山口君のページ

ボディ破損 /Morris W-25 (其の肆)


スタッフの山口です。

今週もモーリスの画像を見ていただきます。タイトルの漢数字も「其の肆」という馴染みのないものに。(4=肆だそうです)

写真はトップ板を既に付けてルーターでトリムとバインディング部分を削り落としたところです。


皆川工房ブログあるあるですが、肝心なところの写真を撮り忘れました。トップを貼り合わせる大事な部分の写真がいくら探しても見つかりません(汗)

大事な工程は必死になっている場合が多くよく撮り忘れます。

 


地道な作業が延々と続きます。ネックリセットなどと違い、こういう製作に近い修理は普段あまりやらないことが多いので何度も立ち止まってしまいます。


トリム作り。


今回は元と同じく本物の貝ではなくパーロイドで。


最後に外周のバインディングです。


おお、見慣れたアコースティックギターの形になりました。


バインディングは始めはスクレイパーで落とします。


トップが汚れてしまいましたが大丈夫です。

バックとサイドも合板ですがなんとか表側の第一層が持ち堪えてくれました。擦るうちに中の第二層であるベニヤが出てくると厄介なことになります。

粉だらけになるので人が少なくなった夜を見計らって、工房の外でひたすらゴシゴシ。昔のモーリスやヤマハの国産ギターは塗膜が薄いことが多々ありますが、剥がすときはポジティブ要素になります。ただ通常の修理の場合は塗膜が厚い方が助かります。

次回はとうとう塗装に移ります。そろそろ皆様の「またモーリスか、、」という声が聞こえてきそうですが、、

あと2週分は引っ張れると確信しておりますのでどうかお付き合いの程宜しくお願い申し上げます。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の参)


スタッフの山口です。

とうとう3週目に突入しましたが、まだ道のりは遠そうです。

写真は折れたXブレイシングを整えているところ。


修理は極力使えるところは生かします。一般的にオリジナルに近いほうが楽器修理は良いとされていますので今回も継木して直します。


直角も出ていい感じ。


ほら、いい感じです。


何となく出来そうな気がしてきました。


仮加工したトップ板をはめてみてさらに希望が見えました。


ここで先週予告しましたオリジナルジグの登場です。


長ーいクランプを用意して、、


こんな感じで。


サウンドホールから入れられるジグの大きさには限りがありますので、中で組み立てられるようにする必要があったのです。

簡単な作りですが、バックである底面に置きながら組める、というのはボディー内部での作業には便利。というのがこのジグのいいところですが、たいしたものではなく恐縮です。


うん、ちょうど中が見やすいです。

これは今後もエンドブロック付近の修理に使えそうです。


来週はいよいよここを塞ぎます。

自分の中ではピッタリとブックマッチできるか一番心配していた工程ですが果たしてうまくいくでしょうか。

次週もお付き合いくださいませ。なにせ2年間の記録でございます。

 

今週も最後までありがとうございました。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の弐)


スタッフの山口です。今週も早速Morrisボディ破損修理の続きを見ていきます。

破損部の反対側もパックリと剥がれていましたがここは剥がれだけですので接着しちゃいます。

 


内側も綺麗に仕上がりました。

破損部の修理にこちらが開いている方が都合のいい場合は敢えて先には直しませんが、今回はここは直しても修理がしづらくなったりはしないと判断し先に直しました。。


問題はこちら側。単板であればこういった割れ方はしません。二層目はかろうじて割れていないのは不幸中の幸いです。全部割れていた場合、皆川氏に助け舟を出していたと思います。

元のライニングは使用できないのでノミで削ぎ落としました。


接着剤で合板の表裏の一層目を直します。


こういったジグは作る時は手間ですが、一度作っておくときっといつかまた使える日が来ます。1年後か10年後かはわかりません。


ライニングと一緒に崩壊してしまっている合板の一層目を補修します。


ビフォー画像がないですが、こちらのバックも補修してからライニングを仕込みます。


この一般的なアコギのライニングはわざわざ材からは作りません。この形で売っています。これだけを作っている会社がどこかにあるのかもしれません。


元のライニングと色が若干異なりますが、修理した部分がハッキリわかると言うのは悪いことではありません。車もギターも修理歴の隠蔽は禁物なのです。


バック側はこれでOK。と思いきや、接着が甘かったようでサイドがまた割れちゃいました。


トップ側は同時に力木も直してるのでカオスな画像です。


バックの力木剥がれも閉じてからより簡単ですのでこんな感じに。

 

