スタッフブログ

ブリッジはがれ修理 / Martin D-18


ウィング部に少し隙間がある位でしたら、そこだけ貼れば良いと思いますが、この位剥がれてしまっていたら、調整して貼り直しましょう。


力木ハガレの次、位に意外と気づき辛いのが、ブリッジ剥がれかなと思います。

 


隙間になった分、ブリッジが反りあがっていますので、平らに直します。

https://www.m-guitars.com/blog/1568/

 

 

 


 

ブリッジを貼り直す際の注意点としては、先ずは上記の接着面の調整。

その前に剥がす際には、すごく気を付けて剥がす事。

逆目に向かってヘラを入れてしまうとブリッジを剥がさずブリッジの面積を超えてトップの木を剥がしてしまいかねません。

貼る位置は基本的には同じ場所へ貼り直しますが、ズレた位置で長期間落ち着いていた物はその位置が元の位置と勘違いしてしまう場合があるので注意します。

もっと正しい位置を決めるにはピッチを図り直し、サドルの位置を合せてセンターも修正する事が出来れば、位置としては正しいですが、接着面の跡が出てしまい見た目が悪くなりますので、やはり基本は元の位置。

貼り直した後、微妙にずれても見た目や、他に不具合や問題が無ければ良いのですが、アジャスタブルブリッジ(Gibson)の場合は、微妙なズレも問題になりますので、やはりいずれにしても元の位置にビタッと決める事が求められます。

 

 

 


接着面が真っすぐに調整されていなければ、隙間が出来てしまいます。


いくらクランプを締め付けても隙間は隙間なので、拭いても拭いても隙間から接着剤が染み出てきます。

ブリッジに限らず、張り付ける前には色々と確認と準備をしなければなりません。

ネック折れ修理(塗装修正無し) / Gibson L-5


塗装修正無しで仕上げます。


トラ杢のネックで、5ピースで、強いとこ弱いとこがあるのか、割れ方がギザギザぽっくなってます。


割れ面がピタッと会いますので、しかるべき接着剤でしかるべき方法で接着すれば問題はありません。

 

 


接着後、表面を研いて整えます。


塗膜が厚ければ今回の様に剥げずに済みます。


塗装が剥がれて見た目が悪くなる場合がありますが、手触りは違和感が無いように仕上げます。

 

 

 

当方のネック折れ修理はタイトボンドは使わず、補強無しで強度が十分な接着剤を使用します。

「塗装修正無し」のプランならコストを抑えて修理出来ます。

但し塗装の剥げ具合は区々になります。

ご了承下さい。

過去の修理例が修理実績内にありますので、雰囲気だけでもご参考になれば幸いです。

ネック折れ以外にも色々と例がありますので、ご覧いただければ幸いです。

 

 

フレットすり合わせ / Gibson J-160E

フレットを抜く際には、半田ごてでフレットを温めながら作業するのですが、このパーロイドのインレイには絶対に半田ごてが触れてはいけません。

貝では無いので、間違うと一瞬で溶けます。

今回はすり合わせ。

ガムテープ等でピックアップを覆っています。

鉄粉が付いてしまうと取れなくなってしまい、出音にも影響が出てしまいます。

 

 

 


当方では、この段階ではまだマスキングはしません。


途中までは、指板と一緒にきれいにしていきます。

 


途中から仕上げ段階になってからマスキングテープをします。

この消しゴムみたいなもんで隅を研いだりします。

 

 


ブロンズ弦であれば画像の様に1,2弦のポールピースを下げます。

ニッケル弦なら1,2弦のポールピースはもっと上げて良いです…。

 


フレットはきれいに仕上げます。細かいキズがあるとビブラート中に「ショリショリ」なってしまいます。

目立ったキズがあれば演奏にも影響が出てしまいます。


こんなにピカピカしている必要はありませんが、滑らかでなくてはなりません。

ピカッとしようとして、各々サンドペーパーで磨く量が異なってはいけません、精度が崩れます。


いいですな~。

 

 

 


 

ブログ用の過去資料がまだ引越し前の物も残っていて、なるべく古い順からアップしているのですが、最近では、すり合わせや指板修正にこんなものを使っています。

これは、Neck Jig と言う物で、私の目的ではアジャストロッドの無いギターの作業に欲しかったものなのですが、引越し前では置く場所も無く、道具としては割と高価な物でなかなか買いそびれていた物。

ネックジグを自作している人もちらほらいらっしゃいますが、この精度と強度の物を自作するのは私には無理。

これ、一旦使いだすと、とても良いです。

勿論アジャストロッドの物にも、色々考えずに精度が出ます。

Neck Jig に関しては、またそのうちに折に付け触れるかと思います。

 

