルです。初年度モノは価格も上がり続けてるそうです。

 

 

アンプラグドといえば、僕が大好きなNIRVANAのKurt Cobainが使用したMartin / D-18E (1959年製)が、ギターの歴史上、最高値の6億円余りで落札された、というニュースが少し前にありました。アコギ好きでカートファンの僕としては史上最高値のギターがエレキではなくアコギであり、それがカートのギターであるということがとても嬉しいのです。

もう一つ、アンプラグドといえば、放送していたMTVとMartinのコラボモデル、MTV-1というモデルがあります。賛否が分かれるであろうサイドバックがマホガニーとインディアンローズの2トーンというイレギュラーな材構成。以前修理で当工房に来たことがありますが、個人的には結構良かった印象があります。もちろん、今回のOOO-42ECもとてもナイスギターでした♪

今回も最後までありがとうございました。

 

ネックリセット&バーフレット→ラウンドフレット交換 / Martin 0-18K(1924)


スタッフの山口です。

博物館にあってもおかしくないようなギターが横たわっています。 1923年製造のMartin 0-18K、オールハワイアンコアのモデルです。今回はこちらのネックリセットとフレット交換を見ていきます。


ネックの順反り加減が写真でもよくわかります。写真でも分かる、ということは重症です。

ネックの角度も狂っていますので仕込み角度を適正にする+フレット交換に合わせて指板修正、このコンボで弾きやすくまだまだ使えるギターにしていきましょう。


弦高は4mmほど。

この写真でお気づきになるかと思いますが、フレットに違和感がありますね。1934年より前はこんな感じの単なる棒状、つまりバーフレットしかありませんでした。オリジナルを重視するなら同じバーフレットを何とか残しますが、実用的に使用するならやはり通常のT型のラウンドフレットが宜しいかと思います。

今回もオーナーの要望で普通のラウンドフレットに交換します。


今は同じバーフレットの打ち替えは基本的にお断りしています。打つのも大変だから高くつくしプレーヤーは弾きづらいし、メンテナンスもこれまた大変。いいところは一つもありません。


いつものように指板を剥がしていきます。

この時代の特徴なのか100年間の間に削られてこうなったのかはわかりませんが、指板がとても薄いため終始慎重に進めます。下手すると簡単にパキッと逝ってしまいます。


無事にネックが外れました。ダブテイルジョイント部にメイプルのシムが挟まっています。流石に100年の間にネックは何度かリセットされているようです。


1920年代にはタイトボンドではなくニカワ接着されているため、写真の通りタイトボンドが使われていることからもネックリセット経験済みの個体ですね。


いつものアングルで記念撮影。


シムは新しく作り直すので削ぎ落とします。溝に残った古い接着剤も根こそぎ綺麗に掃除します。


角度の修正幅が大きい場合はヒールの内側をある程度予測してノミで削ります。


ノミはよく研いでおき、力を入れずに優しく扱わないといけません。。

そういつも自分に言い聞かせます。


ネックが無事ついたらバーフレットを抜いて溝を整えていきます。このままの溝だと太過ぎてフレットを打つことができません。

(ネックリセット中はいつも写真を撮り忘れます。)


溝はこの縞黒檀の薄板を使います。


こんな感じで薄さなどを調整しながら1本の溝に薄板を2枚。あとで2枚の薄板の間に溝を掘り直してフレットを打てば、元の溝の中心にフレットを打てますのでピッチが狂うこともありません。


余計な部分は上も横もカット。


調弦時にネックが真っ直ぐになるように指板をサンディングで修正したら、、


普通のラウンドフレットを打ちます。

ここまででかなりの時間を要します。


ナットは新しいフレットの高さに合わせて新調します。


フレットが変わると顔つきも現代的に変わりますね。


サドルの高さもいい感じになりました。


もちろんですが、センターズレも無し。


ヒールも隙間などはなく、塗装修正もしていませんが綺麗に仕上がりました。


こちら側もOK。


均一に鮮やかにフレイムの杢が出た素晴らしいハワイアンコアですね。ここまでびっしりと杢が出た個体はなかなかお目にかかれません。もちろんサウンドも素晴らしく、ため息が出ちゃいます。