修理には専用のジグを、そのギターと症状にあったものを自作しないと修理できない場合が多々あります。クラフトマンは設計が変わらない以上は毎回同じジグを使用しますが、リペアマンの場合は多種多様なサイズや形状と、それぞれ違った壊れ方をする為、都度作らなければ対応できないのです。

次回(其の参)は写真に写っている今回の修理のために作成した「山口オリジナルジグ」の登場です。

大したものではありませんが、、どのように使うかは次回をお楽しみに。

 次週もこの続きを予定しています。今しばらくお付き合い願います。敬具

ボディ破損 / Morris W-25 (其の壱)


スタッフの山口です。

今回はこれまた衝撃的な写真からスタートです。中々見られない壊れ方です。予想するにサイドからの衝撃によって大破したといった感じでしょうか。


欠けてなくなっている部分が震源地の可能性大。こちらはオール合板のモデルですので人間で言うと複雑骨折状態だと思われ、先が思いやられます。


エンドブロックはそのまま使えそうですが、、大変そう。


皆川氏と全交換するか、継ぎ足して修理するか長い時間をかけて相談した覚えがあります。


ネック角度は悪くないのと、恐らくダブテイルジョイントのようにネックが外せる構造で作られていないと判断し、お客様とも相談の上、破損した部分を継ぎ足して修理することに。


ここまで状態が悪いとどこから手をつけるか迷ってしまいますがなるべく無駄のないムーブをしたいので、各部の状態をよく診て、考えてから取り掛かる必要があります。

破損部の反対側も剥がれていたのでそのまま接着できるところは最初にとりあえず。

オーナー様より初めにお問い合わせをいただき「これは時間も費用もかかる修理です。何より修理代でこのモデルの元となっている本物のMartin D-28が新品で購入できる額です。それでも修理しますか?」との問いに「父から譲り受けた大切なギターですので構いません。修理をお願いします」とのこと。

そうとなれば腕まくりをしなければなりません。人から見れば安価なギターであっても、お客さまにとってプライスレスなものなのであれば当工房としてもプライスレスな仕事を。

2年という長い修理期間に気が変わってしまうかもしれないノリのお客様だったら断っていたかもしれません。楽器の原価を大幅に超える修理はお客様との信頼関係がないと難しいです。経営上、納品ができなければ大損害となるから。今回のお客様は小まめに連絡もつきましたし、何よりこのギターに対する並々ならぬ愛着が感じられましたのでお受け致しました。

 

こうして2年間の長い旅が始まりました。写真データも膨大で工程も多いので、何回かに分けてアップしていきたいと思います。今日はこの辺で。ありがとうございました。

 

 

ブリッジ交換 / Gibson Humming Bird


スタッフの山口です。

今回はこの状態でやってきたハミングバードのブリッジ交換です。と言っても元のブリッジが紛失した状態ですので作製と言った方がしっくりきます。

 

 


年代的にも剥がれ跡を見ても元のブリッジはアジャスタブルサドルタイプだったことが分かります。今回はノーマルタイプで作って欲しいとのこと。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、アジャスタブルサドルとノーマルサドルではネックの仕込み角度が違います。


今回のギターは恐らくネックが元起きした状態。アジャスタブルサドルでブリッジを作り直す場合はネックリセットも同時に行い、ネックを適正角度にする必要がありました。しかしノーマルサドルでなんとかネックリセットはしなくても済むようです。

ただし少しでもマシになればと思い、仮のブリッジを置いて角度を確認し、ネックアイロンで処置を施しました。


ブリッジを作る前にスプルースでアジャスタブルサドルの穴を埋めましょう。


これを


こうしてからタイトボンドで接着し、一日置きます。


元のブリッジがないと大きさを見るのも一苦労。サイズに違和感のあるブリッジは中々イケません。


塗装の焼けや古い接着剤から元の大きさを転写しました。

 