 

 

 

力木のパターン / 前回のJ-200続き


 

前回アップした50年代のJ-200ですが、力木の画像がありました。

なかなか見る機会もありませんので、画像を撮っておりました。

現在とはパターンが全く違います。

この時代この大きいボディに合う力木のパターンをいろいろと探していたのだろうと思います。

サウンド、強度、コスト、等々・・・1番よいところを。

なので、私が思うにどんな製品もマイナーチェンジの度につまらなくなってしまうのかなと思ったりもします。

 

 


ブリッジプレートからボトム部側Xブレイシングの角度がトラディショナルなものとは違います。


奥の力木はラダーブレイシングのような置き方。


サウンドホールからネックブロック側

こちらもエックスッ!


強度は現在の物より低いのではないかと思います。

しかしこれならではのサウンドがあります。

 

 

フレット交換 / Gibson J-200

早いもので、年が明けて1週間が過ぎてしまいました。

本年もよろしくお願いいたします。

令和3年最初は、修理屋の仕事の定番、リフレットです。

 

この場合、P/Gが邪魔で作業が出来ませんので、外して作業を進めます。

バインディングも斜めに削り落とされていて、ここもフレットの処理が面倒そうです。

古いギターは極力いじりたくない人もいますが、演奏していて楽しい方が良いに決まってます。

 

 

とても良く聞かれる質問の一つがフレットの交換時期について。

修理屋にもよるかと思いますが、当方の答えは、「オーナー次第。」

フレットがvの字に削れてしまっていても不具合を感じなければ無理に交換しなくても良いと思いますし、弾き難さや音質の劣化等フレットが原因であれば、交換時期なのだろうと思います。

 

 


指板修正、フレット交換が済みましたら、接着面を双方ともきれいにして貼り直します。


張る前の下準備は抜かりなく。

両面テープで貼ります。


クランプして1日以上置きます。

 

 

 

指板とフレットはサイドが下がっていると気持ちが悪いので、アールが付いている指板だからと言っても削り過ぎてはいけません。

このギターも過去に色々な調整や修理を繰り返したのだろうと思いますが、削ってしまえば元には戻らないので、極力削らない様にうまい事やらなければなりません。

 

 


 


 


 

 


修理やフレット交換がとても良く出来ても、ナットが悪いと0点になります。


ナットはピッチの安定性、音質、演奏性、すべてに関わってきます。

修理依頼によって重点はあると思いますが、関わる全てにおいて拘らなくてはなりません。

 

 

と、このように自分を戒める為のブログでもあります。

わたしなどは、抜けている所が多いものですから、出来る限りポカしない様にと、今年も同じようなブログが続きます。

本年も引き続きお付き合い頂ければ、幸いに存じます。

 

ネックリセット他 / B.C Rich B-300J

 

今年最後のブログは、ちょっと珍しいギター。

B.Cリッチのアコギで、昔B.Cリッチの社長が手作りした数本中の一本らしいです。

バインディングが大きく剥がれちゃって、ネックの角度が狂って、力木が沢山剥がれてる。

ブリッジの溝が浅い為、サドルが立つように修正、ブリッジプレートは穴が削れて広がっているので修正。

 

ネックの角度を直さなければならないのですが、アコギだからと言って必ずダブテールジョイントとは限らず、どの様なジョイントがなされているか確認しなければなりません。

このギターのネックジョイントはクラシックギターと同じ工法ですので、マーチンやギブソンのネックと同じように取ろうとしても絶対に取れないのです。

 

 

 


 


 


 


 


 


 

金メッキのパーツは、コンパウンド等で磨いてしまうと、メッキが剥げてしまいます。

スチールウールで磨くときれいになります。

当方では、番手の細かいやつで磨いています。

 


 


 

クラシックギターのネック角度を直す時と同じように、指板はハイポジション側に向かって厚くなる様に厚みを付けて角度に辻褄を合わせます。

指板面を調整して、フレット、ナットも交換します。

 


 


 


 

大分長い事、お預かりしましたが無事お返し出来ました。

見た目の期待通りの音がします。

 

本年もこのブログをいつも見て頂いている方、ご常連、今年出会えた方々、大変お世話になりました。

来年もご愛顧のほど頂けましたら、幸いに存じます。

まだまだ大変な状況が続きますが、皆様にとって良い年になります様、願っております。

 

過去のブログでこれに触れた記憶があるのですが、それにについて、アメブロに裏話的な事を書きましたので、よろしければご覧ください。

 

では!