 

1924年製、101歳のギターです。今回のリペアによって状態も良くなり、素晴らしいコンディションで現役続行です。今後も誰かの手によってリペアされながらギターとして100年後も存在していることを願います。

ハワイアンコアは正式名称はアカシアコア。ハワイ原産のアカシアコアは吹き付ける海風によって木がしなって綺麗なフレイム模様が入ることからハワイ産のアカシアコアに限って「ハワイアンコア」と特別に呼ばれるそうです。ハワイ以外のアカシアコアは一般的にコア、やアカシアコアと言われるそうです。

自宅にホームセンターで買った「アカシア」で自作したチェストがありますが、あれはコアとも書かれていないし、産地も不明、、ネットで検索するとニセアカシアと言う何とも失礼な名付けをされた樹種もありました。

 

 


 

当工房には師匠皆川が長年かけて集めたギターに関わる書物が何十冊もありますが、中でも自分が好きなのがこの木材活用ハンドブック。

この木材でベンチを作りたいな、あ、こっちの材も良さそうだなー。床はこの木材でフローリングにして、、テーブルはこれで1枚板にして、、そんな妄想をしてしまいます。

母方の実家が木材店で父親は木工職人なのでその血が騒ぐのだと思います。

でも、ギターではなく家具や自宅の内装などの想像ばかりするのは音響特性を気にしなくていいからでしょうか。。。

 

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

フレット交換 / Gibson CF-100


スタッフの山口です。

今回はGibsonフローレンタインカッタウェイ、CF-100のフレット交換です。

フレットは Made in USAのニッケルシルバーを打っていきます。材質は高さ、幅などは数種類の中からお選びいただけます。

 


指板の幅よりも少し広くフレットをカットします。


ネックバインディングがありますので写真のように両端のタングをカットする必要があります。


専用カッターでタングの端を切り落としたら、、


やすりでタングの残りを削り平らにします。素手でやるとフレットを押さえつける左手が痛くなるので手袋してます。


アールは指板よりもキツめにします。

タングの端もキレイになってフレット打ちの準備完了です。


肝心の打っている途中を全カットです。(撮り忘れ)


フレットの端は斜めに落とさず極力立てて、チクチクしないように丁寧に丸めてあげるのが皆川流です。


交換前からオーバーバインディングでしたが、フレットバインディングが残っている場合も基本的にオーバーバインディングでフレット交換します。

 


フレット磨きまで終えたらナットを新調してサドルを調整して出来上がり。


Gibsonは指板幅に対して目一杯外側に弦を通しますので斜めに落としすぎると弦落ち確率アップしちゃいます。


ヴィンテージギターのフレットは磨きまくってピカピカすぎるより適度に磨いている程度の方が質感がかっこいいと思います。

CF-100は個人的にGibsonのイケメン枠です。

ヴィンテージの貫禄がある姿にフローレンタインカッタウェイ、これは萌えます。。

ヴァイオリンもチェロも全て同じようなルックスをしてますが、ギターのルックス、デザインは本当に多岐に渡りますよね。見た目だけでも買ってしまう楽器ってギターくらいじゃないでしょうか。

 

ファッションとして、楽器として、とにかくギターっていろんな選び方、楽しみ方があってすごいな、、とつくづく思う今日この頃です。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

ネックリセット&リフレット / Martin O-18


スタッフの山口です。

今回は最近滅多にお目にかかれなくなったオールドのMartin O-18のネックリセットとネックリセットとセットだと1万円引きでお得になるリフレット(フレット交換)です。