元はプラスチックブリッジだったと思われますのでラッカー塗装を剥ぎます。ラッカーの上から接着しちゃってるものも稀にあります。


いざ作製です。オリジナルはブラジリアンローズウッドですが今回はインディアンローズウッドで。インディアンローズも今は入手困難になりつつあります。


写真にはありませんが、元のブリッジがないので穴あけも結構面倒だった覚えがあります。


いい感じの形になってます。


ギブソンのブリッジはボルトでも止めていますのでもちろんインレイも。


こうして見るとほとんど褪色せずこんなに鮮やかにチェリー色が残っているのは貴重ですね。


ブリッジが付いたらルーターで溝掘りです。ルーターがこの世に無ければギターは全部ロングサドルになるのかな、、ふとしょうもないことを考えてしまいました。


いい感じです。


現行のハミングバードもこんな雰囲気では無いでしょうか。


アイロンも効いたせいかサドルの出しろもベストに近いです。いい感じ!

ノーマルサドルの方がピックアップも選ばないので使い勝手はいいかもしれません。ただ個人的にはアジャスタブルサドルのGibsonサウンドが好きです。

最近は弦高を調節できるというメリットよりも、アジャスタブルサドルのサウンドが好きだから、という理由で選んでいる人の方が多いのではないでしょうか。「パーカッシブ」な音ってヤツです。

ナイスギターの後ろに予約制という文字が写っています。ギター修理は基本的に手が離せない作業も多いです。アポなしで来て頂いても満足に対応できないこともあるのでどうかご予約の上いらしてくださいませ(^ ^)

毎日本当に暑いですね。工房のある北綾瀬近辺はプチ建設ラッシュなのですが、建設関係など外で働いている方々は本当に大変だと思います。早く涼しくなって欲しいです。一方で3年ぶり(4年ぶり)に盆踊りや花火大会もあちこちで行われていて懐かしい夏の雰囲気を皆んな楽しんでいるようです。でもとにかく早く涼しくなって欲しいです。

今回も最後までありがとうございました。

 

ブリッジの接着面(トップ側)の塗装が剥がされていないので「プラスティックブリッジっだったのでは、」と言っておりますがプラスティックブリッジでは無く、木のブリッジが貼ってあった跡ではないかと、私思います。    

書き足し…皆川。

 

確かに。ボルト跡がないのでこれこそ塗装の上からブリッジを接着してたパターンですね!失礼しました(>_<)

書き足し‥ 山口。

 

 

力木剥がれ /Martin D-28

スタッフの山口です。

今回は写真が少ないのでほぼ文章で力木(ブレイシング)剥がれ修理を紹介します。

バック側の力木が剥がれていますね。力木剥がれはボディをコンコンっと叩いた音で剥がれてるか診断します。大事なギターを持ち込んでいきなりコンコンっと叩かれても驚かないでくださいね。お医者さんに例えるなら聴診器を当てているようなもの。8割方、叩いた時の音でどの辺が剥がれているかどうかが分かります。

おおよその場所が把握できたら写真のようにヘラを差し込みます。軽傷の場合はなぜか端の方から剥がれていることの方が多いです。このまま放っておくと中心部まで剥がれていき、最終的には何かの拍子でカランコロンと完全に外れてしまいます。

そうなる前に修理してあげればOK。お客さんが気がつきにくい部分なので別の修理で持ってこられた場合もなるべく力木チェックは行っています。

バック側の場合は専用のターンバックルで突っ張って接着します(外側では大きなカムクランプがサポートしています)。

写真をよく見るとバックのローズウッドが湿っています。これは接着面から溢れてきた接着剤を拭き取った跡。たまに盛大にニカワだらけになっているギターを見かけますが、、、ちゃんとすぐに拭いてあげれば修理した痕跡は残りません。

 

力木の他にもバインディングが剥がれていましたのでこちらも修理。

Martinのバインディング剥がれはMartinクラックのような「名物」としてそろそろ名前が付いてもおかしくありません。


 

マグネティックPUを戻して完成です。

弟子入り間もない頃、修理前のギターを「このギター鳴りますねー!」という僕に「たぶん力木が剥がれてて音が暴れてるだけだよ」と皆川氏。力木を調べてみたら見事に5-6ヶ所も剥がれていました。そして修理後に弾いてみたらなるほど!音量は修理前より若干小さく感じるものの、しっかりと粒立ちの良い上品な音に変わっていて感嘆しました。力木が剥がれまくってガビンガビンの音が良く思えても、弾いている本人に鳴ってる感があるだけであって、聞いている側が良い音と感じるかどうかはまた別の話。そして何より力木剥がれを放置してしまうとギターの強度も落ちてしまいますので、なるべく軽傷のうちに直してあげましょう。