もうすぐ来年だねー。

ネックリセットMartin O-18 1931 / Martin (山口君のページ)

山口君に、もうしばらく続けてブログを書いてもらいます。

手を写しちゃうところなんかは、私に無いセンスですね~。

さー、今週のお題もはりきって、テキスト付けてくんなまし。

 

 

、、、と言う事でテキストをつけて行きたいと思います。スタッフの山口です。写真はすでにネックを外し角度を決めた後。0.5mm厚のエボニー(黒檀)を階段状に3枚重ねて接着しサンドペーパーで均してから写真のように指板に貼ってあげます。角度をつけるとハイフレットが下がってしまいますので、厚みを足してあげる必要があるのです。ギターによってはこちらの工程が必要ない場合もあります。

指板との境目がなるべく目立たないようにゴシゴシ擦っています。手が写っていますね。冒頭で師匠が書いていますが、元々ブログで使うための写真ではなく、この時はこうした、あの時はこれを使ったなどの修理の記録として写真を撮っていましたので敢えて自分でちょくちょく手も写しているのです。自分の手が好きなわけではないです笑


指板の厚みを足し過ぎると逆にハイフレットが跳ねてしまい、指板修正しなくてはならなくなります。逆に低過ぎるとせっかく下駄を履かせたのにお辞儀してしまいます。この指板の厚みを接着前に調整する工程は非常に難しいです。ギターの為にもコスト的にも余計な修理工程は増やさない方が良いのです。


ロングサドルは出過ぎるとハンサムではありませんので低すぎず高すぎず。ショートサドルよりもシビアです。今回はあまり覚えていませんが、写真を見る限りと納品済み販売済みであると言うことは「良い感じ」だったんだと思います。


よーく写真を見てみてください。指板に厚みを足したのが分かるはずです。黒く塗ってあげることもありますが、パッと見でそれっぽく、気にならなければ塗りません。


13フレットをよく見ると穴の跡を確認できます。

バーフレットですね。リフレットは通常のフレットより何倍も大変だそうです。バーフレット交換は僕はまだ未経験です。


デデン!お待たせしました。Martin 0-18 1931年製の全身画像です。もはやヴィンテージというよりアンティークに近いです。アコギの博物館に飾られるであろうオーラを感じます。1931年といえば満州事変があった年、それから90年が経ち、大日本帝国も中華民国ももうありませんがこちらのギターは当時のままです。もしかしたら200〜300年後はストラディバリウスのような価値になるのでしょうか。

 

 

 

 

ブリッジ交換、ネックリセット / Gibson CF-100 (山口君のページ)

スタッフの山口です。今回のギターはGibson CF-100のブリッジ交換とネックリセットの修理です。まずはネックリセットの前にブリッジ交換。初めからブリッジが無い状態でこの工房に入院しましたので交換と言うか作成です。写真に写っている角材をちゃんと50年代のGibsonらしいブリッジに成型して行きます。

ぴったり元のブリッジ跡に合わせて切ったり削ったり。オーバーサイズはカッコよくないのでNGです。

ブリッジ材がまだ平たいうちにボール盤でピンホールの穴あけをする必要があります。手前に見えるのは他のギターのブリッジプレート修理の際に余ったメイプルの切れ端。こちらを経由してトップに空いたピンホールにぴったり同じ場所に穴を空けます。


ちょっと飛んで、、、ブリッジの成型が終わり接着できたらネックリセットに移ります。いつも通り15フレットにヒートスティックを挿してダブテールジョイントを温めます。アコースティックギターのネックがこうしてちゃんと外して修理できるように設計されているってすごいなって思います。それを言ったらボルトオンジョイントは接着剤を使わない分もっと効率的と言うことになりますが、、、。


無事にネックが抜けました。弟子入りして初めてこの光景を見た時はとても不安な気持ちになりました。今はすっかりシャッターチャンスに。インスタ映えってやつですね。


前回リセット時のシムが張り付いています。近年のマーチンはこのシムに厚紙を使っている時があります。紙も同じ木が原料だからと考えての事だと思うのですが、当然接着剤で一度ふやけた紙は弱く、ネックが緩んでヒールに隙間が出来てしまう事が多いです。

温められてスライム状になった接着剤を取り除いたらとりあえず一晩乾かします。画像はありませんが、その後綺麗にしてから角度を決めたり指板を足したりして再接着です。

オリジナルに忠実ないい感じのディテールで仕上げる事ができました。本来はブラジリアンローズウッド所謂ハカランダのブリッジですが、今回は先鋒と相談の上、インディアンローズウッドでの作成となりました。当工房にもブラジリアンローズウッドのブリッジ材は辛うじてまだ在庫があります。当然またいつ仕入れられるか分からない状況ですのでブラジリアンローズウッドのブリッジ作成交換を予定している方は是非お早めにご検討下さいませ(^-^)/