弦高を調整するサドルが限界です。

よくあるブリッジを削っちゃった、ということは今回はないようです。

 


トップに養生をして指板のハイフレット付近、トップに乗っかっている部分を温めます。


熱々でニカワまたはタイトボンドが軟化すればこのようにナイフを入れることができます。


15フレットを抜いて開けた穴にヒートスティックを差し込み、今度はダブテイルジョイントの接合部を温めます。

穴を開けることにびっくりする方もいると思いますが、マーチン社に持ち込んで修理したとしても同じように15フレットに穴を開けられちゃいます。むしろMartinは修理ができるように設計していて、わざとダブテイル部分に少しだけ隙間が作られています。


無事にネックが外れて恒例の記念撮影。

指板もこれ以上なく綺麗に剥がれました。


ネック角度を修正した分、傾斜をつけたエボニーの薄板を貼り合わせて底上げします。「くの字」で元起きしている場合はこれが不要の場合が多く、ジョイント部付近のトップが沈んでいるケースではこれが必要になることが多いです。


少し飛んで、ネックが無事についたらリフレットに移ります。


フレットのエッジ落としは個人的には勝負所の工程です。斜めに落としすぎるのは皆川ギター工房では御法度です。


また少し飛んで、、フレット交換で高さが復活したら元のナットは低すぎますので新調します。


弦間、形状ともにMartinの特徴を捉えたナットになりました。

ブリッジ同様、ナットにはそれぞれのメーカーに合ったディテールがあります。MartinにGibsonみたいなナットがついているのはとても違和感を覚えます。

先日Gibsonによくあるジャンボフレットが打ってあるMartinを拝見しましたが、それもとても違和感がありました。


弦高も2.5mmになり弾きやすくなりました。


ロングサドルは特に高くなりすぎないようにネック角度を調整する必要があります。ロングサドルブリッジの構造上、高すぎるサドルはブリッジの割れを招く確率を大幅にアップさせてしまいます。


センターもバッチリ、、


6弦側のヒールもバッチリ、、


1弦側のヒールもバッチリです。綺麗に仕上がりました♪


小ぶりなのに圧倒的な貫禄。

家のソファで弾くならこれに勝るギターは無いのでは無いでしょうか。

かっこいい!

ネックが長年の弦の力によって起き上がってくる「元起き」には、14フレットで「くの字」になっている場合と、指板がトップに沈み込む場合の2パターンがあります。指板がトップより強ければトップが沈み、トップ(ブレーシング含む)の方が強い場合は14フレットを起点に「くの字」になります。一般的に「くの字」の場合は目で見れば元起き症状として判断しやすいと思いますが、トップが沈んで角度が狂っている場合はその症状から元起きと判断するのは素人目には分かりづらいかと思います。

元起きはアコースティックギターの宿命と言われてきたことから、これまで多くのメーカーや製作家が、弦の張力に負けないよう、ネックブロック周りを強化した設計にチャレンジしてきました。でもネックブロック周りが強いから安心、、かと思いきや、余裕で元起きしてたりします。

アコギの場合は特に顕著ですが、弦の力による不具合はそのギターの弱いところに発生します。ネックが反らない、強いネックだから、と安心しても、弦を張りっぱなしにすれば、ネックに不具合が出なくても、その分他の場所(ブリッジやトップ)に不具合が出ます。

僕の相棒のMartin君は毎回しっかり弦を緩めているのでここ10年、コンディションの変化が一才ありません。至って良好。

「弦を張っておかないと逆反りする」、というオカルトがネット上では散見されますが、しっかりシーズニングされている木材で作られているギターであれば、弦を緩めたことで逆反りしちゃう、なんてことはありません。もし弦を緩めたことでトラスロッドに関係なく逆反りしちゃうようなギターであれば、そもそもそれはハズレのギターです。

いつもと同じ結びになりますが、弾かない時はなるべく弦を緩めましょう。

今回も最後までありがとうございました。