最後に、今回のようなギター内部の修理をする場合、中の埃や塵は集塵機とエアコンプレッサーで綺麗に取り除いてから行います。今回のギターはとても綺麗でしたが、たまに驚く程いろんな類いの塵や埃が溜まっているギターがあります。音に分かるほどの影響はないかも知れませんが、、、剥がれはじめた力木の隙間に埃が付着してしまっていたり、匂いが篭ってたり、ピックを中に落としてひっくり返して取ろうとしたら埃が顔に降ってきたり、と百害あって一利なし。たまにギターの内部も気にかけてあげてくださいね。

 

そういう僕は今日、自分のメインギターの弦交換を1年ぶりにしました(ノ_<)もう少し自分のギターも気にかけてあげようと思ったのであります。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

 

ピックガード交換 / Martin D-76


スタッフの山口です。

今日の修理はピックガード交換です。剥がれてきたり浮いてきたり様々なトラブルが起きるパーツの一つです。


反る力によって起きるトップ割れ、通称「マーチンクラック」という言葉が有名ですね。確かにピックガード交換修理は8〜9割がMartinな気がします。

今回は幸いピックガードの粘着力が弱くトップ割れは起きていません。剥がすのもすんなりです。


原材料高騰対策とSDGsの観点から、少しでも効率よく無駄の出ないように切り出します。ベッコウ柄などの場合は好みの部分を狙って切り出すのでこうはできません。


サイズを見ながら面取りし、いい大きさになったら水研ぎします。傷が消えるまでバフでも磨きます。


師匠のOKが出たら両面テープを貼り付けて形に合わせてカット。その後テープがはみ出ないようにサンドペーパーをうまく使って余分なテープを削いでいきます。実はここら辺の工程が一番緊張します。手が滑ってしまったら目も当てられません。切り出しから再出発になってしまいます。


貼り付けは一発勝負。あの手この手で位置を決める目印を。経験上、大体2〜3点を押さえておけば大丈夫。


塵や空気が入らないようにします。せっかくお金をかけてピックガードを新調したのに凸凹してたらガッカリしますよね。トップ側もできる限り平らに仕上げてから貼ります。


ここからは番外編。ヘッド磨きに移ります。長年の脂や埃、場合によってはヤニなどの汚れがヘッドには付着します。弦交換の時はたくさん触れるところですが、ボディと違いペグもあるので拭きにくいところですね。


なるべくラッカーの塗膜が薄くならないよう、変性しないよう、皆川氏厳選のワックスで磨きます。コンパウンドは入っていません。企業秘密ですが聞けば教えてくれるかもしれません(^ ^)


ほら、ピカピカです。


背面もゴシゴシしましょう。


ラッカー特有の輝きを放っていますね。


傷や打痕がないのでいい感じですね。


新品時のようです。このギターはまた特別綺麗ですね。


ピックガードも新しくなりまさにミンク品と言えるビンテージギターです。


 

アメリカ建国200周年記念モデルのD-76。1976年に1776本作られたそうです。インレイの星は建国時の13州を表しているとか。言わずもがな、ナイスギターです。

話は変わりますが、SDGsという言葉、楽器業界には耳の痛い言葉だと思います。ハカランダを始め世界中のローズウッド系樹種やマホガニー系樹種などの伐採による環境破壊や絶滅危惧種の増加に大きく関わってきたからです。少しずつ持続可能なカタチを目指す動きもありますが、まだまだが課題が多いのも事実です。どんな楽器も使い捨てにせず、メンテナンスやリペアをして長く使い続けることが一番簡単に貢献できる方法ではないかと思います。メーカーも今までの仕様、材料に拘らず新しい素材の開発をさらに進めて「古き良きものを大切に、また一方でこれからは新しい技術と素材でさらにいいものを目指す」これが楽器業界にとっての健全な姿になっていくのかな、と思います。

日本は林業の衰退から逆に杉や檜が生え過ぎちゃって花粉症が増えているくらいなので、その辺の樹種を最新の技術で楽器に向く材料にできたら一石二鳥なのになぁ、、と随分前から考えたりしてます。YAMAHAあたりはもう着手しているかも?国内楽器メーカーに期待したいですね。