この後は弦長を測ってオリジナル通りロングサドルの溝をルーターを使って掘ります。

できるだけ細かいディテールにもこだわり、長い時間と労力をかけ、さらに師匠の指南も加わり無事復活です。ルックスもいいですが音も良し。非常に軽くて乾き切った音。人それぞれ好みもあるとは思いますが、きっとこれは「良いギター」です。所有はできなくてもこんな良いギターを弾く事ができる、この仕事のいいところだな〜といつも思います。

 

 

ネックリセット、マーチンクラック / Martin D-28 (山口君のページ)

スタッフの山口です。今回もいつの間にか師匠が写真だけアップしておりました(笑)ので修理当時を思い出しながら文章を付けて行こうと思います♪( ´θ`)ノ

今回はネックリセットとトップのクラック直し。ギターは所謂「アコースティックギターの教科書」的な存在、MartinのD-28です。写真はおおよそ15フレットの下にあるダブテイルジョイントのスポット(隙間)にヒートスティックを挿入し温めているところです。接着剤(にかわ)を温めて徐々に力を加えることでボディーから外れます。

木工の精度や使われている接着剤、経過年数によって「パコッ」と外れたり「ウニョッ」と外れたり。今回は「ウニョッ」と滑るように外れたパターンです。この後は温められてゲル状になった古い接着剤を綺麗にします。余計に剥がれてしまった木部などの修正は一日以上乾かしてから行います。


少し飛んで、、角度も決まり、指板のハイフレット側が下がらないように指板の厚みを足した所です。写真をよく見ると足した部分が分かりますね。茶色いですが指板と同じエボニー(黒檀)です。真っ黒のエボニーも貴重になってきているそうで、最近はGibsonやMartinでもリッチライトという人工素材が使われ始めています。近い将来、指板がリッチライトの場合は同じリッチライトで修理するようになるのでしょうか。

この後は足した部分に違和感がないように筆で黒くタッチアップしてから接着します。


ネックが着いたらクラック修理です。ピックガードが反り上がる力にトップ板が負けて起こる「マーチンクラック」と言われている割れ方ですね。

Martin以外の古いギターでも同じ割れ方をよく見ますが。。

どんな修理の場合でも、接着が始まってからアタフタしないように、必ずクランプやジグなどのシュミレーションを行います。接着剤を付けずリハーサルをしてから万全の状態で本番。それでもアタフタします。

 

 


ピックガードの反りも割れも無事直りました。裏側にはクリートで補強してあります。


元起きしていたネック角度もいい感じになり、弦高も低くて弾きやすいギターに生まれ変わりました♪


1966年製、柾目のハカランダですね。「アコースティックギターの教科書」と書きましたが、コイツは中々手が出せない金額の教科書です。


しっかりと修理、調整されたギターは販売価格に関係なくすぐ買い手がつくことが多いです。そしてすぐ売れたことを知った時に僕はとても嬉しくなります。師匠の皆川も修理が完了し、お客さんが取りに来てその仕上がりに喜んでくれると「一生懸命修理して良かった!」と、とても嬉しそうです。それを見るとこの仕事がもっと好きになります。

ネックリセット / YAMAHA N-1000


 

ネックの角度が狂って弾き難くなった、70年代のヤマハ N-1000です。

画像が途中からになってしまいましたが、ネックが外され、角度が調整され、指板の厚みが調整済みで、ボディサイド、ネックヒール部の塗装修正途中です。

Guild等同等にネックを外す事は、大変な事は想定済みでしたので塗装修正は予定内です。

ネックの角度を修正すると、ジョイント部から指板が下がってしまうので、厚みを付けて調整します。

ヤマハのネックヒールは、クラシックギターの様に次いであるので、熱をかけているとその継いだ部分から外れてしまう事が間々あります。

外れず残ってしまったヒール(これを取るのが大変)をボディから外し、ヒールに戻して、塗装修正してと、その辺りはGuild等より大変な作業になります。

案の定こちらのヒールも途中から取れてしまいましたので、それを直したりと、ここまでの作業がとても大変でした。

 

 

サドルのバランスは、ブリッジの左右の厚みの具合やネックのねじれ等で、どの位のネックの角度にしなければならないか按排が難しいです。

指板エンドは下駄を履かせた分厚くなっています。


ウレタン塗装は馴染まないので、修正は難しいです。


今回は修正の境目が出ず、上手く行きました。

ハカランダの杢目もきれいです。


弾き易くなって、ナイスギターになりました。