全然話が変わってしまいましたが、、今回も最後までありがとうございました。

 

フレット交換 / Gibson Humming Bird メープルサンバースト


スタッフの山口です。

今回はフレット交換を見ていこうと思います。通常Humming  birdはネックバインディングがありますが、今回のHBはありません。Limited Editionなのでイレギュラーですね。


突板を破損しないようにナットを外します。


ナットが写真のように外せたら一安心です。

ナットは消耗品ですので外そうと思えば外せるけれど、弦交換ぐらいでは外れないように、絶妙な接着加減が必要とされます。

たまにガチガチに接着されてしまっている残念な場合は鋸で切れ目を入れて破壊しなくてはなりません。


指板修正時の画像を撮り忘れました。指板修正後はフレットを打ち、カットしてすり合わせます。

フレットの種類はご相談ください。実際に見て決めていただいても大丈夫です。


今回は一番よく使われる型番です。

弾いていてチクっとしないようにフレットの角を丸めます。一本一本丁寧に時間をかけます。とても大事な工程なのです。


フレット磨きは番手を3段階くらい上げながら最後はスチールウールで程よいピカピカ加減で仕上げます。


新品のフレットは気持ちがいいもんです。


基本的にナットは1フレットの高さに合わせて作り直します。元のナットを使われたい場合は底上げで対応もできます。


ナットも材料のご指定は可能ですが、基本的に象牙は新規でお造り致しません。動物愛護のためにも人工象牙と謳われるタスクにしましょう。

ご指定がない場合はお勧めである牛骨でお作りします。師匠の皆川も僕も牛骨が一番好きです。


ナットとサドル料金はフレット交換の金額に含まれますのでご安心ください。

牛骨以外の素材指定がある場合は追加料金が必要になります。


ナットが決まったら弦高を決められますのでサドルを作って行きましょう。

 


良い感じです。


指板もフレットも綺麗になって気持ちがいいです。


ピンボケしてますがフレットの端はなるべく立たせたいと思って仕上げています。斜めに落とし過ぎているのは弦落ちしやすいし格好が悪いです。


完成。ピックガードにハチドリが居ないのにハミングバードとは、、、なんとなく寂しい気がしてしまいます。

フレット交換をするタイミングは人それぞれです。弾いていて気にならないのであればまだ大丈夫です。

以前、自分のギターで長持ちさせようと高さのあるフレットに打ち替えたのですが高過ぎて抑えづらく、結局すり合わせして低くしたことがあります。

サドルもそうですがフレットも「高ければいい」というわけではありません。答えは「オーナーの好み次第」なのです。

今回も最後までありがとうございました。

ブックマッチ離れ&力木剥がれ / YAMAKI


スタッフの山口です。

今回はブックマッチ離れ(トップ割れ)と力木剥がれを見ていきます。写真のブックマッチ部分に隙間ができてしまっていますね。乾燥し木が縮む事で古くなった接着面がその縮む力(← →)に耐えられなくなったのでしょう。


このような割れは大抵力木も剥がれています。トップ板の骨となる力木が剥がれることでトップ板が自由気ままに動きやすくなってしまうのです。

薄い木の箱であるアコースティックギターにとって、力木は強度維持には欠かせない重要なパーツなのです。


今回はブリッジも跨いで隙間ができていますのでこいつも一旦剥がします。


自作の専用ジグを左右に当ててクランプ。隙間がくっつくことを確認できたら接着します。


一日経過したらご覧の通りピッタリとくっつきました♪


ブリッジを挟んでボトム側もOK。

ちなみに割れた所を気にして触っていると汚れが隙間に入り込んでしまい接着後も跡が残ります。特にトップは目立ちますので、割れに気が付いた時はなるべく触らずに修理屋さんへ行きましょう。


トップ板の次は力木修理。バック側は問題なかったのですが、トップ側は至る所が剥がれていましたので、、、


あっち、こっち、


あ、ここも、あそこも、、


こんな所も、、、と言った感じです。

サウンドホールから一度に掛けられるクランプの数は限りがありますので、今回は4日間かけて剥がれている全箇所を接着しました。

力木修理は簡単そうで意外と時間も手間もかかる修理の一つなのです。


力木のサポートを無事に得られましたのでブリッジを戻しましょう。


理論上はブリッジもブックマッチ部の強い味方になります。


多分付けなくても大丈夫だと思いますが、念には念を、ということでクリートと呼ばれる補強も付けました。

「ここを修理したよー」という後世へのメッセージ的な意味合いもある気がします。


ペグやヘッドが腐食していましたのでクリーニングします。


ペグを外すことでヘッドのワックス掛けも捗ってピカピカです♪


縦ロゴも縦ロゴらしく凛々しく見えるようになりましたね。


こちらのYAMAKIが当時のMartinコピーだと考えると、シャーラー製ペグ=80年代製でしょうか。


弦を張ったら完成。


長年隙間が空いていたので跡が残りましたがブックマッチ部分は意外と気になりません。


力木剥がれも直りましたので音も引き締まっていい感じです。


国産オールドギター、当時はMartinのコピーモデルという位置付けだと思いますが、最近はジャパンビンテージと言われて人気もありますね。YAMAKIも人気があるメーカーの一つ。


バックはハカランダらしい豪快な木目となっています。この辺の年代は思い入れのある人も多く、修理に持ち込まれる国産オールドギターも増えてきました。ギターに限らず、今やMade in Japanは立派なブランド力がありますので見直されるのは当然のことのように思います。

どんなギターであれ、一途に長年同じギターを使い続ける人はとてもカッコイイです。

今回も最後までご覧いただきありがとうございます。

 

 

ロッド交換 / Gibson B-25 1960s


スタッフの山口です。

今回はロッド交換です。捻じ切れてしまっている悲惨な写真からスタート。修理屋としては腕まくりをしてしまうような画像ですがオーナーからしたら青ざめてしまう画像ですね。


ラッカー塗装でもGibsonは塗膜が厚いので指板とネックの境目をナイフでなぞっておきます。こうすることで指板を剥がす際に少しでも塗装の剥離を抑えられます。


指板をなるべく元の位置に戻せるようにダボを数カ所仕込んでからネックアイロンで温めて接着剤(ニカワやタイトボンド)を軟化させます。

 


ネック側の木目をよく見て順目の方向でヘラを入れて剥がします。時間をかけて綺麗に剥がれました。


埋木をノミで取り除いてその下に隠れているロッドを掘り当てましょう。


サビついたロッドのお目見えです。錆びていて癒着しているので慎重に。錆びているのは木が呼吸している証拠。


溝に残った錆や塵を取り除きます。


この鉄芯のトラディショナルなアジャスタブルロッドはGibsonが発明したモノです。


ネックの強度増し+アジャスト効果のある一石二鳥なナイスアイデア、今ではほとんどのメーカーで採用されていますね。

ちなみにMartinがアジャストできるロッドになったのは1985年製からと言われています。それより前の個体は単なる補強ロッドで調整(アジャスト)はできません。


適した長さに切断したら切込ダイスでナット用の溝を作ります。

ちょうど良いところでナットが閉まるように何度が長さを微調整します。この写真のようではまだ頭が出過ぎです。


ロッドエンドは60年代からここに収まります。カタカタと動かぬようエポキシ樹脂を隙間に充填します。


溝とロッドのしなりに合わせて作製した埋木でロッドを仕込みます。


埋木をネック上面を平らにしたら指板を戻します。


指板側とネック側にたっぷりのタイトボンド(またはニカワ)を付けて戻します。溢れ出るタイトボンドをせっせと拭き取ります。

指板がズレずにうまく戻れば塗装修正は不要ですがどうしても段差ができてしまう場合は平らにして塗装修正を施します。その後フレットをすり合わせたら完成。前述したナットからの頭の出具合もOK。

アジャスタブルロッドのアジャストとは「調整」という意味です。たまにネックの不具合を「直す」という感覚でロッドを触ってしまう人がいますが、ロッドはあくまで微調整の役割。調整のレベルを超えたネック不良はロッドでは無力。無理になんとかしようとすると冒頭の画像のようになってしまいますので注意が必要です。

またアジャスタブルロッドは個体によって動き方も微妙に違います。反りを治そうとしても変にねじれてしまう場合もあったり、逆にロッドの調整だけで驚くほど改善する場合もあります。「ネックがおかしいな」と感じたら調整も含めまずはお気軽にご相談ください。

今回も最後までありがとうございました。